「『ライド』!『忍竜 マガツウインド』!」
「『ライド』!『士官候補生 エリック』!」
大介は紫色の体をした身軽さを感じさせる竜『マガツウインド』に、弘人は如何にも新米海兵を思わせる白い制服を着た『エリック』に『ライド』する。
「へぇ。篠崎は『アクアフォース』か……あいつの雰囲気とは裏腹に相当攻撃的な『クラン』だな……」
「かつて全勢力がメサイアによって封印されていたが、現代において解き放たれた絶対正義の名の下で惑星クレイに存在した伝説の海軍……それが『アクアフォース』。ファイト内では連続攻撃で効果を発揮するユニットたちが多いな」
貴之の率直な感想と竜馬の解説を聞いて、友希那と燐子の二人は話しを聞いていることを示すような空返事をする。
竜馬と大介以外全員の感想として、大人しめな印象があった弘人は防御的な『クラン』かと予想してたら、超攻撃型の『クラン』がやって来たと言うものだった。
「大神君が使っている『ぬばたま』は、どんな『クラン』ですか?」
「『ぬばたま』は『ドラゴンエンパイア』の諜報部隊で、領土の東方に伝わる独自の武術や暗黒魔術を習得したエキスパート達だ」
「ファイトでは自分と相手の手札や『リアガードサークル』に影響を及ぼす……『ペイルムーン』と同等かそれ以上に癖の強い『クラン』になってるな」
燐子の問いかけを聞いて、竜馬が『クラン』の背景、貴之がファイト時の特徴を説明する。
『ぬばたま』はスキル効果の範囲が非常に広く、それで相手を翻弄するのが強みであるので、また見た目に合わなそうな『クラン』を見た友希那と燐子が驚くことになる。
本人たちも自覚しているだろうと読み取った二人はそれ以上の追求を避けた所で、友希那が『ぬばたま』に関して一つ気づいた。
「貴之、『ドラゴンエンパイア』って言うと……」
「ああ。『かげろう』と同じ国家所属の『クラン』だ」
「あっ、そう言えば『かげろう』も『ドラゴンエンパイア』に属する『クラン』でしたね……」
「(遠導の教えか……結構飲み込み早いな)」
友希那が気づいたのは国家の場所で、貴之はそれに肯定する。
それを聞いた燐子が思い出し、竜馬は彼女らの理解の早さと、貴之の教え方を称賛した。
なお、ファイトは大介の先攻から始まることになり、『スタンド』アンド『ドロー』を済ませる。
「『忍竜 ドレッドマスター』に『ライド』!」
大介の姿が蒼と緑を基調とした竜の『ドレッドマスター』に変わる。
「『ドレッドマスター』が登場した時、手札を確認一枚捨てる代わりに山札から一枚引く。更に『恫喝の
「早速始まったな。盤面操作」
「この後どうなるかだな」
大介が手札を一枚『ドロップゾーン』に送って山札から一枚手札に加える。
それを見た竜馬と貴之は、もうこの段階で『ぬばたま』が動き始めていることを悟った。
『ドレッドマスター』の処理を終えて後列中央に、白い髪を持って鬼の面を横側に傾けている人に近しい小鬼の『キリハゲ』を『コール』する。
「あんなにパワーが低いのに、スキルもないの?」
「その理由は『シールドパワー』にある。『キリハゲ』のそれは『トリガーユニット』に近い数値を持っているからな……」
『キリハゲ』がスキルも無いのにパワーが7000と少々低めの数値だったことで、友希那が疑問に思った。
その理由が貴之から説明されたことで友希那は納得する。燐子はこれと似たような手合いの『おらんじぇっと』の存在を知っていたので、別路線のタイプだと納得できていた。
大介はできることが残っていないのでターンを終了し、弘人に譲る。
「『ライド』!『ストームライダー ステリオス』!更に『ティアーナイト テオ』を『コール』!」
弘人の姿が水陸両用車に乗った兵士の『ステリオス』に変わり、後列中央に長銃を持った兵士の『テオ』を『コール』する。
この時『ステリオス』のパワーを見た燐子が、一つのことに気付く。
「グレード1にもああいうタイプのユニットがいるんだ……」
「グレード2だと『インターセプト』が使えないから中々難しいけど、
ああいうタイプと言うのは、『おらんじぇっと』のようにスキルと『シールドパワー』がない代わりに、一つ上のグレード並みのパワーを持つユニットのことだった。
