「ホント!?友希那ちゃんチーム組めたの!?」
「ええギターの子が一人ね」
紗夜とチームを組んだ翌日の昼休み。友希那はリサと日菜に一人とチームを組めたことを話した。
それを聞けば日菜が食い気味に聞いて来たので肯定すると、日菜とリサの二人は「よかったね」と言ってくれた。
自分もチームを組めたことが嬉しいので、友希那は「ありがとう」と素直に返した。ようやく一歩前進ができたことは、予想以上に嬉しかったらしい。
「ところで、そのチーム組んだ子はなんて言うの子なの?」
「組むかも知れないから気になるの?」
「うん。知ったからって変に意識しようとは思わないけど、気になるものは気になるよ」
友希那に問い返されたリサの答えを聞き、それもそうかと思った。
リサの立場なら、自分もそうなっていただろうと友希那は考えながら、「分かったわ」と言って一泊間を置いてから話す。
「その子、氷川紗夜って言うの。一時期の私くらいに無駄を嫌うけど、音楽への意識は本物よ」
「氷川って、ねぇ日菜、その紗夜って子……」
「うん。と言うか、組んだのおねーちゃんとだったの!?」
友希那の答えを聞いたことで気づいたリサが日菜に話しを振り、日菜が思わず大きな声を出す。
まさか自分の姉が、自分の友人と組むとは思ってもみなかったのだ。
「そうだけど……聞いていなかったの?」
「あはは……実は、聞こうとしたらすぐに追い返されちゃった……」
日菜は先日紗夜の変化を感じ取って聞きに行ったのだが、門前払いされてしまっていた。
その時日菜の落ち込んだような様子を見て、友希那たちは
「そうなるとライブの時とか……どうしようかしら?」
「ああ、それなら変装で誤魔化して行くよ。誰かと会って、話しを聞いてついてきたってことにすればいいし……最悪は途中で帰ればどうにかなるよ!」
――あ、もう策考えてるんだ……。日菜の言葉を聞いた友希那とリサの二人は苦笑する。
これなら一応は大丈夫だろう。後は本人と紗夜次第になっていた。
「(日菜のことは……あまり触れないようにしておきましょう。せっかく組めたのだから、琴線に触れるようなことは良くないわ)」
友希那は今後の練習に当たって注意を心掛けた。
* * *
「一人見つけられたんだ……!よかったぁ……」
友希那が二人に近況を話している時と同刻、後江にある教室の一つでも、似たような会話があった。貴之らがいる教室である。
実際に見てきた貴之と俊哉が、大介と玲奈に先日何があって、どんな人と組んだのかを話していた。
「今度ライブやるなら見に行きたいなぁ~……連絡とか送って貰えるのかな?」
――流石にチケット制だったら無理に頼まないで、自分でやるんだけどね……。玲奈は左右の足を上下交互に動かしながら呟く。
自分一人だけだったらまだしも……と思うことはあるが、他に見たい人たちだっているのだから、こういうのは自力で手にしてこそだろうと考えていた。
これに関しては俊哉がチケットに関してそういう方針で動いているのがあり、それに影響されているところもあるが、最終的に自分もそう思った故に玲奈もこの方針になった。
「一人、ドラムで参加したいって言ってた子はどうなったんだ?」
「それはまだ何も聞いてないな……」
大介に問われた貴之は正直に答える。彼女に昨日は「チャンスはある」と言ったものの、実際どうするかは友希那たち次第だった。
――流石に一回で容赦なく突っぱねられてたら謝るしかないか……。貴之は少々不安になってしまった。
「まぁ、言い方間違えなきゃどうにかなるんじゃねぇの?……チーム組んだ子がお堅い感じするけど……」
「だからちょっと不安なんだよ……」
俊哉はフォローしようとしたが、紗夜のことを思い出して自信を無くす。
そうなることをある程度予想出来ていたため、貴之は頭を抱えながら顔を下に向ける。
――友希那が上手くやってくれてることを祈るしかねぇ……。彼女らの方針に口出しするつもりはないし、それは場違いすぎるので、祈ることしかできなかった。
