ルーナ・ラブグッドと闇の帝王の日記帳   作:ポット@翻訳

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13「ペット」、14「いたずら」、15「興味」、16「ヴォルデモート」

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13「ペット」

 

ペットを飼おうと思うんだけど。なにがいいと思う?

 

—— 毒のあるやつ。毒ヘビはどうだ?

 

トム、真剣に言って。

 

—— 真剣だ。ぼくはヘビが好きなんだ。

 

わたしも。

 

—— そうなのか?

 

もちろん。わたしはどんな動物でも好きだったでしょ。

 

—— 好きなのは想像上の動物だろう。

 

そんなことない。

 

—— ある。

 

ない。普通の人よりも開かれた心をもってるだけ。

 

—— ルーナの心がこれ以上開かれたら耳から飛びでるだろうな。

 

いじわる言わないで。

 

—— まあいい。どんな動物でも好きなら毒ヘビでもいいんじゃないか?

 

うーん、まず校則違反だし、危険なペットは嫌だし、もふもふしたのがいいし。

 

—— もふもふ?

 

うん。

 

—— なぜ?

 

わたしが十一才の女の子でもふもふしたものが好きだからだよ。なにもややこしくないでしょ。

 

—— 弁解させてもらうと、きみの場合ほとんどのことが耐えがたくややこしいんだが。

 

そんなことない。

 

—— ぼくから見ればある。きみがどういう人間なのかさっぱり理解できない。

 

理解しようとしてないからじゃないかな。

 

—— したくない。きみの精神がぼくとおなじ世界に存在するというだけで気が重い。そのなかみを知る羽目になるなんて、地獄そのものだ。

 

トムはあまりいい人じゃなさそうだね。

 

—— ならなぜ話しかけつづける?

 

わからない。おもしろいから。

 

—— きみがおもしろいと思うのはカブとかだな。

 

カブはおもしろいよ。いろいろ使い道があるし!

 

—— 使い道など聞きたくもない。

 

じゃあいいよ。

 

—— ネコにしなさい。

 

え?

 

—— 校則で許されているし、実在するし、もふもふだ。ネコにしなさい。

 

名前はトムにしようかな。

 

—— やめなさい。

 


14「いたずら」

 

—— またこの上で泣いているな。

 

だからなに?

 

—— ぼくのページがびしょびしょになる。

 

わたしは気にしない。

 

—— ぼくはする。やめてくれ!

 

とめてみれば。

 

—— 普通の女の子のように枕で泣くとかできないのか? なぜぼくにおしつける?

 

わからない。ただ……

 

—— ただ?

 

なんでもない。

 

—— 言いなさい!

 

あの女の子たちにまた持ちものを盗まれた。

 

—— なんだ、それだけか。言っただろう。クルシオしてやれ。

 

それはしないよ。でも

 

—— でも?

 

役にたちそうな呪文をほかに知らない? 単に仕返しするとか、やめさせるとかに使えそうなの。

 

—— なぜぼくにきく?

 

わからないけど。色々知ってそうだから。

 

—— 色々知ってはいる。かなりたくさん知っている。

 

じゃあ教えてくれる?

 

—— もちろん。相手を止めたいんだろう? ひとつ簡単な呪文がある。アヴァダケダヴラと言うだけだ。間違いなく止められる。

 

殺すんじゃないったら! 役立たず。

 

—— はいはい。情けない子だ。ただのいたずらをしたいということかな?

 

うん。

 

—— なんとかしてみよう。肌を緑色にするのはどうだ?

 

それは……いいね。効果はそれだけ? 呪文?

 

—— 薬だ。枕にたらしておくと、そこで寝た相手は次の朝には鮮やかな草の色になる。

 

枕につけるとばれたりしない?

 

—— いや、無色でにおいもないし、すぐに乾く。こっそりやれば、気づかれるおそれはない。

 

いつまでもつ?

 

—— たしか数日。教師が治療できなければ。

 

傷つけることはない?

 

—— まったくない。

 

言っておくけど、わたしは調べてから使うから。これまで自分がなにを言ってきたかを思えば、信用してもらえなくてもしょうがないのは分かってるよね。

 

—— なぜだ? 信じてくれないのか?

 

あなたを投げとばせる距離くらいまでは信じていると言いたいところだけど*1、日記帳の場合かなり遠くまで投げとばせるからなあ。

 

—— 笑える。

 

ありがとう。

 

—— よし、調合手順を教えるから羊皮紙をとってきなさい。

 


15「興味」

 

今日は新しい友だちができた。

 

—— すばらしい。もっと増えればぼくに話しかけるのを止めてくれるはずだ。

 

心配しないで。そんなことしないよ。

 

—— ひっそりと心待ちにしている言いかただったんだが、伝わらなかったようだな。

 

とにかく、名前はネビル。ジニーに紹介してもらった。ジニーのお兄さんの友だちなんだって。

 

—— お兄さん?

