地元の映画館は来週からガンダム閃光のハサウェイと入れ替わりだから、ギリギリセーフです(笑)。
「こいつで決まりだ……!『グレートダイユーシャ』でヴァンガードにアタック!」
『かげろう』使いの頂点が決まる戦いが終わった後に行われた次鋒戦は、俊哉の勝利で幕を卸し、これで二本選手と言う最高の結果で詩織に番を回せた。
「お疲れ、俊哉。こりゃ次の全国で一番警戒しなきゃなんねぇの、お前かもな……」
「……お前それ本気で言ってるのか?」
何度もぶつかり合った一真でもなく、来年から大会に復帰できる瑚愛でもなく、何故自分なんだ?と、俊哉は疑問に思った。
貴之曰く、その二人は誰も彼もが周知の上だから警戒されて当たり前。いい具合に隠れてる中で一番強いのが俊哉だからこそ、やりたい放題されないようにする必要があるとのことである。
「ありがとうな。ちょっと土産話ができた」
「おう。この後も勝って、ちゃんと伝えて来い」
昨夜後江の五人は俊哉と何があったかを共有しており、自分たち、俊哉、そして不特定多数のファイターたちの為にと三重の意味で勝ちに行っている。
二つ目は少々場違いなところがあるかもしれないが、理由があるのはいいことである。
そんな状況下で迎えた中堅戦は、詩織と真司によるファイトとなっていた。
「ここまで二本取れてるから、気負わなくて大丈夫だ」
「何なら、あたしたちの出番は気にせず勝ってきちゃっていいからね」
「うん。ちょっと、行ってくるね」
詩織が台の前に立つ頃には真司も台の前に立っており、二人して準備を始める。
「大体三ヶ月ぶり……だよね?」
「夏休みの終わり頃以来か……」
このヴァンガード甲子園に出るときは対戦相手になってしまう旨は話しが出た段階で伝わっているので、特に問題にはならない。
それ以上に、こうして無事再開してファイトで戦えることが何よりも安心できることだった。
「それじゃあ、ここまで来たら……」
「そうだね。後は、思いっきり……後悔なく」
「「スタンドアップ・ヴァンガード!」」
考えることは二人揃って同じで、開始宣言とともにファーストヴァンガードを表返す。
真司は『スパークキッド・ドラグーン』、詩織は蒼い体を持った大鷹の『
ファイトは真司の先攻から始まり、『デモリッション』に『ライド』してターンが終わる。
「『ライド』。『三日月の女神 ツクヨミ』」
詩織が三日月を彷彿とさせる冠を被った小さき女神になった後、スキルで一枚手札に加え、そのままヴァンガードにアタックする。
対する真司の選択はノーガードで、『ドライブチェック』、『ダメージチェック』ともにノートリガーでターンが終わる。
「『ライド』!『
妖な剣を持った存在になった後、『メインフェイズ』では前列左側に『レックレスネス』、後列左側に『デモリッション』を『コール』する。
「よし、『チョウオウ』でヴァンガードにアタック!」
「ノーガード」
真司の『ドライブチェック』が
詩織の『ダメージチェック』は一枚目がノートリガー、二枚目が
「次、『デモリッション』の『ブースト』、『レックレスネス』でヴァンガードにアタック!」
「それもノーガード。『ダメージチェック』……」
結果はノートリガーで、ダメージが一気に3になったところでターンが終了する。
「『ライドフェイズ』時、『ソウル』に『神鷹 一拍子』があるなら、『ツクヨミ』のスキル発動。山札の上から五枚を見て、一枚を手札に加えて残りを山札の下に、自分の望む順番で置き、手札を一枚捨てる……」
「……?なんかちょっと変わった山札操作だね?」
「一枚捨てるって……なんか引っ掛かるね」
詩織の行動は『オラクルシンクタンク』が得意な山札操作かと思えば、妙に引っ掛かる要素が出て来た。
「そして、捨てたユニットが『半月の女神 ツクヨミ』なら、それに『S・ライド』する!」
この代わり、『ライド』は出来なくなるが、そもそも確実にコンセプトを徹底しやすいのがこの『ツクヨミ』系列の強みであった。
『メインフェイズ』では前列左側に『レクタングル・メイガス』、後列左側に『オラクルガーディアン ジェミニ』が『コール』された。