「メンバー集めるって言うとさ、オーディションとかってやらないのかな?いつまでも同じライブハウス通いじゃそろそろ厳しくなるだろうし……」
「ああ。リサが友希那に頼み込んだから、開始までに集まれば纏めてやるんじゃないか?」
「……え?ベース再開したのいつなの?」
玲奈の呟きを拾った俊哉が答えた瞬間、彼女が一瞬だけ固まってからもう一度聞いてきた。
大介も「いつからまた始めたんだ?」と言った顔をしているのをみて、そういやまだ話してないんだったと貴之と俊哉は気がついた。
――というか、リサが辞めたのってその時期だったのか……?大介の様子を見て、リサが一度ベース辞めたのは中学生時代であることを予想した。
「昨日の朝だな……俺が気が付かなきゃ、友希那も知らないで終わったと思う」
「昨日の朝かぁ……って、そういうことなら昨日教えてくれても良かったじゃん!あたし結構気にしてたんだよ!?」
「マジか……それは悪かった」
玲奈はリサがベースを辞めた時の辛そうな顔を知っていたので、どうしたものかと気にかけていた。
その後しばらくはファッション等で楽しんでいたのである程度は大丈夫だったが、またやるようにしたとなればそれはそれで嬉しいものだった。
当時のことは流石に知る由も無かったので、貴之は玲奈に詰め寄られたことで思わず一歩後ずさりながら謝る。
「とりあえず、今後に期待……でいいのか?あいつのことだから、やるって言ったらとことんやるだろうし」
「ああ。それでいい」
大介の問いに俊哉は肯定する。何がともあれ、コンテストに出るためのスタートラインに立てる目途が見えてきていた。
「(頑張れよリサ……そして、できることなら……友希那が音楽の楽しさを取り戻す手助けをしてやってくれ)」
心の中で応援しながら、貴之はこういう時に無力な自分に嘆いた。
* * *
「(今日はいない……まだ答えを出せていないみたいね)」
あこの申し出に妥協案を出して数日後の夜。
普段友希那の使っているライブハウスのスタジオが予約でき、そこで紗夜と練習を終えて外に出て見たらあこの姿は無かった。
流石に今すぐに答えを出すことはできないのだろう。一瞬だけ難しく言い過ぎたかもしれないと思ったが、それは違うと否定する。
「(私たちと組むのなら、向上心と、遊びでないことを示すものが欲しい……実力は、後からでも上げられるものだから、その二つが優先ね)」
一番を自慢してくれるならあの場ですぐにオーディションの参加を承諾できたのだが、二番目を自慢して来たことが決め手を欠いていた。
とは言え、彼女が諦め切れないなら話しは聞こうと思うので、やはり彼女の決断次第だった。
「この前来た子のことですか?」
「ええ。すぐに来るんじゃないかと思っていたけど……そうでも無かったみたい」
紗夜の問いに肯定しながら予想外であることを口にする友希那だが、焦らずゆっくり考えて欲しいとも思っている。
こちらもこちらで、メンバー選定は厳しく行うので、急いで中途半端な答えや力を見せるよりは、落ち着いてしっかりとしたものを見せて欲しいのだ。
「大丈夫なのですか?どうも湊さんと組みたいだけなようにも見えますが……」
「それはあの子次第……かしらね。後はオーディションをするなら、その段階で十分な実力があるかどうか……。実力に不満を感じるなら、遠慮なく言ってくれていいわ」
紗夜も実力をかなり気にしているので、足りないようなら容赦なく落とした方が互いの為なのは事実だった。
自分が入りたいと言ってきた人を無条件で入れ、その後衝突で即解散などやりたいとは思えない。
友希那の返答には「もちろんそのつもりです」と紗夜が返したので、全てはあこ次第に決まった。
「明日も早いでしょうし今日はこれで解散にしましょう」
「そうですね。では、お疲れ様でした」
いつも通りの別れ道まで来たので、二人は手短に挨拶して別れる。
基本はその日の練習の内容やメンバー集めの状況を話すことが主で、年相応の女子らしい話しが少ない二人であるため、会話内容の一つ一つがかなり淡泊的なものになり、それほど時間を要さないのだった。
