「じゃあ一先ず、交流会お疲れ様」
「「「お疲れ様ー」」」
交流会が終わって少しした後、ヴァンガードファイターの四人は人が少なくなってくつろげる時間になっていた食堂で休んでいた。ここにはRoseliaとポピパの十人も一緒にいる。
各々で飲み物を一個注文し、それを飲みながら今回の感想を話し合う。
「一真君、大成功だったね?」
「みんなのおかげだよ。本当にありがとう」
一真は今回の交流会で、全て『メサイアニック』での行動を完全に成功させていた。これによって会場は大いに盛り上がり、今回一番の見せ場になったと言える。
当然この成功は一真一人ではなく、協力してくれた三人もいてこそのものであるため、それには深く感謝している。
なお、『メサイアニック』を軸としたデッキはあくまでも今回のサプライズを主に狙っていた為、流石に『ヴァンガード甲子園』では別のデッキを組む予定でいるようだ。
「お前に『オーバーロード』が定着してるのは分かってたけど……今回ので更に固まったんじゃないか?」
「多分な。優勝した時がした時だから『ヌーベルバーグ』にイメージを持つ人もいたんだが、まだまだ『オーバーロード』の方が圧倒的に多かったし、今回でまた増やせたな」
今回『ジ・エンド』を投入したのは正解だったと言える結果になった。元より、貴之には超強力な単発攻撃よりも、強力な連続攻撃が性に合っている。
この交流会では終始『フォースⅡ』を使っていたが、『デカット』もセットで入れていたことから、パワー的に『完全ガード』を誘発させやすい『フォースⅠ』もありだと考えた。
『ヌーベルバーグ』自体は『ヴァンガード甲子園』が終わるまでは使わないし、終わった後も『オーバーロード』が自分に合うし使いたいから、今後も使わないかも知れないと言う旨は伝えられてある。
ここを中心に、少しずつ完全に『オーバーロード』へと足取りを戻せて行ければと思っている。
「あっ、さーや。それどうするの?」
「……ん?ああ、そういや預りっぱなしじゃねぇか」
香澄が思い出したことにより、ポピパの五人が全員して思い出す。貴之が放り投げた後、沙綾が預りっぱなしのままであった。
貴之も自分が預けていたから上着を着ていないことを思い出し、改めて彼女に確認を取る。
「うわぁ……あれ楽しんでるね?」
「今井さんがそうしていれば、貴之君もああする余裕ができますね」
リサの率直な感想に対して、紗夜は今の状況を鑑みた感想を述べる。
今までが今までだったのでそう言われるとリサも弱く、あまり強く言い返すことはできない。実際、女子だけの大会で春香の件があってから控えることを始めている。
この一方で、友希那はそんなことを気にせず貴之の二の腕辺りの筋肉に触りながらご満悦していたので、彼女に判断を委ねることはほぼ不可能と見ていい。
と言うか、彼女自身が沙綾本人にお任せみたいな旨を告げているので、あまり気にする必要もないのだろうと思えた。
「そ、その……これ貰って日焼けさせちゃうのもあれなんで、お返ししますね」
「いいのか?じゃあ、今回は返却ってことで……」
沙綾から返して貰った上着を着るので、友希那に一旦離れて貰ってからそれを着る。
上着を着た彼を見てあの筋肉が隠れていたのを考えると、これはよく隠しきったなと思えた。
こうして交流会の話しは終わり、今度はRoseliaの合宿に関する話しが始まる。
「体力は付けられる時にって話しだったけど、何かあるかな……?」
体力関連は特にドラムをやるあこが必要としているものであり、やれるならやっておきたいものであった。
その話しを聞いたたえは、先ほど違う人たちがバレーボールを借り、ビーチバレーができるコートへ走って言ってたのを思い出す。
「ビーチバレーなら、できるかも」
──ほら、あそこ。そう言ってたえが指さす場所には、確かにビーチバレーができるコートがあった。
「そういや俊哉。ビーチバレーってバレーボールと何か違うところあるっけ?」
「自分たち側が触っていいのが三回までで、その三回以内に相手コートへボールを送らなきゃ行けないこと、ボールを落としたり、相手側へ送るはずのボールがコートラインを超えたり、ネットに掛かって自分側に落ちたらアウトっていうところは同じだな……。本来のバレーボールと違って砂に足を取られやすいことに注意するのは、こっち独自の要素になる」
