先導者と歌姫 -高みを目指して-   作:ブリガンディ

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ここまで来ると書ける内容がどんどん減って来るので、一辺にやった方が良かったと軽く後悔してます。


ネクスト10 新しく進む道

「皆の腕が落ちていないようで安心したわ」

 

練習を始めて最初の休憩時間。友希那の一言に皆で一安心だった。

特に燐子とあこは、衣装制作をしていた時は本当に最低限しか練習できていなかったので、少し心配していたのだ。

 

「最初あの歌詞を見た時なんだけどさ、凄い納得行くところがあったんだよねぇ~……」

 

「確かに、私たちは今まで()()()()()()()()()()()()から、尚更ですね」

 

FWFの出演からSMSの誘いまで、大きな失敗も無く進んでいたからこそ、今回の滑り落ちがかなり効いたし、そこからこの歌詞になるのも、自分たちには思い当たる節があった。

それほどあの日はRoseliaにとっても大きな転換となったのである。

 

「あの時の空気、もう一回は嫌だなぁ……皆して落ち込んでさ」

 

「ライブ終わった時も……ね」

 

あの時の光景は今でも思い出せる程衝撃的だったので、繰り返さぬようにと自分たちの中にある戒めとなっている。

友希那に声を掛けた人がいなければどうなっていたか、それは誰にも分からないし、今は考えたいとは思わない。

 

「ライブが来週の週末で、それが終わるとテスト一週間前……んん?」

 

「あこ、その状況前にも見たことある……」

 

「何かの偶然……かな?私も見覚えがあるよ」

 

「三人がそろって言うなら、間違い無いでしょう。私もそう思っていますから……」

 

「私も狙ったつもりはないけれど……ファーストライブの時と、似たようなことになってしまったわ……」

 

何故そんなところが被ったんだと言いたくなりはしたが、考えすぎても仕方ないのでそれは割り切った。

新学期から今日まで三週間以上使っているのだから、こうなるのも仕方ないところがあった。

 

「ん~……アタシ、後で貴之に頼んでおこっか?」

 

「それはお願いするわ。さて、今はそれよりも……」

 

「この時間を有効活用しましょう」

 

練習は練習で集中してやり、それ以外の時間は気になる所の疑問解消以外は思いっきり羽を伸ばして次の日の英気を養う。

楽しさと技術力。どちらも取るのであれば、メリハリを強くして動くようにしようと言う判断に至ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「よし……デッキの基盤はこれで完成だ」

 

「貴之……今日は絶好調だね?」

 

一方で、後江のカードファイト部でも貴之がいつも以上の飛ばしぶりを見せており、今日の回しで行ったファイトの殆ど全てが快勝であった。

デッキ基盤と言うのは、友希那が使った『マジェスティ』をヒントにした『オーバーロード』全部乗せデッキであり、『グレート』と『ジ・エンド』が共にいるものであった。

 

「後はどこか変える場所はあるのか?」

 

「まあ、サポートユニットの調整くらいだな……特に、『デカット』と『ネオフレイム』の配分をどうするか」

 

「そこさえ決まっちゃえば……か。でも、そこまで来ればもう少しだね」

 

この二体は早い話がどちらをどれくらいの優先度で使うかになる。

『グレート』を優先するなら『ネオフレイム』、『ジ・エンド』を使うなら『デカット』と言った具合である。

また、『フルアーマード・バスター』と『バーサーク・ドラゴン』の配分だが、今回は『オーバーロード』がデッキ内約の20パーセント──要するに五分の一を占める為、『フルアーマード・バスター』が限界まで入れられ、『バーサーク・ドラゴン』はサポートユニットとグレード1のユニットが不足しないよう、三枚に抑えられている。

それとグレード1のユニットたちの取捨選択を行えば今度こそデッキは完成となる。

 

「もう少しだけファイトして決めてぇところだな……ちょっと付き合ってくれるか?」

 

「ああ。そう言うことなら俺が手伝うよ」

 