「…………」
友希那は帰り道を歩きながら、あこのことを少し考える。この前の名乗り方からして、恐らくは自分の姉を全面的に信頼し、尊敬しているのだろう。
そしてそれが、友希那の言った言葉で思い悩む要因になっているかもしれないことも十分に考えるられた。
「(あなたが大丈夫なら、こちらには受け入れる準備がある……。焦らず、そしてコンテストに間に合うように、答えを出しなさい)」
バンドを組みたいと言う気持ちは確かに伝わっていたので、友希那は心の中であこを応援した。
* * *
「う~ん……」
友希那と紗夜が練習を終えた時ほぼ同刻。あこは自宅のリビングで悩んでいた。
二日前に友希那が言っていた言葉が理由で、中々答えを出せないでいた。
「(ちょっと聞いてみようかな)」
自分の頭だけではどうにもならなそうなので、燐子にチャットを送って聞いてみることにした。
内容は『覚悟を証明するものって何があるだろう?』と言ったもので、自分が尊敬する姉を抜こうというのは一度置いておき、先にこちらを考えることにした。
「あ。あこちゃんから……チャットだ……まだ……悩んでるんだ……」
それをみた燐子は少し考えてから、『ドラムのスコアとか、使えないかな?』とチャットの返信を行う。
返信を見たあこは『使い込み具合とか、そういうこと?』と、更に返信をする。
ドラムのスコアとは、ピアノで言うところの楽譜に位置するもので、それを見ればどれくらいやっていたか等の目安にできるかもしれないものだった。
あこの送って来たチャットに、燐子は再び肯定の旨を返し、それと同時に『言葉だけじゃ、伝えるのが難しいのかもしれないね』とチャットを送る。
「言葉だけじゃ……かぁ……」
こう言ったことに頭を回すのは得意じゃないので、あこは『じゃあどうしよ?』と素直にチャットを送って聞くことを選んだ。
燐子はそのチャットに対し、『あこちゃんや私が、友希那さんの歌を好きになった瞬間みたいに、音で伝えられたら、いいのになって思った』と返す。
「音で……」
あこが少しの間固まっていると、燐子から『私も、あの歌を聴いた時、すごいと思ったから。あの感覚は、言葉だけじゃ上手く表せないと思う。バンドって、そういう感覚で繋がるってことかなって』と、自分の想いを乗せたチャット送った。
それを見たあこはどうするべきかの道が一部見えたような気がして、「あっ……」と声を出す。
「なんかちょっと……わかったかも!」
相談した悩みは解決できたので、あこは『ありがとう!りんりん!』とチャットを送り、燐子も『うん。あこちゃん、頑張ってね』と返信を送る。
音で証明するには友希那が提示した条件を満たす必要があるが、言葉だけではそれを証明しきれない可能性もある。
ならば使い込んでいるスコアを持っていき、ただ遊びでやっているわけじゃないと言う照明の足しにしようと、答えを出すことができた。
彼女の言っていた『一番を抜かそうとする意識』と『覚悟』の内、『覚悟』の部分はクリアできそうなので、問題は『抜かそうとする意識』である。
「(どうすればいいかな……?おねーちゃんを抜かすって、そんなことできるの?)」
正直なところ、あこは自分の姉を抜かせる気がしていない。
あこにとって彼女は『自分の中にあるカッコイイの理想像』とも言える存在でもあるので、それが『やるかどうか』ではなく、『できるかどうか』と言う考え方に変えてしまっている面もあった。
「ただいま~。って、あこ。ここにいたのか……その様子だとまだ時間がかかりそうだな」
「あっ、おねーちゃんっ、おかえり!」
考えていたら、赤い髪を持つ大人びた雰囲気のある、羽丘高等部の制服を着た少女……あこの姉である宇田川
彼女はあこから話しを軽く聞かせてもらっており、あこの表情を見て大方そのことで悩んでいることに察しを付けた。
「そーなの。片方は今度持っていくもの持っていくことで解決なんだけどなぁ……」
