音のない大広間。だれの組分けであっても敬意と期待をこめて静寂がおりるのは変わらないが、ごく少数の人だけが、次の一人の組分けの重要性を認識していた。どこからともなく現れ、五年次にくわわろうとしている謎の転入生の正体を、ほとんどの人は知らない。厳密には六年生になるはずだが、ルーナはまだ四年生をはじめるところだし、どうせ素性をあらたに作るのだから少し若くしても悪いことはあるまい、と考えてトムはこうした。これで二人はトムの卒業まで三年間、一緒に過ごすことができる。
トムの正体を知る人はみな、組分けがどうなるか予想がついていた。というより、組分けはすでに済んでいる。今回の結果が前回と変わるべき理由はない。
ルーナは不安だった。トムがスリザリンでほかの友だちを作ったらどうなるか。また昔のような考えかたにもどってしまうのか。それが怖かったが、トムをもっと信頼できないでいる自分が後ろめたくもある。トムはもう変わったんじゃないのか。信頼していいんじゃないのか。
ルーナは自問自答を繰り返し、帽子はなにも言わない。時間だけが過ぎていく。組分け帽子と少年の秘密の会話がつづく。
……
(見覚えのある子だ。)
—— うれしいね。さっさとすませてくれないか?
(ずっと昔に組分けした覚えがある。不思議なものだ。同じ人間が、これだけの時を経て、またここに来るとは。しかも、ほとんど年を取らないまま。)
—— 事情があってね。
(そのいきさつは見えた。さて、行き先だが。前回はどの寮だったか。スリザリンではなかったか? スリザリンの継承者はスリザリンへ、というわけだ。)
—— そうだ。きっとまたそうなんだろう? ぼくは根っからのスリザリンだ。
(そうかもしれん。)
—— それはどういう意味だ?
(そのままの意味だ。そうかもしれん。そうでないかもしれん。)
—— さっさと結論を言えよ!
(最初に言ったとおり、おまえのことは見覚えがある。狡猾で、抜け目ない男の子。才能ゆたか。野心的。どれをとってもスリザリン向きの特徴ではある。)
—— そうだ。そのどれも、いまのぼくにも当てはまる。
(たしかに。けれども、前回組分けした人間とここにいる人間は同じではないようだ。あのときの男の子はもっと怒っていた。暗黒を内に宿し、表面下で沸々とさせていた。いまはそれが見えない。)
—— ああ……それはなくなった。
(かわりに温かさがある。強さと落ち着きがある。なにがあったというのだ?)
—— それは……友だちができた。
(大した影響力だ。)
—— あんな魔女はなかなかいない。
(この学校の生徒かね?)
—— ああ。レイブンクローにいる。
(なるほど。スリザリンもよかろう。あのときと同じ、元の居場所に帰るだけ。たやすくなじめることだろう。それがおまえの望みなら。けれど、新しい出発には新しい道があってよいやもしれん。さあどうする、トム・リドル、スリザリンの継承者よ。おまえはどの寮を望む?)
……
『レイブンクロー』という呼び声が大広間に響きわたり、しばらくしてからやっと、ルーナはその意味を理解した。
トムがテーブルまできて隣に座ったとき、ルーナはすでに泣いていた。トムが抱擁しようとしているのに気づいて、抱き返すだけで精いっぱいだった。