俊哉が名乗り出てくれたので、素直に頼ることにした。

颯樹の件は全員が聞いているが、そこまで進んだら俊哉が何とかしてやるのが一番となり、話しは聞きつつ基本は彼に任せる方向性で固まっている。

 

「じゃあ行くぜ?」

 

「いつでもいいぞ」

 

どうにかしたいもの同士、ファイトの準備は早く後は始めるだけになった。

 

「「スタンドアップ!」」

 

「ザ!」

 

「「ヴァンガード!」」

 

肩や、自身が使う『クラン』で悩んでいる人に声を掛ける。肩や、一度戦った強敵に勝利してヴァンガードの世界を続けさせる。

確固たる意思を持った二人の、来るべき時に備えた準備が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「助かったぜ俊哉。おかげでデッキが完成だ」

 

「どういたしまして。まさか俺がお前の助けをするとは思わなかったぞ……」

 

部活の終了時間になって、貴之のデッキは遂に完成を迎えた。

サポートユニットとグレード1のユニット配分も無事に完了し、違和感さえ持たなければ『ヴァンガード甲子園』まではこのまま走り続けることが可能だった。

一方で俊哉もデッキの再調整が完了し、残りは皆で勝つためにファイトを重ね、改善点を見つけて行くだけである。

 

「じゃあ俺、友希那と待ち合わせてるから行くわ」

 

「おう。それじゃあまたな」

 

俊哉は明日紗夜と一息つく約束らしいので、今日は別行動となる。

他の人と別れ、商店街へ進む貴之の足取りは軽く、戦う準備において最大の問題点を突破した証拠であった。

──これでオーナーにどやされないで済むな……。と、考えながら歩いていくと、もうライブハウスへ続く曲道まで来ていた。

 

「(友希那たち、上手くいってるよな……)」

 

そこが気がかりではあるが、そこは問題ないだろうとも考えている。

 

「あら、貴之も終わったの?」

 

「おう。そっちは……問題なさそうだな」

 

顔を合わせるや否、問題ないことが分かって笑みを浮かべた。

これでようやく、お互いに一息付ける状態になったので、一度二人で帰路に着くことにした。

他の四人は気を遣って別行動を取っており、素敵な友人兼仲間たちに友希那は心から感謝した。

 

「あの時嬉しかったの。私が貴之の助けになれたから……」

 

「ああ。あの時は本当に助かった……あれがあったからこそ、俺もようやく答えを出せた」

 

普段と比べ、助ける助けられるが反対になったが、恩返しの一環と考えれば非常に納得が行った。

友希那の暴走の緩和から最後に得た選択まで、貴之には大きく助けられていた友希那はずっと、いつかこの恩を返したいと考えており、それが今回のデッキ構築へのヒントで恩返しとなったのである。

貴之も『超越者への祝福(ストライダー・ギフト)』と言う、手に入れた力(一人ぼっちの証)に悩まされていたところに彼女が来てくれたので、もうこのことに悩む必要はない。

 

「当日、また差し入れ持っていこうか?」

 

「助かるわ。お願いしてもいいかしら?」

 

これもファーストライブの時と同じになるが、それはそれでいいだろう。と言うか、寧ろこの方が皆もより意気込みが出ると考えた。

後は何人が来るかであるが、そこは皆で話しておけばいいだろう。

ちなみに、今日は久しぶりの友希那が遠導家へ泊まり込みをするので、お互い我慢した分を一旦発散する予定となっている。

 

「今日はいつもより大胆だな……」

 

「だって……それまで我慢してたのだから、少しくらいいいでしょう?」

 

その日の夜は、いつもより密着したものであったことは二人が自覚するくらいであった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「しかしまあ、こうして俺にしかできない事ってできると今一実感湧かないな……」

 

「そうね……けれど、私が貴之君の立場だったとしても、きっと同じことを言っていたと思うわ」

 

