ヴァンガードifはアイチを元に戻して一件落着……じゃねぇ!?何か目がヤバいことになってる……。
「交流会参加のお願い……ですか?」
「はい。サプライズゲストとしてお願いしたいんですが……いかがでしょうか?」
時は遡り、Roseliaが出場した女性限定大会が始まる五日前の昼頃──。貴之は一人の男性と羽沢珈琲店で話をしていた。
彼が持ち出して来た話しとしては頼み事であり、とある海にある場所でヴァンガードの交流会をやるので、そこにサプライズゲストとして出てほしいとのことである。
一応宿泊費等はわざわざお願いする都合上こちらで受け持つと言う破格の待遇であり、その他必要なもの以外に経費が掛からないのは非常に有り難い話しであった。
どうやら対象は現地の人と、近場へ旅行ついでに楽しみに来た人たちを想定しているらしく、当日受付制にしており、開催の時に貴之に顔出しして欲しいそうだ。
「予定的には大丈夫です。一旦家族に話しだけはしたいので、回答を少しだけ待ってもらうことはできますか?」
「はい、それは構いません。他にも、どなたか参加可能な方がいるなら声を掛けて頂く事はできますか?今回の全国大会での上位戦績者が望ましいですが……」
──お返事については、遠導さんが纏めて返してくれる形でも結構です。男性の受け答えを聞いた貴之は、ならばと自分が返すことを決めた。
「(上位戦績って言うと……一台展開以降が望ましいか。そうなると俊哉、一真、玲奈、それと竜馬の四人だな……)」
弘人と大介も有数の実力を有しているが、それぞれが自分と一真に地方で敗北している為、今回は呼ぶことができない。
それを考えると、竜馬は呼べるにしても呼びづらいだろう。その為彼を選択肢から外すと残り三人に声を掛けることになるだろう。
男性から必要経費として注文してもらったケーキを完食し、ホットコーヒーを飲み終わると同時に貴之は判断を纏め終え、連絡先を貰う。
「ご馳走様です。連絡はいつまでにすればいいですか?」
「そうですね……今から一週間後までにお願いできますか?開催日は今日から二週間後なので、一週間前にはゲストに誰が来るかを把握しておきたいので」
その事情は貴之も理解できるので、それを承諾したことで話しは終わりになり、家に帰った後小百合に話して許可を得る。
「海って言うから念の為に水着も必要だよね……残ってたっけ?」
「まあ去年のはあるが……一応後で買っておくか」
男子はそこまで気にしなくてもいいと言うのはあるかも知れないが、年頃なので流石に意識した方がいいと貴之は考えた。
これに関しては参加確認を取ってからでもいいだろうと感じ、まずは連絡を取ることにした。
その結果三人は無事に参加可能らしく、そのまま回答を伝え、その翌日四人で一回集まることになる。
「わざわざ助かったぜ……」
「圧倒的削減された経費で海に行けるって言われればそれはね……」
「とは言うけど玲奈、本音は?」
「女の子とファイトできる可能性を信じて!」
「ああ。玲奈さんはそう言うと思ったよ……」
そして玲奈の理由を聞くと、流石に一真も慣れた様子を見せた。
一先ず日程を教え、念の為水着は必要だろうという考えは皆共通である。
「俺は流石に買わないとな……最後に行ったの小学生だし」
「サイズも変わるだろうしな……」
少なくとも俊哉は購入確定だろう。後は玲奈も意識的に買うらしい。
そうなると流れ的に貴之と一真も買うことを決め、一先ず買い物へいくことを決めた。
「あ、あのさ……一真君はあたしの水着……気になる?」
「えっ!?い、いや……それは、気になるけども……」
少々頬を朱色に染めながら玲奈が問いかけると、一真も頬を朱色に染めて慌てた様子を見せる。
それを聞けて満足する玲奈を見つつ、貴之は俊哉にこれから頑張れと応援の旨を送るのだった。
* * *
「なるほど……貴之たちも行くのね?」
「ああ。そっちも合宿だったよな?」
