先導者と歌姫 -高みを目指して-   作:ブリガンディ

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少し短めになりましたが、合宿初日の話です。

ヴァンガードifは恐らく次回で完結……でいいのかな?面白かったのが終わるのは寂しいものです。伊吹が『マジェスティ』に『ライド』しましたが、あの流れなら納得できましたし、彼も今回の騒動で変われたんだなと思いました。


サマー10 合宿初日

「うん、俺はこれでいいかな。あんまり弄るところないし……」

 

「もうちょっと考えて来れば良かったかな?うーん……どうしようかな?」

 

「(コンセプトは確定したから残りは補助だ……こいつらをどれくらい入れるか、それが大事になる)」

 

「(キーとなるユニットは全て網羅。残りはバランスを見つつ枚数を埋めていくんだけど……グレード3以上はいっそこれ一種類に絞るべきだろうか?)」

 

迎えた合宿所日と交流会前日。貴之らの方はデッキの準備を始めていた。予定としては午前中に一度組み上げ、午後からはファイトしながら調整していくものになっている。

この中では俊哉が既に組み上げを終えており、手が空いてしまったので三人の為に飲み物の買い出しへ向かった。

また、最も意識を集中させているのは一真で、交流会で成功させる為に何としても……と言う意志が伝わる。

 

「それぞれのパートに合わせた用紙は回りましたか?」

 

「はいっ!まずはこれからやっていくんですよね?」

 

「曲が完成した場合はその練習に移るから、それまでに達成させる……でしたね」

 

「で、友希那はこれにプラスで作曲と……大丈夫?」

 

「大丈夫かどうかではなくて、やるかやらないか……でしょう?」

 

Roseliaの方は最初に、紗夜が作ったどうやって練習するかを纏めた用紙を全員に渡して確認をする。

作曲もある都合上、友希那の分の難易度が上がってしまうが、本人はなんのそのと言いたげであり、心配は要らなそうであった。

 

「(向こうはこれからか……)」

 

開始の宣言と返事、そこから楽器を準備する音は、偶然部屋の前を通りかかった俊哉の耳に届く。

──向こうの分も追加するか?それなら近場のコンビニまで行った方がいいな……。残り三人のデッキ調整に時間が掛かりそうなことを確信している俊哉は、予定を変更して足を進めた。

これに関して、八人から代金を貰うつもりは特にない。あくまでも自分が好き好んでお節介をするだけである。

 

「(午前が半分回ったな……)」

 

デッキの調整をしていた時間もあり、宿へ戻って時間を確認すれば予想よりも進んでいた。これを考えると、飲み物を買ってきたのは正解だったと言える。

一先ずRoseliaのところに顔を出してから戻ろうと思ったら、丁度彼女らがいる部屋のドアが開かれるのが見えた。

 

「俊哉君……?そのビニールにあるのは……」

 

「早く組み終わったから買いに行ってた。紗夜たちの分もあるから、持って行ってくれ」

 

一番最初に出てきたのが紗夜であり、タイミングが良かった俊哉はそのまま彼女らの分を渡すことにする。

俊哉の気回しに紗夜が礼を言った後四人に声を掛け、受け取りながら他の四人からも礼の言葉を貰う。

 

「わざわざありがとうございます。本当に助かりました」

 

「いやいや、これくらいならお安い御用だよ。あっ、まだあいつらに渡してないんだった……」

 

渡してやらないと……。と、思った矢先に「その必要はないぜ」と声が聞こえたので、そちらを振り向けば貴之がいた。

 

「お前、組み終わったのか?」

 

「今丁度な……残りの二人はもう少しかかると思う」

 

元々デッキの組み替え自体には慣れている貴之が、二人より早く終わったらしい。

俊哉が持っているビニール袋に、人数分の飲み物があることを察した貴之はそのビニール袋を手に取り、その中に残っている四本の内一本を俊哉に渡して残りは袋ごと預かる。

 

「(袋の処理とかは俺がやっとくから、お前は楽しんできな?)」

 

「(えっ?お前いきなり何言ってんだ……!?)」

 

理由自体は大体わかるが、そこで言うのか?と抱いた疑問を口にするよりも早く、貴之が「お邪魔虫は退散する」と言いながら部屋に戻っていってしまった。

そうして俊哉と紗夜が、二人きりで空間に取り残されることになる。

 