「じゃあ今悩んでるのは、『一番を抜かす』ってほうか」
巴の問いに、あこは少し落ち込みながら頷く。また、普段から面と向かって言ってくれてるのもあって、あこの中では巴が一番だと言うのも彼女は把握している。
諦めかけてるけど諦められない。あこからはそんな感じが巴に伝わってきていた。
「どうすればいいんだろ?おねーちゃんを抜かせるかって聞かれても……できる気がしないよ……」
あこの沈み具合は結構大きかった。彼女の中で、巴の評価は基本的にどんな他人よりも高いからだ。
――ドラムの腕前は、あこの方が上なんだけどな……。そんな様子を見た巴は、心の中で呟きながら苦笑する。
ただ、そう言ってもあこの評価は殆ど変わらないし、自分もあこが自慢できる姉であり続けたいとも思っているので、そこにとやかく言うつもりは毛頭もない。
「多分あこは『できるかどうか』で考えてちゃってるから、路頭に迷ってんだと思うぞ?」
「……え?あれ?ホントだ……」
巴に自分の考え方を指摘されたことで、あこもそこに気付く。
――これなら後は、少しだけ押してやれば大丈夫かな?そう考えた巴は、言っておくべきことだけ言うことにした。
「今回の場合は『やるかどうか』だから、実際にできるかどうかは考えなくて大丈夫なんだ。だから、そんなに難しく考えないで大丈夫だ」
「あ、そっかぁ……本当に今までそっちで考えちゃってたよ……」
あこは考え方のずれがあったせいで、今まで本当に答えを出せないと言う不安が募っていた。
それは巴が今言ってくれたことで無くなり、緊張の糸が切れたかのように感じられた。
「湊さんのとこに入りたいって言うんだし……『自分の中にある、自分だけの音』を見つけられるともっといいかもな」
「自分の中に……」
巴の言ったことをあこは繰り返し、考える。今まで『巴のようになりたい』と言う想いでやってきていたあこにとっては、ターニングポイントにも思えていた。
――じゃあ、今までのあこはダメだったの?と考えそうになったあこは、その考えを一度止める。
姉は何も、今までのやり方を悪いとは言っていない。どうせならその方がいいだろうと言ってくれている。そこまで纏めると、答えが少しずつ出てきた。
「そっか……おねーちゃんの音はあこの音を作る『参考』にして、最後は自分だけのカッコイイ音にすればいい……そうだよね?」
「その通り。分かってくれてよかったよ」
よくできましたと言うかのように頭を撫でてやれば、あこは「えへへ~」とはにかんだ笑顔を見せる。
一通り満足したあこは、思い出したように「あ、そうだ」と声を上げる。
「おねーちゃんって、友希那さんのこと知ってたの?」
「ああ。何しろ
そう言われればあこも納得できた。確かにそれなら知っていても何らおかしくは無い。
というより、どうして自分は知らなかったんだとすら思ってしまった。高等部と中等部では会う機会も非常に限られているので、仕方ない面はあるが。
「ほら、同じダンス部のリサさんいるだろ?その人の親友が湊さんなんだ」
「あ、そうなの?あこ、リサ姉からその親友さんの話しはよく聞かされてたんだけど……その人が友希那さんだったんだぁ……」
あこはダンス部にも所属しており、リサは同じ部活の先輩だった。彼女から話しをよく聞かされるが、まさかその人が友希那とは思ってもみなかった。
リサとは仲がいいので、今度相談してみるのもいいかもしれない。巴の話しからあこはそう判断を付けた。
「どこか時間空いてるといいなぁ……。おねーちゃん、話しを聞いてくれてありがとう!」
「おう。じゃあアタシは一旦着替えて来るよ」
あこが満足したのを見た巴は、まだ着替えていないので自室に移動する。
部屋のドアを開けるその直前に、「そうだあこ」と言いながら顔だけこちらに向けて来たので、あこも巴の方へ顔を向ける。
「頑張ればその内絶対に抜かせるようになるから、頑張れよ」
「……え?」
それを言えて満足した巴は今度こそ自室に入っていった。
