先導者と歌姫 -高みを目指して-   作:ブリガンディ

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友人と外出してたので少し遅れました。その為、最後の方がちょっと急ぎ足感あるかも知れません。


サマー12 更なる高みを目指す暴竜(オーバーロード)

「……そう言えばだが」

 

「ん……?どうした?」

 

ファイトの準備に取り掛かる直前の貴之だが、目の前の少年を見て一つ気が付いたことがある。

水髪の癖っ毛に青い瞳を持った彼をよくよく見ると、その風貌に見覚えがあるのだ。

 

「お前……俺と同じで後江にいるよな?」

 

「そっちとは隣りのクラスだけど、顔を覚えてくれてるのはありがたいぜ」

 

時々廊下ですれ違う上、その頻度も高めだったので、貴之はその顔だけは覚えていたのだ。

向こうは大会の実績や友希那との関係もあって、こちらのことはハッキリと覚えているらしい。

──俺、大分目立ってたんだな……。彼から話しを聞いた貴之は改めてそれを実感する。

 

「おっと……。自己紹介を忘れちゃいけないな。俺は藤木(ふじき)明人(あきと)。今日はよろしくな?」

 

「ああ。いいファイトにしようぜ」

 

明人と握手を交わした貴之は今度こそ準備──と言いたいが、その前に一つだけやっておくことがある。

 

「……藤木は割と多趣味な方か?」

 

「そうだな……体力作りのランニングにヴァンガード。後はボードゲーム全般……ああ、最近は筋トレも始めたか」

 

「なるほど……」

 

──だから、体がしっかりしてる訳だ。明人にある程度の筋肉量があったので、問いかけてみれば案の定であった。

何でその話しを?と思いながら二人の話しを聞いている人が大半の中、他の場所でも似たような話しが上がる。

 

「もしかして、筋トレ趣味を持ってたりしますか?」

 

「うーん……趣味って言うよりは、ちょっとした検証を目的にやってたんだよ。まあ、結果は予想と違う場所で効果を出したんだけど」

 

俊哉とファイトの準備を進めていた、中学生位の少年が、彼の筋肉量を見て問いかけていた。

これを皮切りに少しずつ男子陣の筋肉量を見る人が増え始めており、貴之のやろうとしていることを実行するにはいい具合の注目度になってきている。

何しろ、今回は一人だけ上半身を隠しているので、パッと見て貴之の筋肉量が全く分からないのだ。

 

『(あっ、狙ってる……)』

 

この状況で貴之がどうするかなど、Roseliaの五人には目に見えており、俊哉共々周りの反応が楽しみだった。

一方でポピパの五人は事情を知らないので、何故そんな目をしているのかは分からなかった。

 

「筋トレに興味あるならやってみるか?最近行くようになったジムの紹介はできるし」

 

「ああ、いや。実は俺も筋トレはやってたんだよ……自分の体を強くしたら、イメージはしやすくなるのかを確かめたくてな……。実際は日常生活ばっかりで役に立ったが、まあ無駄にはならなかった」

 

「やってたのか……ちなみに、どのくらいついたんだ?」

 

「おっと。そりゃ見せなきゃならねぇな……俺はその動機で筋トレやった結果……」

 

問われたことに回答しながら、貴之は着ていた上着を脱ぎ捨てる。

貴之は最初からポピパの五人がいる方へ放り投げることを決めており、そちらの方角へ狂うことなく上着が放物線を描いて飛んでいく。

その上着が落ちた先は沙綾の真ん前であり、地面に落ちる前に沙綾がキャッチした後、ポピパの五人が貴之のいる方へ顔を戻すと──。

 

「これだけの量をつけられた」

 

『ええええぇぇっ!?』

 

貴之の筋肉量に驚くことになった。実際、真正面から見た明人としても、予想以上の鍛え具合に脱帽ものであった。

これには回りで見ていた人たちも大いに驚いており、ヴァンガードファイターはこう言うこととは無縁だと思っていた一部の考えを払拭する。

 

「あっ、それ持って帰るなら持って帰ってもいいよ?」

 

「えっ!?ちょ、ちょっとの間考える時間下さい!」

 

