先導者と歌姫 -高みを目指して-   作:ブリガンディ

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ネクスト6 見えてきた光の道

「どうやら、難儀しているのはお互い様のようね……」

 

「ああ。状況が状況だからな……お互い大事に決めねぇと」

 

それから更に一週間と二日後──。貴之と友希那はお互いの近況を話しながら、商店街の近くを歩いていた。

貴之はデッキ選びで、友希那は方針決めと曲作成で悩んでおり、そこから抜け出せないまま、二週間以上が経ってしまっている。

ただ、思い詰めたまま動き続けるのも良くないので、今日は息抜きや気分転換も兼ねて二人でちょっとした散歩をしているのであった。

 

「どういうことかは分からないけれど、他のチームは何らかが原因で衝突が起きたらしいわ」

 

「……と言うことは、他の皆も試練の時ってやつか」

 

原因は様々だが、Roseliaを省いた『ガールズバンドパーティー』に参加したメンバー20人は、チーム間で衝突してしまったらしい。

Roselia側は精神的支柱とも言える友希那が、ギリギリのところで踏みとどまったのでこうはならずに済んでいるが、もしそうなっていた時を考えると少しだけ体が震えた。

 

「でも、何か手がかりを掴んで乗り越える……理由は上手く言えねぇけど、俺はそう思う」

 

「ええ。そうよね……」

 

──私たちにも、その時はきっと来る。そう思えれば少しは気が楽になった。

 

「あっ……!」

 

「「……戸山さん?」」

 

後は折れずに進んでいくだけだと二人が結論を出したところ、偶然にも香澄と顔を合わせることになった。

最近になって彼女らのチームであるポピパも衝突を起こしてしまったと言う話しを聞いていたのだが、そんなことはもう終わったと言わんばかりに彼女の表情は明るい。

──が、何かに気づいたらしく、少し慌てた様子になる。

 

「もしかして、お邪魔でしたか……?」

 

「いや?そんなことはねぇけど……」

 

「私も大丈夫よ」

 

どうやらデートの邪魔かと考えていたらしく、それが慌てた原因だったようだ。その為、ここは特に問題ないことを伝えておく。

 

「実は私たち、週末で久しぶりにライブをやるから、余ったチケットを知り合いに渡そうかと思ってたんですけど……」

 

──一枚しか残ってなくて……。困った笑みを浮かべた香澄を見てどうするかを考える。

彼女的にはこの話しをしたら無かったことにするのは難しいが、一人だけはどうなんだと迷うだろう。故に、こちらから決めて上げれば少しは助けになれることも意味していた。

 

「なら、それは私が貰ってもいいかしら?」

 

「はい。大丈夫ですっ。でも、どうして?」

 

友希那は彼女らの演奏で何かヒントが貰えるかも知れないと考え、それを貰うことにした。

ならばと香澄は彼女にチケットを渡し、当日待っている旨を伝えて移動を始めた。

 

「もしかしたら、戸山さんたちの演奏に……私の求めるものがあるかもしれないわ」

 

「そうだったら本当にいいな……」

 

友希那の予感が当たることを、貴之は願わずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「ところで友希那。この先は大丈夫そうか?」

 

「まだ分からない……この先の私たち次第だと思うわ」

 

そして迎えたライブ当日。家から会場へ向かおうとしていた友希那は友治に呼び止められた。

友希那は彼にもSMS当日に起きたことと近況を話しており、そのことで気になっていたらしい。

ただ、すぐに答えられるかと言われればそうではなく、今日のライブでヒントを得られるかどうか、他の四人はどのように答えを出すのか。それが肝になってくるだろう。

 

「そうか……俺でよければ相談には乗るから」

 

「ありがとう。それじゃあ、そろそろ行ってくるわね」

 

身近な人が支えになってくれる宣言はそれだけでも暖かく、安心感を与える。

歩きながら、彼女らは今日が久しぶりのライブであるというポピパの近況を思い出す。どうやら衝突してから関係の修復に成功してからの初ライブ──と、いうことらしい。

これは後で知ることになるのだが、ポピパは衝突も立ち直りも一番早いチームだったらしく、特に立ち直りの速さは仲のいい彼女ららしいと感じられた。

 

「(差し入れ、持って行った方が良さそうね……)」

 

商店街でスーパーを目にしたので、友希那は立ち寄って彼女ら分の飲み物を購入する。

これは自分たちのライブの時、大丈夫な時は毎回貴之や俊哉が用意していたのを思い出し、それがとても助かっていたことを覚えていた故の行動である。

以前から貰っていた恩義を、他の人に行う形で返す──。少々ずれているかもしれないが、今はこれが正解だと友希那は考えた。

 

「(さて、ここだったわね……)」

 

楽屋の前まで来たので早速ドアをノックすると、「今行きま~す」と元気のいい声が聞こえた。恐らくは香澄だろうと思いながら待っていると、案の定開いたドアからは香澄の顔が現れた。

 

「あっ、来てくれたんですね?」

 