あこは予想外の言葉に返事が遅れ、ただただ見送るだけの形になった。
「(頑張れば……か。よーし、早速やってみよう!)」
しかしそれが悪い方向に働くことは無く、プラスに働いたあこは、ドラムの置かれている部屋に移動して練習を始めた。
ドラムの音が聞こえた巴は、「もう抜かされてるんだけどな」と思いながらも、頑張るなら邪魔をするつもりはない。
だからこそ、心の中で頑張れよと応援し、静かに微笑むのだった。
* * *
「なるほどねぇ~。答えが出たから、友希那に頼もうってことだね?」
「うんっ!完全に拒否された訳じゃないから、これも見せて話そうと思ってるの!」
巴と話しをした翌日の放課後。校門前で友希那を待っていたあこだが、先にリサが出てきたので最近起きたことを話していた。
ちなみにあこはリサに対してタメ口を使っているが、リサ自身が特に気にしないどころか、仲良くなれるなら構わないと言う考えを伝えたので、あこはその好意に甘えさせて貰っている。
「凄い……こんなに使い込んでるんだ……。これを見せれば少し変わって来るかもしれないね♪」
「……ホント!?やったー……はまだちょっと早いや」
あこがドラムをやっていることは聞いていたので、そのボロボロになっているスコアが彼女の練習量をリサに教えてくれていた。
それを見たリサが前向きに言ってくれて嬉しくなったあこは一瞬舞い上がるが、まだ決まっていないことを思い出して一度クールダウンさせる。
その後少しの硬直を挟んでから、リサは口元を手で隠しながら、あこは頭を掻きながら笑う。
「そういえば、友希那さんは一緒じゃないの?」
「アタシと友希那は別のクラスだからねぇ~。向こうのHR長引いてたから、先にこっちまで来てたんだ」
思い出したようにリサが聞いてみると、リサが理由と経緯を話してくれた。
そんなことがあったので、リサは友希那に『先に行ってるよ~』とCordでチャットを打っている。HRが終われば何か反応を返すだろう。
「昨日おねーちゃんに教えてもらったけど、リサ姉の親友が友希那さんだって……あこ、始めて知ったよ」
「ああ……そう言えば、名前は言わずに話してたんだったね」
あこに言われたことで、リサはどう話していたかを思い出す。
友希那のことは名を出さずに話していたので、あこはリサの親友の特徴やどんなことをしているかは知っていても、誰かが全くわからない状態だった。
しかしながら、話していた特徴として、大人しめであることと、歌が非常に上手いことが一致していたので、納得できる要素はそれなりにある。
「(友希那のチーム、もしかしたら一気に人が揃うかも知れないね)」
人が揃えば、そこからコンテストに向けての一歩を踏み出せる。それがもうすぐでできるかもしれないとなれば、今まで応援していた身としては嬉しいところだった。
もちろん自分もFWFに出たいと思うようになった身であるし、彼女を手伝いたいと思っているので、リサ自身も頑張らねばならないところだった。
そう考えていたら、携帯が振動したので確認してみると友希那から『HRが終わったから今から向かうわ』と送られてきていた。
「友希那がもうすぐ来る見たいだよ。上手く行くといいね」
「も、もうすぐなんだね……」
リサに言われて、あこは体が強張るのを感じた。
――大丈夫かな?持ってきた答えが間違ってないかな?昨日
「……あれ?こないだいた子とリサじゃねぇか。何やってんの?」
「ひゃあ!?」
緊張していたところ聞きなれない声の掛けられ方をされ、あこは思わず裏返った声が出てしまった。
振り返って見れば、そこには以前自分が友希那の知り合いであることを確信して話しかけた、黒髪を持った少年と、その友人である白髪の少年がいた。
「貴之、あこと知り合いだったの?」
「知り合いっていうか……友希那のことを聞かれたから答えただけだな……」
リサに問われて、貴之は腕を組んで唸り気味に答える。
実際のところ、道に迷っている人に道案内をしたくらいの感覚しかなかったのだから仕方ないだろう。
