先導者と歌姫 -高みを目指して-   作:ブリガンディ

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予想以上に速筆できたので投稿です。
前作と今作合わせて、私の中で最短の投稿間隔となりました。


イメージ14 信じるべきは仲間

「じゃあやるか……!」

 

「おう!早いとこやろうぜ……!」

 

準備が終わって互いがファーストヴァンガードに手を触れたのを確認し、貴之が声をかければ竜馬が応じる。

竜馬は相変わらず好戦的な笑みを見せているが、貴之も貴之で好戦的な笑みを浮かべていた。

両者とも、それだけファイトをしたくて仕方が無かったのだ。

 

「「スタンドアップ!」」

 

全く同じタイミングで、二人は宣言を始める。

 

「ザ!」

 

「(なるほど……あの記事の内容は本当だったんだ)」

 

貴之が主力ユニットに『ライド』する際や、開始の合図をする時に『ザ』を付けると言う話しはこちらにもしっかりと届いている。

それ故に耳にした弘人は満足そうな笑みを見せる。

 

「「ヴァンガード!」」

 

そして、二人がカードを表返し、ファイトが始まる。

やはり自分をヴァンガードに導いた人がファイトするだけあって、友希那と燐子の二人が先程以上に注視しているのが見て分かった。

 

「『ライド』!『リザードランナー アンドゥ』!」

 

「『ライド』!『バトルライザー』!」

 

貴之はいつも通り『アンドゥー』に、竜馬は赤のボディに白がアクセントになっている人型ロボット『バトルライザー』に『ライド』する。

竜馬の『バトルライザー』に『ライド』した動きは少々特殊で、霊体となった彼が光の球となって『バトルライザー』の操縦席(コクピット)に送り込まれるような形だった。

 

「お前が『かげろう』だから……軸になるユニットはある程度分かるな」

 

「まあ使い続けてりゃこんなこともあるよな……」

 

貴之自身、自分のデッキコンセプトが割れてしまう可能性は十分にあり得ていた。

これが苦しい点としては立ち回りがバレやすく、対策を立てられやすいことにある。これが相手に無言の圧をかける可能性もあるのだが、十分に実力があったり、全く情報を集めていない相手には基本的に効果を成さない為、その効果を期待するのは良くない。

しかしながら、バレていたとしても勝ってこそ自分の目指す場所にたどり着けるので、これくらいで音を上げる理由など一切無かった。

――寧ろ、思いっきり挑んでくれた方がこっちとしても嬉しい。こう思っている辺り、自分もヴァンガードファイトが好きでしょうがないのだろうと貴之は思った。

 

「そう言うお前は『ノヴァグラップラー』か……如何にもって感じがするな」

 

「ああ。当然出し惜しみなんかしてらんないし……最初から飛ばさせてもらうぜ……!」

 

大介と弘人の二人が見かけによらない『クラン』なら、こちらは比較的……或いは十分に見かけや印象通りの『クラン』だった。

竜馬が最初から飛ばしていくと言っているのは、『ノヴァグラップラー』の特性上の問題もあるが、貴之相手に様子見なんてしてたら絶対に負けると言う確信を持っていたからだ。

 

「弘人、この二人に『かげろう』の説明は不要だから、『ノヴァグラップラー』だけ話すぞ」

 

「もう見ているってことだね?」

 

弘人の問いに大介は頷く。ヴァンガードに導いてくれた人のデッキを知っているのはごく自然な話しだろう。

故に弘人も特に気にすることは無く、説明に回ることを選べた。

 

「『ノヴァグラップラー』は『スターゲート』に所属する世界的に人気のあるプロ格闘技集団なんだ。まああらゆる武器、兵器、魔法、改造が許容されているから、無差別級の戦いはほとんど戦争と変わらないくらい過酷なものになるけど……」

 

「改造……」

 

「戦争……」

 

弘人の説明を聞いてから顔を青くしながら友希那、燐子の順で呟く。

――制限がある時はまだわからないけど、無差別級はやりすぎなんじゃ……。二人の抱いた感想は同じだった。

 

「ファイト内では超が付く程速攻型の『クラン』だな。爆発力は凄まじいが、その分息切れも早い」

 

「骨を断たれる前に骨を断つ……そう言うことですか?」

 

大介の説明を聞いた燐子が問いかけると、頷いてくれた。

――大神君以外は、速い展開が好きなのかな?貴之を省く三人の『クラン』を見た友希那と燐子はそう思った。

ちなみにこの時、燐子の発言が彼女にしては結構飛んでいたので友希那が思わずそちらを振り向いた。

 

「息切れの早さに関してはフォローのしようがないくらいでね……。開始数ターンで決められないと一気に(・・・)勝ちが遠のくくらいなんだ」

 

「弱点が浮き彫りになるよりも早く勝つ必要があるなら……このファイト、短期決戦になるわね」

 

間違いなく、『ノヴァグラップラー』はここにいる男子四人どころか、友希那と燐子を含めた六人が使う『クラン』の中でぶっちぎりの息切れ速度が弱点になっている。逆に息が長持ちするのは、大介の『ぬばたま』になる。

貴之がデッキの本領を発揮できるようになるまで耐えるか、それとも竜馬が力尽きるよりも早く倒し切るか……。そうなるだろうと友希那はファイトの流れを予想できた。

予想できた理由としては、貴之の『クラン』を知っている。竜馬の『クラン』が速攻型で、尚且つ出し惜しみは無しだと本人が宣言しているこれらも手助けしていた。

そしてファイトは竜馬の先攻で始まり、彼がグレード1のユニットに『ライド』しようとしていた。

 

