ルーナ・ラブグッドと闇の帝王の日記帳   作:ポット@翻訳

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99「新世界」

 


99「新世界」

 

『……ホグワーツの新しい校長として新入生諸君と在学生諸君を歓迎する。ついてはカリキュラムにも一部変更があることをお知らせする。まず、新しく必須科目として異文化交流を導入する。これは魔法族生まれとマグル生まれの生徒の相互理解を推進することを目的とする科目であり、受講者はたがいの生い立ちがどう違うかを学ぶ。

 

 さらに、いろいろな種類の魔法生物と非魔法生物について学べる機会を提供するため、全学年の生徒のなかから希望者を募って、週末に課外授業を行う。年一回珍しい土地への探検旅行も計画している。今年はチャールズ・ウィーズリー氏の協力で、ルーマニアに二週間のドラゴン観察旅行の予定だ。

 

 フィルチ用務員と教師陣多数からの要望を受け、強制作業の罰則は廃止する。かわりに城の地下牢深部を本来の用途に再利用することにする。脱獄を不可能にする魔法の拘束具も準備してある。地下牢にはネズミもたっぷり必要だから、明日には届くよう手配してある。監獄行きの期間は数時間から数週間、罪の重さによって変わる。囚人に与えられるのはパンと水のみだ。

 

 魔法史の授業は諸君の成績が低下する一方なので、ビンズ先生の教育助手(ティーチングアシスタント)としてピーブズを雇用することにした。居眠りをした生徒にはピーブズが絶叫をお見舞いする。ついでに授業に出てくる戦争を好きなように実演していいとも言ってある。ピーブズはすでに城じゅうの騎士像の鎧を集めて軍団を作ったようだから、受講生は居眠りしないほうが身のためだ。

 

 クィディッチ以外の運動競技として、サッカーとテニスと箒競争と浮遊術高跳びも準備した。ほかにやってみたいスポーツがあれば、マダム・フーチに相談してほしい。

 

 最後にあらためて、入学・進級おめでとう。この一年の終わりに諸君が両親のもとへ帰るときには、すばらしい一年とすばらしい新校長だったと報告してくれることを期待している。ダンブルドア前校長が謎の失踪を遂げたことについては心配無用。あいつはきっと元気にやっている。降って湧いたような引退とはいえ、どうせ海辺のリゾートでマルガリータの杯をかたむけていることだろう。静聴ありがとう』

 

 数人しかいない観客が演者に熱烈な拍手と歓声をあびせる。

 

「いいぞいいぞ!」とジョージ。

 

 フレッドとロルフは杖先から小さな花火を打ち上げ、

「新校長バンザイ!」

「ホグワーツばんざーい!」

 

 ルーナはいつものメンバーの様子に不信げな目を向ける。

「なんでよろこぶの? フレッドとジョージは罰則の常連だよね。監獄行きがうれしい?」

 

「うれしいよ、そりゃ」

 フレッドはそう言ってにやりとした。

「百年ぶりにホグワーツ地下牢脱獄を成功させた囚人第一号になれるんだから」

 

「魔法の拘束具があるらしいけど?」

 

「難しいからこそやりがいがあるってもんだ」

 二人はハイタッチをした。

 ルーナはあきれて目をまわした。

 

「トム。いい計画だとは思うけど、いつかホグワーツ校長になるとしても、それまでにいろいろやることがあるんじゃない?」

 

「うむ。ぼくがダンブルのあとを継ぐまで、あと四年あるな。ゆっくり計画しておこう」とトム。

 

「じゃあみんなでネタ出しだね!」

 そう言ってロルフが羊皮紙と羽ペンを手にした。これからたった四年でトムが校長職に就くという仮定は無理がありすぎるが、ロルフは気にならないらしい。

 

「薬学は選択科目にしてほしいなあ」とネビル。

 

「薬学だけ? ぜんぶ選択科目でいこうぜ」とフレッド。

 

「その提案は却下する」

 トムは二人に向けてそう言って、両手で机をたたいた。

「しかし……安全上の理由がある生徒については薬学を免除しよう。毎回釜を爆発させてしまう生徒とか」

 

 ネビルは『そうこなくちゃ』という顔をした。

 

「図書室で飲食できるようにしてほしい」とルーナ。

 

「こっそりすればいいだろ。みんなそうしてる。あと、図書室の規則には口出ししたくない。マダム・ピンスはおっかないからな」

 

 つぎに提案するのはジョージ。

「薬学教室は、地下にあるせいで通気性が悪い。もっと排気しやすい場所に移動してほしい。塔の上のほうにでも」

 

 それを聞いてトムは愕然とした。

「待て。こともあろうに、スネイプ先生を地下から解き放って、この学校の他の場所に住まわせるだと?」

 

 ネビルは口をあんぐりとあけて立ちつくした。

 

 全員の視線をよそに、ジョージはあっさり首を縦に振った。

 

「へえ、じゃ、きみの口から本人にそう伝えてもらいたいんだが?」

 

「いいよ」

 

「じゃ、よろしく」

 

「え? いま行けって?」

 

「ああ」

 

「トムはまだ校長じゃないだろ」

 

「関係ない。あいつがどう思うか、聞いておいてくれ」

 

「わかったよ」

 ジョージは立ち上がり、のしのしとドアに向かう……が、あと一歩のところで止まって振り返り、両手を左右に広げる。

「思ったんだけどさ、もう時間も遅いし、向こうも多分忙しい。まだ何年も先のことを無理にすぐ話すこともないだろ? トムが校長になったあかつきには、ちゃんと話に行くからさ」

 

 フレッドが鼻で笑って、落ちていた爆発スナップをジョージに投げつける。

「意気地なしめ」

 

「そこ、不規則発言!」とロルフがやかましく言う。

 

 そのままネタ出しはつづき、暗くなってやっとお開きとなった。

 

「……あ、ちょっと」

 ジョージがにやっとして、寮の談話室を行くパーバティ・パチルを呼び止める。

「聞いた? 校長先生が薬学教室を地下から別の場所に引っ越させるらしいよ? 排気のことを考えて、塔の上のほうにするんだってさ」

 

……

 

「いやいや、セブルス……」

 校長室のダンブルドアは落ち着きはらった様子で話す。机のむこうでは、もう一人の男がイライラと室内を行ったり来たりしている。

「生徒たちはそう言っているらしいが、なにを勘違いしたのやら。わしはいっさいそんな話はしてはおらん」

 

「そう願いたいものですな!」

 

「ただ、言われてみれば妙案かもしれんのう」

 

 




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