「(そう言えば、この商店街は久しぶりに来るなぁ……)」
先導者と歌姫が本当に望んだ形をそれぞれに表すべく動き出した翌日の放課後。颯樹は商店街に足を運んでいた。
こうしている理由は、昨日の部活動を終えた後、今日は他の人が用事で来れないので一人で行動することになるのが分かった時、龍馬から商店街にもカードショップがあることを教えて貰ったからである。
転校してから寄り道できる場所と紹介されてはいたが、結局ファイトやら勉強やらをやって行くのを忘れてしまっていた故に、来ること自体は久しぶりなのだ。
後で安売りしている場所も調べておこうと考えながら歩いていると、今日の目的地にたどり着いた。
「(ここが『カードファクトリー』……この前三人が揃って言ってた場所だね)」
今日はここでファイトができればラッキーと言う考えで来ているので、そこまで欲張るつもりは無い。
他の場所は帰りながら確認しようと頭の隅に入れておき、店の中に入った。
「(こっちは結構な人がファイトしてるんだ……)」
小休止を挟んでいる人たちは自分が宮地生だった故に珍しそうに見ている人もいるが、結局そこまでであるのはファイターに所属は関係ないようだ。
普段入店している『ルジストル』は対戦派と呼ばれる人が少ないので、対戦とそれ以外の人数比に少し驚く。
とは言え、この店はこの店。それをとやかく言うことはせずに誰か手すきの人がいないかを探していく。
するとそこに一人後江の制服を着る少年がいたので、声を掛ける。ファイトを受けてくれないか?と言う旨を自己紹介と共にしてみると──。
「ああ、俺でよければいいぞ。丁度俺も身内が全員取り込み中で来れないから、暇を持て余しててな……」
「あはは……それは災難だったね」
ファイトを承諾してくれた少年──。俊哉の向かい側に座り、一先ず一戦ファイトをするべく準備をした。
「「スタンドアップ!」」
準備が済み次第、早速開始の合図を出す。
「ザ!」
颯樹の持つ掛け声のスタイルが、この段階で貴之に近しいものだと俊哉に確信させる。
「「ヴァンガード!」」
二人がカードを表返すことで、ファイトが始まりを告げる。
「『ライド』、『次元ロボ ゴーユーシャ』!」
「『ライド』、『
颯樹がなった、紫色のまるで芽を思わせる異形の存在を見て、俊哉は驚いた。
『
「そのユニット……始めて見るな。『リンクジョーカー』ってのも、今まで見たことないけど……」
「僕は始めた時から使ってるけど……確かに、この『クラン』を使ってる人、僕以外に見たことは無いかな」
『リンクジョーカー』は『スターゲート』に属している……のだが、さらにそこから三つの勢力に分裂しているらしい。
颯樹が使う『
「(……こいつ、何か抱え込んでる?)」
恐らくはそのデッキを使い続けて何かがあったのだろうと考えた俊哉は、それを探るべくもファイトは継続を選ぶ。
俊哉の先攻からファイトは始まり、まずは『ダイブレイブ』に『ライド』してターンを終える。
そして颯樹のターンになり、『スタンド』アンド『ドロー』を行う。
「『ライド』、『
更に巨大な異形の存在になった後、スキル一枚引いてからすぐ攻撃に入る。
「じゃあ、『ガヰアン』でヴァンガードにアタック」
「……ノーガード」
彼のファイとしている様子自体は普通なのだが、妙な圧力を感じるのが俊哉の所感だった。
颯樹の『ドライブチェック』は
対する俊哉の『ダメージチェック』は一枚目がノートリガー。二枚目が
「『ライド』!『ダイドラゴン』!」
『メインフェイズ』では前列左側に『コスモビーク』、後列左側に『ダイランダー』を『コール』した後、『ダイドラゴン』と『コスモビーク』のスキルを発動しておく。
「よし、まずは『ダイドラゴン』でヴァンガードにアタック!」
「パワー差が大きいし……ノーガードかな」
未知の相手でも『ディメンジョンポリス』の大パワーに真正面から対抗するのは厳しく、避ける道を取りたがった。
『ドライブチェック』の結果は
対する颯樹の『ダメージチェック』はノートリガーで、お互いのダメージが1で並ぶ。
「次、『ダイランダー』の『ブースト』、『コスモビーク』でヴァンガードにアタック!」