「『ライド』!『ライザーカスタム』!『バトルライザー』のスキルで一枚ドローだ」

 

竜馬がオレンジと白の二色が目を引く人型ロボット『ライザーカスタム』に『ライド』する。

これも『バトルライザー』の時と同じで、操縦席(コクピット)に送り込まれるような形のものだった。

 

「……さっきから彼の『ライド』が少々特殊ね?」

 

「あらゆる操縦者に対応させることをコンセプトにした人型のバトロイドだからな……『ライザー』って名の付くユニットに『ライド』する場合は基本的にああなる」

 

「自分で動かすなら、それもまた『憑依(ライド)』……と言うことかしら」

 

大介の話しを聞いた友希那は顎に指を当て、考えるような素振りを見せる。

操縦されている間はユニットの意思で動けると言う訳ではないので、そう言う意味では正しいのだろう。

 

「(さて……俺はどっちを選ぶかな?)」

 

相手の『ヴァンガードサークル』に『ライザーカスタム』が現れたことによって、貴之は考え込む。

原因は『ライザーカスタム』のスキルにあり、それ故に二つの選択肢が迫っていたのだ。

 

「行くぜ……『ライザーカスタム』スキル発動!手札を一枚『ソウル』に置くことで、このターンドライブを1減らす代わりに、先攻でも攻撃できる!『ライザーカスタム』でヴァンガードにアタック!」

 

イメージ内で、赤い光の球を吸収した竜馬の操る『ライザーカスタム』が地面を蹴った。

貴之が考えていたのは、このターンにガードをするか否かであり、出てきたのが『ライザーカスタム』で無ければこの考えはしないで済んでいる。

 

「せ……先攻から攻撃!?」

 

「本来は後攻からでないと攻撃できないけど、それを可能にする……『ノヴァグラップラー』が持つ最大の強みだね。その代償が手札関係になってるけど」

 

『ライザーカスタム』のスキルを見て、以前の自分だったら早速大慌てだったろうと燐子は思った。今なら驚きこそすれど、『オラクルシンクタンク』の仲間たちがいるのでそこまで慌てないだろう。

彼女の驚いている様子を見た弘人は、『ノヴァグラップラー』を始めてみるならそうだろうなと思いながら説明する。

先攻から攻撃できることには友希那も驚いているが、今回はそれ以上に短所の方に目が行っていた。

 

「最初から全速力……何というか、燃費を度外視した競技用の車みたいね……」

 

――後先を気にしないのは、まるで昔の私みたいね……。顔には出なかったものの、父親の音楽を否定された直後の自分を思い出して友希那は苦い想いをした。

正確にはリサが離脱を宣言するまでの時だが、後先気にせず自分本位で進み続けたのは事実だった。

嫌なものを思い出してしまったことで友希那にはそう見えていたが、『ノヴァグラップラー』は後先を気にしないというよりは気にしてたら負ける(・・・・・・・・・)と言うのが正しい。この辺りが息切れの速さを助長している。

 

「ノーガードにするか。『ダメージチェック』……」

 

別に1ダメージなら問題ないと判断した貴之はノーガードを宣言する。

イメージ内で竜馬の操る『ライザーカスタム』の拳が、『アンドゥー』となった貴之に打ち付けられた。

ダメージを受けたことによる『ダメージチェック』ではノートリガーだった。

『バトルフェイズ』を終えたことで竜馬はターンを終了し、貴之に手番を回す。

 

「『ライド』!『ドラゴニック・ガイアース』!スキルで一枚ドローし、『バー』を『コール』!」

 

貴之は『ガイアース』に『ライド』し、スキルによって引き当てた『バー』を後列中央に『コール』する。

普段ならば前後が反対になっている組み合わせを見て、大介は珍しいことが起きたのを理解する。

 

「こっちも攻撃だ……『バー』の『ブースト』をした『ガイアース』で、ヴァンガードにアタック!」

 

「ノーガード……!」

 

攻撃が来るものの竜馬はノーガードを選択する。

この選択はまだダメージを受けていないからと言うものもあるが、『ノヴァグラップラー』と言う『クラン』の性質上、これ以上喰らうのは危険でガードができる状況下以外はガードをしない(・・・・・・)つもりでいるのが正しい。

貴之は『ドライブチェック』で(クリティカル)トリガーを引き当てたので、竜馬は2ダメージを受ける。『ダメージチェック』では二つともノートリガーだった。

予想よりもいい結果に転んでくれたのを見届けて、貴之はターン終了を宣言する。ここで気を抜かないのは、相手が『ノヴァグラップラー』だからと言うのが大きい。

 

「さて、第二ラウンドだ……!『ライド』!『ハイパワードライザーカスタム』!登場時、スキルによって『ソウル』に置かれている『バトルライザー』をリアガードに『コール』!更に『ライザーカスタム』と『アイアン・キラー』を『コール』だ!」

 

自分のターンが回ってきた竜馬は、『ハイパワードライザーカスタム』に『ライド』する(乗り換える)

更にスキルによって後列中央に『バトルライザー』が『コール』される。この『バトルライザー』は竜馬が乗り込んでいないので、自立回路で動くと言う扱いになる。

これだけでは終わらず、後列左側に二体目の『ライザーカスタム』、前列左側に紫色のボディが目を引く、手首が鉄球になっている刺々しさあるバトロイド『アイアン・キラー』が『コール』される。

