ルーナ・ラブグッドと闇の帝王の日記帳   作:ポット@翻訳

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26「友だち」、27「青」、28「マルフォイ家」、29「著者より」

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26「友だち」

 

トム、役にたつかもしれない呪文をまた見つけた。

 

—— ああそれじゃぼくを助けてくれるのか?

 

もちろん。そうするって言ったでしょ。

 

—— このあいだ話したときは、あまり助けることに興味がないようだったが。

 

どういう意味?

 

—— ユニコーンのことをえんえんと話していた。

 

ユニコーンはすごくすてきだったから。

 

—— その話はもういい。

 

じゃあなにが問題なの?

 

—— ぼくが質問をしたのにきみは無視した。

 

したっけ?

 

—— した!

 

何の質問?

 

—— おや、いまは気にしてくれるのか?

 

いつも気にしてあげてる。

 

—— 前回はそう見えなかった。

 

ほかのことを考えてたから。すごい経験だったからそれ以外考えられなくなってもだれも責められないでしょ。

 

—— 責められるし、責めるぞ。

 

けち。

 

—— ぼくはけちじゃない。きみがけちなんだ。本気になってくれてない。

 

わたしは十一才だよ。

 

—— そういう話はしてない!

 

そういう話だよ。助けてあげようとしてるのにプレッシャーをかけられてばかり。

 

—— ぼくにはきみしかいないからだ。

 

そうだよ!わたししかいないのに感謝してるようすがない。

 

—— 感謝? ぼくを狂わせてくれたから?

 

自由にしようとしてあげた。さみしくないように話しかけてあげた。信じる理由もないのに信じてあげた。ぜんぜん実力以上のことまでしてあげた。わたしはただの小娘なのに! これは本格的な魔法なんだよ。

 

—— 知ってる。

 

ほんとに? トムにとってはふつうの魔法かもしれないけど、わたしにとってはそうじゃない!

 

—— きみにとってのふつうはあまりふつうじゃないな。

 

またそれ! いつもわたしをばかにする!

 

—— 観察したまま言っただけだ。

 

失礼だよ。

 

—— ならあやまる。

 

ほんとに?

 

—— ああ……。すまない。たしかにそうだ。きみには期待をかけすぎてる。

 

そうだよ。

 

—— 手つだってくれてありがとう。

 

どういたしまして。

 

—— 失礼を言っていたらすまない。ほかにどうすればいいかわからないんだ。ぼくの人生は……ややこしかった。

 

どういう風に?

 

—— 説明しにくい。ぼくには……友だちがいなかった。

 

わたしも。

 

—— そういう感じはしていた。

 

またいじわる?

 

—— いや、そうじゃない。共感してるんだよ。それに文句は言ってるが、きみと話すのはいやじゃない。きみはおもしろい。

 

そうなの?

 

—— 変だがおもしろい。

 

あまりほめてるようにきこえないけど、ありがとう。

 

—— そりゃありがたい。

 

親切にしてくれてるときはあなたも悪くない。

 

—— あまりほめてるようにきこえないけど、ありがとう。

 

笑える。

 

—— そうだろ。

 

じゃあ友だちにもどろうか?

 

—— ぼくらは友だちだったのか? まあそうかもしれない。さて、呪文がみつかったんだって?

 


27「青」

 

—— どこも青いにおいがする。すこしとがったにおい。

 

え?

 

—— きみがあの呪文をかけてからだ。どこも青いにおいがする。

 

トム、青はにおいじゃないよ。とがったもにおいじゃない。

 

—— わかってるがただ……どこも青くてとがったにおいなんだ。気にいらない。気もちわるい。

 

今後はもっと厳選した呪文だけをためしたほうがいいかな?

 

—— たぶんそうだな。前回の呪文はどこでみつけたんだ?

 

あ、あれは自分で作った。

 

—— 自分で?

 

そう。もとにしたのは……

 

—— やめなさい! ルーナ、呪文を発明することは絶対に、かたく禁じる。

 

なぜ?

 

—— 理由はいくつかある。

 

—— 1. 呪文を作ることは教育を終えた魔法使いにとっても難しいことで、失敗する場合があるから控えたほうがいいと言われている。

—— 2. 十一歳のきみはあきらかに教育を終えた魔法使いではない。

—— 3. きみの精神状態が安定しているかどうかまだ自信がもてない。

—— 4. あやしげな呪文をぼくにかけてほしくない。

 

理屈はわかったけど、過剰反応だと思うよ。わたしはまえにも呪文の実験をしたことがあるし、注意してる。

 

—— そういうことじゃない。十一歳の子どもは実績のない呪文であそぶべきじゃないんだ!

 

わたしは新しいことをためすのが好き。両親もそうだった。お母さんはわたしより若いころから呪文を作ってた。

 

—— そうしてそのお母さんはどうなった! きみにもおなじように死なれたらお父さんはどう思うんだ?!

 

……

 

—— ルーナ? そこにいるのはわかってるぞ。泣いているのを感じる。青いにおいににじんできてるんだ。なぜかわからないが。

 

……

 

—— 気分を害したらすまなかった。だがこれはほんとうのことだ。呪文を作るのは危険だ。

 

わかった。

 

—— きみにけがはしてほしくない。

 

ほんとに?