「それもノーガード。『ダメージチェック』……」
結果は
「『ライド』、『
「(また異形か……それと、ちょっとずつ『クレイ』の世界が重苦しくなってきてるのは、あいつらが……?)」
足のない異形となった颯樹をイメージ内で見ながら、周りの空気が重く、空が赤い曇で覆われた『クレイ』の大地に俊哉は違和感を覚える。
現実では同じファイターだというのに、他の人と共に見る空間とは明らかに異質な空間であった。
『メインフェイズ』では前列左側に右腕の存在しない上半身だけの異形『
「攻撃するよ……『ギアリ』でヴァンガードにアタック。『ギアリ』が攻撃した時、『ソウルブラスト』することで相手リアガードを一体裏向きで『バインド』する……次元の狭間を彷徨え、『コスモビーク』」
「……取り敢えずノーガードだな」
焦ってはいけないと俊哉は自分を抑えることで冷静さを保つ。
颯樹の『ドライブチェック』、俊哉の『ダメージチェック』は双方ノートリガーで、ダメージが2で並ぶ。
「次は『ガヰアン』の『ブースト』、『アルバ』でヴァンガードにアタック」
「そいつもノーガード。『ダメージチェック』……」
『アルバ』は『エルロ』がいることでパワーが上昇している為、一度様子見のノーガードを選ぶ。
『ダメージチェック』の結果は
「じゃあ最後に一回……『黒門を開く者』で『ブースト』、『エルロ』でヴァンガードにアタック」
「よし。それもノーガードだ」
一度余裕が出たのでそのまま攻撃を貰う。
イメージ内では先程から、攻撃を受ける度に無理矢理ユニットと自分が引き剝がされそうな感じに襲われているが、その正体を掴むまではおろか、ファイトが終わるまで投げ出すつもりは無い。
『ダメージチェック』は再びノートリガーで、ダメージが3になってターンが終わりを迎えた。
「凄いね……これだけの時間を『
「結構一杯一杯だけどな……。けど、別に危険ってわけでもないんだな?『ヌーベルバーグ』とかとは違って、特有の代償はまだ見えないし」
「まあ、実害自体はないと言えばないんだけどね……」
何とも言い難い表情になった颯樹を見て、俊哉は違和感を覚える。何かのSOS信号だろうか?
今はまだ分からないので、これを探る必要はあるだろう。
「キツイようなら無理はオススメしないけど……」
「その心配は要らないぞ?俺はまだやれる」
颯樹は今までの経験から投げたが、俊哉はあっさりとそれを蹴る。
元より皆で『ヴァンガード甲子園』に行くのだから、怖気づいて動けないのはよろしくないのだ。
「そう言うわけだから続行の証として、『スタンド』アンド『ドロー』……トランスディメンジョン!『超次元ロボ ダイユーシャ』!」
『フォースⅠ』はいつも通りヴァンガードに設置し、『メインフェイズ』へ突入する。
前列左側に『ダイドラゴン』、前列右側に『コスモビーク』、後列中央に『キルト』、後列右側に『ダイマリナー』を『コール』する。
当然、スキルの発動も忘れずに行い、そのまま『バトルフェイズ』に移行する。
「いきなりぶつけるのもアリか……『キルト』の『ブースト』、『ダイユーシャ』でヴァンガードにアタック!」
「危険な橋を渡りたくは無いかな……『真空に咲く花 コスモリース』、『完全ガード』だ!それから、『アルバ』も手札から出そう」
三枚を消費してでも防ぎたい攻撃であることは疑いようも無く、俊哉もそこは割り切っている。
『ドライブチェック』は一枚目が
その後の攻撃は『コスモビーク』を防ぎ、『ダイドラゴン』は受けるを選択した。
この時の『ダメージチェック』が二枚ともノートリガーで、好転する状況が得られずダメージが4になってターンが終わる。
「(さて、問題は次に来るやつなんだが……)」
──どんどん重くなってるな。ファイト中に感じてる重苦しさが増しているので、俊哉はどうしたものかと考える。
先程いった建前、流石にファイトを中断するのは有り得ないので、ともかく様子を見ながらどんなものがあるかを考えるしかない。
「そんなに気になるなら見せてあげるよ……異星より現れし怪物は、繋がりを消し去る!ライド・ザ・ヴァンガード!」