 

「三回攻撃か……来い!」

 

「なら遠慮なく……!『ライザーカスタム』の『ブースト』……『アイアン・キラー』でヴァンガードにアタック!ヴァンガードにアタックした時、自分のリアガードが三枚以上なら『アイアン・キラー』のパワーはこのバトル中プラス5000!」

 

貴之の呼びかけに、竜馬は迷うことなく攻撃を始める。

と言うよりも、相手が何と言おうとも攻撃の手を緩めたらこちらの勝ち目が遠のく以上、待つと言う選択肢が無い。

1ダメージなら問題無いので、貴之はノーガードを選ぶ。

 

「またスキルかしら?」

 

「それは『ハイパワードライザーカスタム』の攻撃がヴァンガードにヒットした時に分かるよ」

 

友希那の疑問には弘人が答え、それを聞いた友希那はならヒットしなかった時に聞くことにして、ファイトを見ることにした。

貴之はノーガードを選択し、イメージ内で『アイアン・キラー』の左手から飛んできた鉄球に殴られる。

攻撃がヒットしたので『ダメージチェック』を行った結果はノートリガーだった。

 

「もういっちょ……!『バトルライザー』で『ブースト』した、『ハイパワードライザーカスタム』でヴァンガードにアタック!」

 

「いいぜ……!ノーガードだ」

 

相手のトリガーとこちらのトリガー次第で次を決めることにして、貴之はノーガードを選択する。

イメージ内で竜馬が操る『ハイパワードライザーカスタム』の、エネルギーを回したことによって発熱した右腕の拳に、『ガイアース』となった貴之が殴り飛ばされる。

二度目の『ダメージチェック』は再びノートリガーで、貴之のダメージは3になる。

 

「攻撃がヴァンガードにヒットした時、『カウンターブラスト』と『リアガードサークル』にいる『バトルライザー』を『ソウル』に置くことで『ハイパワードライザーカスタム』のスキル発動!リアガードを一枚『スタンド』させる!俺は『アイアン・キラー』を『スタンド』させる!」

 

「『ノヴァグラップラー』には攻撃回数は関係ないんですよね?」

 

「ああ。『ノヴァグラップラー』はそんなに厳しい条件は持っていない」

 

イメージ内で膝をついて待機していた『アイアン・キラー』と、『ライザーカスタム』が立ち上がる。

自分の質問に大介が肯定してくれたので、燐子はその代償が息切れなのかなと考えた。

 

「まだあるぜ……!『ライザーカスタム』で『ブースト』して、『アイアン・キラー』でヴァンガードにアタック!」

 

「ノーガードだ」

 

先程の『トリガーチェック』で何も来なかったのを確認した貴之のはノーガードを選択。さっきのが(クリティカル)ならガードを選択していただろう。

イメージ内で今度は『アイアン・キラー』の右手から飛んできた鉄球に、『ガイアース』となった貴之が殴られる。

次の『ダメージチェック』では(ヒール)トリガーを引き当て、貴之のダメージは3で留まった。

 

「なんてこった……そこで引かれるとはな」

 

「これでちょっとは楽になったかな……気は抜けねぇが」

 

『ノヴァグラップラー』を使う身としては、一回でも(ヒール)トリガーを引き当てられるのが痛い為、竜馬は思わず苦い顔をする。

貴之も安堵の様子を浮かべた上で気を抜いていないのは、次のターンまでが『ノヴァグラップラー』で最も勢いのある時間帯だからだ。

逆に言えば、その後はどの『クラン』よりも失速が速いため気が楽になるが、それは耐えきればの話しである。

 

「ちょっとでも手は打っておかねぇとな……『ライド』!『バーサーク・ドラゴン』!スキルで『ライザーカスタム』を退却させ、『ヴァンガードサークル』にいるから一枚ドローだ」

 

貴之は『バーサーク・ドラゴン』に『ライド』し、左側の頭から吐き出した炎で『ライザーカスタム』を機能不全に追い込み、退却させる。

なお、この時の『ライザーカスタム』は専用の運搬車両で運ばれながら光となって消滅しており、これをみた友希那と燐子はそんな退却もあるのかと呆然した。

 

「ちょっとサプライズってところか……『クルーエル・ドラゴン』と『ゴジョー』をコール!」

 

貴之は前列右側に赤い体を持つ巨大な翼竜の『クルーエル・ドラゴン』を、後列右側に『ゴジョー』を『コール』する。

『クルーエル・ドラゴン』は『オーバーロード』と違って翼は通常のもので、剣も持ってはいない。

しかしながら、そんなこと以上に驚くべき点があった。

 

「え!?『クルーエル・ドラゴン』はグレード3(・・・・・)のユニットですよね?」

 

燐子は『クルーエル・ドラゴン』のグレードを見て驚愕する。

通常、リアガードにはヴァンガードより上のグレードは『コールできない(・・・・・・・)』のもあり、それに思考を奪われてしまった。

 

「あれは『クルーエル・ドラゴン』自身が持つスキルによるものだ。相手のリアガードを退却させたターンなら、ヴァンガードのグレードが2以下でも『コール』できるんだ」

 

「一つ上のグレードを早い段階で『コール』できるのは、確かにサプライズね」

 