グレード2だとヴァンガードとして使用する、手札を捨てる系のスキルでコストにするくらいしか選択肢が出てこないが、グレード1なら後列に置いて『ブースト』要員に回せるのが強みになる。
「攻撃はできるが、『アクアフォース』の本領は次のターンまでお預けだな」
「……?何か足りないの?」
「ああ。『アクアフォース』が力を発揮するには、攻撃回数が関わってくるからな……場にいるユニットが足りないんだ」
竜馬の呟きを拾った友希那が彼に問うと、肯定と一緒に説明が帰ってきた。
攻撃回数ということは、一回目からスキルを使えるユニットは少ないと友希那は予想した。
「効果が使えなくとも、攻撃はしよう。『テオ』のブーストをした『ステリオス』で、ヴァンガードにアタック!」
弘人の攻撃宣言に大介はノーガードを選択。『ドライブチェック』の結果はノートリガーだった。
イメージ内では、『テオ』の援護射撃を受けた『ステリオス』となった弘人が、『ドレッドマスター』となった大介の懐に飛び込んで至近距離の射撃を浴びせる。
相手からの攻撃がヒットした大介の『ダメージチェック』は
このターンの間にできることが全て終わった弘人はターン終了の宣言をし、大介に番を回した。
「俺は『忍竜 マガツゲイル』に『ライド』!登場した時『カウンターブラスト』と『ソウルブラスト』をしてスキル発動!一枚引いて、このターンの間パワープラス6000だ!」
大介は忍者らしい衣装に身を包んだ竜の『マガツゲイル』にライドする。
『マガツゲイル』のパワーは本来9000だが、スキルによって15000まで上がった。
「『月下の忍鬼 サクラフブキ』を『コール』!こいつが登場した際、こちらのユニットが三枚以上なら手札を一枚捨ててパワーをプラス3000!」
後列左側に黒が基調となった衣装に白の鎧を身に纏った白髪を持った鬼、『サクラフブキ』を『コール』し、スキル処理を行う。
今使った『サクラフブキ』のスキルはもう一つの能力があり、今回は条件を満たしているので使用可能になっていた。
「更に、こちらの『ダメージゾーン』にある表のカードが一枚以下なら、一枚引いて『カウンターチャージ』」
条件は『ダメージゾーン』にある表のカードの枚数にあり、その条件を満たしていた場合の効果処理を行う。
これによって、先程パワーを上げる為に消費した手札を取り戻す形になった。
「大分忙しい『クラン』ね……」
「『ぬばたま』は色んな場所に影響を及ぼすからな……。多分、後もう一個出てくるな」
自分の使った『シャドウパラディン』や、貴之の使う『かげろう』と比べて明らかに複雑な処理が多く、使用回数も多いので友希那はそう感じた。
そんな友希那の呟きを拾った貴之は、答えながら大介の次に行う一手に予想を付ける。これができるのは度々彼のファイトを見ているのが一助している。
「更に『千本太刀の忍鬼 オボロザクラ』を『コール』!こちらのユニットが三枚以上なら『カウンターブラスト』をしてスキル発動!パワーをプラス6000!」
大介の前列左側に複数の太刀を携えて槍を手に持っている『オボロザクラ』が『コール』され、ユニット枚数によるスキル処理が行われた。
先程の『カウンターチャージ』はこれを狙ってのものであり、貴之の予想は当たっていた。
今回は『ダメージゾーン』にあるカードが元々一枚なので余り関係ないが、この『カウンターブラスト』も発動したスキルが持つもう一つの能力を狙いやすくするものでもある。
「更に、こちらの『ダメージゾーン』にある表のカードが一枚以下なら、一枚『ソウルチャージ』だ」
「一気に動いて行きますね……」
「ああやって前準備でやれることが多い……やることが多いに繋がってる『クラン』だからな……」
このターンでの処理の多さを見て燐子が呟けば、それを竜馬が拾う。
「もう少し待って欲しいんだけどね……そうはしてくれないよね」
「お前相手に待っている余裕がない……って言うよりか、俺の『ぬばたま』はこうなんだからしょうがないだろ」
自分の『アクアフォース』が十分に動けていないので、弘人は胸の内をぼやいた。