「暫くは俺がああやられる側か……」

 

「?暫くは……ですか?」

 

以前は貴之に自分らがやっていたことを話すと、紗夜も察しが付いた。要するに、貴之と友希那の時のように、こちらに根回しをしてきているのである。

 

「ということは、私も……」

 

「うん。暫くは、ね」

 

どういう組み合わせでそうされるかが改めて分かり、二人して頬を朱色に染めながら気恥ずかしい空気を作る。

こうなると気になることが一つあり、それは聞いてみるとにする。

 

「えっと……その、俊哉君に、す……好きな人は……いるのですか?」

 

「お、俺か……?好きな人って言われると違うけど、気になる人なら……一人いるよ」

 

まだ確証を得られない俊哉はこの回答を返す。こんな状況だからバレているかも知れないが、流石に堂々と言うのもどうかと思うのがあった。

 

「そう言う紗夜はいるのか……?その、好きな人か、気になる人かが……」

 

「え、ええ。私も……気になる人が一人……」

 

紗夜もまだ確証を得られずにこの回答となる。まだこの気持ちに答えは出せないが、そう遠くない未来で出せるだろうと紗夜は思っていた。

 

「なら、その気持ちがどうなのか……今度二人で確かめに行ってもよさそうだな?」

 

「そうですね。今度、どこかで時間を取りましょう」

 

合宿が終わった後に予定を確認することで話しが決まり、そのタイミングを見計らったのか知らずか、あこが練習を再開する旨を伝えてきた。

それを皮切りに話しを切り上げ、互いの用意された部屋に戻ってやるべきことを始める。

 

「じゃあ、俺たちは先にファイトするか?」

 

「そうだな。ちょっと頼んでいいか?」

 

部屋に戻るや否、先にデッキを組み終えた貴之と俊哉でファイトすることが決まる。

慣れた手つきで引き直しまで済ませ、後は開始の宣言をするだけであった。

 

「「スタンドアップ!」」

 

「ザ!」

 

「「ヴァンガード!」」

 

──さて、どこまでやれるかな……。開始宣言をした俊哉は、己の現状の再確認も兼ねてファイトに望むことを決めた。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「ど、どうにか完成だ……」

 

「あたしもどうにか……」

 

時間は更に進んで昼頃。一真と玲奈もどうにかデッキが完成し、キリがいいので一度昼食を取って、そこからファイトしながら微調整を重ねていこうと言う話になった。

話しが決まって早速部屋を出ると、丁度Roselia側も昼を取ることにしたようで、ドアを開けるタイミングが見事に同じであった。

 

「全体から見て五分の一、本日分は半分……予定通りに進められていると見ていいでしょう」

 

「ええ。これなら、明日から曲を作り出すこともできそうだわ」

 

昼食を取る際にも午前の確認は簡単に行う。現状、Roselia側は順調であるらしく、あまり心配はない様子だった。

練習メニューよりも、曲の方が無事に完成するかどうかであり、行き詰った時の案は用意しておくべきだろうと五人揃って意見が出ている。

 

「あっ……友希那。今日の分が終わったらだけど、糖分を取れるもの買っておく?」

 

「そうね……飴を買っておこうかしら?」

 

作曲で頭を回すのに必要だろうと、友希那が時折甘いものを含んで糖分を補充しながら作曲することがあるのを知っているので、リサが確認を取る。

この宿は空調が効いているとは言え、夏の暑さもあるので間違いなく要るだろうと思った友希那は、その提案を飲み込む。

 

「体力強化は余裕がある時……行き詰った時とかかな?」

 

「動けば変わるかもしれないから、それがいいんじゃないかな?」

 

あこにはドラムを叩き続ける為の体力強化もメニューにあるが、場所が場所なので、今回はそこまで重要視されていない……と言うよりも、できない。

なので、最悪できなくても特に文句を言うことは無いし、出来たらできたでラッキーである。

 

「グレード2以上はすぐに決まるけど、後はグレード1とトリガー配分だな……今回は最悪(ドロー)トリガー無しになるんじゃねぇか?コレ……」

 

「俺はグレード2以下を微調整かな?ここは個人差でのアクセント付けれるし……」

 

