「ごめん。落としちゃって……」
「いや、大丈夫だよ。僕が取り返して来る」
後江が全勝に成功した俊哉を迎える時、宮地はどこか引っ掛かりの取れた颯樹に追及はせずに労い、そのまま弘人が交代して台へ向かっていった。
「なあ一真。俊哉のことをどう思う?」
「あの伸び方、悩みを解決した直後の僕に似ている……」
──次の全国大会、思わぬところで喰われそうだ。一真の評価に竜馬は驚くも、同時に納得した。
何しろ伸びの勢いが凄まじいのだ。貴之ばかりに気を取られていると、足元を掬われかねない。
「(やるじゃねぇか。こんだけ評価されてよ……)」
特に事情を知っているわけではない竜馬だが、これだけ評価されるようになった俊哉を素直に称賛する。
それと同時に、ファイターでいられる内にできることを全てやり、納得できる形で終わりたいとも思っていた。
「さて、それじゃあ始めるよ?」
「うん。よろしく……」
今日が初対面となる二人だが、ここまで来たら後はファイトするだけなので、余計な気遣いは不要だった。
後江側は出来れば詩織と大介のどっちかが取り、玲奈を楽にしてやりたいところ。宮地は弘人と竜馬が二人ともとって、一真で一気に決めたいと言うのがチームとしての本音である。
「「スタンドアップ・ヴァンガード!」」
二人がファーストヴァンガードを表替えすことでファイトは始まる。
詩織は準決勝と同じく『神鷹 一拍子』弘人は海中での活動に適応した子供の竜『ブローバブル・ドラコキッド 』に『ライド』した。
ファイトは詩織が先攻で、『三日月の女神 ツクヨミ』に『ライド』してターンを終える。
「『ライド』、『ストームライダー ニコロス』!登場時、山札の上から七枚見て、『潮騒の水将 アルゴス』があるならそれを公開して手札に加えられる。そして、このターンの間、『ニコロス』はパワープラス3000!」
手始めに弘人は自分の動きができる準備を進める。
白の海兵服を着た姿は、もはやお約束と言ってもいいのだろう。
「では、『ニコロス』でヴァンガードにアタック!」
「……ノーガード」
相手のパワーが増えたことでますます割に合わないので、ここは素通しにした。
『ドライブチェック』、『ダメージチェック』は共にノートリガーで、詩織のダメージが1になってターンが終わる。
「『ライドフェイズ』時、スキル発動!」
対象のユニットである『半月の女神 ツクヨミ』がいたので、それに『S・ライド』する。
『メインフェイズ』では前列左側に白い服装と紫の髪が目を引く魔導士『ラビリオ・メイガス』、後列左側に『ジェミニ』が『コール』される。
「攻撃……『ツクヨミ』でヴァンガードにアタック!」
「ノーガード」
『ドライブチェック』の結果は
対する『ダメージチェック』は一枚目がノートリガー、二枚目が
「次は『ジェミニ』の『ブースト』、『ラビリオ・メイガス』でヴァンガードにアタック!『ラビリオ・メイガス』はトリガーを引いた時、一ターンに一回だけ……パワープラス10000」
「流石にノーガードかな……『ダメージチェック』」
その結果はノートリガーで、ダメージが2になってターンが終わる。
「さて、少し早めに行こうか……『アルゴス』に『ライド』!」
前列左側に『タイダル・アサルト』、後列左側に『テオ』、前列右側に水上ボードに乗った兵士の『コーラル・アサルト』、後列右側に『ニコロス』が『コール』された。
この時、『ニコロス』のスキルで『アルゴス』を加えることも忘れない。
「ここで五回攻撃……あいつ、手札を使わせる気だな……」
「ここで攻めないと、後が辛いのかも……」
最大で五回攻撃できる現状で、後江側もそうやって予想を立てることができた。
「まずは『タイダル・アサルト』でヴァンガードにアタック!」
「ノーガード。『ダメージチェック』……」
結果はノートリガーで、ダメージが2になる。
この後『タイダル・アサルト』が『ソウルブラスト』を代償に『スタンド』する為、攻撃はまだ残っている。