しかし自分のデッキを把握されている以上待たれることは無いだろうし、そもそも大介のデッキがそう言う組み方をしているのだから、彼の言い分は最もで、割り切って乗り切ることを選ぶしかない。
「じゃあ俺も攻撃と行こうか。『キリハゲ』の『ブースト』、『マガツゲイル』でヴァンガードにアタック!」
「それはノーガードにするよ」
弘人の宣言を聞いた大介は『ドライブチェック』を行い、結果は
イメージで『マガツゲイル』となった大介が数枚の手裏剣を同時に投げつけ、それらが『ステリオス』となった弘人に刺さる。
攻撃がヒットしたので弘人が『ダメージチェック』を行った結果はノートリガーだった。
「次、『サクラフブキ』の『ブースト』、『オボロザクラ』でヴァンガードにアタックだ!」
大介の宣言を聞いた弘人は今回もノーガードを選択。後々自分が攻める為のカードを残すことを選んだ。
イメージ内で、『サクラフブキ』と『オボロザクラ』は二人で左右から『ステリオス』となった弘人に近づき、それぞれの手に持った武器で彼を斬り伏せた。
再び攻撃を受けて『ダメージチェック』を行うが、今回もノートリガーだった。
「これで俺はターン終了だ」
「分かった。僕のターン、『スタンド』アンド『ドロー』……そろそろ波に乗らせてもらおうかな」
ターンを回してもらった弘人が笑みを浮かべる。
このターン以降から本領を発揮しやすくなる為、それを待ちわびてのものだった。
「波に乗る……玲奈みたいな言い回しね」
「やっぱりそう思うか。あいつも『クラン』の背景を意識してるんだろうな」
流石に玲奈の時程ではないものの、それらしい言い回しだったことに友希那は気が付いた。
玲奈場合は『ペイルムーン』と言うサーカス団の『クラン』なので演目、弘人は『アクアフォース』と言う海軍である為海を意識した波……と言った具合になる。
「『ライド』!『潮騒の水将 アルゴス』!『
弘人の姿が将校を思わせる制服をきた『アルゴス』に変わる。
更に前列左側に一対の光剣を持った兵士の『タイダル・アサルト』を、後列左側に『ステリオス』を『コール』する。
「……
「「……え!?」」
貴之の呟きに、友希那と燐子が驚いて思わず素っ頓狂な声を上げる。
前列のユニットは二体しかいないのに、どうやって四回も攻撃するのだろうか?友希那と燐子の二人はそれが気掛かりだった。
「スキルの重ね合わせだな。詳しいことは『バトルフェイズ』を見ながら話すぞ」
二人の反応を拾って竜馬が一言だけ答え、ファイトの流れを見るように促す。
確認してみれば、『タイダル・アサルト』のカードに手を添えている弘人の姿があった。
「『タイダル・アサルト』でヴァンガードにアタック!一ターンに一度だけ、アタックした時『ソウルブラスト』することによってスキル発動。『タイダル・アサルト』は『
イメージ内で『タイダル・アサルト』の攻撃にどことなく余力を感じさせるものがあり、それを目の当たりにした友希那と燐子が驚く。
数回『スタンド』することによって、荒波に乗ったかのような勢いで圧倒するのが『アクアフォース』の戦い方である。
イメージ内では『タイダル・アサルト』が手に持った二つの剣で、『マガツゲイル』となった大介の体を斬り裂いた。
「そいつはノーガード。『ダメージチェック』は……ノートリガーだな」
「次だ。『ステリオス』の『ブースト』をした『タイダル・アサルト』で、ヴァンガードにアタック!」
「それは『サクラフブキ』で『ガード』だ!」
大介の『ダメージチェック』が終わったと同時に二回目の攻撃を行う。
今回は『サクラフブキ』の『シールドパワー』が加算されたことで『マガツゲイル』のパワーは19000、『ステリオス』のパワーをもらった『タイダル・アサルト』は18000の為、防ぎ切ったことになる。
イメージ内では二回目の攻撃が来る直前に『サクラフブキ』が現れ、刀で受け止めた。
「『タイダル・アサルト』はこのターンスキルを使うことができない……。ここから後二回攻撃するなら『アルゴス』のスキルかしら?」
「鍵を握っているのが『アルゴス』なのは正解だ。この後どうなるかはファイトで見てみようか」
四回攻撃ができることと、『タイダル・アサルト』がスキルを使ってしまったことを考慮して友希那が立てた推測は当たりだった。