貴之が思い出したかのように声を掛けて来たので、沙綾も慌てた口調で返すことしかできなかった。

これを見て友希那がどうするのかが気になってしまい、いい回答が出なかったのである。

 

「あら?要らないのかしら?」

 

「(……この人は何で普通に問いかけてるの!?)」

 

友希那の至って心配してい無さそうな様子に沙綾がまた驚くことになる。

自分含めたポピパの五人は慌てている様子だが、Roselia五人は慣れ切っている様子を見せており、判断に困る状況だった。

 

「いやぁ……お見事。だから上着で隠してたのか」

 

「ここが屋根の下だったから、途中まで日焼け防止用に使わせて貰ってもいたけどな」

 

これには明人も脱帽ものであり、それだけ貴之の成果を伺える。

また、ここで貴之と友希那の恋の道を思い出したので、それも聞いてみる。

 

「勝負の決め手はその筋肉量……じゃないよな?」

 

「これをやる前に、俺が理解しようとする心で決めたから、そうじゃないな」

 

──そうなの?と確認してみれば、友希那が恥ずかしそうな笑みと共に頷いたので、もうこれは確定事項だろう。

確認できたことに満足し、今度こそファイトの準備を始め、引き直しまで終わらせる。

こうなれば後は開始するだけであり、両者とも目を合わせてから頷く。

 

「「スタンドアップ!」」

 

「ザ!」

 

「「ヴァンガード!」」

 

二人がファーストヴァンガードを表返すことで、ファイトが始まりを迎えた。

 

「『ライド』!『リザードランナー アンドゥー』!」

 

「『ライド』、『メカ・トレーナー!』」

 

貴之はいつも通り、明人は試合の審判でもやるかのような格好をした人型ロボット『メカ・トレーナー』に『ライド』する。

 

「まあ、貴之が『かげろう』を使うのは分かってたし……」

 

「『アンドゥー』がいつも通りなのは分かっているのはいいとして、大事なのは藤木君が使っている『クラン』ね……」

 

「あれ……『スパイクブラザーズ』ですね?」

 

「確か、暗黒国家『ダークゾーン』に拠点を置いている、武器や魔法など、あらゆる暴力が認められる過激なスポーツ『ギャロウズボール』で名を挙げている強豪チーム……でしたね」

 

「あっ、『ダークゾーン』って言えば、あこが使う『ダークイレギュラーズ』と同じ場所ですねっ」

 

『(な、何を言っているかがさっぱり分からない……)』

 

状況を把握して的確に纏めて行くRoseliaに対して、ポピパはほぼ置いてけぼりな状況となっていた。

ファイトに関しては貴之が先攻になり、最初のターンは『サーベル・ドラゴニュート』に『ライド』して終了する。

 

「『ライド』、『ジャイロスリンガー』!」

 

明人は銀色の鎧に身を包んだラグビー選手だろうと思われる『ジャイロスリンガー』に『ライド』した。

 

「スキルで一枚『ドロー』を先にやってと……登場時、手札を一枚『ソウル』に置いて『ジャイロスリンガー』のスキル発動!山札の上から自分のヴァンガードのグレードと同じ枚数を見て、その内一枚を『S・コール』できる……。早速運試しと行くぜ?」

 

「いいぜ。早速やってみようか」

 

『ジャイロスリンガー』のスキルは選ばなかったカードは山札の一番下に順番を決めて置くことになるが、今回は気にしないでいい。

なお、このスキルで場に登場したユニットはパワーがプラス5000されるので、例え『トリガーユニット』だろうと、序盤では有効打となる。とは言え、それはトリガーを一枚減らすも同然なので、実は望ましい事ではないのだが。

 

「今回はこいつだ!『ジャガーノート・マキシマム』!」

 

「いきなり大当たり(ジャックポット)か……」

 

前列左側に現れた紫色の巨人をみた貴之がぼやく。何故かと言われれば、このユニットはグレード3のユニットであり、登場時スキルでターンが終わるまでパワープラス10000にできるからだ。