大介の説明を聞いて、友希那は笑みを見せて頷く。自分も十分に驚いたし、サプライズとしては十分なものを持っていた。

一方で、話しを聞いたときに気づけなかったことを恥ずかしく思った燐子は、顔を赤くしながら両手で頬を覆って「落ち着けば気づけたのに……」と少々落ち込んでいた。

それを見た弘人は「まあそんなこともあるよ」と励ます。変われたお陰で前向きになってきている燐子ではあるが、初歩的なミスと感じていたので流石に恥ずかしさが勝ったようだ。

 

「さて……『バー』の『ブースト』、『バーサーク・ドラゴン』でヴァンガードにアタック!」

 

攻撃宣言を受けた竜馬はノーガードを選択する。このターンは『ガード』が無くてもダメージが6にならないこと、『ガード』をすると次のターンで手数が足りなくなる事態に陥ると言う二つの理由があった。

貴之は『ドライブチェック』で(ドロー)トリガーを引き当て、パワーを『クルーエル・ドラゴン』に回す。

イメージ内で『バーサーク・ドラゴン』の炎に焼かれ、ダメージを受けた竜馬も『ダメージチェック』で(ドロー)トリガーを引き当てる。

 

「次……『ゴジョー』の『ブースト』、『クルーエル・ドラゴン』でヴァンガードにアタック!」

 

「それもノーガードだ!『ダメージチェック』……」

 

パワーと手札を一枚得ても、竜馬はノーガードを選択する。その姿はまるで、こんなことでビビッていたら『ノヴァグラップラー』を使っていないと言いたいかのようだった。

再び『ダメージチェック』で(ドロー)トリガーを引き当て、竜馬は手札を一枚増し、今度は貴之がヤバいかもしれないと冷や汗をかいた。

 

「攻撃がヴァンガードにヒットした時、『クルーエル・ドラゴン』をのスキル発動。手札に戻すことで、『ソウルチャージ』」

 

貴之は『クルーエル・ドラゴン』を手札に戻し、デッキの上から一枚を『ソウル』に置く。

そうすることで、イメージ内で『クルーエル・ドラゴン』が翼を広げてどこかへ飛び去って行った。

 

「……攻撃されて退却させられることを避けたのかな?」

 

「或いは、少しでも攻撃を防げる準備として手札を確保したかったかだね……」

 

燐子と弘人はそれぞれ貴之の立場に立って考える。

前者の場合は手札に今、グレード3がないことを想定して、後者は『完全ガード』等のコストとして用意したかったと言う考えだ。

――さて、これでどうやって凌ぐか……。手札を確認してから、貴之はターン終了を宣言する。

 

「よし、俺の『スタンド』アンド『ドロー』……。このターンに全部賭けるぜ……!」

 

「まあそうなるよな……。来い!俺は受けて立つぞ!」

 

「おう!『ライド』!『パーフェクトライザー』!」

 

竜馬は赤を基調とした巨大なバトロイド『パーフェクトライザー』に『ライド』する。

この時『パーフェクトライザー』は仁王立ちした状態で、『ハイパワードライザーカスタム』が光となって地面に作った光の円陣の中から現れており、乗り込んだ竜馬が操縦することによって組んでいた腕を解き、ファイティングポーズを取った。

また、竜馬の『パーフェクトライザー』によるイメージが見えたと同時に、友希那が貴之の変化に気がつく。

ただしその変化は焦りと言うよりは、別の楽しみを見つけたかのようだった。

 

「(今度……俊哉と神上がファイトするところを見たいな)」

 

俊哉も自身の切り札となるユニットで物凄く堂々とした立ち方をするイメージを見せてくれるので、彼の切り札と竜馬『パーフェクトライザー』が対峙した時が楽しみになっていた。

そうやって楽しむのはいいが、気を抜いて大丈夫と言う訳では無いので、貴之は気を引き締め直す。

 

「『イマジナリーギフト』、『アクセル』!さあ行くぞ!バトロイド集団の集結だ!」

 

竜馬は『アクセルサークル』を準備してから、後列中央に青と白の二色をメインに構成されている、背部に強化スラスターを取り付けられたバトロイドの『ジェットライザー』。後列左側に黄銅色のバトロイド『デスアーミー・ガイ』。前列右側に『ハイパワードライザーカスタム』。『アクセルサークル』にオレンジと白の二色を基軸にしたバトロイド『バーストライザー』を『コール』し、更に『ハイパワードライザーカスタム』のスキルで空いてる後列右側に『バトルライザー』を『コール』する。

この時竜馬は手札が残り一枚になっており、このターンに賭けているものを伺わせた。

 

八回(・・)攻撃だな……」

 

「「……八回!?」」

 

展開したユニットを見て、彼の意図を理解した大介が呟き、それを聞いた友希那と燐子が素っ頓狂な声を上げる。

これに関しては弘人も賞賛する。これはいいものを見れたと、その盤面をみて感じたのだ。

 

「行くぜ!『デスアーミー・ガイ』の『ブースト』、『アイアン・キラー』でヴァンガードにアタック!」

 

「……ノーガード!」

 

何回かは諦めるしかないので、貴之は一度ノーガードを選択。

イメージ内で『アイアン・キラー』の右手から飛んで来た鉄球に殴られ、貴之は『ダメージチェック』を行う。

結果はノートリガーで、ダメージが4になる。

 

「次だ!『バーストライザー』でヴァンガードにアタック!」

 

「それは『ター』でガード!」

 