流れを見ることができるようになったのが嬉しく思いながら貴之は促し、友希那も頷く。
「まだまだ……『テオ』の『ブースト』をした『アルゴス』でヴァンガードにアタック!アタックした時、『カウンターブラスト』と『ソウルブラスト』をしてスキル発動。『ヴァンガードサークル』にいる『アルゴス』の攻撃が二回目以降のものならば、リアガードを一枚『スタンド』させられる!『タイダル・アサルト』よ、『
「……ノーガード」
ファイトの方に戻ると、弘人が三回目の攻撃を行っていて、大介は悩んでからノーガードを選択した。イメージ内では『アルゴス』となった弘人の命を受けた『タイダル・アサルト』が再び攻撃できる構えを取っていた。
相手がこのターンの段階で非常に多い回数攻撃をしてくるので、ダメージを受け過ぎないようにするか、ここで手札を使い過ぎると次のターンが苦しくなるからノーガードでやり過ごすかの苦い二択だった。
「これが理由だったのね……」
「ああ。『アルゴス』もユニットを『スタンド』させるスキルを持っていたんだ」
ユニットは二体しか前列にいないのに、その倍の数攻撃したことに友希那は呆然とする。
大介の宣言を聞き届けた弘人は『ドライブチェック』を行い、
イメージ内で、『アルゴス』となった弘人の持つ二つの機関銃と、『ステリオス』が持っている銃の波状攻撃に『マガツゲイル』となった大介が晒されていた。
攻撃がヒットしたことによる『ダメージチェック』で、大介は
「最後だ。『タイダル・アサルト』でヴァンガードにアタック!」
「上がったパワーが勿体無いが、ここはノーガードだ!」
パワーが同じであった為、ガードすればダメージを受けることを免れられたが、手札温存をしたい大介はその選択を捨てた。
「手札の温存ですか?」
「相手が『アクアフォース』だし、
燐子疑問に竜馬が理由を説明する。元々ダメージを受ける覚悟はしていたので、パワーが上がって攻撃が届かなくなったならそれでよし、ダメならその時はノーガードと割り切っていたのだ。
『ダメージチェック』は
「乗り方を間違えたかな……僕はターン終了だ」
ターン終了宣言をした弘人の表情は、少々困ったような笑みだった。
自分の予想と比べて、相手の状況に余裕ができているからだ。
「本当なら後一ダメージは与えるか、手札の一、二枚は消費させておきたかっただろうな……」
「このターンの流れが、後々どう響くか……」
竜馬と貴之は弘人が浮かべた表情の理由を理解していた。
通常のクランであるならば前列のユニット二体で2ダメージなら十分だと言えるが、今回はスキルによって手数を増やした状況だったので、手数の割に不足を感じていたのだ。
そんな二人のやり取りを、まだ経験の浅い友希那と燐子の二人は一先ず、与えておきたいと考えるダメージに差があることだけ理解しておくことにした。
「さて、俺のターン……『スタンド』アンド『ドロー』……さて、今日はお前に頼もうか」
「(……どっちが来るかな?)」
大介の言葉を聞いた弘人が身構える。大介は二つの戦術を取れるような構成をしており、それによって彼の動きが変わってくるからだ。
ファイトを見ている貴之と竜馬はどっちを出すのか予想しながら、友希那と燐子はそんな方法もあるのかと思いながら、選択されるユニットが現れるのを待つ。
「選んだのはこっちだ……『隠密魔竜 マガツストーム』に『ライド』!」
「そっちを選んだか……最初にあいつとファイトした時を思い出すな……」
大介の姿が、暗い蒼色の体を持ち、巨大な手裏剣を携えた巨竜……『マガツストーム』のものになる。
このユニットは貴之が始めてファイトした時にも使用されていたもので、それを見た貴之が当日のことを思い出した。
また、グレード3になったことで『ぬばたま』が持つ『イマジナリーギフト』が判明することになる。
「『イマジナリーギフト』……『プロテクト』!」
「手札に加えた……?」
「ああそっか……友希那は始めて見るんだったな」
『ぬばたま』が持つのは『プロテクト』で、それを獲得した大介は手札に加える。
友希那が首を傾げるのが見え、貴之は友希那は『プロテクト』を始めて見たのを思い出した。