「攻撃行くよ……『ツクヨミ』でヴァンガードにアタック!」
「ノーガード」
『ドライブチェック』は
対する『ダメージチェック』は二枚ともノートリガーで、ダメージが3になる。
「まだ大丈夫……『ジェミニ』の『ブースト』、『レクタングル・メイガス』でヴァンガードにアタック!」
「……それもノーガード。『ダメージチェック』」
その結果はノートリガーで、詩織のダメージが3、真司のダメージが4になってターンが終わった。
「おお……大体互角だね」
「昨日も見ていたけれど、詩織もみんなに負けない強さを持っているわね」
真司の実力の伸びも凄まじいのだが、詩織も決して弱い訳では無い。
今回の全国大会は地方の段階で急用ができてしまった故に断念していただけであり、戦える強さはあるのだ。
「よし、これで決めるぞ……『ライド』!『
赤き体を持った雷竜になり、『アクセルⅡ』を設置して手札の確保も行う。
『メインフェイズ』では前列右側に『チョウオウ』、アクセルサークルに『レックレスネス』、後列右側に三体目の『デモリッション』が『コール』される。
「『チョウオウ』は登場時、『カウンターブラスト』をすることでスキル発動!前列リアガードを一体『バインド』して、同じ列の後列にいるユニットを前列に移動させる!」
「(始まった……)」
ここを耐え凌がないと負ける──。詩織はそれを確信していた。
これで全てが終わりかと言えばそんなことはなく、まだもう一手残されていた。
「『カウンターブラスト』と手札を一枚捨てることで『ガントレッドバスター』のスキル発動!前列リアガードを全て『バインド』し、後列にいるリアガードは全て前列に移動させる」
「『ガントレッドバスター』は前列リアガードがいない場所一つにつき、パワープラス5000、
「大丈夫かな……?」
詩織が先程のターンであれ以上の展開を避けたのはここにあり、少しでも逆転の芽を増やす為だった。
「更に『ドロップゾーン』にいる『ライジング・フェニックス』のスキル発動!相手リアガードを『バインド』したなら、『S・コール』してパワープラス3000できる!」
空いていた後列中央に電気を纏った鳥が現れ、これで準備完了となった。
「よし、まずは『チョウオウ』でヴァンガードにアタック!」
「っ……ノーガード。『ダメージチェック』」
その結果はノートリガーで、恩恵がないままダメージが4になってしまった。
「次は『ライジング・フェニックス』の『ブースト』、『ガントレッドバスター』でヴァンガードにアタック!」
「『ミス・ミスト』で『完全ガード』!」
『ツインドライブ』は二枚とも
更に『チョウオウ』がスキルで『スタンド』し、後三回も攻撃が飛んできてしまう。
「次は『レックレスネス』でヴァンガードにアタック!」
「『サイキック・バード』二枚で『ガード』!」
「次は『デモリッション』の『ブースト』、『チョウオウ』でヴァンガードにアタック!」
「ノーガード。『ダメージチェック』……」
ここで幸いだったのは
「最後は『デモリッション』の『ブースト』、『レックレスネス』でヴァンガードにアタック!」
「『オラクルガーディアン ニケ』、『スフィア・メイガス』で『ガード』!」
どうにかダメージ5でやり過ごし、真司のターンを終わらせることができた。
「(大丈夫……まだ、ここからでもチャンスはある)」
勝てばストレート、負ければストレートを取れなかったことでの圧力が掛かってしまう状況、しかもダメージ5で後がないのだが、詩織は比較的落ち着いていた。
恐らく、決めきれなかったことで一番つらくなるのは真司であり、トリガー操作が狙える『オラクルシンクタンク』を使う以上詩織は十分に勝機を見いだせている。
「ここが勝負……ですか」
「もう一回同じ『ライド』ができるのかな?それなら、スキル次第でいくらでも行けそうですよね?」
「確か、そう言うのがあったから、デッキトップ次第だと思う……」
「『ライドフェイズ』時、『半月の女神 ツクヨミ』のスキル発動!山札の上から五枚を見て、一枚を手札に加えて残りを山札の下に、自分の望む順番で置き、手札を一枚捨てる……」
