先導者と歌姫 -高みを目指して-   作:ブリガンディ

111 / 135
今回は3~5話と言える感じになりました。短めだったのが影響したと思います。


サマー17 二つの遭遇(デュアル・エンゲージ)

《ここまで来ればもう少しですよっ》

 

《もうそんなに進んでいるのね……?》

 

さらに進んでいったので、もう少しでリンダのところに着きそうなところまで来ていた。

この間にモンスターと戦闘しながら進んでいったのだが、このゲームの特徴を体感して貰うべく経験者側は遠慮気味に戦闘していた。

 

《ここまで来たら、一旦ヒールが必要だったりするかな?》

 

《このゲームにスタミナとかそう言ったのは無いから、今使っても無駄打ちになっちまうな……》

 

《え~?そうなの?》

 

現実の意味である体力は貴之が言ったような単語で扱われることが多いので、基本的にヒールの回復対象外となってしまう。

後は何事も無ければ……と思った矢先に、何やら分かりやすいくらいにヤバいのが来ていますよとアピールする震音が聞こえてきた。

その音がする方を確認してみると──。

 

《あっ……》

 

経験者側三人はすぐに気づいた。このモンスターはフィールドボスであることに。

元々こう言う敵はレベルを上げて挑むものであり、現状では戦闘を避けた方が得策である。

 

《どのようにすればいいのですか?》

 

《見つからないように、足元を通ってください。見つかるととても強い攻撃をしてくるので、今の氷川さんたちが当たると一撃でやられちゃいます(ノωノ)》

 

《わ、分かりました……灯台下暗し、ですね》

 

一応、紗夜だけはある程度レベルを上げれば耐えられるが、元々今回はそれを予定に入れていないし、回避手段はあるから無視前提で進めていた。

万が一のフォローができるようにと、今回はあこ、リサ、紗夜、燐子、友希那、貴之の順番でボスの足元をくぐっていく。

 

《大丈夫大丈夫。バレないように動けば戦わないで済むよっ》

 

《うわぁ~……めっちゃ手汗が出てくるんですけど!?》

 

実際、今回はリサが一番戦闘力皆無と言える状態なので、その緊張感は間違っていない。仮に見つかった場合とても危険なので、尚更であった。

 

《お、思ったよりもいきなりな要素が多いですね……》

 

《レベルを上げれば挑めますから……》

 

この前のゲームよりも覚える要素が一気に出てこない分、紗夜は幾分か気が楽であった。流石に覚えることが多すぎるゲームと俊哉が言っていただけのことはある。

盾を構えても意味がないだろうと感じていたので、そのまま進んでいく。

 

《ま、また押さないようにしないと……》

 

《万が一そうなってもリカバリーは効くからさ》

 

今回はこのような並びになったのは、発見された時の対処法で三段構えを取っていたからだ。

あこが近い状態で発見された場合は、その人を巻き込んで死んだふりのスキルを発動し、一時的に攻撃対象外の存在となる。燐子が近くで発見された場合は敵から見えなくなるスキルを使って、時間以内に視界外へ逃れる。貴之が近くで発見された場合は強化スキルを使った攻撃で撃退になる。

ただし、貴之の段階は本当に緊急手段なので、出来ればやりたくないのが本音である。

今回はオートラン事故も無いので、一先ず無事に通過ができた。

 

《ここを抜けたので、後は奥まで進めばリンダさんのところに着きます》

 

《おっ、ゴールも見えて来たんだ……》

 

奥にいるリンダへ手紙を渡せばいいので、後は運の悪い遭遇さえしなければ問題ないと、少し気を抜ける段階になってきた。

 

《あの人かしら》

 

《そうですよ。後は、この人に手紙を渡せばオッケーですっ》

 

進んだ先に女性がいたので確認し、あこがそれに返してくれたので、一先ず手紙を渡すことにした。

するとジェイクの時のように、リンダからメッセージが返ってくる。

 

《あなた達は……?え?ジェイクから手紙……?まぁ……ありがとう、そうだちょっと待って》

 

何やら頼みたいことがあるらしく、こちらに何かを渡してきた。

 

《申し訳ないのだけれど、この手紙をジェイクに渡してほしいの。私は……まだ帰れないから……よろしくね》

 

そうして渡された手紙を持って帰るのだろうと言うのは、流石に予想はできた。

また、この手紙を見たときに同時に感じたことがある。

 

《まるで伝書バトですね……》

 