また、一方でファイトをしていた貴之らは自分たちのデッキの状況を確認する。貴之はコンセプトがハッキリしている故に割り切った調整も視野に入っていた。

一真と玲奈はこれからファイトを重ねていく為、今日の午後が大事になるだろう。

 

「そもそも、僕にあれを扱いきれるかの問題があるけど……」

 

「大丈夫だよ♪それを使いこなせるようにあたしたちが手伝うんだし、ね?」

 

「そうだったね……。ありがとう、午後からはよろしく頼むよ」

 

数瞬程考えていた一真だが、玲奈のおかげで問題ない様子に戻る。

その時に若干照れた顔を一真が見せたので、もしかすると……と、リサは考えた。

 

「(友希那と貴之は知っての通り、紗夜と俊哉もそんな感じだし……)」

 

──今後はもっと増えるかも……?知らぬうちに関係が増えていくのを見たリサは、そんな予見を抱くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、行くぞ?ヴァンガードにアタック!」

 

「ノーガード。『ダメージチェック』……」

 

時間は更に進んで午後。本格的にファイトで慣らしていくことになり、今は俊哉と一真のファイトが終わりそうなところであった。

俊哉の攻撃を素通しにし、一真が行った『ダメージチェック』の結果はノートリガーで、今回は俊哉の勝ちでファイトが終わる。

ファイトが終わったので一先ず挨拶を済ませ、今回のファイトを振り返る。

 

「感じは掴めてきたけど、まだ安定はしないかな……」

 

「どうしても条件が厳しいからな……そこは仕方ない」

 

やはりと言うか、簡単には行かないようであり、一真もここまで何度かファイトを重ねるがまだ安定には程遠い状態であった。

最悪は明日の朝も使って練習することはできるが、出来る事なら今日中に完成させておきたいところではある。

 

「デッキの内容自体は大丈夫そうだよな……」

 

「と言うか、このユニットを使うなら自然と落ち着いちゃうよね……」

 

デッキの再構築──と考えはしたが、そもそも一真の使おうとしているユニットは構築を強烈に縛りつけるので、早々弄る必要性は無くなる。

そうなると残りは戦い方とイメージになり、ここは慣らしていくしかないのが結論として上がった。

 

「ここはよし……で、ここも今大丈夫になった……」

 

「そろそろ、みんなで音を合わせてみませんか?全員で確認もできますしっ!」

 

「そうですね……全体で合わせれば、個人では見えなかった部分も見えるでしょうから」

 

「私も賛成です。いつでも行けますよ?」

 

「なら、一度合わせる形で行きましょう。三分後に開始でいいかしら?」

 

Roselia側も個人で確認するのが難しくなってきたので、一度全体の通しで確認を行うことにした。

この時に選んだ曲は『BLACK SHOUT』。自分たちを代表するこの曲だからこそ、今どこまで進めているかが分かりやすいとの判断である。

 

「今日のメニュー内容で見れば全員合格ね。後は、個人で気になったところがあるかだけれど……どうかしら?」

 

今日の分は全員問題なしなので、後は気になった部分の解消へ向かうこととなる。

また、それならば友希那は曲の作成に入り始めてもいいはずだと言うことになり、予定を前倒しして買い物へ向かうことにした。

 

「あら、貴之?」

 

「おっ、友希那か……」

 

午前とは違い、部屋のドアを開けたタイミングで貴之と友希那の二人で鉢合わせになる。

二人揃って買い出しに向かう予定だったので、全員の分を纏めて買いに行ってしまおうと言う話しが決まった。

 

「綺麗ね……夕方の海だなんて、久しぶりに見たわ」

 

海に面した場所である為、歩きながら海を眺めることができる。

そんなこともあって久しぶりに見た友希那の感想であり、貴之は優し気な微笑みを浮かべる彼女にこんな感想を述べる。

 

「海も綺麗だけど、それを見ながら笑ってる友希那はもっと綺麗だな……夕焼けに照らされたおかげで効果倍増かもな」

 

「なっ……!もう、そうやっておだてても、何も出ないわよ?」

 

貴之は至って真面目に述べており、それが伝わったから友希那は顔を赤くしながら照れた笑みに表情が変わる。

顔が赤くなったのは夕焼けに照らされている影響で分かりづらいが、そうなっているだろうことは返事と声音で分かった。

 