「ええ。それからこれ、あなたたちに差し入れよ」

 

「ホントですかっ!?ありがとうございますっ!」

 

キラキラした目で如何にも喜んでいることを表した香澄は友希那からその袋を受け取り、中にいる誰かに預けた。

大雑把にここまでの経緯を話してくれたので、友希那はその礼に近況を伝える。理由はもう既に話してあるので、そこは再確認程度だ。

 

「友希那先輩ならきっと掴めますよっ!」

 

「嬉しいことを言ってくれるわね……ありがとう。必ず掴んで見せるわ」

 

もうじきライブの開演時間となるので、友希那も会場の部屋へ移動を始める。

入った直後はこちらに注目が入るも、ポピパのライブへ来る人たちは「見るならみんなで」と言う思想が強いらしく、友希那歓迎する空気を見せながらポピパの登場を待つ。

 

「(新しい道が見えた戸山さんたちは、どんな演奏をするのかしら?)」

 

久しぶりに純粋な楽しみの情を出しているのに気づいたと同時、開演の知らせを告げるブザーが鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「(なるほど。この五人は自分たちの良さを更に伸ばしただけではなく、技術力も伸ばしているのね……)」

 

ポピパの演奏が続いていく中で、友希那は彼女たちの成長と、選んだ方針を感じ取る。

やるべきこともやりたいことも全力でやり、思い切って楽しむ。これが彼女らの中で出た結論とも言えるものであり、その方向性がライブでもはっきり見て取れた。

この他にも、ライブ終わった後に香澄の唐突な問いに有咲がツッコミを入れることがあるのも、また彼女たちらしいと思えたし、香澄の問いを理解できれば自分も感じ取る力が貴之の仲間入りなのだろうかとも考えた。

 

「(一度こうなれば彼女たちは大丈夫。何の気兼ねも無く演奏を聴いていられるわね)」

 

一回成功してしまえば、後はそのままの流れで行けるのはポピパの強みであり、そこから来る信頼も出てきた。

その勢いに乗せたまま演奏は続いて行き、残りはいよいよラストの曲が来てしまったようで、それに対して「ええ~っ!?」と観客が声を上げるのも、最早定番となりつつある。

 

「それでは聴いてください。『二重の虹(ダブルレインボウ)』」

 

この曲は今回のライブが初披露で、天気雨のような衝突を乗り越えた後に見えた自分たちの形を『虹』だと評したのが始まりらしい。

『前へススメ』などの時によく見られる明るさではなく、『ティアドロップ』のように珍しい方向性ではあるがダークと言うわけでもない。また新しいタイプの曲調であり、彼女たちが苦難を乗り越えた証でもあった。

普段とはまた違った良さを目の当たりにし、観客たちもその曲の空気に合わせた盛り上がり方をする。

 

「(彼女たちはバンドの楽しさが表に出ているけれど、両方とも取れている……。私たちの場合は表に出るのが反対になるかもしれないけれど、全員で意識を合わせられるのなら出来ないわけでじゃない……)」

 

──きっとあれは五人が望んだ形で、自分たちもこう言った取り方はできる。どちらかだけしか本当に選べないのかと疑問に思っていた身である友希那からすれば、これ以上ないほど嬉しい出来事だった。

このライブが終わって時間ができたタイミングで友希那は彼女たちに礼を告げ、とても満足した表情で帰路に着いた。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「(ここは……この間と同じ場所ね)」

 

その日帰ってから眠りに着いた後──。友希那は再びあのうす暗い空間にいた。

ここに来たということは何かがあるかも知れないと考え、まずは『ブラスター・ブレード』と『ブラスター・ダーク』を探すことにする。

この前の一回で慣れてしまったのか、何となくどっちへ行けばいいかが分かっているので、それに従って進んでいくと、丁度剣による語り合いが終わったら二人が互いを見据えていた。

 

「やはり……我らの先導者(マイ・ヴァンガード)にとって、我らはどちらも必要だ」

 

「ああ。それは間違いないだろう」

 

真っ先に見えたものとして、片方を不要という考え方をする必要はないことであり、考え方を変える必要が出てきた。

ならば、次はよりどちらが必要となるのか──。二人はこの方向で話しを進めていく。

 

「目指すものを考えれば『シャドウパラディン(そちら側)』であるとは思うが……」

 

「日常やその他全てまで考慮するならば、『ロイヤルパラディン(お前たち)』の方が適任だな」

 

「(どうしても、『クラン』の枠組みが枷になってしまうのかしら……?)」

 

ルール上別の『クラン』で組むことができないように、彼らは共に行くことができないような考え方になっているのに友希那は気づいた。

この状況を打破するのなら、自分から声を掛けるのが一番楽と言える場面であるので、一度思い切って話しに入ってみる。

 

「一つ聞くけれど……あなたたちが共に行く──と言うのはできないのかしら?」

 

「「……我らが共に?」」

 