更に厄介なこととして、このユニットはターンが終わっても場に残り続けるので、構築次第ではそのまま押し切られかねない程の圧力と化す。

現在のパワーで見ると、ほぼほぼ二回攻撃を通すことは確定したと見ていいだろう。

 

「じゃあ攻撃だ。『ジャイロスリンガー』でヴァンガードにアタック!」

 

「まずはノーガード。続けてくれ」

 

攻撃が通る通らないに関わらず、(クリティカル)トリガーを引かれてもこのターンに攻撃を防ぐつもりはない。

何しろ『ジャガーノート』のパワーが現在既に28000もあるので、防いだところで多大な消耗を強いられてしまうのだ。

明人の『ドライブチェック』がノートリガー、貴之の『ダメージチェック』が(ドロー)トリガーである為、手札の確保ができた。

 

「さ、最初からグレード3が出るとこうなるんだ……」

 

考えることが苦手な香澄も、この凄まじい光景はすぐに理解できた。既に貴之からのイメージを通して、その威圧感を肌で感じ取っていた。

 

「(ありゃすげぇな……その気になれば何にでもなれたんじゃねぇか?)」

 

この凄まじい才覚を感じ取った貴之も、香澄が持つ無限とも言える可能性に驚く。

努力が必要なことは当然ながら同じだろうが、恐らく吸収できる量に差が出てくるだろうと予想はできた。

 

「次行くぞ?『ジャガーノート』でヴァンガードにアタック!」

 

「ノーガード。『ダメージチェック』……」

 

イメージ内で『サーベル・ドラゴニュート』となった貴之は『ジャガーノート』が持つ巨躯から起こる、凄まじい威力のタックルをまともに受け、大きく吹っ飛ぶことになる。

幸いにも『ダメージチェック』は(ヒール)トリガーで、ダメージ増加が抑えられてターンが終わることになる。

 

「そいつを残す理由はねぇ……『ライド』、『バーサーク・ドラゴン』!スキルで『ジャガーノート』を退却!」

 

「まあそうなるよな……」

 

『かげろう』を使ってて『ジャガーノート』を残すのは、余程の豪胆さか手札が揃ってない。或いはデッキ単位で退却を度外視してるかである。

貴之の場合はデッキコンセプト上そんな確率が極めて低いので、案の定であった。

『メインフェイズ』では前列左側に『フルアーマード・バスター』を『コール』するに留め、すぐに攻撃を始めることにした。

 

「だって、そいつ残してたらスキルでまた呼び直してパワープラス10000だろ?それを攻撃しないで退かせるんなら、そうしたいだろうよ」

 

スキルとしては『メインフェイズ』開始時、『ソウル』に置くことでデッキ内から『ジャガーノート』を探して『S・コール』するものであり、登場時スキルも発動可能と言う代物だった。

それを許すならばパワーが増えたグレード3がいつまでたっても場に出続け、そのパワーが生み出す圧力と手札消費の選択肢を強要される悪循環が続くので、速い内に止めたいものである。

幸いにも、『かげろう』はその手段に恵まれて比較的咄嗟に実行可能であるし、それを逃す理由も無かった。

 

「他の『クラン』だと面倒なことになりそうね……」

 

今回は『かげろう』を使う貴之なので至って楽に対応できたが、問題は他の……特に退却を苦手とする『クラン』の場合である。

この場合は攻撃に使いたいはずの手数を持って行かれるか、そもそもそのターン以内に退却が望めず、二回も超パワー差を押し付けられることになる。

早期にこれを避けられるだけでも、大分気が楽になる請け合いであり、退却させられるならそうしたいとRoseliaの五人は考えた。

 

「よし、攻撃行くぜ……『バーサーク・ドラゴン』でヴァンガードにアタック!」

 

「最初だし……ノーガード」

 

やはりと言うか、最初の攻撃を素通しするのは殆どのファイターが通る道だと言える。

『ドライブチェック』で貴之は(クリティカル)トリガーを引き当て、ダメージの増加に成功する。

対する明人の『ダメージチェック』は一枚目がノートリガー。二枚目が(クリティカル)トリガーで、パワーをヴァンガードに宛がう。

 

「次、『フルアーマード・バスター』でヴァンガードにアタック!」

 