貴之はここが雑学に強い俊哉が、紗夜へさりげなく男を見せる場面として振ってみた。
案の定すらすらと答える上に「後、それから……」と、次の付け足しを行う。
「バレーボールでできたフェイントをビーチバレーでやった場合、その場ですぐに相手の得点扱い。触っていい三回の内、バレーボールはブロックを含まないんだけど、ビーチバレーはブロックも含まれるのが注意点だな」
「えっ、そんなに違うんだ?」
俊哉の話しを聞いてた全員は、大体が今反応を見せたリサのような感想を抱いた。大方海でやるバレーボールだと言う認識でいたのが理由である。
そこまで分かれば、後は時々俊哉に教えて貰えば出来そうだと判断の下やろうと言う話しになり、彼が教えに回るのも考慮してポピパとRoseliaの二チームでやろうと話しが決まる。
「楽しく体力強化をやるって意味でもいいんじゃない?」
「あっ、そっか!」
場所が場所なので諦め半分だった体力強化もできることを思い出したあこにとって、これは願ってもないことだった。
確かにランニングとかその辺りが出来ればいいなとは考えていたが、普段滅多にできないことで一緒にできるのは僥倖である。
今回の場合は普段と違う景色を見ながらランニングと言うのもアリだなと思っていたところにこれなので、食いつかない理由は無かった。
ちなみに普段と代わり映えの無い場所でランニングをした場合、時折苦痛を感じることがあったのでそれはちょっと嫌な思い出だ。
「ところで、紗夜はどうするの?その格好だと動きづらいでしょうし……」
「そうですね……一度着替えて来ますので、場所だけ取って置いてもらえますか?」
友希那の問いに対する紗夜の回答を聞いた時、貴之と俊哉はすぐさま辺りを目だけで確認する。
今のところ大丈夫そうには見えるが、こう言う場所でナンパ関連の面倒なことが起こる可能性は捨てきれない。
何しろ男子三人を囲む美少女が11人。そこから抜け出したら変な勘繰りをされる未来が十分に見えたのだ。
そこで二人して頷き合い、俊哉がその行動に出る。
「なら、俺もこれを置いて来るか……」
俊哉の行動は理由を付けて紗夜を一人にしないであった。実際、上着はもういいかなと考えていたので、置きに行きたかったのも事実である。
そう言うことなら行っておいでと促し、二人が戻って来た時の為に貴之と友希那で待っておくことにした。
「あの二人……何かに気づいてたのかな?」
「さっき、二人で目配せしてたよね」
あの二人のことだから、絶対に悪いことを考えてはいないと断言できるので、信じて待つのが一番だろうと判断する。
一先ずボールを一つ借りることができたのので、先にコートへ移動し、どうするかを話しておく。
「これ……五人だと狭すぎるかな?」
最初に出たのは、りみが気づいた通り五人では殆ど動けないコートサイズだったことである。
実際の話し、バレーボールが9×9だったのに対してビーチバレーは8×8の為、五人だと少々窮屈になってしまうのだ。
その為、五人一斉に入るのではなく、四人がコートへ入ることにしようと言う話しに纏まった。
「あっ、入んなくていいなら私パス」
「ああ……やっぱり?」
ここで真っ先に食いついたのは有咲で、運動が大の苦手な彼女はどうにかして動き回る事態を避けたかったのである。
ならポピパは有咲を抜いた四人で入り、後で必要なら交代と言う方針を確定する。
Roseliaはまだ人数が揃っていないので、戻って来た時二人に伝えてから決定することにした。
「俊哉君、一ついいですか?」
「ん?どうした?」
「先ほど、何かに気づいていたようですが……それを聞いてもいいですか?」
また、ビーチバレーのことを話している際に、移動していた紗夜は俊哉らが何らかの意図を持って動いたことに気づいていた。
別段隠す必要もないと感じていた俊哉は、その理由を教えることにする。
「まあ確かに、これを置きに行きたかったのは本音なんだ。ただ、ああやって集団の中から一人女子が抜けると……」
「……?」
俊哉が顔を向けた方を見てみると、何やら諦めがついた様子の男子二人組が踵を返すのが見えた。
これによりどういう理由があったかを悟り、俊哉の方へ顔を向けてみる。
「まあ、そう言うことだよ」
「ふふっ……ありがとうございます」
