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F: よーし、トミーくん。スネイプは最後に必要な材料をいくつか仕入れにロンドンに行った。帰ってくるまで三十分くらい時間がある。
G: おれたち一流の鍵あけ技術のおかげだぞ。
F: そうそう。だいぶがんじがらめだったからね。
G: スネイプがあの机のなかにあんなにいろいろ隠しもっていたとはな。
F: 収集癖があるらしい。
G: 思いもしなかったよ。
F: 何年もまえに没収されたプロトタイプのいたずら用具も見つかった。
G: まだ使える。
—— よかったな。ルーナはどこだ?
G: まああわてずに。
F: 寛大に謁見の機会を用意してあげようと思っている。
G: もちろんおれたちの厳格な監督のもとで。
F: だから変なことはするなよ。
—— 心配するな。変なことはきみたちに任せる。
G: それがいい。
F: おれたちの得意分野だ。
G: とにかく、もう交代するよ。
F: 見てるからな。いい子にするんだぞ。
—— はいはい。
……
トム。
—— やっとか! 元気だったか、ルーナ?
疲れた。何時間も調合してたから。
—— すまない。あのポーションを作るのは大変だっただろう?
大変だったけど悪いことばかりじゃなかった。あとすこしで完成すると思う。
—— ならよかった。
うまくいくと思う? ヴォルデモートをほんとに止められると思う?
—— そのつもりだ。
そしたらあなたを人間にもどせると思う?
—— うまくいけば。
うん。楽しみにしてるよ。
—— ぼくも。
そのときの外見はわたしが見たあの写真とおなじ? それとも大人?
F: 写真?
G: どの写真?
—— はいってくるなウィーズリー。ルーナと話をさせてくれるはずだっただろう。
F: まあね。でもこの話はあとでまたさせてもらう。
—— いや、ルーナに見せてもらえばいいじゃないか。
F: ルーナ、ヴォルディくんの写真見せてくれる?
G: 頼むよ?
—— きみらは声のだしかたを忘れでもしたのか?
G: トミーくんを仲間はずれにしたくないだけだよ。
—— してくれ。
あとで卒業アルバムを見せてあげるって言ってあげた。
—— すばらしい。さっきの質問だが、ぼくは十六歳のすがたになると思う。
よかった。大人だったら変な気がするから。
—— たしかに。
F: だよな。
—— 混ざってくるな!
トム、行儀よくしなさい。
—— 向こうがわざとやってるんだ。
やめてって言っておくよ。
—— ありがとう。
学校も変になってる。ハリーが連れ去られてからみんな気が立ってる。
—— ついこのあいだのことだから、落ちつくにはもうすこし時間がかかるだろう。
かわいそうだと思う。
—— だれが? ポッターが?
自分を連れ去ったのは復活したヴォルデモートだってみんなに言ったから。それがあまり信じてもらえてない。うそだと思われてる。
—— そりゃそうだろう。ヴォルデモートはまだ動いていないし、人は不都合な真実を信じたがらない。証拠がなければなおさらだ。
そうだけど。だれにも信じてもらえないのはかわいそうだね。
—— きみの生きもののことを信じてもらえないようにか?
多分。
—— 悪かった。
なにが?
—— ぼくも信じなかったから。
ほかの人より努力はしてくれたと思う。
—— 説得がしつこかったからな。
じゃあ、いまはナーグルは実在すると思う?
—— いや……だが実在しないとも言わない。
それでいい。
—— スネイプはいつ戻る?
よくわからない。長くはかからないはず。
—— こうやってわざわざ隙をつかなくても話せればいいんだが。
わたしも。まえみたいに、いつでも話せたらいいのに。
—— もうすこしの辛抱だ。スネイプがもどるまえに、ぼくをしまったほうがいい。もしこうやって話していることがバレたら、つぎの機会はないかもしれない。
そうだね。いずれにしても、フレッドとジョージがナーグル探索の話をしながらいなくなったから、わたしも行くよ。聞いたかぎりじゃ、わたしがなにかしないと、とんでもないことになりそうだから。
—— 幸運を祈る。
S> ポーションは言われたとおりに作ったが、緑色の泡とピンク色の煙が出てきたぞ。
—— ほう?
S> これでいいのか?
—— さあ。はじめて作るんだからな。どう思う? 魔法薬学の教師なのはそっちだろう。
S> 指示しているのはそちらだろうが!
—— 適宜自分の常識で調整してくれることを期待しているんだが。
S> わたしの常識にしたがうなら、おまえをダンブルドアに渡し、この緑色の液体は流しに捨てることになる。
—— ちょっと無責任だな。下水の先でなにが起きてもいいのか? ミュータントのネズミが城中を暴れまわることになるかもしれない。
S> 憎らしい。
—— いや、おまえはぼくと同じくらいこれを楽しんでいるはずだ。
S> あの中途半端な指示から推測するかぎり、このポーションはもう完成している。これをどうするのだ?
—— あとはそれをヴォルデモートの頭にふりかける方法を考えるだけだ。
S> 本当に憎らしい。
……
F: 簡単じゃん。ゴムの力で飛ばせばいい。
S> ゴム鉄砲でヴォルデモートを撃つ気か!
G: いいんじゃない? 水風船を飛ばすみたいにしてさ。
はずれたらどうするの? 結果として怒らせるだけじゃない。
S> わたしも同じことを言おうとしていた。
—— ポートキーで頭の上に落とすという手は?
S> 人間ぬきでポートキー転移はできない。仮にできたとしても、相手の立っている位置を厳密に知る必要がある。
F: 眠っているときを狙えばいい。
ヴォルデモートが眠る時間も場所もわからないよ。
S> やはりこの場で冷静なのはルーナだけだ。
—— まさかみんな一切しゃべらずに、ここに書いて会話してるのか?
S> まさか。おまえのために、音声を文字に転記する呪文をしかけておいただけだ。
—— へえ? 器用なことができるな。ありがとう。
G: 思いついたのはルーナ。
F: やっぱりルーナはあたまがいい。
やめてよ。
—— まちがってはいない。
S> 同意するが、脱線はほどほどにしてくれないか?
F: ああ。ゴムで飛ばすんだったね。
S> ヴォルデモート相手にゴム鉄砲はありえん!
G: ゴム鉄砲作戦については、もうすこし時間をかけて検討したほうがいいんじゃないかな。
S> 時間をかけすぎたくらいだ。
—— これは繊細な任務だ。復讐のチャンスをあたえないよう、一度で成功させる必要がある。はずれる可能性がある方法は使えない。だからゴム鉄砲とか投擲とかはなしだ。
F: つまんないの。
—— だれかがあいつのすぐそばまで行って、直接あびせるんだ。
S> そのだれかは、ここにいる唯一の大人であるわたししかない。
G: いや先生、そんなことをさせるわけにはいかないよ。
S> 気持ちはありがたいが、生徒の生命を危険に晒すわけにはいかん。わたしが行く。議論の余地はない。
それでもなにか作戦はいると思う。
—— だれにも見られずにヴォルデモートに近づく方法が要る。クラウチに気づかれずに忍びこんで、近くまで行ったらあの液体をかけて、すぐに脱出するんだ。
F: あのね先生?
S> ん?
F: 実はハリー・ポッターのところに透明マントがあったりするんだけど?
S> おどろく気にならないのはなぜだろうな?