その日の夜。友希那の家に泊まらせて貰っていた貴之は友希那の部屋にて、彼女と二人きりでの会話を楽しむ。
どうやら両者とも仲間と共に同じ日に同じ宿泊数で出掛けることになったらしく、偶然もある物だと二人して笑う。
「そう言えば、貴之はどこへいくの?」
「ああ、俺たちは……」
ここまでは良かったのだが、友希那の問いに答えたことで流れが一転する。
自分の回答に「同じ場所……?」と、彼女が驚いたことで、貴之はまさかと思い、一度問いかける。
「もしかしてだが、友希那たちも……?」
「え、ええ……私たちもそこで合宿をすることになっているの」
極めつけには宿泊先まで同じというおまけ付きでもあり、二人揃って驚きが隠せないでいた。
偶然にしても程が無いだろうか──?想わず二人して笑ってしまうのである。
「これ……どうしましょうか?」
「話すかどうするかは任せるよ。俺もそっち次第で決めるさ」
こうなれば意志合わせ。そうして二人の思考は一致した。
その為、前日までにどちらかが話せば全員に話す。どちらも話さなかったらサプライズ的な想いを込めて言わないに決まる。
話し合いが済んだところで丁度日が回ったので、そろそろ休むことにする。
「さて、そろそろ休みましょうか……お休みなさい、貴之」
「ああ。お休み、友希那」
二人は瞳を閉じて、暫しの眠りにつくのであった。
* * *
「あれ……?どうして玲奈たちがここにいるの?」
「あたしたちは明後日開く交流会に向けて現地に行くんだけど……そっちは合宿?」
そして時は進んで交流会の二日前。昼前の電車に乗ろうとしていた友希那を省くRoselia四人と、玲奈と一真、そして俊哉の三人が鉢合わせをしていた。
ここにいた七人は揃って、どうしてこの人らもいるんだ?と困惑しているのである。たまたま電車に乗る時間が同じなだけだろうか?真っ先に考えられることとすればこれである。
「おっ、皆揃ってる見てぇだな?」
「やはり、みんなしてそんな顔しているわね?」
少しすると貴之と友希那が揃ってやってきて、この二人だけ分かっている様子だった。
この様子を見て、他の人は二人が分かっていることを感じ取る。
「で?俺たちが集まってる理由は?」
「俺らの交流会と、Roseliaの合宿での行き先と、到着予定の時間が同じだったんだ」
「言おうか言わないかで迷って、結局言わないことにしたの……そこはごめんなさい」
二人からの回答で全員が納得した。驚いて欲しかったんだろうなと、表情で感じ取れた。
それはさておきとして、全員揃うことができたので移動を始めた。
「ところで、俊哉君たちはどうして前日からなのですか?」
「現地で準備期間を一日だけ貰えるんだとさ。だから、そこで交流会用にデッキを変えることだってできるんだ」
現に俊哉もどうしようか迷っているところであり、この一日の期間が有り難いところである。
この猶予を使ってどうするかが考えられるので、四人の内誰かが思いっ切りデッキを変更する可能性は十分に考えられた。
ちなみに今日一日は楽器の移動等もあり、Roseliaもすぐに練習できるわけではないそうだ。
「じゃあ、一日目はみんなして宿泊先確認かぁ~……」
「明日から合宿だし、今日はみんなでゆっくり休むのも良さそうだね?」
リサとあこの会話に反対意見はでない。最も、今回に関しては変わる前の友希那と紗夜ですら反対しない可能性は高い。
明日の為に休んで体調管理と捉えれば、そのまま肯定している姿が目に見えているのだ。ただ、それはそれで少し寂しい返し方なのだろうとも思えた。
「移動が多いから、どうしても疲れちゃいますね……」
「確かにそうだね。貴之は余裕そうだけど……」
着替え等の荷物を持ったまま移動するので、どうしても腕や肩の疲れが出てくるが、貴之は全くもって平気そうである。
その次に余裕そうなのは俊哉であり、こちらは小休止として飲み物を買っていたくらいだ。
「(な、何故か僕だけ『体力のない情けない奴』みたいになってしまいそうだ……)」
