夏の合宿が終わった三日後の夜──傍らから見るとかなり珍しい組み合わせで、同じものに入り込んでいる姿が見られた。
「よ~し……これで貴之さんのレベルが追いついたねっ」
『これで、今回のイベントから走りやすくなるよ』
『助かるぜ。正直全くやれてなかったからな……』
あこと燐子がこれをやっているのはよくあることなのだが、もう一人はあの国内最強のファイターと言う名を勝ち取った少年、遠導貴之であった。
この三人がやっているゲームは国内で最もプレイされているオンラインゲームは『Neo Fantasy Online』と言うタイトルで、『NFO』と訳される『MMORPG』と言うジャンルに分けられているゲームである。
何故三人が集まっていたのかと言うと、再びやって来るヴァンガード関連のコラボイベント、そしてそれと同時に実施される新規勧誘キャンペーンイベントに於ける準備が理由である。
普段からプレイしているあこと燐子は元よりレベルが高かったのだが、普段はヴァンガードに明け暮れ、このゲームもヴァンガードのイベントが来るから程度でやっていた貴之はそうもいかず、今回の為に三人で行動してレベルを上げようと言う考えに至った。
レベルの高い二人が補助することで、貴之は普段より強い相手と戦うことができ、敵の強さが理由で経験値も多くもらうことができ、その結果急速的なキャラクターのレベルアップができたのである。
また、三人はCordのグループボイスチャットを利用して通話中であり、これは身内とだけやる状況で、なおかつ全員がそれをできる環境下にあるからこそ実現できている。
「新規プレイヤー……友希那さんたちを誘ってみる?」
『貴之君を引き合いに出せば友希那さんは乗ってくれると思うし、いいんじゃないかな?』
『そうなると、俺と予定を合わせるのがいいのか?』
「あっ、その方がいいかも……!次空いてる日っていつ頃ですかっ?」
あこの確認を聞いた貴之は、予定表を見ながら空いてる日を伝える。そうすればあこは欲しい武器が手に入る、貴之は友希那と一緒に同じゲームで遊べる。その他もその他でRoseliaで思い出が作れると至れり尽くせりだ。
それなら練習の終わりに三人を誘い、大丈夫ならネットカフェで合流する流れに決まった。
『あっ、そうだ……。貴之君、その格好をしてる貴之君に当日、ちょっと手伝って欲しいことがあるんだけど……いいかな?』
『ん?いいけど、どんなことするんだ?』
燐子の提案は思い切ってロールプレイをしてからネタバレをしよう──。と言うものであり、貴之のキャラクターの装備によって出来上がる格好が最適だったのである。
この場合、あこは近くで見ていることになる為、そのサプライズが悟られないように自然体を装うことになった。
「流れはりんりんが呼んだふりをして、それに貴之さんが答える感じ……かな?」
『そうなるのかな……となると、タイピングの練習か……』
『ふふっ、今日から練習だね?』
一瞬だけ気が遠くなったものの、燐子が見てくれる中で貴之はちょくちょくタイプ練習をしていくのであった。
* * *
「さて、今日はここまでにしましょうか」
それから二日後の昼頃──。Roseliaの練習は最後の通しを経て終わりとなり、片づけを終えた後、全員揃ってファミレスで昼食をとる予定となっている。
「(じゃあ、りんりん……)」
「(うん。話し合いが終わった後、ちゃんと聞こうね)」
二人で簡単に耳打ちを済ませてから片づけを済ませ、ファミレスで今日の総括を終え、友希那に何かあるかを問われたタイミングであこがそこに乗っかる。
「あら、珍しいわね?どうかしたの?」
「みんなに聞きたいんですけど、この後時間は空いてますか?」
幸いにも全員時間が空いているので、先を促すことにする。
「実は、私とあこちゃんの遊んでいるゲームで、ちょっと手伝って欲しいことがあるんです」
「ゲームって……よく二人が話してる『NFO』ってやつだっけ?」