紗夜が言った通り、やっていることがこんな感じになっているのだ。もう少し進めばクエストにも様々なものが出てくるのだが、操作に慣れる為の要素もある為、序盤は仕方が無い。

この他にも、気になった場所があるらしく、今度はリサから問いがやって来る。

 

《そう言えば、どうしてこんな近くなのに手紙で文通やってるの?》

 

《さっきリンダさんが言った通り、「まだ帰れない」ってのが原因なんだ》

 

《確かに、そう言ってたわね……けれど、どうして?》

 

これを語られるのはストーリー上もう少し後になってしまうが、気になるのなら先に答えてしまおうと言う判断が経験者側に降りた。

 

《リンダさんは、ここにいる強いモンスターを封印する為に来ているんだっ!本当ならジェイクさんも会いに行きたいんだと思うけど、村のしきたり?っていうのがあって、こっちに来れないんだ……》

 

《そんなこともあって、この二人は会えないまま、こうして何万回も手紙でやり取りをすることになっているんです……(TдT;)》

 

この手の道を知る人たちで言うところの『メタ』が悲しい程に出ている場面であった。

流石に運営や開発陣でもない以上、プレイヤーである自分たちにはどうすることもできない。

 

《そう言うの、なんか寂しいね……》

 

《せめて、どこかのタイミングで顔を合わせて話せればいいのでしょうけど》

 

このゲームでは当分叶わないのだろうと、悲しい結論を出すしかなかった。

それならば、せめてこの手紙だけはしっかり届けてあげようと思考を切り替え、元の道を戻り出すことにした。

 

《欲張ってはいたけど、今回キラぽんもユニットの敵も出てこねぇな……》

 

《あっ、そう言えば確かにΣ(゚д゚lll)》

 

《ま、まあ……今日は運が悪かったってことで……》

 

おまけ程度の探しなのでそこまで気にしていないが、経験者側は出来れば来て欲しいと願っていた。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

《もうちょっとで終わるんだ……意外に簡単だったね?》

 

《最初のクエストだし、経験者三人もいるからねっ!》

 

リンダから手紙も預かって戻っている最中なので、パーティーの空気が感想会になり始めている。

実際、今回のクエストは移動と会話が主で、戦闘は道中遭遇したらやる程度なので、実質的にはお使いとも言える様な内容だったからだ。

 

《今回はモンスターが少なかったので、少し楽ができましたね》

 

《流石に、先程出てきた大きなモンスターには驚きましたが……》

 

途中のヘルスケルトンソルジャーとフィールドボスに遭遇は事故(アクシデント)であったが、今回は比較的楽な道であったと言える。

そんなことを話しながら進んでいると、何やらまた光っているものを見つける。

 

《あれ、何かを光っていないかしら?》

 

《んー?また薬草とかなんじゃない?》

 

《……ちょっと待て?この場所で光ってるってことは……》

 

リサの考えへ即座に頷かなかった貴之は、もう一つの考えが出てくる。

それは経験者側も考えていたようで、そっと近づいて行くと──。

 

《……!》

 

《き、キラぽんだぁーっ!?》

 

《ま、マジだ……なんつー巡り合わせの良さ》

 

何故かキラキラと光を放っているウサギみたいな存在は、丁度あこが探していたモンスターであった。

 

《へぇ~?あれが?》

 

《そうだよっ。あっ、キラぽん倒す時はコッソリ後ろから近づかないといけないんだった……》

 

《あこちゃん、ファイトだよ( `ー´)ノ》

 

どうやら非常に臆病で、周囲に敏感な存在らしく、見られるとすぐに逃げるらしい。

その為、なるべく音が出ないような移動方法を取り、上手く後ろから近づいて行く。

 

《よし、ここまで来れば……ってあれ?》

 

あこはそのまま攻撃しようとしたが、キラぽんはあこの()()()()()()()逃げていく。

──変だな?と感じたのは経験者側三人で、少し考える必要が出てきた。基本的に、キラぽんは危険を察知した相手から離れるように逃げるので、今回はあこがその対象ではないのだ。

 

《……他のプレイヤーが来てるのかな?》

 

《でも、来てたとしてもキラぽんの感知距離には入って無いよ?》

 

《となると、ヘルスケルトンソルジャーか、或いは……》

 

──フィールドボスだな?と、あこと燐子の証言から消去法を叩き出した貴之だが、その予想が見事に当たる形となる。

何しろ、大きな足音と共に、物陰からそれが現れたのだから──。

 