一真の不安に関しては、『貴之らは無駄に鍛えている』ことをこの場にいる全員が知っている為、彼のフォローに回る。
別段悪いことはしていないと安堵すると同時、一真もやってみようかと一瞬考えるのであった。
「俊哉も鍛えて役に立ったのって、日常生活か?」
「ああ。ファイトじゃあんまり効果出なかったんだよな……」
こんな理由で大真面目に体を鍛えているのだから、動機に関しては笑えてしまうが、実際役に立つ場面がある以上全く無駄では無いだろう。
特に貴之に至っては、引っ越した時に真司と裕子、そして自分の三人でプールへ行ったことがあるのだが、この時は貴之の鍛えた体が功を奏して裕子にナンパの被害を一度も出さなかった。
これと日常生活で役に立つのを見て、真司も貴之に教わって自分の体を鍛えたので、鍛えることが何も悪くないことは既に証明されていた。
一先ず昼を取った後は再び移動を始め、宿泊先の最寄り駅に到着するのは夕方より少し前くらいであった。
「おっと。両方とも揃って来たみたいだね……明日からよろしくね」
『よろしくお願いします』
速く着いたのならお世話になる場所へ挨拶へ行こうと話しが上がり、Roseliaの合宿、貴之らの準備場所として提供してくれた宿主へ顔を見せに行く。
必要な楽器が届く時間と、明日に交流会のスケジュール連絡をすることを教えてもらい、今日のやるべきことは一応終わりを迎える。
「で、部屋も隣同士で用意されてると……」
「これ、あたしそっちに混ざっても違和感ないよね?」
女子と男子で分かれると考えればそんなに違和感はないので、まだ何とでもなりそうである。一先ず人数問題に気づかれなければではあるが。
一先ず人選が人選なのでそんなに問題無さそうではあるが、一人部屋異性に混じって部屋にいる玲奈は色々気を遣わねばならないだろう。
「そっちから上がってくる分にはいいが、俺らは玲奈経由した方がいいな……」
「流石に堂々と行くのはな……」
貴之は女子に囲まれた空間に慣れてはいるものの、こう言う時に堂々と上がり込むのは少し訳が違ってくる。
そうなると向こうが来てくれるのがいいだろう。こうして判断が落ち着くことになる。
「取り敢えず荷物をおこうかな……持ってきたカードも確認しないといけないし」
「そうだね……それで作れるデッキも変わるもんね」
一応自分が使う『クラン』のカードは全て持って来ているので、後はどうやって選ぶかがカギになるだろう。
全員が荷物を置いた後、一先ず部屋の確認をし、夕食の時間までは休んでおくことにした。
「海が近いからってことで、お刺身が出るんだってさ……場所に合わせてくれるっていいよねぇ~♪」
「雰囲気も出ますし、いいですよね」
今回の夕食には全員満足気である。二日目、三日目には何が出るかは分からないが、まず一日目は当たりであった。
ただ、分量的な問題では若干怪しいところが出てきてはいるようであり……。
『(ちょっと余るかも……?)』
「「(若干足りない……?)」」
Roselia的には少し余りそうで、貴之と俊哉は若干不足しそうだった。
こう言う時に隣りの部屋同士であることが幸いし、互いに連絡を取り、Roselia側からヴァンガードファイター側に赴いて分けてくれるそうだ。
「これくらいで大丈夫?」
「うん。これだけあれば足りるよ……ありがとうね」
リサが持ってきたものを玲奈が受け取る形で、一先ず量の解決は終わった。
ちなみに、友希那が来た場合は貴之。紗夜が来た場合は俊哉が出るつもりで、その他は全て玲奈が出るで決めていた。
なお、一真は接点の浅さから遠慮している。と言うよりも、一真が女子と親しくすると、玲奈が貴之と心を繋げる前の友希那が彼を見る時と似たような目で見ることがあるので、貴之から少し気を回させている。
ただし、リサみたいにやり過ぎると後々面倒なのは知っているので、余り強く言ってはいない。