──それ、始めたての人で大丈夫なの?リサの問いには友希那と紗夜も頷く。普段からやっている身の彼女らに対し、今から始めて追いつこうとしたら途方もない時間を使うことになるし、今日中では間に合わないだろうと思えた。
「その点に関しては心配ありません。寧ろ、友希那さんたちみたいに
「始めての人しか手伝えない……ですか?」
「実はあこ、欲しい武器があるんですけど、それは新規プレイヤー勧誘キャンペーンのボーナスアイテムだから、始めて『NFO』を始める人と一緒じゃないとダメなんです……」
誘った理由に関しては理解できたので問題は無い。ただ、それでも解決が難しいものがあった。
「けど、あれってパソコンがないと出来ないんだよね?」
環境に関してはどうしようもない。これがないと始めることすらままならないのだ。
「みんなでパソコンを使えるネットカフェに行くつもりなので、心配しなくても大丈夫ですよ」
ただ、それに関しても対抗策が用意されているので、教えて貰ったリサもうんうんと納得したように頷いている。
「それならアタシはやってみてもいいかな~……二人が話してるの聞いてて楽しそうだとは思ってたし、それを知れるならいいのかも」
「ホントっ!?やったぁ~っ!それなら、貴之さんにも連絡入れとくね♪」
こうして一人は来てくれることが決まったので、これで彼を呼べることは決まった。
その為、一先ずCordを使い『人確保できたので、午後一ちょっと過ぎ辺りで集合しましょうっ!』と言う旨のメッセージを送っておく。これは『NFO』を遊ぶ時の為に作られた三人のグループであり、他の人に分からない話しを振るのはどうなんだと言う判断の下生まれたグループだった。
また、やはりというかこの人を題材に出すと必ず食いつく人が存在する。
「……貴之に?」
「実は、今日皆さんを呼ぶことができるなら、貴之君も合流してくれるんです」
その食いついた本人である友希那からすれば、これ以上にない程眉唾物の話である。貴之とは心で通じ合ってこそいるものの、同じ物事をやっている時間はかなり限られていたからだ。
お互いが別分野で進み続けるからどうしてもと言う部分はあったのだが、それでも時々寂しさを感じることはあった。
二人の誘いに乗れば、その埋め合わせに近いことも今日は出来そうだと考えれば、それはそれでいいと思える。
「そうね……。貴之がいると言うのもあるけれど、あなたたちのことを知るまたとないチャンスでもあるから、私も行こうかしら?今後Roseliaが活動する上で、何かを掴める可能性もあるでしょうし」
「ありがとうございます。氷川さんはどうしますか?」
「流石にここで一人だけ帰るなんて言うのも何ですから、私も行きましょう」
──その『NFO』がどんなゲームなのかも知りたいですし。これで全員が参加してくれるので、あこは追加で三人とも来る旨を貴之に伝えておく。
「(今回は、どんな世界が待っているのかしら……?)」
移動を始めている最中、紗夜はこれからやろうとしている『NFO』の世界に関心を寄せていた。
* * *
「んで、紗夜にこの前話してたのがこれだな……説明書だけじゃ覚えきれないだろうし、チュートリアルとチャレンジモードやりながら覚えようか」
「そ、そこまで難しいのですか……?」
時間は遡って昨日の午後──。Roseliaは練習を休みにして、ファイターたちも講習会を開いていないので、俊哉と紗夜は海で話していた時のことを実行することにした。
場所は俊哉の家にある彼の部屋で、異性の──それもかなり容姿のいい紗夜を連れて来たことに、俊哉の母親はかなり驚いていたようで、紗夜は自分の感性がかなり歪んでしまっていたことを自覚するに至る。
ちなみに、今からやろうとしているのは敷居の高さから新規層の獲得が非常に難しく、しかしながら奥深くてその味を占められると楽しいの典型例なジャンルのゲームであった。
事実、俊哉が何の躊躇いも無く頷いた以上間違いないと思われるので、紗夜は一先ず俊哉のガイドに従って遊び方を覚えていくことに決める。
「残り体力が多ければと言うのは……実数値ですか?」
