ルーナ・ラブグッドと闇の帝王の日記帳   作:ポット@翻訳

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35「ルーピン」、36「スキャバーズ」

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35「ルーピン」

 

ことしの防衛術の先生はロックハート先生よりだいぶまし。

 

—— きみの話を聞くかぎりでは、ましにするのはむずかしくなさそうだ。

 

たしかに。

 

—— ロックハートはどうなった?

 

他の先生が全員、ロックハート先生がいるなら自分はやめるってダンブルドアにうったえたという噂。

 

—— それはすごい。よくそこまでの侮辱を引きだせるもんだ。

 

それにかけては才能があったね。

 

—— その才能しかなかったのかもしれない。

 

だろうね。

 

—— 新任の人はどんな感じだ?

 

ルーピン先生はいい人だよ。みんなに好かれてる。これまでのところ授業は双方向だし魔法生物の知識もかなりすごい。

 

—— ナーグルの撃退法は知ってるのか?

 

わからない。きいてみる。

 

—— たのむ。当然必須の知識だし、防衛術の先生が知らなかったらかなり心配だ。

 

冗談のつもりなんだろうけど、あれは便利な呪文だよ。

 

—— もちろんだ。どうなったか教えてくれ。

 

……

 

ルーピン先生は授業にこなかった。スネイプ先生が代理で授業した。

 

—— 変だな。なにか理由があってのことか?

 

病気らしいよ。

 

—— 言い訳にもならない。ビンズ先生なら、死んでも授業してくれるというのに。

 

してくれないほうがいいと思ったりする。あの先生の授業はきらいなんだ。

 

—— みんなそうだよ。なんの病気だって?

 

言われてない。ただ病気とだけ。

 

—— どうも怪しい。

 

だよね。元気だといいけど。

 

……

 

人狼だった。

 

—— は?

 

ルーピン先生が。先生はこれまで三回病欠で、どれも満月の前後だった。

 

—— まちがいないか?

 

うん。最初のはわたしがセストラルにえさやりにいったときで、月がきれいだったのをおぼえてる。二回目は満月にしかでてこないバンディガーをつかまえようとしていたときだった。三回目はそれを監視してた。そのあとすこし調べてみたら、他の症状も先生とよく一致してる。

 

—— なかなかの探偵だ。

 

ありがとう。

 

—— ホグワーツは人狼を雇っていいのか?

 

公式にはだめ。秘密にしてる。

 

—— 十二歳の子どもに三カ月で見やぶられる。あきらかにいい仕事ぶりだ。

 

だよね。もしわたしが人狼なのを隠すとしたら、一カ月のどこかで不定期に病気のふりをして目くらましにする。

 

—— それが常識的なやりかただ。ほんのすこしでも良識があればそうする。ルーピンというやつはきっと、グリフィンドール出身じゃないか?

 

うん。なんでわかったの?

 

—— 単なる推測だ。

 

ばれてるって伝えたほうがいいかな?

 

—— なぜ?

 

ほかの人にばれるまえに症状を隠したほうがいい、って教えてあげようかなと思って。

 

—— 今の時点で謎をといたのがきみだけだとは思えない。

 

たぶんね。でも言っておこうと思う。

 

—— ご自由に。

 

人狼にあうのははじめて。

 

—— それはどうかな。もういままでに何人も会ってるかもしれない。

 

たしかにそうだね。言いたかったのは、人狼だとわかってあうのははじめてっていうこと。おもしろいな。人狼はあんなひどい評判なのに、先生はすごくいい人。

 

—— 例外かもしれない。

 

かもね。わたしは不公平な偏見だと思うけど。

 

—— 偏見が自業自得のこともある。

 

わたしは一人一人の人として見極めることにしてる。

 

—— ぼくもだ。人としての欠陥を見極めるのは楽しい。

 

わたしはそういう意味で言ったんじゃないから。

 

—— つまらん。

 


36「スキャバーズ」

 

—— またあのバカネコがぼくに小便したのか?

 

トムはバカじゃない。

 

—— トムはやめろ!

 

でもそういう名前だし。

 

—— あ、認めるんだな!

 

つまりあだなだよ。とにかくそういう風に呼んでるんだから、あきらめて。

 

—— もういい。またトムがおしっこしたのか?

 

ちがう。

 

—— じゃあこのにおいはなんだ?

 

おしっこ。

 

—— たったいま違うと言っただろうが!

 

言ってない。トムじゃないって言っただけ。今回はネズミのおしっこだから。

 

—— ネズミ? どうしてぼくをネズミが出るような場所に置くんだ? 想像上の動物をけしかけるのにあきたらず、実在の動物まで使うのか?

 

ネズミが出るような場所に置いてはいないよ。

 

—— じゃあなんでネズミのおしっこがある?

 

野良じゃなくてペットのネズミ。ジニーと話しにいったら、お兄さんが飼ってるスキャバーズの面倒をみてて、それがいつのまにかわたしの鞄にはいってきてた。残念だけど、そこで用をたす気分になったみたい。

 

—— 最悪だ!

 

ぬれちゃった本はあなただけじゃない。

 

—— ぼく以外の本は気にしてないだろう。

 

たぶんね。それとちょっとかじられてもいるみたい。

 

—— そいつをトムに紹介してやったらどうだ? あのネコもひとかじりしてくれればたまには役にたつ。

 

いじわるいわないで。ただの無害なネズミだよ。わるぎはないよ。

 

—— 知るか。ネズミは嫌いなんだ。特にぼくを噛もうとするやつは。

 

大げさに言うのはやめて。

 

—— 言ってない。

 

言ってる。

 

—— 言ってない。

 

子どもだね。

 

—— そっちがだろ。ぼくはどうだ?

 

本気、トム? そういう態度をとるの?

 

—— ああどこかいけ。

 

わかった。じゃあね。

 

—— ネズミめ、ぼくの手にかかったらどうなるか覚悟しておけよ。

 

トムに手はないよね。

 

—— しかもこの調子だと戻ってきそうにない。

 

子どもっぽいんだから。

 

 


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