「これは通しちまうかな……ノーガードだ。『ダメージチェック』……」

 

後々攻め込む為の手札を残すべく、ここは通すことにした。

『ダメージチェック』はノートリガーで、貴之のダメージが1、明人のダメージが3でターンが終了する。

 

「『ライド』、『スパイクバウンサー』!登場時、『ソウルブラスト』と『カウンターブラスト』をしてスキル発動!やることは『ジャイロスリンガー』と同じだから、説明は省かせて貰うぜ?今回は『至宝(しほう) ブラックパンサー』を『S・コール』!」

 

今回はグレード2なので、山札の上から二枚見て決めることになり、残りの一枚は山札の下に送られる。

鎧を身に纏った黒豹の『ブラックパンサー』は前列左側に呼ばれ、いつでも戦える姿勢を見せていた。

更に『メインフェイズ』では前列右側に夜を連想させる色合いをした二足歩行するウサギの『ハイスピード・ブラッキー』、後列左側にはスポーツ用の眼鏡をかけた、監督と思われる鬼の『ゲイリー・ギャノン』が『コール』される。

 

「うーん……あれは何か違う」

 

『ブラッキー』を見た時、ウサギを飼っている身であるたえが反応を示すものの、どうやらお気に召さなかったらしい。

これに関しては現実のウサギと大分相違点があるので、仕方ないところがある。

また、『ブラッキー』も『ジャガーノート』と全く同じスキルを保有しており、このユニットも継続して高パワーで攻撃し続けるのを得意とするユニットである。

 

「ここまでかな……『スパイクバウンサー』でヴァンガードにアタック!」

 

「さっき(ヒール)でダメージを減らせたしな……ここはノーガードだ」

 

先程のトリガーで余裕が出来ている為、ここは防がずにいくことを決める。

ここで明人は『ドライブチェック』で(クリティカル)トリガーを引き当て、パワーは『ブラッキー』に回すことを選んだ。

貴之の『ダメージチェック』は一枚目がノートリガー。二枚目が(ドロー)トリガーで手札の確保に成功する。

 

「次はこっちからかな……『ブラックパンサー』でヴァンガードにアタック!アタックした時、『ソウルブラスト』してスキル発動!パワーをプラス5000するか15000するかだが……デメリット承知の上だな。今回はプラス15000!」

 

「一旦様子見するか……ノーガード」

 

そもそもプラス5000ではヴァンガードに攻撃が届かないし、リアガードに攻撃するならこのスキル自体無駄になるので、これ以外に選択肢はない。

貴之も(ヒール)トリガーの有無で次を防ぐか否かを決めることにし、今回は(ヒール)トリガーを引き当てたので、次は素通しすることに決める。

 

「最後、『ゲイリー・ギャノン』の『ブースト』、『ブラッキー』でヴァンガードにアタック!」

 

「ここもノーガード。『ダメージチェック』……」

 

今回はノートリガーになり、貴之のダメージが4。明人のダメージが3の状況になる。

 

「『ゲイリー・ギャノン』が『ブースト』したアタックがヒットした時、『ソウル』に置くことでスキル発動。山札の上から二枚引いて、その後自分の手札一枚を山札の下においてターン終了」

 

これで防ぐ分、または次のターンに動く分を一枚確保した状態でターンを終わることができるので、使いやすく便利なスキルである。

 

「さて、じゃあ行くか……!」

 

「三ターン目だし、もう来ますね」

 

楽しみにしている様子の燐子を見て、どうしてと聞こうとしたが、すぐに分かったのでそれはやめた。

対戦相手の明人としても、貴之の使うあのユニットとは一度戦って見たかったので、これは願ったりである。

 

「我が分身は、全てを焼き尽くす紅蓮の炎……!ライド・ザ・ヴァンガード!『ドラゴニック・オーバーロード』!」

 

この『オーバーロード』を実際に見ることが出来て、周りの反応が喜びに近いもので溢れかえった。

貴之が今回選んだ『イマジナリーギフト』は『フォースⅡ』で、前列右側に設置する。

『メインフェイズ』では前列右側に『バーサーク・ドラゴン』、後列左側に『エルモ』、後列右側に『サーベル・ドラゴニュート』、そして後列中央にはやや薄めな赤紫(マゼンタ)色の翼竜『カラミティタワー・ワイバーン』が『コール』された。