イメージ内で『バーストライザー』の右手に集めたエネルギーを纏ったパンチは、『ター』によって防がれる。

『アクセルサークル』にいる『バーストライザー』のパワーは19000だが、『ター』の『シールドパワー』を貰った『バーサーク・ドラゴン』はパワー25000に上がっていたのだ。

 

「まだまだ……!『バトルライザー』の『ブースト』、『ハイパワードライザーカスタム』でヴァンガードにアタック!」

 

「『ラーム』で『ガード』だ!」

 

パワー14000となった『ハイパワードライザーカスタム』の攻撃は、『ラーム』によって防がれる。

『ラーム』の『シールドパワー』を得て、『バーサーク・ドラゴン』のパワーが20000に上がっていたからだ。

 

「本命だ……!『ジェットライザー』の『ブースト』、『パーフェクトライザー』でヴァンガードにアタック!」

 

イメージ内で『パーフェクトライザー』が地面を強く蹴り、『ジェットライザー』もそれに追従する形で『バーサーク・ドラゴン』となった貴之に肉薄する。

また、『ジェットライザー』は他のリアガードが登場した段階でそのターンの間はパワーが3000プラスされ、現在はパワー10000となっていた。

 

「使いどころはここだ!『ワイバーンガード バリィ』!」

 

「アタック時、二枚『カウンターブラスト』することで『パーフェクトライザー』のスキル発動!リアガードを二体『スタンド』!更にヴァンガードがアタックした時、『カウンターブラスト』と『ソウルブラスト』をして『バーストライザー』のスキル発動!『スタンド(再起動)』し、更に相手のダメージが4以上ならパワープラス3000!」

 

「……!?前例のリアガードが全部『スタンド(立ち上がった)』!?」

 

「(貴之……大丈夫だとは思うけど……)」

 

イメージ内で『バリィ』が防ぐ体制に入っている中、『アイアン・キラー』、『ハイパワードライザーカスタム』、『バーストライザー』が膝をついていた状態から立ち上がる。

この時、『スタンド』したユニットたちが己のカメラアイを光らせたような気がしたのもあり、燐子が驚愕した声を上げる。

貴之が少しずつ手札が減らされている状態を見て、流石に友希那も不安になってきていた。

 

「問題はこの『ツインドライブ』か……」

 

「ここで全てが決まる。仮に倒せなかったとしても、遠導は博打を強いられる状況になるかな……」

 

大介と弘人は状況を確認し、どの道貴之が相当苦しい状況下に置かれることを理解する。

 

「行くぜ……『ツインドライブ』!ファーストチェック……」

 

そして始まった『ツインドライブ』の一枚目は、(フロント)トリガーが引き当てられる。

 

「効果は前列に……セカンドチェック!」

 

二枚目のチェックでは(クリティカル)トリガーが引き当てられた。

 

「パワーは『ハイパワードライザーカスタム』、(クリティカル)は『アイアン・キラー』に!」

 

「(ガード強要戦術か……!)」

 

竜馬の選択に、貴之は苦虫を嚙み潰したような表情をする。

『アイアン・キラー』を防がなければ2ダメージ、『ハイパワードライザーカスタム』を防がなければどちらかが『スタンド』、『バーストライザー』はそもそも防ぎにくいと言う非常に嫌らしい三段構えだった。

そして、この三体の内どれかは必ず防がせ、残った二体でトドメを刺すと言うのが竜馬の狙いだった。

 

「手札……足りるかしら?」

 

「ダメージは4だから、全部防ぐ必要が無いと言えば無いけど……難しいね。手札次第ではもう二枚欲しいところだね」

 

気がつけば、貴之の手札はもう四枚しか残っていない。

それ故に不安になる友希那の呟きを拾った弘人からは、あまり回答が返って来なかった。

こちらからは手札が見えない状況下なので、何を持っているかは確認のしようが無く、ただ祈ることしかできない。

 

「だが、もう『ドライブチェック』はできないから、ここからどうするかになるな……」

 

「貴之君、どれを防ぐんだろう?」

 

大介の言う通り『ドライブチェック』は不可能なので、これ以上何も強化されないのは幸いだった。

残った三体が非常に嫌な並びを見せているので、燐子は貴之の選択が気になった。

 

「まずは、『アイアン・キラー』でヴァンガードにアタック!」

 

「『ラクシャ』で『ガード』!」

 

パワー24000となった『アイアン・キラー』の攻撃は、『ラクシャ』から『シールドパワー』を得たことで25000と言うギリギリのパワーで防ぎ切る。

その攻撃だけは受けてはいけないと、貴之の直感が告げての行動だった。

 

「次、『ハイパワードライザーカスタム』でヴァンガードにアタック!」

 

「……ノーガード」

 

トリガーが出れば御の字だと思った貴之はノーガードを選択し、イメージ内で『ハイパワードライザーカスタム』の拳に殴り飛ばされる。

しかし、その祈りを込めた『ダメージチェック』はノートリガーで、ダメージが5になる。

更に『ハイパワードライザーカスタム』のスキルで『アイアン・キラー』が『スタンド』し、これで後二回攻撃すれば八回攻撃の実現となっていた。

 

「『アイアン・キラー』で、ヴァンガードにアタック!」

 

「頼むぞ、『ゲンジョウ』!」

 

二度目の攻撃は、『ゲンジョウ』の『シールドパワー』を得てパワー30000となったことで防ぎ切る。

後はパワー32000の『バーストライザー』の攻撃を防ぐだけになったのだが、貴之は一つの問題点に直面する。

 