「いや、これに関しては割合なんだ……キャラごとの体力値と戦い方なんだけど……」
今日の為にと言わんばかりに、俊哉はパソコンで表を作れるOffice機能を使って作成した表を紗夜に見せてくれた。
しかもご丁寧にソート機能まで準備してくれてあり、初心者の紗夜にも分かりやすいものになっている。
更にありがたいのは、各キャラクターごとの備考欄に簡潔なコメントと対戦における設定の推測まで用意されているし、読み切れなくても今度また必要なら見せるとまで言ってくれるありがたさまであった。
なお、このジャンルには攻撃を一回一回丁寧に当て、勝ち急がない戦い方が主流になる『差し合い』のタイプと、攻撃を当てた後に連続で攻撃を繋いで行き、逆転性が高いので強気な動きを混ぜ込んでいく必要のある『コンボ系』のタイプがあり、今回は後者の方になっている。
最近は後者のシリーズが多いらしく、理由は連続攻撃が見栄えの良さに繋がること、前者の方では息の長いシリーズが定着しすぎているのが理由でもあった。
「……?これ、出しやすい方法はありますか?」
「そうだな……前移動を入力しながら、残ったコマンドを入力するのがいいな」
一先ず移動と簡単な攻撃を覚えて行った紗夜は、コマンド攻撃技で一度躓くことになる。
これには過去にやった解決方法をそのまま教え、それを実践させて見ることにした。
そうすれば紗夜もそれを出すことができ、頬を若干赤らめて喜びを見せていた。
「難しい技を出せて嬉しいって気持ち、忘れないでくれよ?そう言った気持ちの一つ一つが、継続に繋がるからさ」
「確かに……私で言えば、ギターになるのでしょうね」
確かにこの達成感が嬉しさに繋がり、もっと先に進みたいと言う気持ちにさせてくれる。
そうして一先ず基本的な操作を覚えるのはおよそ二時間程で終わり、この後は使いたいと思ったキャラクターのコンボ練習をした後、余裕があれば一先ずCPU戦を一回走り切ることを目標とした。
「ちなみにこの作品、シリーズもので続いてるから……」
時間がかなり経ってしまったので、帰る前に俊哉は引き出しから何かを取り出していく。
どさり、と音がしたので何事かと思えば漫画に小説、更に旧シリーズのパッケージ──。今回遊ばせて貰ったもののシリーズにおける物語を楽しむ為のものが揃い踏みだった。
「興味があったら持ってってくれていいぞ?と言っても、ゲームソフトだけ持っていくのはあれかも知れないけど……」
「た、確かにそうですね……」
分からなければ全て俊哉が教えてくれるとのこともあり、それならば小説から借りて見ようと考えた。
ただし、どれから読めばいいかが全く分からないので、それは教えて貰うことにする。
「取り敢えず、最初は本編を小説化したこっちの四つをこの順番で読むことからかな……。こっちは過去の話しになるから、ちょっと後回し。で、こっちはもう一つの物語って言える存在だから、気が向いたらでいいかな……」
「一辺に借りても読み切れないですし、まずは本編の方から借りてもいいですか?」
そう言うことならと、俊哉は部屋にため込んでいたビニール袋を取り出し、それの中に四冊を入れて紗夜に渡した。
俊哉はこう言う時の為に袋を余分に残しており、実際それは今回のような形で何度も役に立っている。
帰りは商店街を抜ける所まで送っていくことになり、そこまでは二人で並んで歩いた。
「次来るときに返してくれればいいよ」
「ありがとうございます。その時までに読ませて貰いますね」
後はこのまま別れの挨拶を済ませて……となるのだが、ここで一つ考えていたことを話して見ることにした。
「も、もう少し……近づいた口調でもいいのでしょうか?」
「……!俺としては全然構わない……と言うよりも、お願いしたいかな」
ずっと考えていたことであり、そろそろいいのだろうと考えていたことと、そうした方が俊哉と近づけるのかもしれないと考えたのだ。
それは承諾されたので、紗夜は「では……」と前置きをし、続きの言葉を紡ぐことにした。