「さて、デッキコンセプトはある程度決めとく必要があるな……」
交流会だけでの一発芸も可能ではある為、ここはしっかりと考えていきたい。
俊哉はデッキを変えてからそこまで日が経っていないので、微調整程度に済ませるようだ。
「うーん……あたしはこの交流会でどうするか決めようかな?時期的にそろそろ変えて慣らさないといけないし……」
今年の秋には『ヴァンガード甲子園』が待っている為、玲奈は慎重に、なおかつ真剣に考える。
貴之も『オーバーロード』を軸にすることは変わらないが、派生する方を『グレート』では無い、もう片方にしようかを検討中であった。
「僕は、この交流会だからこそできるデッキをやってみようと思うんだ。ただ、想像以上に難しいだろうから、手伝ってもらうことになりそうだけどね……」
一真が見せたユニットを三人で確認する。そのユニットはグレード3なので負担の心配はないが、そもそも運用難易度が尋常では無く、一真でも楽には行かないだろう。
ただそれでも、こう言う時に使いこなせれば盛り上がることは間違いなしであり、この選択を悪いとは思わない。
「なら、手伝うよ。余りデッキ弄る気ないから、その分協力できるはずだ」
「勿論、あたしたちも手伝うから、遠慮なく言ってね?」
「絶対に成功させようぜ?決まれば最高だからな」
三人の協力を惜しまぬ姿を見て、一真は温かな気持ちを抱き「ありがとう」と礼を告げる。
また、Roseliaの方も合宿における目的を確認していた。
「基準となるメニューは用意しましたが、状況に応じて切り替えつつ、実力の向上を目指します」
「ここは私が主導になるけれど、曲も一つ完成させるつもりでいるわ」
完成した曲自体は最終日で宿主に披露する予定である為、ここの練習はとても大事になる。
また、遅すぎても良くないので、完成自体は速めが望ましい。
「明日は朝から楽器が揃うの?」
「先程確認しましたが、もう届いているので、午前中から始めることは可能です」
「良かったぁ~……届かなかったら、あこたちだけ少しの間何もできないなんてあったかもしれないし……」
「そうなると、時間も移さないと行けないもんね……」
危惧した事態は起こらなかったので、そこは一安心である。
明日から頑張ろう。そう意気込んだ後、後は入浴を済ませれば自由時間を過ごして寝るだけとなった。
ヴァンガードファイター組もデッキ構築の案だけ練り込んだら終わりで、後はRoseliaと同じになっている。
「一緒に帰る……と言うのは流石に難しそうね?」
「まあ、日程が日程だしな……」
貴之たちは三泊四日。友希那たちは一週間前を予定していた為、どうしてもずれは発生する。
そこは仕方ないので、受け入れて互いが頑張るだけと結論付けた。
「じゃあ、お互いに頑張ろうぜ」
「ええ。上手くやりましょう」
どうするかが決まれば話しは早く、二人して激励と宣誓の握手を交わすのであった。
お互いにこの形で応援を送った後は少しの談笑を済ませ、互いが用意されている部屋に戻っていく。
「(今度、その曲を聞きに行きてぇな……)」
「(明後日、変えたデッキを見れるのかしら?)」
時間が来たので眠りにつく際、二人は相手のことを考えていた。
前日段はちょっと短めになりました。ポピパの五人が関わるのも、次回以降からになりますね。
ちなみに今回上げた筋肉量の話しですが、男子陣は以下の通りになります。
貴之……ジムにガッツリ通っていた経験から、並みの運動部男子より多い。荷物持ちを頼まれても予想以上に対応できる。
俊哉……貴之程ではないが、ジム通いの経験があり、運動部男子と同等か、やや少ないくらい。貴之がヴァンガードファイターにしてはやり過ぎているだけであり、十分ある方。
一真……特にトレーニングしてない一般男子より少しだけあるくらい。
Roseliaメンバーは貴之が鍛えている旨を知っているので、一真が悲しき目に遭うことはありませんでした。
次回はこのまま続きを書いていきます。