「(……!ここでも最悪な二択が出やがったか!)」

 

貴之の残された二枚の内、一枚は『ワイバーンガード バリィ』、もう一枚は『ドラゴニック・オーバーロード』だった。

これによる『最悪な二択』とは、防ぐ代わりに『ライド』出来なくなる可能性を自ら大幅に引き上げるか、確実に『ライド』する為に『ガード』を捨ててトリガー勝負に出るかだった。

 

「これで終わりだ!『バーストライザー』で、ヴァンガードにアタック!」

 

「(どうする……?どっちにせよハイリスクだ……)」

 

貴之が迷っている間にも、イメージ内で『バーストライザー』が近づいて来ている。

そして、『バーサーク・ドラゴン』となった貴之に近づききり、『バーストライザー』が自らの体を右に回す。

 

「まさか……もう防げない?」

 

「『ダメージチェック』で(ヒール)トリガーを引ければまだあるけど……見た限りもう二枚出ているからね」

 

貴之が動きを見せないのもあって燐子は動揺し、弘人は彼が今まで場に見せた(ヒール)トリガーの数を確認する。

もう既に半分も出ている為、ゼロではなくともかなり厳しいものだった。

信じるしかないのかと思った貴之がデッキの方に目を向けると、『オーバーロード』がすぐに駆けつけると語りかけてくれたイメージが見えたので、貴之は迷いを捨てる。

 

「(貴之から焦りが消えた……?)」

 

――なら、大丈夫そうね。彼が表情を変えたのに気づいた友希那は、先ほど抱いた不安が一気に消え去るような物を感じた。

そして貴之は、攻撃を防ぐ為に『バリィ』を手に取る。

 

「『ワイバーンガード バリィ』、『完全ガード』!」

 

「な……!?」

 

彼が防ぎ切ったことで、次に焦るのは竜馬の方となった。まさか『完全ガード』を二枚も持っているとは思ってもみなかったのだ。

仕方ないので、竜馬はターン終了を宣言し、貴之の手番となる。

 

「次のデッキトップが勝負だな……」

 

「引き当てるユニットがグレード3なら勝ち。それ以外は負けだね。しかも手札が一枚では『アシスト』を使っても意味がない……」

 

正にその一枚が全てを決める(勝敗を分かつ)と言う状態になり、全員に緊張が走る。

 

「……『アシスト』ですか?」

 

「ああ。自分のヴァンガードがグレード2以下のユニットで、『ライドフェイズ』に入った段階で『ライド』ができない場合のみ宣言できるものでな……」

 

「その場合は手札を公開して『ライド』できないことを証明してから、デッキの上から五枚見て、『ライド』可能なユニットがいたらそれを手札に加えることができるんだ」

 

燐子の問いに大介が条件、弘人がその内容を説明する。

しかし、これでは何故手札が一枚ではどうして意味がないのが説明できていないので、その後の処理を説明する必要がある。

 

「で、そのユニットを加えた後、自分の手札から二枚を除外しなきゃいけないんだ……。後は分かるな?」

 

「……!加えたはずのユニットを除外しちゃう……」

 

大介に問われたことで燐子は問題点に気づいた。つまり、『アシスト』をするなら最低でも手札が二枚ある状態で行うのがほぼ必須条件になる。

そうで無ければ、せっかく入手したユニットを除外するだけでなく、手札を一枚減らすと言う良くないことだらけの状況を引き起こしてしまう。

 

「(でも、貴之は大丈夫そうな顔をしている……ユニットを信じているのね)」

 

話しを聞いていた友希那ではあるが、今回は見ることが無さそうだと感じていた。

理由が貴之の表情で、焦りではなく闘志に満ちたものだったのだ。

 

「さあ、ケリをつけようぜ……!」

 

「ああ。俺の『スタンド』アンド『ドロー』……」

 

竜馬の呼びかけに応じた貴之がターンを始め、山札から一枚引くのを全員が見守る。

手札ゼロ、ダメージが5と言う満身創痍に他ならない状況から始まっているが、竜馬も守り切れるか怪しい状況で耐えなければならないので、このドローが全てを決めるとも言えた。

その引いたカードを見た貴之が、竜馬の方に顔を向ける。どんな言葉が飛んで来るか……竜馬のみならず全員が見守る。

 

「このファイト……俺の勝ちだ!ライド・ザ・ヴァンガード!」

 

「な……!?引き当てたってのか!?」

 

勝利宣言と共に貴之が『ライド』を行い、竜馬は絶句する。

その様子を見ていた大介や燐子も引き当てたことに驚く中、友希那だけは分かっていたかのように微笑んでいた。

――また、浮かび上がって来るわ……。この後書けば歌詞が出来上がるだろうと友希那は思った。

 

「『ドラゴニック・オーバーロード』!『イマジナリーギフト』、『フォース』!ヴァンガードのパワーをプラス10000!更に『ソウルブラスト』して『オーバーロード』のパワーをプラス10000!」

 

惑星クレイに『オーバーロード』となった貴之が降り立ち、『イマジナリーギフト』とスキルでパワーを33000まで引き上げる。

手札が無くなった以上『メインフェイズ』にできることなどスキル関連しか残されておらず、それが終わったので『バトルフェイズ』に入る以外残されていない。

 

「行くぞ!『バー』の『ブースト』……『ドラゴニック・オーバーロード』で『バーストライザー』にアタック!」

 