それもそのはずで、始めて友希那がヴァンガードに触れた日は基本的に貴之と同じテーブルにいて、大介とは別のテーブルだったのが理由で彼のデッキをまともに見る機会を逃していたのだ。
また、燐子とも今回歌詞を作るのに当たってヴァンガードの話しはしていたが、ファイトの機会を得られていなかった。
「『プロテクト』は自分のターンじゃなくて、相手のターンで効果を発揮する『防御型』の『イマジナリーギフト』なんだ。……効果の内容は実際に見るか?」
「ええ。そうするわ」
貴之に問われた友希那は頷く。今までもそうだから今回もと言う思いがあったのだ。
ここを離れる前から、貴之は実際に見たりやったりしながら説明するスタイルが主で、友希那自身も実際に目の当たりにして好ましく思うようになっていたのも起因する。
あのレクチャー方法の利点としては、プレイしながら説明するので、説明書だけの時と比べて解らないとなることが少ないことにある。
逆に、難点としては一辺に知識を詰め込むので混乱しやすいことと、教える側が忘れると取り返しのつかない状況に陥る可能性があることだった。
「よし……『キリハゲ』の『ブースト』、『マガツストーム』でヴァンガードにアタック!」
「なら僕は、『虹色秘薬の医療士官』で『ガード』!」
本当なら空いている右側の『リアガードサークル』を埋めても良かったのだが、今回は後々の展開を考えて温存を選択した。
イメージ内で『アルゴス』となった弘人の前に、治療者のリストと複数の医療薬を持った看護師の女性……『医療士官』が現れる。
『キリハゲ』の『ブースト』を貰った『マガツストーム』のパワーは19000。『医療士官』の『シールドパワー』を貰った『アルゴス』のパワーは29000となった。
「行くぞ……『ツインドライブ』。ファーストチェック……」
大介が行う『ツインドライブ』の一枚目は
そして、二枚目のチェックでは
「パワーは『オボロザクラ』、
「そっか……パワーが同じなら攻撃側が勝つから、ヴァンガードに回すと余っちゃうんだ」
「燐子はこのパターンを見るのは始めてだったな」
燐子の反応を見て、貴之は彼女と始めてファイトした時を思い返す。
全体的にパワー差が大きいファイトだったので、このパターンを燐子には見せられなかったのだ。
トリガーを引き当てられ、攻撃を通されたことに歯嚙みしながら行った弘人のダメージチェックでは、二枚とも
これによって、せっかくパワーを上げた『オボロザクラ』の攻撃は、ヴァンガードに通らなくなってしまったのだ。
「だがリアガードには攻撃できる。『サクラフブキ』の『ブースト』、『オボロザクラ』で『タイダル・アサルト』を攻撃だ!」
「……いいだろう。ノーガードだ」
一度手札を確認してから、弘人はノーガードを宣言する。その選択を疑問に思った大介だが、相手のユニットを減らせるならそれでいいと割り切る。
イメージ内では『サクラフブキ』と『オボロザクラ』の連携で、『タイダル・アサルト』が切り伏せられ、光となって消滅していた。
できることを終えた大介はターン終了を宣言し、弘人にターンを回した。
「『マガツストーム』を選ばれた以上悠長にはやっていられない……このターンで、荒波に乗って見せよう!」
「お二人さん、このターンは必見だぜ。あいつらによる全力のぶつかり合いが始まるからな」
何が起こるかを悟った竜馬が友希那と燐子に促す。
二人が顔を見合わせてから貴之の方を見てみると、竜馬の言う通りだと言いたげな笑みを見せて二人がファイトしている方を指さしていたので、二人もファイトの方に目を向けた。
「『ライド』!『蒼嵐竜 メイルストローム』!」
弘人は蒼と紫の身体が目を引く巨大な竜、『メイルストローム』にライドする。
「『イマジナリーギフト』、『アクセル』!」
「貴之君、あれが私が見てない『イマジナリーギフト』だよね?」
「ああ。あれは『リアガードサークル』の横側にアクセルサークル』として設置して、新しい『リアガードサークル』として使えるようにするものでな……獲得する度に『アクセルサークル』を増やしていくんだ。増えた手数で一気に押していく『攻撃型』の『イマジナリーギフト』だな」