「なんだ……!?」
イメージ内で光に包まれた後、現れる巨人と更に重さを増した空気に俊哉は絶句する。
まるで侵略者や悪魔を思わせるその存在は、この空気の元凶の一つだと確信もしていた。
「『
それが、この空気を作っていたユニットの名であった。
『リンクジョーカー』の『イマジナリーギフト』は『フォース』で、今回はヴァンガードに設置される。
この後『メインフェイズ』で後列中央に骸骨を思わせる異形『
「二枚『カウンターブラスト』することで、『グレイヲン』のスキル発動……刹那の力を奪い取れ、『
「っ……なんだ……!?」
イメージ内で『グレイヲン』となった颯樹が、俊哉の乗る『ダイユーシャ』を掴んだ瞬間、俊哉はそのコクピットから無理矢理降ろされ、『クレイ』の大地に足を付ける。
その後、『グレイヲン』が『ダイユーシャ』を握り潰すと、紫色の霧となって『ダイユーシャ』が霧散して行った。
「『ダイユーシャ』が……?」
「これが『グレイヲン』の力でね……こうして『デリート』された君は、一時的にただのか弱い霊体……つまり、パワーとスキルを持たない貧弱な存在になり下がるんだ」
「おいおい冗談だろ……?」
──とんでもない奴だなこれは……。どうして今まで全く姿を見なかったのかは分からないが、それでも恐ろしい力を持つことだけは分かった。
気休め程度ではあるが、グレードはそのまま換算されるので、グレード0から『ライド』のやり直しは無いことを教えられるが、本当に気休めで、次にどうするかを考えるしかないだろう。
「じゃあ行くよ……『黒門を開く者』で『ブースト』、『エルロ』でヴァンガードにアタック」
「『ジャスティス・コバルト』で『ガード』、『コスモビーク』で『インターセプト』!」
自身のパワーが失われている都合上、通常より多くのパワーを割かねばならないのが大きな痛手であった。
「次、『ガヰアン』の『ブースト』、『アルバ』でヴァンガードにアタック」
「『ゴーレスキュー』で『ガード』、『ダイドラゴン』で『インターセプト』!」
こちらは『アルバ』が自身のスキルでパワーを4000増やしている為、更に多くの『シールドパワー』が奪われた。
残りの攻撃は一つなのだが、ここに来て『完全ガード』無し、パワー0で『ツインドライブ』と言う最悪の運試しが待っていた。
「じゃあ最後に、『ドロヲン』の『ブースト』、『グレイヲン』でヴァンガードにアタック」
「後がないからな……ノーガードだ」
本来、『ドロヲン』は相手ヴァンガードを『デリート』した時に発動可能なスキルを持っていたが、颯樹はそれすら必要ないと判断していた。
『ツインドライブ』は見事に二枚とも
「これでまた一つ、『クレイ』から霊体が消え去る……『
「(さっきのあの顔……原因は何だったんだ?)」
イメージ内で『グレイヲン』となった颯樹の右腕に胸を貫かれながら、俊哉は先程のことを考えていた。
『ダメージチェック』は全てノートリガーで、ダメージが6になって俊哉の敗北が決定した。
「……?何ともない?」
ファイトが終わった直後、俊哉は真っ先に自分の状態を確認する。今回は未知の事象が多かったので、自身の影響を知っておきたかったのだ。
一先ず問題ないと分かって、颯樹に声をかけようとしたら、彼は「今回は僕の勝ちだね」と言いながらもう帰れる準備が終わっている。
「ファイトしてくれてありがとう。楽しかったよ」
「あっ、おい……」
俊哉の返しの言葉を待たずに去っていくものだから、呼び留めようとしても間に合わなかった。
自分の行動に何かミスがあったかもしれないが、どうも何かを諦めてしまった様子が見えていることが、俊哉に思考を巡らせる。
「(取り敢えず、帰って考えて見るか……)」
今すぐに答えが出ないし、ファイトスペースで思考を続けるのは営業妨害になってしまうので、俊哉は帰りながら頭の中を整理することにした。
颯樹が使っていたのは、トライアルデッキ『伊吹コウジ』をブースターパック『最凶!根絶者』に出てくるカードで編集した『リンクジョーカー』のデッキになります。
次回はRoseliaシナリオ2章の11話~12話に入ります。