「賭けるか……。ノーガード!」

 

貴之の宣言に竜馬はノーガードを選択する。『オーバーロード』のスキルが発動されてしまうものの、ここで『ガード』宣言してもトリガーで貫通されたら次の攻撃を防げなくなるからだ。

他のユニットを狙ってから二回目の攻撃でヴァンガードにトドメを刺すのは常用手段なのだが、今回はいつもと違うところがあった。

 

「今回は先に『ブースト』を使いましたね……」

 

「ヒントは竜馬の残った手札が何かになるな。今あいつの手札に残っているのは『ドライブチェック』で引き当てたユニットしかない」

 

「……!一枚でもトリガーを引けば『インターセプト』を強要できて、二枚引けば神上君はガード出来なくなる……!だから先に『ブースト』をしたのね……」

 

燐子の言う通り、普段は『ブースト』を二回目の攻撃に取っておいているのだが、今回は先に使っていた。

大介からヒントを出されたことで、何故『ブースト』を使ったかを二人は理解する。ちなみに今、竜馬の手札に残っているのは『シャイニング・レディ』、『キャノン・ボール』、『アシュラ・カイザー』の三枚で、この内『アシュラ・カイザー』は『シールドパワー』を持たないので『ガード』に使えないのだ。

ここまで深い読みを見せてくれたことに、友希那は心から感謝と称賛を送る。ここまでユニットを信じた動きをして奇跡を見せてくれる貴之なら心配ないと思うが、この後の『ツインドライブ』の行方が気になって心臓が早鐘を鳴らしている気がした。

 

「『ツインドライブ』……ファーストチェック……」

 

一枚目の『トリガチェック』では(クリティカル)トリガーを引き当て、効果を全てヴァンガードに回す。

これによって竜馬は『ガード』する際、『アシュラ・カイザー』以外全ての手札を使うことが強要される。

勝負の行方を決定するくらい重要になった、二枚目の『ドライブチェック』でカードをめくる。

 

『ひ……引き当てた!』

 

「ゲット!(クリティカル)トリガー!効果は全てヴァンガードに!更に攻撃がヒットした時、『カウンターブラスト』と手札を二枚捨てることで、『オーバーロード』は『スタンド』する!」

 

「な……なんだとぉ!?」

 

その結果は(クリティカル)トリガーで、これによって竜馬はトリガー勝負以外の選択肢を奪われてしまった。

イメージ内で『バーストライザー』が『オーバーロード』となった貴之の業火に焼かれ、爆散する形で退却するのを見ながら竜馬は動揺を隠せなくなる。

竜馬が驚くのもそうだが、このターンのグレード3を引き当てるところから、今の『ツインドライブ』に至るまで全ての賭けに打ち勝った貴之を見て、ファイトを見ていた四人すら驚く。

 

「これで決着にするぜ……!『ドラゴニック・オーバーロード』で、ヴァンガードにアタック!」

 

「ノーガード……『ドライブチェック』をしな。俺は逃げねぇ……!」

 

「ああ。『ドライブチェック』……」

 

そして合計で三枚目の『ドライブチェック』で、貴之は何と再び(クリティカル)トリガーを引き当てた。

 

「……ゲット!(クリティカル)トリガー……!効果は全てヴァンガードに!」

 

「さ……三枚目の(クリティカル)トリガー!?」

 

「これはちょっと竜馬が可哀想になってくるね……」

 

その結果パワーが63000、(クリティカル)が4の『ドラゴニック・オーバーロード』が誕生した。

流石に三枚も全て引き当てたのを見た燐子は驚きが非常に大きく、弘人もひきつった笑いを見せる程、手加減なしの攻撃が返ってきていた。

そしてイメージ内で『オーバーロード』となった貴之は、竜馬の操る『パーフェクトライザー』相手に剣による重々しい斬撃を三回見舞った後、左手の爪に炎を纏わせて頭を掴んで握り潰した。

 

「まだ勝負は終わってねぇ……二枚目以降で全部(ヒール)トリガー引きゃあ、今度こそこっちの勝ちだ……!」

 

「お前の言う通りだな……。その意志の強さ、最後まで見させてもらうぜ」

 

竜馬が言っていることは本当に低い確率の軌跡としか言いようの無い事だが、彼が諦めないと言うのなら貴之はそれを無下にはしない。

――分かってくれて嬉しいぜ……。水を差す様な真似をしなかった貴之に感謝しながら、竜馬は『ダメージチェック』を行う。

一枚目に(ヒール)トリガーを引いてしまうと極めて危険だったが、一枚目は(ドロー)トリガーだった。

効果処理を終えた後に二枚目を引くと、一回目の(ヒール)トリガーを引き当てる。

 

「まずは一枚目か……三枚目……」

 

少し安堵しながら竜馬は、効果処理をしてから三枚目の『ダメージチェック』を行う。

そして、結果は二枚目の(ヒール)トリガーを引き当てる。

 

「二枚目を引いた……!」

 

「残った(ヒール)トリガーが二枚……どうなるかな」

 

その結果を見た大介は希望の光が見えたように感じ、弘人は竜馬のデッキに残っている(ヒール)トリガーを数える。

連続で引いたからそろそろ怪しくなってくるところだが、まだ引ける枚数ではあった。

ここまで来たら本当に引いてしまうかもしれない。緊張が続く中、四人は行く末を見守ることにした。

 