『アクアフォース』が持つのは『アクセル』で、燐子に問われた貴之は肯定して説明を行う。
この『アクセルサークル』で更にユニットを増やし、恐ろしい攻撃回数の獲得と、それに伴うスキルでの強化を両立できるのが『アクアフォース』であった。
「集結せよ!『アクアフォース』の兵たちよ!更に『カウンターブラスト』することで『メイルストローム』のスキル発動!前列のユニット全てにパワープラス3000!」
前列左側には新しく『タイダル・アサルト』が、『アクセルサークル』には『アルゴス』が、前列右側には騎士のような面影を持った兵の『ティアーナイト ラザロス』が、後列右側には鎖の付いた武器を手に持った人魚の女性『
これによって弘人の場にいるユニットは七体、内前列の四体がパワープラス3000。更にここからスキルで攻撃回数を増やせると言う、恐ろしい盤面が広がっていて、友希那と燐子は戦慄する一方で、貴之は一つの確信に至る。
――このターンを制した方が、このファイトの勝者になる……。彼らの手札と場にいるユニットを確認しての確信だった。
「勝負だ大介……!」
「いいだろう。来い!」
このターンで決められるか否かになっているのは二人も理解しているようで、弘人の声に大介は応じる。
「まずは『アルゴス』でヴァンガードにアタック!アタックした時、一回目の攻撃なら『カウンターブラスト』することでスキル発動。『スタンド』する!」
「もう一回目の『スタンド』……!?」
「『タイダル・アサルト』のスキルもあるから……もう六回攻撃できることが決まってる……!?」
ヴァンガードにいた場合だと二回目以降が条件になる『アルゴス』だが、リアガードにいる場合は一回目の時のみ発動することができる。
二回目の攻撃準備が早すぎることに友希那が、少なくとももう一度攻撃回数を増やせることが決まったことに燐子が驚く。
大介は『キリハゲ』を使って『ガード』し、ダメージを抑える。
「次、『テオ』の『ブースト』、『メイルストローム』でヴァンガードにアタック!」
「なら『プロテクト』を発動だ!」
イメージ内で『メイルストローム』が放った無数のミサイルは、『プロテクト』が作り上げた防御型の方陣によって受け止められた。
「あれが『プロテクト』の能力なのね……」
「一見すると『完全ガード』の補充って言う、他と比べて地味に見える効果だけど……本来四枚までしかデッキに入れられない『完全ガード』を多く使えることが、守りに入る上で絶対的なアドバンテージになるんだ」
貴之の説明を聞いた友希那は確かにそうだと思った。手札を必ず二枚消費すると言う面はあるものの、どの攻撃も一回は防げると言う点が大きかった。
その後の『ツインドライブ』で、一枚目は
「次は『タイダル・アサルト』でヴァンガードにアタック!この時スキルを発動して『スタンド』させる!」
「……ノーガード」
この後『メイルストローム』のスキルを使わせてしまうのが痛いところだが、後々攻撃を受けにくくする為のパワー確保と、手札温存の為にノーガードを選択する。
トリガーが出ることに賭けた『ダメージチェック』だが、思惑が外れてノートリガーで、大介に取ってはかなりの痛手となった。
「リアガードの攻撃がヒットした時、三回目か四回目の攻撃なら手札を二枚捨てて、『メイルストローム』は『
「ドライブの数は減らない……。ノートリガーだったのは痛いわね……」
「だが……『マガツストーム』ならまだやり様はある」
貴之が使う『オーバーロード』とは違い、『メイルストローム』は条件の厳しさからデメリットが無く、コストも『カウンターブラスト』が無くなっている。
それを見て友希那は苦い顔をするが、『マガツストーム』のスキルを知っている貴之はまだやれると確信していた。
「もう一度、『メイルストローム』でヴァンガードにアタック!」
「これの使いどころだな……。『カウンターブラスト』とリアガード二体を退却させて『マガツストーム』のスキルを発動!このバトルの間、『マガツストーム』に攻撃はヒットしない!」
再び放たれた『メイルストローム』のミサイルは、『マガツストーム』となった大介の前に割って入った『オボロザクラ』と『サクラフブキ』に吸い込まれていく。