 

「『ソウルブラスト』と、自身の退却で『カラミティタワー』のスキル発動!このターンの間ヴァンガードのパワーをプラス15000!」

 

「何ぃ!?」

 

速い話し、『オーバーロード』を高パワー二することで安定して二回攻撃を遂行しやすくするのである。

このパワー増加は『カラミティタワー』の退却を含んでも釣りが来る量である。

 

「行くぞ……!『エルモ』の『ブースト』、『フルアーマード・バスター』でヴァンガードにアタック!」

 

「ノーガード。『ダメージチェック』……」

 

一度様子見として攻撃を通し、『ダメージチェック』で(ヒール)トリガーを引けたので結果オーライである。

 

「次、『サーベル・ドラゴニュート』の『ブースト』、『バーサーク・ドラゴン』でヴァンガードにアタック!」

 

「手札がヤバいか……ノーガード!」

 

ここで防ぐと明人は手札の都合上、次のターンで攻め返すことができないので、ここは敢えて素通しを選んだ。

『ダメージチェック』は一枚目が(クリティカル)トリガー、二枚目がノートリガーでダメージが5となり、後がない状況を作り出される。

 

「まだまだあるぜ……!『ドラゴニック・オーバーロード』で『ブラッキー』に攻撃!」

 

「ここもノーガード……!」

 

なるべくなら連続でパワー増加攻撃を狙いたいが、そんなことも言ってられないのでここも素通しを選ぶ。

貴之の『ツインドライブ』は一枚目がノートリガー。二枚目が(クリティカル)トリガーで、これを防がないとオーバーキルの危険性が増えた。

手札が若干危うい状況にもなってきているが、貴之は狙いがあるので迷わず『オーバーロード』を『スタンド』させた。

 

「さあ、手札を削って貰うぜ……!『ドラゴニック・オーバーロード』でヴァンガードにアタック!」

 

「くそっ!こうなったらしょうがない……『チアガール マリリン』で『完全ガード』!」

 

イメージ内では紅い髪を持つ小悪魔(サキュバス)が応援することで、想像を絶するパワーを得た『スパイクバウンサー』となった明人が『オーバーロード』となった貴之の猛攻を防ぎきる絵面が出てくる。

これに関してはポピパの五人のみならず、Roseliaの五人すら「えぇ……?」と初見故に困惑してしまう光景であったが、これもイメージが表した世界と言うことで受け入れることにした。

ちなみに、ここでの『ドライブチェック』は(ヒール)トリガーであり、回復分が無駄になったところで貴之のターンが終了した。

 

「……?この場面、貴之君からすれば(ヒール)トリガーを引けたこと方がいいんじゃないですか?」

 

燐子が違和感を持った呟きをして、考えられることがあれば『シールドパワー』だと結論が出る。

結果がどうなるかは次のターンに出るので、静かに見守っていくことにする。

 

「キツイけど勝負に出るしかねぇよな……『ライド』!『将軍 ザイフリート』!」

 

白、青、赤の三色(トリコロール)にその他複数の色合いと言う派手な色をした将軍を思わせる悪魔、『ザイフリート』が現れ、『イマジナリーギフト』は『フォースⅠ』がヴァンガードに設置される。

『メインフェイズ』で前列左側に『スパイクバウンサー』を『コール』し、スキルで前列右側に『ジャガーノート』を『S・コール』する。

 

「『カウンターブラスト』と、リアガードを一枚『ソウル』に置いて『ザイフリート』のスキル発動!『ソウル』に置いたユニットを山札から一枚探して『S・コール』して、そのユニットはターン終了までパワープラス10000。今回選ぶのは『ジャガーノート』だ!」

 

これにより、『ジャガーノート』のパワーが33000まで跳ね上がった状況になる。

更にこの後、後列左側に二回目の『ゲイリー・ギャノン』、後列右側にアメフト系選手の一人であろう『ワンダー・ボーイ』が『コール』される。

 