「さて、後はあいつがどこまで使いこなせるかだな……」

 

「そんなに大変なユニットなの?」

 

「あれは構築と戦い方を大きく縛られる……そう言う意味じゃ『ヌーベルバーグ』の比じゃねぇだろうよ」

 

「そ、そこまで行くのかしら?」

 

想像がつかなくて友希那が一瞬呆然し掛けたが、それだけ一真が本気であることが伺えた。

それだけ決めているのなら、後は頑張るだけだろうと二人は考え、一真を支えると応援するに決める。

 

「やっと着いたぁ~っ!」

 

「「……?」」

 

買うものを買って戻っている最中、聞き覚えのある声が聞こえ、そちらを見ると見覚えのある五人の姿が見えた。

誰かと思えばポピパの五人であり、『ガールズバンドパーティー』以来ひさしぶりに顔を見ることになる。

なお、こちらまで移動してくる際にトラブルでもあったのか、有咲の瞳に光が無く、非常に脱力した様子が見えていた。

あまり触れないで上げる……と言うよりも、こちらもこちらでまだ合宿初日が終わっていないので、声を掛けるのは一度断念する。

 

「もしかしたら、明日には顔を合わせるかも知れないわね?」

 

「或いは、今日の夜とかかもな?」

 

宿泊先が同じだったら……ではあるが、そう言う可能性も捨てきれない。故にその考えも頭の隅に残しておいた。

 

「あっ。二人とも戻ってきた……」

 

「ちょっとタイミングが悪かったな……?」

 

「「(終わった直後じゃない(ねぇか)……)」」

 

二人が戻ってくる頃には丁度終了の時間が来てしまっており、何とも言えない終わり方をしてしまうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「そこは意地が勝った……ってところか?」

 

「ああ。アレは本番まで取っておきたかったんだ……。そこは彼らにも了承してもらってる」

 

その日の夜。貴之は一真から今日の慣らし方を教えて貰っていた。

基本的に今回限りではあるが、後々のことを考えると、『PSYクオリア』無しで慣らしに臨んでいたのである。

流石に当日は四の五も言っていられないので使うことは決めているが、ギリギリまで素の状態で調整するつもりらしい。

 

「分かった。そういうことなら、やれるところまでやろうか。そのままの状態で成功させれば、確実なものになるだろうし」

 

「そうだね。もう少しの間、頼らせて貰うよ」

 

話しが纏まり、明日は追い込みを行うことが決まった。

 

「あれ?二人で何を話してたの?」

 

後は無理せず休む……と言うところに、聞き慣れている声が届いたのでそちらを振り向けば、玲奈と友希那がいた。

どうやら二人揃って少し長風呂をしていたらしく、休憩していた貴之らと鉢合わせすることになったようである。

幸いにも貴之らが休んでいた場所は2対2で座れる場所であった為、貴之の隣りに友希那が、一真の隣りに玲奈が座らせて貰う。

 

「なるほど……確かに、最初から頼るのは良くないのかもね」

 

「ただ、そうなると一度はそのままで成功させるしか無さそうだわ」

 

この話しをするにあたって、ここの四人が全員『PSYクオリア』を知っていることは共有してある。今現在人がいなかったからできた話しであり、本来ならば部屋に移動してから話していただろう。

 

「後は間に合わせられるか、だね……感じは掴めて来ているんだけど」

 

「明日の昼過ぎ開始だったよね?」

 

「そこまで残っていないのね……」

 

「確かに時間は短いが……まあ、そこはやっていくしかないだろうな」

 

こうして話しが纏まった後は今日の成果はどうだった?明日はどうするのか?と言う話しにシフトしていく。

途中で友希那が貴之の腕に両腕を組んだのを見てか、その後玲奈も一真の腕に自分の両腕を組んだ。

 

「えっと……玲奈さん?」

 

「……ダメ?」

 

「いや、ダメじゃないけど……」

 

そんな二人のやり取りを見て、今後何かがあるかも知れないと、リサに続いて二人もそう思うのであった。




ちょっと短くなったし、ポピパメンバーは顔出しだけになってしまいました……(汗)。本格的な絡みは次回からになりますね。

次回はこのまま続きを書いていきます。
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