ここまでは同じだが、ここからが唯一の違う点である。
「そして、捨てたユニットが『半月の女神 ツクヨミ』なら、それに『S・ライド』する!」
──現れよ、大地を優しく照らす女神よ!『イマジナリーギフト』は『プロテクトⅡ』を前列左側に設置し、『メインフェイズ』に移る。
「『カウンターブラスト』と、手札を一枚捨てることで『満月の女神 ツクヨミ』のスキル発動!『ソウル』から『ツクヨミ』の名をもつユニットを三枚まで選んで、選んだ枚数だけ引く……」
三枚あれば追加効果が使えたのだが、今回は二枚までなのでこれ以上は実行できない。後はトリガーが来てくれるかどうかである。
その後、前列の二つには『ヘキサゴナル・メイガス』、後列中央に白い兎である『稲葉の白兎』、後列左側に『ジェミニ』、後列右側に『三日月の女神 ツクヨミ』が『コール』される。
「それじゃあ、行くよ……『白兎』の『ブースト』、『ツクヨミ』でヴァンガードにアタック!」
「『ワイバーンガード ガルド』、『完全ガード』だ!」
正直なところ、これを防いでもトリガー次第では確実に一回通す羽目になってしまうが、やるしかなかった。
『ツインドライブ』は二枚とも
「このターン『ツインドライブ』で
これにより、双方の『ヘキサゴナル・メイガス』がパワープラス30000と言う巨大な数値を引っ提げた状態となった。
「次、『ジェミニ』の『ブースト』、『ヘキサゴナル・メイガス』でヴァンガードにアタック!」
「『
ここまでは防げるが、同時にここまでが限界であった。もう防げる手段がないのである。
「勝負だよ……『ツクヨミ』の『ブースト』、『ヘキサゴナル・メイガス』でヴァンガードにアタック!」
「ここまで来たらやるしかないか……ノーガード!」
その結果は二枚ともノートリガーで、ダメージが6になったのでファイトの終わりを告げることになった。
「あそこで決めきれなかったのが敗因か……」
「本当に危なかった……けど、私も負けたく無かったから」
詩織は自分を迎えてくれた皆に恩を返したい──。その一心でこの試合をストレート勝ちに繋げたのである。
ファイト後の挨拶を済ませた後、消化試合として残った副将戦と大将戦が行われ、今度こそ後江と福原の戦いは終わったのだった。
「私、みんなとまた会えて……こうしてファイトできて、嬉しかったよ」
そのファイトが終わった後、詩織は福原のファイターたちに正直な想いと、また会おうと言う旨を話すのであった。
* * *
「(あっちの戦いは宮地の勝ちか……ヴァンガードの未来を憂いてる今、落ちてくれた方が楽だったが……)」
──それはそれで消化不良だよな……。ファイトの後、準決勝二回戦を見終えた貴之はそんなことを考えながら、自販機近くのベンチに腰を下していた。
さっきの肇との戦いはお互いの決着をつけるだけなので純粋に楽しむことはできたが、次はただ楽しむだけではやれない。
「けど、ここまで来たら後は……」
「できることを全てやって勝つ……そうでしょう?」
自分の言葉は友希那が途中から繋げる。
肯定しながら立ち上がって彼女の方に顔を向けると、よく見るようになった柔らかな笑みだが、少しだけ違うように見えていた。
「その……重荷になってしまわないかが不安なのだけれど、一つだけ渡しておきたいものがあったから……」
「大丈夫だ。それで、渡したいものって……!?」
貴之の言葉を待たずに、友希那は貴之の左頬に口付けをした。
あまりにもいきなりなことだったので、貴之は友希那が離れた後も少しだけ固まっていた。
「これって……」
「ちょっとした先払いよ。続きは、ファイトに勝った後にしましょう?」
友希那の先払いは重荷などではなく、貴之の思考を『勝たねば』から『勝ちたい』に変えることに成功した。
その最高のプレゼントを貰った貴之は、彼女にありがとうと礼を告げる。
「それじゃあ、行って勝ってくるよ」
「ええ。行ってらっしゃい」
貴之は迷うことなく会場へと向かった。
詩織は『ツクヨミ』軸、真司は『ガントレッドバスター』軸となります。
次回から決勝戦を行って行きますが、来週は仕事の都合で一回お休みとします。