「……えっ?リサ姉、この人と知り合いだったの?」
「うん。知り合い……というよりは、幼馴染みだけどね」
「ついでに友希那ともな」
「えぇ~!?」
困惑したあこへ答えるリサに、貴之が補足を入れるとあこは驚いて大きな声を出してしまった。
時折、リサから友希那の話しを聞くに当たって、何度かに一度だけ幼馴染みの男子の話しを聞いていたが、まさかその人だとは思わなかった。
「この子は宇田川あこ。同じダンス部にいる後輩なんだ~♪」
「この間はどうもっ!宇田川あこです……!」
「そうだったんだ……。俺は遠導貴之だ」
リサに紹介されたあこが頭を下げ、貴之も改めて自己紹介する。
まだ一言しか話していないが、あこは素直な子だなと貴之は感じ取った。
「そう言えば、こないだは友希那と話せた?」
「話すことはできました!その時は決心が付いたらもう一回来てほしいって言われたから、今日改めて伝えるつもりです!」
友希那が完全には突き放さなかったことと、あこがめげずに進んでいるのを見て貴之は安堵する。
もしこれで突き放されてしまっていたら、今頃彼女に深く頭を下げていたことだろう。
「これとかもあれば大丈夫かな……って思うんですけど、どうしても緊張が……」
話している途中で友希那がもうすぐ来ることを思い出し、あこは再び体を震えさせる。
そうなりながらもあこが取り出した、ボロボロになっているスコアを見た貴之は、その子が相当頑張っていることを理解した。
「大丈夫。その練習した証と、自分が一番上まで行くって言う気持ちがあれば、今度こそちゃんと伝わるよ」
貴之は大丈夫だと言う確信を持って言う。
これはスコアの使い込み具合とあこの目、それから友希那が受け入れる余地を残していると言う三点からの判断だった。
残りは言い方を間違えないことくらいだろうから、その辺りは成功を祈ることになる。
友希那のことを知る人からそう言われたならと、あこも少しだけ自信を持てたような気がする。
「あ、来たみたいだね……お~い、友希那~」
「……!」
話している間に友希那が校門へ歩いてきているのが見えたので、リサは彼女に向けて手を振り、リサの声を聞いたあこが気を引き締める。
リサが手を振っているのが見え、その隣りにあこが、その近くには偶然居合わせたであろう貴之と俊哉の姿が見え、珍しい組み合わせだと思いながら友希那はそちらに足を進めた。
「珍しい組み合わせだけど……どうかしたの?」
「あこの話しを聞いてたら、この二人が来たって感じかな~」
「えっと……リサはこの子と知り合いなのね?」
「うん。同じダンス部の後輩だからね」
リサから話しを聞いて納得できた。ダンス部は中等部も一緒にいるので、高等部のリサと一緒に中等部の生徒がいると言う状況もよくあることだった。
「ここに来たということは……覚悟は決まったのね?」
「はい……!あこ、友希那さんのチームに入って、自分だけの音を見つけて上に行きたいんです!」
友希那の問いに答えながら、あこは手に持っているボロボロになっているスコアを渡す。
それを手にとって見た友希那は驚いた。予想以上に練習しているなと確信できた。
「もちろん遊びじゃないです!本気でやろうと思ってます!一回だけでもいいんですっ!お願いします!」
あこは思いっきり頭を下げる。どうしても入りたい、そんな想いでいっぱいだった。
ちなみに、思いっきり頭を下げたことで友希那の表情が見えないので、どんな反応をされているか分からないし、何て言われるかも分からない。
それ故に怖くなったあこはぎゅっと目を閉じて、友希那の答えを待った。
「あこと言ったわね?一先ず顔を上げて頂戴」
「……え?」
予想以上に優しい声が聞こえ、あこが恐る恐る顔を上げれば微笑んでいる友希那が見えて困惑した。
少なくとも怒っていないことだけはわかる。彼女に何があったか分からないあこは答えを聞くまで呆然と友希那の顔を見つめてしまった。
「しっかりと答えを持って来てくれて、安心したわ」