「登場時、『ドロップゾーン』からグレード1以外のユニットを一枚山札の下に置くことでスキル発動!ターン終了までパワープラス5000!」

 

このスキルのおかげで、山札から『S・コール』する行動を狙いやすくなるメリットがあり、『スパイクブラザーズ』が得意な高パワーでの押込みを後押しする。

 

「やるしかない……『ワンダー・ボーイ』の『ブースト』、『ジャガーノート』でヴァンガードにアタック!」

 

「これはそうだな……『ター』と『ゲンジョウ』で『ガード』!」

 

合計パワー46000ある攻撃を、合計パワー48000で止める。

このパワーでダメージ1なら素通しも考えたが、貴之は手札管理の都合上こちらを防ぐことを選ぶ。

 

「どうする……?『将軍 ザイフリート』でヴァンガードにアタック!」

 

「『ワイバーンガード バリィ』で『完全ガード』!」

 

この攻撃を通した場合、明人のリアガードが一枚『スタンド』し、貴之のリアガードが退却させられてしまうのでシャレにならない事態が待ち受けることになる。

また、ここでの『ツインドライブ』は二枚ともノートリガーで、貴之はこのターンで負けはしないものの、もう一つの問題が待ち受ける事になる。

 

「あれ?『完全ガード』二枚って……」

 

「『グレート』でも防がれるわね……」

 

今度は明人に次のターンを耐え凌がれる可能性が出てきた。トリガー次第では決めきれず、その次のターンに切り返される恐れがある。

そう考えると、デッキ次第では貴之の方が危険な状況となった。

 

「流石にこれは通してくれるだろ……『ゲイリー・ギャノン』の『ブースト』、『ブラッキー』でヴァンガードにアタック!」

 

「ノーガード。『ダメージチェック』……」

 

貴之の『ダメージチェック』はノートリガーで、ダメージが5になった後、『ゲイリー・ギャノン』スキルを発動したところでターンが終了した。

 

「そっちの手札は七枚で、内『完全ガード』が二枚か……」

 

「こんな状況でも結構不安なんだぞ?何しろ相手がお前だからな……」

 

事実、貴之も後一枚が揃えば突破可能である為、明人の危惧は正しい。

そして、その『スタンド』アンド『ドロー』で、貴之が求めたユニットは揃うことになる。

 

「このターンで決着付けるぜ……!探求の果てに辿り着いた新たなる姿……ライド・ザ・ヴァンガード!」

 

イメージ内の貴之は四本腕の内下側二つに片腕で扱える剣。上側二つにこれまた片腕で扱える拳銃。そして背中には炎のような翼を持つ、武者の鎧を着込んだかのような『オーバーロード』に酷似した外見をした火竜の姿となっていた。

 

「『ドラゴニック・オーバーロード・ジ・エンド』!」

 

その名は『ドラゴニック・オーバーロード・ジ・エンド』。貴之が愛用する『オーバーロード』の派生系のユニットの一つであった。

 

「……何か武士っぽい?」

 

「武器とか鎧とかのせいなんじゃねぇの?」

 

香澄の言いたいことは有咲も分かる。『オーバーロード』は正しく竜だったが、こちらはそれに武士らしい要素が混ざり込んでいる。

『フォースⅡ』をヴァンガードに設置した後、貴之は最後の準備として『メインフェイズ』で後列中央に炎を連想させる色合いの翼竜『ワイバーンストライク デカット』を『コール』する。

 

「『カウンターブラスト』と、自身を『ソウル』に置くことで『デカット』のスキル発動!『ドラゴニック・オーバーロード・ジ・エンド』を一枚『』選んで、このターンにそのユニットがアタックしたバトルでは、相手が手札から『ガーディアン』を『コール』する場合、二枚以上でしかできないようになる!」

 

「うげ……」

 

これによって、『完全ガード』を使うと余計に手札を一枚使わされるので、貴之のトリガー次第では防げずにオーバーキルまっしぐらの未来が待っていた。

なお、貴之は今回のこれで手札が丁度無くなっているので、後は攻撃するだけであった。

 