翌日の放課後──二人は羽沢珈琲店に赴いて一息ついていた。

最初にちょっとだけ話しているのは颯樹のことで、俊哉としてはこんなことになるのは始めてのことで、少々戸惑い気味であった。

 

「でも、あなたにしかできないってことは、信じて貰えている証拠でもあるのよ?」

 

「確かに……なら、やれることをやっていくか」

 

貴之も言っていたが、「そうなったらもうお前を信じるのが一番だし、それしかない」と述べていた辺り、紗夜が言っていることは本当なのだろう。

そうなれば、後はファイトを終えた後すぐ言えるようになれば大丈夫だろう。

 

「Roseliaは意外と平穏に事が済んだのかな?」

 

「ええ。他のチームは大分揉めたみたいだから」

 

時期も終わるタイミングも真ん中辺りだったらしいRoseliaは、チームの支柱たる友希那が安定を保っていたお陰で荒れることは無かった。

その裏には貴之の存在こそあったものの、それでチームの解散や分裂の危機にならないだけ全然いいと言える。

早い話、友希那が外的要因で視野を広く持てている証拠であり、これが自分たちなりに考えながら衝突せずに進んでいけた結果なのだろう。

 

「こうしてお互いにあったことを話して思ったけど、進み方は人それぞれで、そこには誰かが一緒にいるんだろうな」

 

「ええ。そして、その誰かが自分の進むべき道にヒントをくれる……きっとそうね」

 

友希那は自分の父親を見て音楽の道を志し、そんな彼女への初恋が貴之をヴァンガードの道へ(いざな)う。

その道を迷いなく進んだ彼が紗夜に努力の可能性を教え、教わって落ち着きを取り戻した紗夜は俊哉の焦りを止める。

この因果が巡り、今は俊哉が颯樹の抱え事を無くしてやろうとする。一番大きなことを纏めるとこうだが、そうなる過程には必ず何かがあるのだ。

後はなるようになれなので、ファイトが問題なくできるようにするだけである。

 

「そう言えば……これ、読み終わったから返すわね」

 

「おっ、読み終わったか……話し難しかっただろうけど、大丈夫だった?」

 

正直なことを言うと、あこのカッコイイが理解できてないと頭の中にクエスチョンマークが浮かび上がりかねないノリと、一発で覚えづらい常用外単語がどんどん飛んでくるので、そこを俊哉は懸念していた。

それに関して紗夜は自分が分かりやすい形に置き換えながら覚えていく、貴之が相手を理解する時によくやる方法を真似しながら読み解いて行ったらしく、着いて行くこと自体は出来ているらしい。

 

「気になったことを聞くけれど……」

 

「ああ……そこは……」

 

紗夜が気になった箇所を、俊哉はなるべく伝わるように考えながら教えていく。

この手の話だけでもかなり時間を使える辺り、貸した本の知るべき内容が多く、濃密であることが伺える。

本編の続きは小説化されていないので、ここは今度俊哉の家で辿って行くべきになるので、後は外伝の話しを読むなら読んでいく形になる。

 

「じゃあ、また落ち着いた時に持っていくよ」

 

「ええ。お願いするわ」

 

──他のも興味出したら、その時教えるかな。紗夜に素質を見出した俊哉はそんなことを考えながら紗夜と約束する。

あわよくば、二人でその手のイベントに行けるようになるとそれはそれで思い出になるのだが、そこは本人の意向に合わせるのがいいだろう。

 

「また何かあったら、その時は手伝うわね」

 

「ああ。いつも助かるよ」

 

どこかで自分も、紗夜のことを助けられたらと思いながら今日は時間になったのでお別れとなる。

さて、後はやることをやるだけだな──。紗夜との時間を経てより地盤を固めた俊哉はまた一歩を踏み出した。




次回がRoseliaシナリオ2章の15話で、それが終わった後はヴァンガード甲子園の話しを書いて完結へ走る形になります。

残り短い期間になって来ましたが、お付き合い頂ければ幸いです。
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