「また会う時を楽しみにしているわ。俊哉君」
「ああ……またな、紗夜」
こうして、紗夜がゲームやその他の分野に初めて触れ、俊哉と距離を縮める一日は終わりを告げるのであった。
* * *
「上手く行ったみてぇだな?」
「はいっ!話したら乗ってもらえました!」
「今日はよろしくね?貴之君」
そして午後一をちょっと過ぎた頃。Roselia五人と貴之の六人でネットカフェの前に集まることができた。
こう言う場所に女子に囲まれた男子が一人と言う状況で入る都合上、貴之は一種の不安を感じるが、後はなるようになれとしか言えないだろう。
「いらっしゃいませ……って、貴之か?」
「俊哉か……?お前こっちでバイトしてたのか?」
「お前と同じく短期バイトだよ。夏休み中限定でな」
そんな不安も、まさかの店員が親友だったことで杞憂に終わる。
店員が顔見知り、こう言った場所に来た経験のあるあこと燐子がいることで思ったより早く受付が完了した。
仕方が無いこととしては、流石に六人並んで座ると言うのは無理があるので、二人で並んで座るを三組決めて、それぞれ座ると言う方向で固まっていく。
「取り敢えず、こうかな?」
「うん。あこもこれがいいと思うよ」
組み合わせは貴之と友希那、燐子と紗夜、そしてあことリサの組み合わせになった。
これは『NFO』をやっている人とやっていない人を必ず組み合わせる、俊哉と紗夜の距離を考え、貴之と紗夜の組み合わせは
一先ず三人にはゲームを起動して新規キャラクターメイキングまでを完了して貰うことにし、そこまでの道のりは経験者側がサポートしていく形を取る。
「……思ったより長いわね?」
「この二席じゃ暫く『NFO』をプレイしてないみてぇだな……その分のアップデートが溜まり込んでる」
どうやら貴之と友希那の席は運が悪かったようで、暫く暇な時間ができてしまうので、それまでは飲み物を用意してから談笑をして時間を潰した。
アップデートが無事に完了した後、友希那のキャラクターメイキングを見てあげながら、貴之は燐子とチャットを使って今日やる演技の最終確認を済ませていく。
《そっちのチャットを合図に飛んでいくよ》
《うん。お願いするよ(^^♪》
「……これでいいのかしら?」
「ああ。それで大丈夫」
ちなみに今回、三人がゲームそのものが初心者である為、各人の気質とパーティーバランスも考慮した職業を進めさせて貰った。
友希那は歌うことでパーティーメンバーを補助する『
ここに相手を弱体化させたり、操ったりすることで優位に戦える『ネクロマンサー』のあこ、多彩な攻撃魔法を使うことでダメージディーラーを担いながら、補助魔法でサポートも可能な『ウィザード』、そして貴之は武器による近距離戦を得意としながら、魔法で自身を強化しながら戦える『ブレイバー』が加わった六人で今日は冒険していくことになる。
《リサ姉の準備終わったよ~っ!》
《氷川さんも準備終わりました(*^^*)》
《友希那も準備終わったぞ。これでいよいよか……》
確認すれば全員が準備を済ませたらしいので、後は燐子とあこが迎えに行き、説明の途中で貴之が入る形になる。
「あっ、貴之……」
「……?どうした?」
何かやっていた時に気づいたらしく、友希那が助けを求める声音で自分の名を呼ぶ。
彼女の力になるなら何としても……と言うところがあるので、貴之は彼女の声に耳を傾ける。
「チャットで日本語は……どうすれば話せるの?」
「ああ……なるほど。まずは……」
後々可哀想な目に遭わないように、貴之は日本語への切り替え方法を教え、慈悲を与えることにする。
この危機を回避できた際、友希那が見せた花の咲いた瞬間のような笑顔を、貴之は忘れやしないだろうと確信していた。
《なるほど……?ここが『NFO』の世界……で、いいのかな?》
《何と言うか、自然が多い場所ね》
《そのことに関しては、白金さんたちから説明を頂けると思うのですが……》
一先ずゲームのスタート地点となる旅立ちの村に訪れた三人は、軽くチャットを使って会話をする。