「決着着けようぜ……!『ジ・エンド』でヴァンガードにアタック!」

 

「『ゲイリー・ギャノン』で『ガード』!それから『マリリン』で『完全ガード』!」

 

ここで早速痛い点の一つ目がやって来る。本来ならトリガー次第では残りの手札で防げたのだが、今回はこれのせいで少なくともリアガードの攻撃を素通ししなければならないことが決まっている。

『ツインドライブ』は二枚とも(クリティカル)トリガーで、効果を全てヴァンガードに回す。

 

「アタック終了時、『ジ・エンド』は二つのスキルの内一つを選んで発動する……」

 

『ジ・エンド』のスキルは強制発動系の一つであり、可能な限りそのスキルの発動を強いられる。

その為、発動できない方を選択してスキル発動を無理矢理中断する判断も存在するものの、基本は悪手である為、大体は両方のスキルを発動可能な状態にしてから実行する。

 

「今回は手札が四枚以下の場合、『カウンターブラスト』と『ソウルブラスト』をすることで、ドライブをマイナス1する代わりに『スタンド』するぜ!」

 

ここで先程『ソウル』に置いた『デカット』が活きる場面であり、貴之は迷わずそれを『ソウルブラスト』のコストに選択した。

 

「もう一回……『ジ・エンド』でヴァンガードにアタック!」

 

「『ザイフリート』で『ガード』!それからもう一回『マリリン』で『完全ガード』!」

 

もうこの段階でトリガーを引かれた瞬間に防げないことがほぼ確定しているので、それだけ苦しい状況に追い込まれていた。

貴之の『ドライブチェック』は再び(トリガー)が引き当てられ、ここで効果をヴァンガードに回した。

 

「……あれ?これって、三回目あるんじゃ……」

 

「ヴァンガードに回したのだから、あり得るわね……」

 

あこの直感に対して、貴之の動向を見ていた友希那が真っ先に同意を示す。

そしてそれは、予想通り大当たりを示すことになる──。

 

「『ソウル』に『オーバーロード』と名のついたユニットが存在する時、手札を三枚捨てることで、ドライブをマイナス1する代わりに、『ジ・エンド』は()()()()()()1()0()0()0()0()()()『スタンド』する!」

 

『……えぇっ!?』

 

まさかの追加効果付きで、十人揃って驚くことになった。

これと同時に、『ジ・エンド』は『グレート』と違い、短期決戦向きの進化を求めた『オーバーロード』なのだとRoseliaの五人が察した。

 

「これでトドメだ!『ジ・エンド』でヴァンガードにアタック!」

 

「いやー……こりゃどうしようもないな」

 

明人は大人しくノーガード宣言をする。手札が一枚で、『インターセプト』も余裕で貫通する高パワーなのだから、どうしようもないのである。

イメージ内では『ジ・エンド』となった貴之が、『ザイフリート』となった明人に対し、剣による斬撃から拳銃による追撃を二セット。二つの剣を突き刺してから拳銃二つと口から吐き出す業火によるダメ出し。蹴り飛ばしながら剣を引き抜き、その剣に炎を纏わせてから交差切りの連撃を浴びせる。

そんな攻撃を喰らえばひとたまりもないと言わんばかりに光となって消滅し、『ダメージチェック』はノートリガーで、これにてファイトが決着となった。

 

「すごいな……どれだけやり込んでたかが分かる。お前とファイト出来て良かったぜ」

 

「お前もいいファイターだったよ。どう転んでも決着が着いちまうその時まで諦めないってのは、何よりも大事だからな……」

 

互いを称えた後、「ありがとうございました」と言う挨拶と共に握手を交わし、貴之の一回目のファイトが終わりをつげた。




貴之のデッキはトライアルデッキ『櫂トシキ』を、ブースターパック『結成!チームQ4』とブースターパック『救世の光、破滅の理』、そしてブースターパック『The Heroic Evolution』に登場するカードで編集した『かげろう』のデッキになります。
一先ず先導アイチ編で出てくる『オーバーロード』シリーズはこれでコンプリートとなりました。

次回は一真のファイトを書くことになります。
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