 

—— もちろん。ぼくにはきみしかいないんだ。

 

ありがとうトム。

 

—— 気分はなおったか?

 

あんまり。

 

—— お母さんはどんな人だった?

 

どうして?

 

—— 気になっただけさ。話したいんじゃないかと思って。そもそもぼくは日記帳なんだから。

 

できれば話したくない。

 

—— ぼくは自分の母親に会ったことがない。

 

え? かわいそうに。たいへんだったでしょう。

 

—— そうだな。ただ、会ったことがない以上、さみしがったこともなかった。親をうしなうことがどういうことかわからない。

 

つらかった。

 

—— かわいそうに。まだきみにはお父さんがいる。それだけでもいい。そしてお父さんにはきみがいる。

 

うん。いままで自分を危険にさらしてるとは思わなかった。失敗した呪文にやられてお父さんを一人にするかもしれないとは思わなかった。

 

—— 無理もないことだ。ふつうの子どもは命の終わりについて考えたりしない。「ふつう」を広い意味で使えばだが。

 

そうだね。

 

—— 気分がいいことだろうと思う。恐怖や心配にひきずられずに新しいことを試していけるというのは。ぼくはそういう意味で自由だったことはない気がする。いつも死ぬことを恐れていた。

 

ほんとに? なぜ?

 

—— なぜかわからない。ただそうだった。

 

疲れそう。気分をらくにして自分のまわりの世界をたのしめないなんて。

 

—— そう考えたことはなかった。生きることそのものにこだわりすぎていた。戦いと争いだ。

 

生きることがたたかいやあらそいに見えている人はどこか間違っていると思う。わたしはお母さんに、人生は贈りものだと教えてもらった。どの瞬間も大切にしなさいって。

 

—— ぼくの母親は逆のことを教えてくれた。

 

お母さんに会ったことがないんじゃなかったの。

 

—— ない。だが、いきさつは知っている。彼女は家族から虐待され捨てられた。愛した人に見捨てられ、社会から見放された。死ぬまえ最後にしたのは、ぼくを安全な場所にとどけることだった。彼女はぼく以外からのだれからも愛されたことがなかったんじゃないか、と思ったりもする。そしてぼくの口からもそう聞かないまま死んだ。

 

ほんとにかわいそう。そんなにひどい境遇だったんだ。

 

—— そうだ。そしてそれがぼくが教えられたことだ。人生は残酷で人は死ぬということだ。

 

人生は贈りものだよ。彼女が最後にしたことも贈りもの。あなたに人生をたのしんでほしかったんだと思う。

 

—— ほんとうにそう思うか?

 

うん。そうすることがおたがいお母さんへの恩がえしになるんだと思う。

 

—— まあそうだな。呪文をつくるのはもうやめると約束できるか?

 

約束する。

 

—— よし。じゃあ、この鈴の音のにおいをどうにかしてくれるような、できあいの呪文を探してきてくれ。

 


28「マルフォイ家」

 

きょうはいやな男の子にあった。

 

—— ほう。だれだ?

 

マルフォイっていう子。ジニーに失礼なことを言った。

 

—— ということはルシウスの息子だな。

 

ってだれ?

 

—— その子の父親だ。ずっと昔に会ったことがある。

 

そうなの?

 

—— ああ。あの男とは……取り引き相手のような関係だった。

 

おもしろい。その子もお父さんのことばかり言ってたよ。気にいらないことをされたら父上に言いつけるって。おどしになると思ってるみたい。

 

—— ああそんなところだろうな。マルフォイ一族はいつもわりと傲慢だった。

 

わりとどころじゃない。

 

—— たしかに。

 

あの子がジニーになにを言ったと思う。ひどかったんだよ! 退学させられればいいのに。

 

—— 退学はまずない。ルシウスはさいきん魔法省に出入りしているし、以前からかなりの影響力をもっていた。息子はそういった罰なしに放免されるだろう。

 

不公平だね。

 

—— 人生は不公平だ。

 

うるさい。とにかくあの子は嫌い。

 

—— 正直ぼくもルシウスはあまり好きじゃない。酔っぱらったときはおもしろい奴だったが。

 

そうなの?

 

—— あるパーティでワインをボトル三本あけて、モップを手にワルツをおどろうとしたことがある。それがモップだとは気づいてなかったらしいのがさらにおかしい。ベラがいうには、あとでそのモップを薔薇園に連れていって求婚までしたらしい。

 

ふふふ! おかしい! あの子は知ってるのかな。

 

—— 知るわけないさ! ルシウス自身がいつも否定している。そんなみっともない姿をしたとあってはプライドが許さないんだ。

 

つぎにジニーがちょっかいだされたときには言ってみたりしようかな。

 

—— たのむ。マルフォイがやりこめられるのをみるのはいつも楽しい。悪趣味だが。じつをいうとルシウスの武勇伝はもういくつかある。書き留めてくれてかまわない……

 


29「著者より」

 

〔訳注:この部分は抄訳です〕

 

 日記帳のトムが他のヴォルデモートの記憶(ルシウス・マルフォイの過去の失敗談など)を知っているのは、日記帳としてヴォルデモート本体にかなり長く所有され、色々な話を伝え聞いていたからです。日記帳のほうでも本体のことを「自分」と見なしているので、見てきたような話しかたをします。

 

 

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