《ま、まだバレ無いよね!?》

 

《まだ大丈夫です。一先ず、物陰に隠れて通り過ぎるのを待ちましょう!》

 

入口の方からフィールドボスが来てしまっているので、今回はこのような形でやり過ごす必要が出て来た。

フィールドボスの移動先は隠れている場所から見ると、キラぽんが逃げた方向と一致してしまうのだが、一応別れ道があるのでそこまで被っていないことを祈るしかない。

 

《ちなみに、逃げ道まで被っていた場合はどうなるのですか?》

 

《プレイヤーが追いかけられない、狭い道に逃げちゃうんです……》

 

せっかく見つけたと言うのに、これは少し可哀想だなとあこのしょんぼりした様子が伝わった紗夜は考えた。

また低確率との勝負をするのか──。と絶望ししていたところに、僅かな光が差す。

 

《……ありゃ?今度は入口方面に逃げてったぞ?》

 

《と言うことは……》

 

キラぽんの逃げ道と、フィールドボスの移動先が被らなかった──。偶然が起こした奇跡の証である。

 

《行けそうですか?》

 

《逃げた後は背中を向けてるから、見つけさえすれば……》

 

何とかなるのが分かったので、それならばと急いでキラぽんを追いかけることにした。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「これ、どっちに進めばいいかしら……?」

 

「取り敢えず、右から行ってみて、ダメなら左を見てみようか」

 

キラぽんの追いかけは、相手自体が攻撃をしない為、二人一組に分かれて捜索を開始した。今回は隣りにいる人同士で会話できるようにペアを組んでおり、何かあったときすぐに話し合える状態を作っている。

幸いにもペアの組み合わせ自体そこまでバランスが悪いわけでもなく、それなりに対応は取りやすい状況だった。

ちなみに貴之が出したこの発案は、何となく困ったら左が危険だと感じていたからだけに過ぎない。

 

「ただ、俺たちが一番キラぽん倒しづらいのだけは気をつけねぇとな……」

 

「……そうなの?」

 

実のところ、友希那が戦闘力低い貴之が攻撃範囲狭いでこの二人が一番キラぽん倒しが難しい組み合わせだったりする。

友希那は攻撃こそ届くものの、攻撃力が低いのでクリティカル祈り、貴之は当てれば一撃だが、そもそもバレずに攻撃するのがかなり難しい。

そんなこともあり、最悪お祈り勝負に持っていくしかないので、出来れば自分たちのところは外れてほしいのが本音であった。

なお、他の組み合わせの場合、適正位置で魔法を放てば最も楽に倒せる燐子、程よい距離で攻撃できるあこがいるのでまだやりやすい分、初心者二人は見つけるので手一杯になりそうな可能性が友希那以上に高いが、経験者側が強いのでこちらよりは全然いいと言える。

 

「「あっ……」」

 

そんなことを考えていたら、こちらでキラぽんを見つけた。こうなるともうやるしかないので、どちらで攻撃するべきかを考える。

 

「(友希那はここからでも攻撃ができるが、クリティカルが出るかどうかの確率勝負……そして俺は、そもそも攻撃できずに逃げられる可能性が高い……)」

 

正直に言えば、自分たちが見つけないのが一番良かったのだが、もうすぐキラぽんが完全に逃走してしまう時間が近づいてきているので、四の五の言ってられない状況である。

どの道失敗する可能性が高いと言う非常に分の悪い賭けであり、しかもこの失敗が自分だけでなく、キラぽんを追い求めていたあこにも響くことを考えると、さらにプレッシャーが掛かる。

ある意味で救いだったのは、友希那が初心者組の中で唯一有効な攻撃手段を持っていたことであり、貴之が他の二人どちらかと組んでいた場合は貴之がかなりシビアな操作を要求されていた。

 

「貴之……」

 

「……ん?」

 

「その、私が攻撃しようと思うのだけれど……」

 

──ダメ、かしら?貴之が悩みこんでいる時に出した友希那の問いは、決断を促すのに十分な材料となる。

一か八かでもいいからあこの助けをしてあげたいと言う意思を感じるその目を見て、貴之が選ぶ判断は絞られた。

 

「そうだな……そうしよう。ダメだったらその時だ」

 

「ありがとう。えっと……どうすればいいかしら?」

 

「よしよし。じゃあ、俺と一緒にやっていこうか」

 

貴之は一度席を立ち、友希那の真後ろに陣取る。これは友希那の視点で話しながら進められるからである。

また、やるといったものの不安そうにしている友希那がいたので、彼女がマウスを持っている右手に、自分の右手を添える。

 