三人のプレイヤーネームはそれぞれ『ユキナ』、『サヨ』、『リサ』と本名をカタカナに変えただけのものになる。特に思いつかなかったのもそうだが、ネット系初心者あるあるを見事にやっていたのはついぞや気づかないままとなる。
なお、リサだけは完全に本名そのままとなっているが、これはもう気にしない方がいいだろう。
「(俊哉君の家で遊ばせて貰ったのは、反射神経と考えの読み合い……そして操作精度が求められるものだったけれど、こちらはコミュニケーションが優先されるのかしら?)」
やはり初めて触れることになるものの影響は大きいらしく、紗夜はどうしてもそちらで比較してしまっていた。恐らくこれはゲームと言うジャンル単位で初心者であることが影響しており、そこを脱却出来れば落ち着くのだろうと紗夜は考えた。
《あっ、あこちゃん。三人ともいたよ》
《ホントだ!おーい!》
自分たちを知って声を掛けたと言うことで、こちらにやってきた人物はあこと燐子の二人だった。
ネームが『聖堕天使あこ姫』と『RinRin』であることから、二人が自分の本名を元に決めたネームであることも推測できる。
リサがあこの自己紹介を聞いて褒め、それにあこが喜ぶと言う恒例事項に近しいことをした後、少し気になったことがあるので一度確認をする。
《ところで、貴之はまだなのかしら?》
《あっ、貴之さんはちょっと準備中だから、ちょっと遅れるみたいです》
《なので、その間に今いる場所がどこで、私たちが何をするかを説明しますね(`・ω・´)ゞ》
説明を入れることに関しては本当だが、貴之は今最終確認を済ませ、後は燐子の合図を待つだけな為建前である。
《ここは旅立ちの村といって、Neo Fantasy Onlineの始まりの場所で小さな村なんですけど……》
ここで一回区切りとしてチャットを送り、燐子はまたすぐに新しくチャットを打ってそれを送る。ゲームをやるうちに磨き上げられたタイピング速度のお披露目である。
《初めてゲームをする人が絶対に通る思い出の詰まった場所で、この大陸……あ、フライクベルト大陸っていうんですけど、その最東端に位置するので通称最果ての村とも呼ばれている所です('ω'*)》
ここから更に、このフライクベルト大陸が大陸中央でいつも戦争をしており、そこに近づくほど危険だが、旅立ちの村はゲーム内でも一番安全な憩いの場所とも言える場所であること。
旅立ちの村は外に出ても危険なモンスターがいない都合上クエスト……仕事のようなものも安全な物が多い為、ゲームをあまりやったことがない人でもNFOの世界を楽しめるように設計されていること。
また、この村の村長であるダンケインと言う人物は元々この世界で超が付くほど有名な一騎当千の勇者だったのだが、モンスターと戦ううちに大陸の至る所で発生した人間同士の争いに巻き込まれて負傷。それが原因で戦えなくなってしまったこと。
戦えなくなってしまってもモンスターのいない平和な世界を作ろうと、この小さな村から自分たちのような冒険者を何千、何万人と支援をしていること。
今回自分たちはそのダンケインの屋敷で下働きをしているジェイクと言う人から手紙を預かり、この村から西に少し進んだロゴロ鉱山にいるリンダへ届けるのが目的となっていることを燐子は持ち前の高速タイピングで伝えてくれた。
《奥にはちょっと危ないモンスターもいたりなんかするのでちょっとだけ気を付けつつ、みんなで頑張りましょうね(oゝ`д・´o)ノ》
あこから燐子はこう言うことが得意だと教えてもらい、称えられた彼女は練習の賜物と答えるが、あまりのチャット速度に三人は啞然としてしまった。
《ってことは、そのリンダさんって言う人に手紙を届ければいいんだね?》
《はい。ジェイクさんから手紙を預かって、ロゴロ鉱山のリンダさんへ届けに行きましょう》
でも、その前に──。と、燐子が前置きを作ったので四人が注目する。
《今日は心強い味方を呼びましょう》
《おお!りんりんアレをやるんだね?》
何をやるのかと友希那に問われた燐子は見ていて欲しいと返してから、貴之にチャットを送った。