それの爆発によって生まれた煙が晴れると、無傷の彼らがそこにいた。着弾の直前に『マガツストーム』と共同して行った忍術により、姿を消していたのだ。
「『ガード』と違う避け方……。でも、手札を消費しないのは嬉しいかな」
「相手が相手だからな……消耗しないで済むなら有り難い話しだ」
手札が多いとどんなメリットがあるかを心得ている燐子は、『マガツストーム』のスキルに一つの安心感を覚える。
それに関しては竜馬も同意で、攻撃回数の多い『アクアフォース』相手から守り切りやすくなるのは大きいことだった。
「仕方ない……『ツインドライブ』……」
相当雲行きが怪しくなってきた弘人は、祈りを込めて『ツインドライブ』を行う。
その結果一枚目はノートリガー。二枚目は
「まだ攻撃は残されている……『ビビアナ』の『ブースト』した『ラザロス』でヴァンガードにアタック!」
「少しだけ余裕がある……ここはノーガードだ」
一番苦しい場面の半分を過ぎ、残り何枚あれば耐えられるかの計算に入った大介、一度ノーガードを選択する。彼も次のターンで決めなければ後がないものの、弘人程追い込まれているわけではない。
イメージ内で『ビビアナ』が武器で『マガツストーム』となった大介を縛って動けなくしたところを、『ラザロス』が剣で攻撃すると言う光景が見えた。
『ダメージチェック』では
「まだだ……!『ステリオス』の『ブースト』、『タイダル・アサルト』でヴァンガードにアタック!」
「『忍妖 ザシキヒメ』で『ガード』!」
合計で36000となった『タイダル・アサルト』の攻撃は、『ザシキヒメ』とトリガー効果で合計42000となったパワーの前に阻まれた。
「『タイダル・アサルト』のスキルが枷になったか……」
「『スタンド』する際にペナルティがあるの?さっきは何もなかったけど……」
「さっきは一回目のアタックだったからな……『タイダル・アサルト』は二回目以降の攻撃でスキルを発動した場合、パワーがマイナス5000されちまうんだ」
「『アクアフォース』は攻撃回数から大胆に見えて、結構繊細なんですね……」
貴之の呟きを拾った友希那が不思議そうに問いかける。何しろさっきのターンではペナルティが発動しなかったからだ。
その理由を竜馬が説明し、それを聞いた燐子は『アクアフォース』の裏側の性質を言葉にする。
燐子の回答は
最後にスタンドしている『アルゴス』で攻撃をするが、これも『ドレッドマスター』によって防がれる。
この結果攻め切ることができず、次のターンを手札四枚と場にいるユニットたちで耐えなければならないと言う、弘人に取っては非常に痛いものが残った。
「ターン終了……」
「七回もの攻撃を耐えきった……『ぬばたま』の守りも凄いわね」
「実際にファイトしてても骨が折れるかと思ったくらいだからな……」
『アクアフォース』の攻撃能力もそうだが、それを耐えきった『ぬばたま』の守りもまた凄まじいものだと友希那は感じた。
自分の時もその頑丈さに舌を巻いたことのある貴之は、少々困った笑みを見せていた。
「さあ……このターンで終わらせるぞ……もう一度『マガツストーム』に『ライド』!『プロテクト』を獲得だ!」
そして迎えた大介に取って四回目の手番は、『マガツストーム』に『ライド』することから始まった。
これにより再び『完全ガード』を握られてしまったので、どの道弘人に取っては相当苦しい展開になる。
「『
大介は前列右側に『マガツゲイル』を、後列左側に『ドレッドマスター』を、前列左側に『オボロザクラ』を『コール』する。
「行くぞ……『マガツゲイル』でヴァンガードにアタック!」
「それはノーガードだ」
ダメージこれを受けてもダメージ6にはならないので、消耗を避ける為にノーガードを選択する。
この時の『ダメージチェック』では
「アタックしたバトル終了時、『マガツゲイル』のスキル発動!こいつを『ソウル』に置くことで、『リアガード』を一体手札に戻す……『キリハゲ』、一度戻って来い!」
「来るぞ……!『マガツストーム』の真骨頂が……!」
大介の宣言と行っている処理を見て、貴之が友希那と燐子に呼びかける。
そう言われた二人は、ただでさえ見逃すまいと見ていたファイトを更に注視する。