 

うん。ロナルドっていうお兄さん。何人かいるうちで一番年下のお兄さん。何人だったかは忘れた。

 

—— たしか六人だ。ジニーから聞いたのを覚えまちがっていなければ。

 

多分それくらい。

 

—— で、そのお兄さんは……ハリー・ポッターと友だちだというお兄さんか?

 

そうだと思う。トムが有名人に興味があるとは思わなかったな。

 

—— 別に。ジニーから聞いただけだ。

 

そうなの? それでいまはどこに興味をもってるの?

 

—— まったく興味はない。

 

本当に? 興味ありそうだったよ。

 

—— ない。忘れてくれ。

 

だめ。何でハリー・ポッターのことが気になるの?

 

—— 気にならない。

 

なら何できいたの? 何で言い逃れしようとしてるの?

 

—— してない。ただ話題をあわせようとしていただけだ。

 

話しかけるのを止めてほしいっていった矢先に、話題をあわせようとするのは変だな。しかも興味をもつ理由のない生徒について。

 

—— その生徒に興味はない。とにかく忘れなさい。

 

トムは不思議なところがあるね。

 

—— ない。やめてくれ。

 

ある。どうみてもジニーの幸せにまったく興味がないのにジニーに返してほしいというし、変なお願いをするのはなにか裏がある証拠だし、許されざる呪文をクラスメイトに向けて何度も使わせようとするし、暴力的な気分になる傾向があるし、こんどは闇の魔法使い関係で有名な生いたちのある男の子に興味をもつし。なにかありそう。

 

—— ぼくの見立てはただしかったようだ。

 

どういう見立て?

 

—— きみはとても賢い……とてもやっかいだ。

 

お世辞と受けとっておくよ。

 

—— きみならそうすると思った。

 

わたしの見立てもただしかった。

 

—— というと?

 

あなたは見かけどおりのものじゃない。

 

—— だったらどうするんだ?

 

まだ決めてない。

 


16「ヴォルデモート」

 

—— 決心した。

 

うん?

 

—— きみときみのたわごとにはもう付きあっていられないから決心した。ジニーに返してくれないのならぼくをダンブルドアに渡せ。あの老いぼれなら、ひと思いに燃やしてくれるはずだ。

 

なぜ燃やしたりするの?

 

—— ぼくが危険だからだよ、無知な小悪魔め。自分の手にわたってきたものが何なのか気づいてさえいないだろう?

 

じゃああなたは何なの?

 

—— ホークラックスだ。ホークラックスというのは殺人をおかすことにより引き裂かれた魂を封じこめたものだ。それでぼくは不死になれた。

 

うわ。ひどい。

 

—— そうだルーナ。それだけじゃない。ぼくはだれあろう帝王ヴォルデモートの断片だ。

 

ほんとにそうなの?

 

—— そうだよ。ヴォルデモートはぼくが自分につけた名前だ。いつかぼくが最強の魔法使いになったとき、あらゆる魔法使いが恐れる名前だ。トム・マールヴォロ・リドルがぼくの本名だ。

 

—— TOM MARVOLO RIDDLE

 

   (文字がページの上でならびかわる)

 

—— I AM LORD VOLDEMORT

 

台無しだよ。

 

—— は?

 

それじゃ台無し。

 

—— この悪魔めなにが台無しなんだ!?

 

そのジョークが。

 

—— どの?

 

ヴォルデモートだっていうこと。さっきまではかなり本気にさせられてたよ。少し怖くもあった。でもその名前のやつで台無しになった。

 

—— 何のことだ?

 

あのアナグラム。まじめにやってよ。闇の帝王は世界征服をしようとした人殺しの独裁者なんだよ。反対派を皆殺しにしてヨーロッパにいる純血の半分を実質的に奴隷にしようとした。本名のアナグラムを称号にするとかいう情けない子どもっぽいことをするはずないでしょ。そういうのは子どもの絵本に出てくる悪役がやることだよ。十一才のわたしでもわかる。

 

—— いやそういうわけでは……その……

 

よくできたジョークだったよ。かなりだまされそうになった。

 

—— ああ。そうだな。気に入ってくれてうれしい。おやすみルーナ。

 

おやすみって? まだ五時だよ。

 

—— もう話したい気分じゃなくなった。

 

ジョークを台無しにされて気を悪くした?

 

—— いや。もう忘れてくれ。この話はなかったことにしよう。

 

じゃ、それでいいよ。

 

—— ……

 

でもそうだったらおもしろいよね?

 

—— は?

 

ヴォルデモートが、絵本の悪役のようにアナグラムを名前にする人だったら。主人公に正体をあらわすときは、なにか派手なことをしたりする。光る文字を空中に杖で書いて、さっきみたいにならべかえるとか。邪悪な計画をべらべらしゃべりながら。見てると楽しそう。

 

—— ルーナ?

 

なに?

 

—— もうやめて。

 

 

*1
訳注:ほとんど信じられない、という意味の慣用句

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