《私が呼んだら、演出付きでステルスを解いてね?》
《了解。タイミングは任せる》
このチャットは当人たち以外は見れない専用のチャットを用いて行っているので、他の人に知られる心配は無い。
《その剣で光ある道へ導け……!『コール』!『ブラスター・ブレード』!》
燐子が予め用意していたショートカットチャットと、演出用のアクションコマンドを使用して如何にもそれらしく演技を行い、そのタイミングに合わせて貴之も演出用の登場アクションコマンドを使用し、燐子の真正面から光の柱が現れる演出を作る。
その光が収まると、まんま『ブラスター・ブレード』の姿をしたキャラクターが現れる。これが今回貴之が操っている操作キャラクターである。
《……え?えぇ!?》
《ほ、本当に『ブラスター・ブレード』が……!?》
「(……?貴之が何か忙しそうにしている?)」
事情を知らない紗夜とリサが素直な反応をする中、隣からタイピング音がした友希那はそちらが気になっていた。
聞き逃すと後々面倒になるかもしれないので、一度画面の方に顔を向けた。
《我が名は『ブラスター・ブレード』……私を求めたのは、
「(二人称をりんりんに合わせて変える辺り、貴之さんもノリノリだなぁ~……)」
貴之の問いかけを見たあこは、彼がなんだかんだ楽しんでいる様子を確信した。
後ほど個別で友希那に話しするとは思うが、万が一の埋め合わせはどうするのかが気になるところではある。
《貴方を呼んだのは私です。力を貸してくれますか?『ブラスター・ブレード』……》
《
燐子が差し出した右手を、『ブラスター・ブレード』が剣を左手に持ち替えてから右手で取ると言う演技で答える。
《すっご~い!二人とも完璧っ!》
いつまでも固まらせるわけにはいかないので、終わったタイミングに合わせてあこが種明かしの前振りを行う。
すると、ここで一番先に反応するのは友希那だった。
《もしかしてだけれど、貴之がさっきから忙しそうにしていたのは……》
《ああ。こっちの俺は『ブラスター・ブレード』の格好をしているからな……それを活かしてこう言ったサプライズをやってみようってなったんだ》
先ほどはインパクトのせいで気づかなかったが、確かにチャットを打っていたプレイヤーネームは『タカ』と記載されており、貴之が自分の名前から取ったのを示していた。
また、これは貴之が始めた時期にやっていたヴァンガードとのコラボ装備であり、友希那たちを誘うきっかけとなった応援キャンペーンと同時に、ヴァンガードコラボイベントの第二回が来ていることを教える。
貴之が装備している『ブラスター・ブレード』の装備は今回でも入手することが可能なだけでなく、既に入手している人は今回のコラボで手にすることのできるアイテムで強化も可能らしい。
種明かしと装備の話しも終わったところで、今度こそ移動を始めることにした。
「その四つのキーを使って移動するんだ。ちなみにそこのキーはオートランっていう勝手に移動する状態のオン・オフを切り替えるキーだから、基本は押さない。押しちゃったらすぐにもう一回押しなおすを意識しておけば大丈夫」
「ありがとう……私、貴之が隣でよかったわ……」
「また何かわからないところがあったら、すぐに答えるからな」
その際、貴之は友希那が困っていたところをまた一つ助け、二人だけの間で些細なトラブルを解決していた。
今年の投稿はここまでになります。
今回の変更点は……
・あこは練習をしっかりとやった上で話しを持ち掛けた
・NFOをやってほしいという頼みに反対者がいない
・ヴァンガードとのコラボイベントがあった影響で、専用装備が存在している
・貴之も仲間入りし、六人でゲームを遊ぶことに
この辺りかと思います。ちなみに貴之の職である『ブレイバー』は原作では名が上がっていないので、ここが独自設定部分になるかもしれないです。
なお、俊哉の家で遊んでいたゲームは、彼の容姿の元ネタがヒントになります。
次回はこのまま続きを書いていく予定です。