「リアガードが手札に戻った時、一ターンに一度……グレード3のユニットを『ソウルブラスト』することで『マガツストーム』のスキル発動……!山札から一枚引いた後、手札から三枚リアガードに『コール』し、それらのパワーをプラス5000する!」
『マガツストーム』のスキルにより、大介は後列中央に黒い忍の衣装を身に纏い、悪魔の翼が目を引く『嵐の忍鬼 フウキ』を、前列右側に『マガツストーム』を、後列右側に『キリハゲ』を『コール』した。
「相手のターンは『プロテクト』と持ち前のスキルで耐え抜いて……」
「次のターンでもう一つのスキルでユニットを強化して反撃……。これが『マガツストーム』の真骨頂なのね」
『ぬばたま』の防御力をフルに活用する『マガツストーム』のスキルに、燐子と友希那は魅入られる。
しかし、この二人はその為に相手の攻撃を耐え抜く大介の我慢強さもしっかりと見ていて、それを凄いと思った。
「行くぞ……!『フウキ』の『ブースト』、『マガツストーム』でヴァンガードにアタック!」
「それは『
『完全ガード』されてしまったものの、今回の『マガツストーム』による攻撃は、『フウキ』の『ブースト』が『マガツストーム』と『フウキ』自身のスキルで31000まで上がっていた。
『フウキ』のスキルはこのターンに自分、または相手のリアガードが手札に戻されているなら、パワーをプラス6000するものであった。
「『ツインドライブ』……」
仕方ないと割り切って、大介は『ツインドライブ』を始め、一枚目は
「効果はすべてリアガードの『マガツストーム』に。セカンドチェック……」
「(不味いな……これ以上トリガーを引かれたら、こちらも
一枚目が
そして、二枚目の『トリガーチェック』は……二度目の
「な……!?」
「効果は全て『オボロザクラ』に!」
――こりゃ
その後、『サクラフブキ』の『ブースト』を受けた『オボロザクラ』の攻撃は防ぐものの、『キリハゲ』の『ブースト』を受けた『マガツストーム』の攻撃は防ぎようが無くなった。
弘人が最後の『ダメージチェック』を行うものの、ノートリガーだったことで決着が着いた。
「「ありがとうございました」」
結果がどうであろうとまずは挨拶。考えていることが同じだった二人は同じタイミングで頭を下げる。
「お疲れさん。熱い攻防見せてくれてありがとうよ」
「それはどういたしまして。でも、攻め切れなかったことが悔やまれるかな……」
竜馬の世辞に答えながら、弘人はファイトを振り返る。やはりあのターンで攻め切れなかったことは相当の痛手だった。
しかしながら悪い選択というわけではなく、今回は大介が有利な条件で始められたことも大きいだろう。
そこまで纏めきった弘人はそれ以上表立って引きずることを辞め、気持ちを切り替えた。
「よし。俺らが終わったし、次はそっちだな……」
「ああ。それじゃあやろうか」
「おう。こっちもファイトしたくてうずうずしてからな」
貴之の促しに、竜馬は好戦的な笑みで応じる。もちろんファイトがしたかったのは貴之も同じだった。
早速ファイトの準備に取り掛かろうとする二人だが、友希那に呼ばれた貴之は一度そちらへ顔を向ける。
「今回のファイト、楽しみにしているわ」
「期待に応えるから、ちゃんと見ていてくれよ?」
――もちろん、そのつもりよ。自分の問いかけに笑みを見せてながら友希那がそう答えたので、貴之も安心した笑みを見せて頷く。
この直後準備が終わっていた竜馬に急かされたので、今度こそ貴之もファイトの準備を始めるのだった。
今回のデッキは『宮地学園
若干省略気味に書いてみましたが、これで普段通りの文章量になりました。『アクアフォース』の攻撃回数の多い……(汗)。
ちなみに初期考案の場合、大介と玲奈は『イマジナリーギフト』がそれぞれ反対になっていましたが、玲奈がファイトする際にあの口調になることを思いついて『ペイルムーン』に変更、そのしわ寄せもあって大介の『クラン』は『プロテクト』を使うものへ変更となりました。案外『アクセル』を持つ『クラン』に女性の人物に似合うものが多いのも一助している感じがありますね。
次回もこのまま連続でファイトを書いて行くことになります。