「次は『ニコロス』の『ブースト』、『コーラル・アサルト』でヴァンガードにアタック!」
「それもノーガード。『ダメージチェック』……」
この結果もノートリガーで、ダメージが3になる。
「こっちは先に攻撃してしまおう……『テオ』の『ブースト』、『タイダル・アサルト』でヴァンガードにアタック!『テオ』のスキルは『コーラル』に!」
「それなら……『ラビリオ・メイガス』で『インターセプト』!」
敢えて『タイダル・アサルト』に割り振らないことで、『コーラル』を確実に通そうと言う算段であった。
実際、『コーラル』の攻撃を防ぎたいと思わない詩織としても、次に
「よし、『アルゴス』でヴァンガードにアタック!」
「流石に防ぎたい……『ニケ』で『ガード』!」
『ドライブチェック』の結果はノートリガーで、どうにか次は1ダメージで済みそうだった。
「最後に、『コーラル』でヴァンガードにアタック!『コーラル』が攻撃した時、『レスト』した他のユニットが四枚以上なら、パワープラス15000!」
弘人の狙いはこれであり、合計23000も増えた34000のパワーで無理やり一回攻撃を通そうと言う魂胆である。
実際、詩織もこれを防ぐ気は無く、『ダメージチェック』で
「(これは……このターンで決めないと、後がない……)」
「(ここまではいいペース。問題は次のターンをどうするか……)」
弘人が速攻を吹っ掛けたことにより、ここで一気に詩織が追い込まれる形になった。
その為、自分の四ターン目にトリガーを合わせてパワーも上げて一気に巻き返す先方はもう叶わない。
「『S・ライド』!『満月の女神 ツクヨミ』!」
だからこそ、もうここで勝負に出るしか無く、その意思の現れとして『プロテクトⅡ』が前列左側にセットされた。
『メインフェイズ』で前列左側と前列右側に『ヘキサゴナル・メイガス』、後列中央に『白兎』、後列右側に『三日月の女神 ツクヨミ』が『コール』された。
スキルで山札操作も行い、正真正銘のできること精一杯であった。
「詩織、凄く大変そう……」
誰の目にも明らかなくらい、『クラン』としての相性差が出てしまっているファイトでもあり、自分が詩織の立場なら非常に苦しい展開なのは間違いない。
ただそれでも、詩織はできることを全てやりきるつもりであり、それが自分を招き入れてくれた皆への恩返しだと信じている。
「行くよ……『白兎』の『ブースト』、『ツクヨミ』でヴァンガードにアタック!」
「ここは平気だね……ノーガード」
ダメージが2である以上、どの道ここで負けることはない。強いて言えば手札を消費が面倒になることだけは避けたいか。
『ツインドライブ』の一枚目は
『ダメージチェック』は一枚目がノートリガー、二枚目が
「次は『ジェミニ』の『ブースト』、『ヘキサゴナル・メイガス』でヴァンガードにアタック!」
「ここをノーガードで行こう。『ダメージチェック』……」
その結果はノートリガーで、弘人のダメージが5になる。
「最後に『ツクヨミ』の『ブースト』、『ヘキサゴナル・メイガス』でヴァンガードにアタック!」
「それは『インテリジェンス』と『医療士官』で『ガード』!」
最後の攻撃は防がれてしまい、これで詩織のターンは終わりとなる。
「これ……パターンに入っちゃったかな」
「この後、彼が取る行動は……」
弘人が勝っている試合は全て流れに乗っかってそのままの勢いで押し通しているので、恐らく今回もそうなることが予見できる。
昨日、今日と後江の試合以外にも宮地の試合を追っていた為、Roseliaの五人と裕子は予想を立てられるのである。
「蒼き覇竜が嵐を巻き起こす……!『ライド』!『蒼嵐覇竜 グローリー・メイルストローム』!」
現在使っている弘人の切り札がこのユニットであり、詩織からすれば今出されると最も辛いユニットである。
『アクセルⅡ』を選んだ後、後列中央に『テオ』、アクセルサークルには蒼い竜を模した潜水兵器の『リップタイド・ドラゴン』が『コール』される。
「まさか、ここに来て『リップタイド』なんて……」