「大丈夫そうか?」

 

「ええ……これなら大丈夫」

 

これで落ち着きを取り戻してくれるなら万々歳であり、そのままやることを進めていく。

まずは攻撃可能な距離への接近。これは急いで移動すると発見されて逃げられるので、焦る気持ちを抑え、ゆっくりと歩を進める。

次に有効打の確認。友希那は現状一つしかないので、それを間違えずに撃つことになる。

 

「じゃあ、後はこれを使うのね?」

 

「ああ。そしたら後はクリティカルが出るかどうかだ……」

 

現状友希那の攻撃力ではギリギリ確定一発を取れていないが、クリティカルが出れば丁度届くと言った具合である。

本当に運任せになってしまうのは悪いとは思うが、今の自分たちにできる最善手でもあった。

一度深呼吸をした後、その有効打を二人して入力することで発動し、その攻撃がキラぽんに届く。

 

「おっ……」

 

「これって……」

 

何やら強力な攻撃が当たったようなエフェクト共に、キラぽんが倒れ、光となって消滅するのが見える。

つまりこれは、キラぽんが倒せたと言う証拠であり、友希那の攻撃がクリティカルヒットした証拠でもある。

 

「やったな」

 

「ええ、本当によかった……あら?」

 

倒した喜びも束の間、何やらインフォメーションが出ていたらしく、それを確認する。

そうすると、どうやらあこが求めていたアイテムすら手に入れていたようで、究極の現実幸運(リアルラック)を目の当たりにした。

 

「これで一安心……かしら?」

 

「ああ。いい収穫だったぜ」

 

上手く行ったので、一先ずチャットして合流する旨を伝えて移動を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

《これはあこにあげるわ。欲しかったのでしょう?》

 

《うぇぇっ!?い、いいんですかっ!?》

 

まさかそこまで上手く行っているとは思わなかったし、くれると言うのはこの上なくありがたい話しであった。

ただ、遭遇率や入手率の関係から、あまりにも友希那の負うデメリットが大きすぎる為、あこがどうするか迷ってしまう。

 

《いいのよ。今回のお礼だと思って?結構楽しい場所だと思ったから……》

 

《ゆ、友希那さ~んっ!》

 

そう言うことならと、あこは友希那からのプレゼントを貰うことにした。

 

《友希那さんのクリティカルを狙う方を選んだことに、ちょっと驚きだったよ……(・∀・;)》

 

《貴之君の勝負運に任せたのですか?》

 

聞いてみれば友希那からの進言で決めたので、そこには少し驚いた。

ただ今回、貴之が持っている手札が非常に厳しかったので、一言入れてもらえるだけでも違うのだろう。

 

《まあ、どの道分の悪い賭けだったのは変わりねぇんだけどな》

 

《そこで勝てる辺り流石だと思うんだけどなぁ~……》

 

リサがジト目で見てくるような気もしたが、そんなことは気にしない。

後は手紙を渡すべく旅立ちの村に戻るのだが、一先ずフィールドボスの移動範囲外までは慎重に動くことにした。

そしてもうすぐ出入口──と言うところまで来た時に、何やら自分たちが進む先の地面から紫の魔法陣が現れ、その中から何やら武器を黒い巨竜が現れる。

 

《えっ!?このタイミングで!?》

 

《た、貴之君。これって……(゚Д゚;)》

 

《やぱっりそうだよな?こいつは……》

 

出て来た存在には、初心者組三人、中でも友希那は大会で自分が使っていたので特に覚えがあった。

深紅の瞳と、緑色のラインが入った黒い巨竜。間違いようも無かったのである。

 

《『ファントム・ブラスター・ドラゴン』!?》

 

今回のヴァンガードイベントで出て来たユニットは、『シャドウパラディン』の盟主と言える存在であった。




比較的短かったので、次回で終わるのが確定しました。

主な変更点は……

・あこがカッコいいを我慢してキラぽんへ攻撃を選択
・キラぽんが想定外の逃げ方をする
・フィールドボスの遭遇タイミングが異なり、止む無く逃走もしていない
・キラぽんを倒す場面に、貴之も混ざる
・最後の最後で『ファントム・ブラスター・ドラゴン』が出現

この辺りでしょうか。

次回は『ファントム・ブラスター・ドラゴン』討伐戦をこなし、エンディングを書いてこのストーリーが完結となります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。