要は万が一の事態に備え、自分の隣りにいてくれたのである。
流石に二人掛かりだと何があるか分からないので、こうして事態を避けられただけでも俊哉の行動に意味はある。
自分のことを想ってくれる人がいるのは、こんなにも嬉しい事なんだと分かった紗夜は、胸の奥が暖かくなるのを感じた。
「そう言うことでしたら、その……こうしてみてもいいですか?」
「……!お、おお。俺でよければ……」
いきなり両腕を絡ませて来るものだから、俊哉は若干押され気味な反応を見せることになってしまった。
嫌いかと言われればそんなことは無い。寧ろ嬉しいことである。
「(こ、これはこれで嬉しいんだが……その、大胆すぎやしないか……?これ、紗夜が鍵掛けて抑え込んでいたのを開けたとか、そんなのでいいのか?)」
「(だ、大丈夫よね……?こんなことして今更だけれど、へ、変に思われていないわよね?)」
そして、普段の自分たちからして想像できない事態に陥った余り、二人は内心で混乱していた。
どうにか表情には出ていないが、それでも顔は赤くなっているし、胸の鼓動は暴れだしているしでもう気が気ではない。
そんな気恥ずかしい空気の中更衣室に辿り着き、お互いに準備を済ませたら再集合と言う形で一度分かれる。
一先ず落ち着いたので、上着をロッカーの中に入れた俊哉は紗夜が戻ってくるのを待つことにした。
「お待たせしました」
「おっ、戻って来た……か……」
反応しながら振り向いた俊哉は、紗夜の姿に目と一緒に心を奪われた。
紗夜の水着姿は彼女の瞳の色に近い、青みがかった緑色のビキニスタイルで、今回は髪型をポニーテールに変えている。
こんな姿を一足早く見れたのだから、俊哉は一緒に行って良かったと思えた。
「そうですか?もう、褒めても何も出せませんよ?」
「いいんだ。俺が言いたくて言ってるんだからさ」
「……それ、他の人に軽々しく言わないで下さいね?」
「……そうだな。うん、気を付けるよ」
紗夜が照れながら頼んで来るのは新鮮でいいなと思いながら、俊哉は真剣に考えてそれを受け入れる。
その反応を見た紗夜も紗夜で、自分のことを意識してくれているのが分かり、嬉しくなった。
「さて、そろそろ戻りましょう。他の人を待たせていますし」
「ああ。そうしよう」
ちなみにこの時、二人して手をつないで戻っていたので、戻ってきたときに貴之と友希那の二人におちょくられたことを記しておく。
* * *
「取り敢えず、順番はこれでいいかしら?」
人が揃ったので始めていくことになるビーチバレーだが、ポピパ側は有咲が休み、Roselia側は燐子が休みと言うことで始めることにした。
片ややりたくない、片や自分が比較的体力を必要としないので譲るが理由ではあるが、素早く決まるのはいいことである為、それ以上の追及はしない。
「あっ、ボールを触るのは手だけだっけ?」
「いや、足でも大丈夫。ただ……裸足でバレーボールを触るのはお勧めしないぞ?」
俊哉に確認を取ったリサも、「ですよねぇ~……」と諦めの様子を見せる。これで爪が割れ、そこから怪我に繋がるのは御免だった。
それどころか足の突き指等も考えられるので、足で触ることはなるべく避ける方向を固めた。
また、バレーの経験がないことから、一先ず打ち方の確認だけし、それを終えてから今度こそ開始になる。
「いいじゃん、有咲もやろーよっ!」
「い~や~だ~!私はやらねぇ~!」
なお、この時香澄の誘いを、有咲が必死に拒否していたことを記しておく。どうやら本当に運動が大の嫌いらしい。
「よし。それじゃあ、Poppin'Party対Roseliaの試合を始めて下さい」
「行っくよ~っ!」
俊哉の号令を聞き、香澄がサーブを打つ。先にポピパ側がサーブを打っているのは、じゃんけんで勝ったのでサーブを取らせて貰っていた。
下から打ち上げられる形でそのボールが放物線を描いてRoselia側のコートへ飛んできたので、四人で顔を合わせると一つの問題が現れた。
『(ど、どうするべきかを決めていない……!)』
四人で変に皆の様子を伺ってしまっているので、動けないでいた。
どうするどうすると考えていても、そのままボールが落ちてくるのが見えているので──。
「と、取り敢えずアタシ触るね?」
リサが自発的に動いてレシーブをする。これでどうにか何もせずに失点と言う情けない末路は避けられた。