「……!」
友希那に自分の持ってきた答えが正解であることを伝えられ、あこは驚きと安堵を同時に感じる。
「オーディションの件、受け入れるわ」
「よかったね、あこ」
「うん!本当に良かった……!」
あこは気が付けば瞳から涙が滲み出ていて、それに気づいたリサが渡してくれたハンカチで目元を拭いた。
彼女もオーディションに参加させるのが決まったので、友希那は一つ確認を取っておくことにした。
「リサ、あなたはもうオーディションを受けても大丈夫?」
「……うん。時間あったおかげで一通りは弾けるようになってきたからね」
「……え?リサ姉も参加するの?」
それはリサがもうオーディションを受けても大丈夫かどうかだった。元々人がいないなら、リサと日程を相談して決める予定だったが、あこも参加するのでここで聞いてしまうことを選んだ。
リサはもう大丈夫だと答えたので、状況についていけないあこが問いかける。
あこが問いかけたことで自分が参加することを知らないことに気づき、「そう言えば言ってなかったねぇ~」とリサは柔らかい笑みを見せる。
「実はアタシもベースで参加するんだ~♪だから、一緒に頑張ろうね?」
「……うん!あこも頑張る!」
リサもいるなら心強い。そう思えたあこの表情が明るくなる。
そんな二人の様子を見た貴之と俊哉は互いに顔を見合わせて頷き、友希那も笑みを浮かべる。
「今日もスタジオで練習するから、大丈夫ならそこでやってしまおうと思うけど……いいかしら?」
「そうなの?それならベース取って、途中から合流するよ」
「なら、場所は携帯に送っておくわ。あこは大丈夫?」
「はい、あこは大丈夫ですっ!」
話しが決まれば、リサは「またね~」と言って手を振ってから一度ベースを取りに家まで足を運び出す。
それに対しては、全員で彼女の姿が見えなくなるまで手を振って見送る。
「それならスタジオまで案内するから、付いて来て。二人とも、また今度ね」
「ああ。またな」
「オーディション頑張れよ」
「はいっ!本当にありがとうございました!」
友希那にとあこもオーディションのために足を運ぶので、貴之は友希那への返事、俊哉はあこに応援を投げながら見送る。
「さて、俺たちも行くか」
「ああ。あの二人には先に行ってもらっちまってるしな……」
俊哉の促しに貴之は頷く。
この二人は実のところ、もしもの期待を込めて羽丘まで様子見に来ていて、大介と玲奈には先に『カードファクトリー』まで行ってもらっていた。
そうして二人は、彼女らのオーディションに期待を寄せている会話をしながらファクトリーまでの道のりを歩いていった。
Roseliaストーリーの4話が終わりました。
変更点は
・あこが最初から考えているので、何度も友希那たちに頼みには行かない。
・ちゃんと答えを持って来ているので、友希那からは一発でOKを貰う。
・羽丘での会話は友希那とリサが話しているところにあこが入ってくる形から、あことリサが話していて、友希那が後から来る形になる。
大体この辺りでしょうか。
また、今出てきているオリジナルキャラの容姿ですが、メインの四人を挙げると……
遠導貴之……『機動戦士ガンダム
谷口俊哉……『BLAZBLUE』の『ラグナ=ザ=ブラッドエッジ』がベースで、これのオッドアイを両目ともエメラルドグリーンにし、明るめにした感じ。描写で公開できてませんが、俊哉は貴之と背丈が全く変わらないので、彼ほど大柄では無いです(ラグナの背丈は185)。
大神大介……『BLEACH』の『黒崎一護』がベースで、こちらも明るめにした感じ。
後ほど明かしたいところですが、大介は名前に『大』が付いてるので貴之らよりある程度背が高い扱いです。
青山玲奈……『カードファイト!!ヴァンガード(2018)』の『鳴海アサカ』がベース。ロボットアニメや格ゲー、ジャンプキャラがベースの人たちの中、彼女だけ見事にヴァンガードキャラがベースになっています。
他の人物も後ほど見た目のベースを明かしていきたいと思います。