「最後……四枚目の『ダメージチェック』……」

 

意を決して竜馬は最後の『ダメージチェック』を行う。

デッキトップから一枚裏向きのまま、ゆっくりと『トリガチェックゾーン』に持っていき、素早く表返す。

引き当てたのは『パーフェクトライザー』……残念ながらノートリガーだった。

 

「俺の負けだ……」

 

「だが、良いファイトだった。最後の(ヒール)トリガーの二枚も、お前の執念が無けりゃ引けなかっただろうさ」

 

「それならお前の『オーバーロード』と三枚目の(クリティカル)だってそうだろうよ……。ただ、確かに良いファイトだったな……もし良かったらまたやろうぜ」

 

「ああ。その時は受けて立つ」

 

互いの称賛と再戦の約束をしてから、二人は「ありがとうございました」と一礼した後握手を交わす。

その直後に拍手の音が複数聞こえたので周りを見てみると、友希那たちだけではなく、近くにいた人たちがこちらに向けて拍手をしていた。

どうやら、近くでこのファイトが行なわれていたので、いつの間にか目を釘付けにされていたらしい。

 

「(ユニットを信じた貴之の勝利……。私も、チームのみんなを信じて歌うことができるかしら?)」

 

二人が呆気に取られている中、今回のファイトの結果を振り返りながら、友希那は自分に問いかける。まだ分からない所ではあるが、いつかできる様にしたい……それが今の答えだった。

友希那が答えを出した直後、気を取り直した貴之は周囲に照れた様子を見せながら友希那の方に顔を向け、右手でサムズアップすると同時に自分はやりきったと言う笑みを見せる。

それを見た友希那は、彼の笑みがとても眩しく見えたことで心臓が早鐘を打つ。

 

「(もう……いきなりそんな笑みを見せるなんてずるいわよ……。でも、本当に素晴らしいファイトだったわ)」

 

頬を朱色に染めながら一瞬困った様な笑みを見せるが、すぐに満面の笑みに変えてサムズアップを返す。

その後、男子四人の中でまだファイトしていない組み合わせでファイトを行い、貴之は始めて会った二人と互いに名呼びする仲に変わった。

一通りファイトを終えた後、すっかりと日が暮れ始めていたので、そこで解散となった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「凄かったですね……今日のファイト」

 

「気がつけばあれだけ人が集まっていたものね……」

 

解散した後、友希那と燐子の二人は商店街の喫茶店で一息付くのと同時に歌詞作りをしていた。

貴之は食材を買い足しに行くので、先に上がっている。小百合が食事の準備をしようとして、足りなかったようだ。

『ルジストル』ではファイトする人が少なめなので、ファイトしている光景が見えると人が集まりやすいらしく、貴之たちのファイトも竜馬が『パーフェクトライザー』に『ライド』した辺りから人が増えていたらしい。

集中して見ていたのもあって、友希那たちは全く気がつかなかったので、気が付いた時は一瞬慌てたものだった。

 

「私が思いついたのはこれくらいですね……。あまり多くないかもしれないですけど」

 

「いいえ、慣れないのにここまで出してくれたなら十分よ。後はこれを落とし込んで行きましょう」

 

燐子から歌詞に関するメモ書きを渡された友希那は感謝を伝えながら受け取る。

不慣れな人がいきなり手馴れている人と同じくらいのものを出すのは難しいので、責める理由など何も無かった。

 

「あっ……これはこの辺りに入れられそうじゃないですか?」

 

「そうね。ここに入れるのが良さそうね」

 

燐子が提案を出してくれる度に、友希那は誰かが共にいることのありがたさと温かさを感じる。

本来なら今日はここまでと言いそうなところでも、もう少し行けそうと思えているのがそれを助長し、筆の乗った友希那は更に歌詞を作り続けて行く。

作り続けること数十分……。遂に残った三分の一が作り終わり、無事に歌詞は完成した。

 

「ありがとう燐子。お陰で今日中にできたわ」

 

「いえ、力になれたならそれだけで嬉しいです。ところで、歌詞ができた後はどうするんですか?」

 

「残りはメロディを詰めて出来上がりね……。これは紗夜に手伝ってもらうことになっているわ」

 

友希那に礼を言われた燐子が安堵の様子を浮かべた後、彼女に聞いてみる。

もう既にやることが決まっているが、今回の出来事でまた一つ自信が持てた燐子は「手伝えることがあったら言ってくださいね」と声を掛ける。

その時の柔らかい笑みに燐子の意図を感じ取った友希那が「その時は」お願いねと返した。

 

「さて……そろそろ上がりましょう」

 

「もうこんな時間だったんですね……」

 

予想よりも遅い時間になっていたのを見て、二人は苦笑してから喫茶店を後にし、そのまま別れた。

その後友希那が紗夜に歌詞ができたことを伝えると、「では、時間ができ次第メロディを詰め始めましょう」と話しが決まった。




今回はトライアルデッキ『櫂トシキ』を『結成!チームQ4』のパックで出てくるカード使って編集した『かげろう』デッキと、同じく『結成!チームQ4』のパックで出てくるカード使って組んだ『ノヴァグラップラー』デッキによるファイトとなります。
テストファイトの後半がとんでもなく熱い展開になって脱帽ものでした。『ノヴァグラップラー』の瞬発力を改めて実感できました。

次回は紗夜に多くスポットの当たった話しになるかと思います。もしかしたらそのままファイト展開を連発するかもしれません。
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