「これ、私が上げたほうがいいかしら?」
「そうですね……お願いできますか?」
リサのレシーブが前にいる友希那と紗夜の方へ飛んできたので、話し合って友希那がトス、紗夜がスパイクを担当することにした。
友希那が打ちやすいように上げ、タイミングを見計らってジャンプをし、紗夜が右手でボールを叩くのだが、ジャンプの際に足を取られ、ほんの少しだけ飛ぶ量が足りない事態に陥る。
「(触りが弱くなるけど……打つしかできないわね)」
これがバレーボールならフェイントが許されたのだが、今回は生憎ビーチバレーなのでそれが許されない。
故にその不安定なままスパイクを打つしかなくなり、想像よりも弱くなってしまったボールがポピパ側に送られる。
「じゃあそれ、私が取るね」
不十分な威力だったことが災いし、沙綾があっさりとレシーブで拾い、ボールが再び打ちあがる。
「おたえちゃん、トスはいる?」
「うーん……いや、このまま行っちゃう」
結構いい位置にボールが着ていたので、りみに答えたたえはそのままタイミングをジャンプし、そのまま勢いのあるスパイクを打つ。
「わっ、早……!」
スパイクを打たれた際に反応できたあこだが、伸ばした腕にボールは当たってくれず、最初の一球目はポピパの得点となった。
『やった~!』
「あ、あこ……大丈夫?」
「大丈夫っ!と言うか、向こうが上手い……」
「確かに、やるわね……」
得点を得られて素直に喜ぶポピパと、こちらも負けていられないと火を燃やすRoseliaと、対比的な関係になる。
「うぅ……五人で入れるくらい広ければ良かったのに」
「わ、私は嫌ですよ……?」
燐子はあの場にいられなかったことが悔しく思い、有咲は自分の体力のなさが露呈するので嫌がると言う、こちらも対比的な反応を見せた。
「受けてみよ!我が渾身の一撃、ブレイクダウン・デスプレスをっ!」
「えっ!?なんか強そう!」
次にRoselia側のサーブになり、この時担当することになったあこが如何にも染まったような言い方をしながらサーブを打ったものの、ネットに掛かって失点と言う悲しき結果に終わった。
「あぅ……やっちゃった」
「だ、大丈夫よ……慣れていないのだから」
「と、取り敢えず普通に行きましょう?宇田川さん」
なお、この時皆の暖かさが身に染みて、嬉しかったというのはあこの談である。
その後、Roseliaはメンバーでローテーションしながら、ポピパは終始最初の四人でビーチバレーの試合を思いっきり楽しんだ。
試合を終えた後はポピパ側がライブをする時間が迫ってきていたので、休憩した後は着替えてポピパがライブの準備、その他はライブを見れるように場所取りへ赴く。
「今日が作曲に行き詰ったのは、よかったのかもしれないわ」
「まあ、結構色々あったからな……」
ポピパと会って一緒に遊び、交流会を見て──と、今日の行き詰まりが結果として一日の充足を呼び起こしていた。
友希那も今日一日で引っ掛かりは掴めており、後はポピパのライブが後押ししてくれそうな予感がしている。
「貴之はあのデッキで挑むの?」
「軸はあのままかも知れないけど、細かいところはまだまだ弄ると思う」
最終的にどうなるかはまだ分からないので、ここからファイトを重ねて変えていくことになるのは見えている。
だからこそ、ここは正直な旨を伝えた。
「これからも進んで行きましょう?私たち、それぞれのやり方で」
「ああ。勿論だとも」
話しが纏まったところで丁度ポピパが演奏を始める宣言と共に、『八月のIF』と言う曲の演奏を始める。
八月と言えば夏休みの時期であり、その時に起こる『もしも……』を題材としているゆっくり目な曲調は夕方になって落ち着いてきている時間にピッタリな曲であった。
「(なるほど……私たちの場合はこうかしら?)」
──忘れない内に整理しておきましょう。この浮かんで来た曲を……。満足気な笑みを浮かべ、友希那は彼女らの演奏を楽しんだ。
この後日、『熱色スターマイン』と言う新たな曲が完成し、これをお礼の形として演奏して彼女らの合宿は無事成功に終わるのであった。
一先ずこれでOVAの海イベントが終わりになります。
次回からはイベントストーリー『Neo Fantasy Online -旅立ち-』をやっていく予定です。