これに対し詩織は思わず歯嚙みしてしまう。それくらい最悪なタイミングで出されたユニットだからである。
このユニット
「『カウンターブラスト』することで、『グローリー・メイルストローム』のスキル発動!このターン中、相手は、インターセプトできず、各バトルで手札からガーディアンを1枚までしかコールできない!」
このスキルを組み合わせることにより、『リップタイド』が放つ最後の一撃がほぼ確実に入ってしまうことが一番の問題であった。
これ故に詩織は先程のターンで決めたかったのだが、ダメージ的にそれが叶わなかったのだ。
「『ソウル』に『メイルストローム』がいなかったことが救いでしょうか……」
「あったら、前列のリアガード全てがパワープラス10000でしたからね……」
「ハマった時の勢いが凄いなぁ……」
このように、一気に攻め立てていくのは『アクアフォース』が持つ明確な強みであった。
「では、行こう……『テオ』の『ブースト』、『グローリー・メイルストローム』でヴァンガードにアタック!」
「『ミス・ミスト』で『完全ガード』!」
トリガーまで考えると、どの道これで防ぐしかないし、『リップタイド』に
そんな危険な状況での『ツインドライブ』は一枚目がノートリガー、二枚目が
「次は『タイダル・アサルト』、『テオ』と共に敵を撃て!」
「『スフィア・メイガス』で『ガード』!」
パワーの都合上ダメージを出せないが、『コーラル』のスキルを発動させるべく『タイダル・アサルト』を『スタンド』させ、ダメージの入らない単体攻撃を敢行する。
これに関してはどのユニットにもパワー勝ちできないので、詩織は素通しする。
「次は『ニコロス』の『ブースト』、『コーラル』でヴァンガードにアタック!」
「っ……ノーガード」
これが丁度四回目の攻撃であり、ユニットも四体『レスト』しているので、丁度効果を発揮できた形になる。
対する詩織の『ダメージチェック』はノートリガーで、これで完全にトリガー勝負となってしまった。
「では、四回目以降しか攻撃できないが、その分攻撃時にパワーが20000増える『リップタイド』の一撃を受けてもらおう!」
「『完全ガード』はもうなくなってる……ノーガード」
先程『グローリー・メイルストローム』に使ったものしか残っておらず、こうなってしまえば仕方なかった。
イメージ内で『リップタイド』が機体に内蔵されているあらゆる火器を斉射し、それらが『ツクヨミ』となった詩織に群がり爆炎を広げる。
爆発が炎から煙となり、煙が晴れるとそこに詩織の姿は無く、『ダメージチェック』は一枚目こそ
「こうなるのがわかってたから、防ぎたかったんだけどね……」
「先に流れを作って正解だったよ……。後は、『イマジナリーギフト』の特性に救われたかな」
もし『オラクルシンクタンク』が『フォース』を持っていた場合、無駄に手札を切らされるので、それは嫌だったのである。
ともあれ、最後まで抗った詩織も、迷うことなく決め切った弘人もできることは全てやった結果である為、互いに挨拶と同時に握手を交わしてから、仲間の待つ場所に戻っていく。
「ごめん。取れ無かったよ……」
「あんな不利な状況からよく抗ったよ……まだ1対1だし、そんなに気を落とさなくていいさ」
詩織と入れ替わる形で、大介がファイト台に上がっていく。
まだ一回までは落とせるが、副将戦の一真が鬼門である為、出来ればここを落としたくないところである。
「……どちらかと言えば、後江が少し不利かしら?」
ここまでの状況を鑑みた友希那の推測は、間違っていなかった。
そう言えば、弘人が勝った試合あったか?
↓
一回もない
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流石に全敗で終わらせるのはちょっと……
今回はこう言う葛藤のもと起きた結果です。
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