友希那の問いに両者が互いを見合わせて考える。

流石に両方を全て持っていくのは難しいかも知れないが、どちらかが主体であればできないことは無いと考えられた。

であればどちらが主体になるのか──。だが、真っ先に『ブラスター・ダーク』が自らの剣を地面に突き立てる。

 

「私が『()』、お前が『日常(本体)』だ。我らの先導者(マイ・ヴァンガード)の原点と大部分はお前が担っている」

 

自分は時が来れば誰かに受け継いで貰うくらいしか出来なくなるが、向こうはまだ残り続けるものである。

戦士がいつか剣や盾を手放すように、自分もいつかそうなる時が来る。それを覚悟の上で『ブラスター・ダーク』は選んでいた。

最初は迷った『ブラスター・ブレード』だが、友希那は『ブラスター・ダーク』の意思を無駄にしたいと思わない。

 

「気を遣わせてしまったわね……」

 

問題ない(ノー・プロブレム)。我が剣は、貴女と共にある」

 

それが必要とする限りと言うのは付いてしまっても、それでもありがたかった。

変わると言うのはそういうこと──。それを『ブラスター・ダーク』は分かっていたのだろう。だからこそ、『ブラスター・ブレード』よりも早く動いていた。

少ししてようやく決心が着いた『ブラスター・ブレード』も左手で彼の剣を受け取り、右手に持っている自身の剣と合わせて二刀流の状態になる。

 

「なるほど……確かにこれなら、私が表に出てもそちらが消えることは無い」

 

我らの先導者(マイ・ヴァンガード)が道を選んだことで、我らにも新たな道ができる……」

 

二人が呟いた後、二人が突如として光だし、友希那の視界を覆った。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「……?」

 

翌朝。結局最後の瞬間を見終えることができないまま友希那は目を覚ますことになった。

確かにそれは残念なことではあるが、それ以上に嬉しい収穫があったので、そんなに気にしていない。

 

「(もう殆ど答えのところまで来ている……だから、後はあの姿が何なのかを知れれば大丈夫)」

 

ポピパの演奏と夢の内容のおかげで、友希那は一気に答えの手前までたどり着いており、後ちょっとと言ったところだった。

髪の手入れや顔洗い等、朝の行動を一通り終えて最後の引っ掛かりをどうやって掴むかを考えていたところで、一通の電話が来たのでそれに出る。

 

「……もしもし?」

 

『いきなりごめんね?結衣だけど、今時間ある?』

 

電話の主は結衣で、休日のこの時間から電話が来るのは珍しいことだった。

時間自体は考え込む時間に回している分、個人の時間を考えなければ有り余っているので先を促す。

 

『ちょっと見て欲しいものがあるんだけど、今から店にくることはできる?』

 

「大丈夫よ。準備したら行くわね」

 

以前結衣にはRoseliaの──。と言うよりは、個人の選択による悩みを話していたので、それの答えを掴む糸口を探してくれていたのかもしれない。

そう考えると嬉しさが出てきて、善は急げで『レーヴ』へ足を運ぶのであった。

 

「あら、いらっしゃい。今日は一人なのね?」

 

「はい。結衣、待たせたかしら?」

 

「ううん。今準備できたから、大丈夫」

 

何度かそこへ行けば慣れるもので、少しだけ早めに歩けばその分早く着く。

軽いやり取りの後に結衣が「これを見て」と渡してきたのは一つのデッキだった。

 

「……あら?見たことのないカードがあるわね」

 

「これ、『ヴァンガード甲子園』が終わった後にリリースが決まったデッキなんだけど、その時にまたルールが追加されるんだって」

 

この情報がまだ出回っていないのは、世間が『ヴァンガード甲子園』に熱を出しているので、それに集中してほしいと言う願いがあるようだ。

ただ、これだけ確かめて欲しいのなら自分が選ばれるわけでは無いので、他に理由があることを予想する。

 

「このユニットを見て欲しいんだけど……」

 

「始めて見るユニット……」

 

そのユニットをよく見ると『ブラスター・ブレード』と『ブラスター・ダーク』が混ざったような見た目をしていると思ってテキストを見ると、驚きの内容があったので慌ててデッキの内約を確認する。

確認を終えた時、どうして自分を呼んだのか。それが全て分かった。

 

「結衣……このデッキ……」

 

「うん。今の友希那が欲しい形って、これだと思ったから……」

 

ファイターに戻ったものの、結局は店員の立ち位置に従事していることの多かった結衣は、今日この時程この在り方で良かったと感じていた。

暫しデッキを見つめていた友希那は、笑みと共に涙を浮かべていた。嬉し涙で間違いは無い。

 

「ありがとう、結衣……」

 

──私の望んだ形、ここにあったわ。その笑顔は結衣の選択が間違っていなかった証拠である。

 

「(これなら……今度は私が、貴之を助けられる)」

 

一通り新しいルールの確認を終えた友希那は、確認するべく貴之に連絡を取った。




やはりと言うか、この辺りから変更点がどんどん減って来ます……(汗)。

次回は一度貴之と友希那でファイト回になります。
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