先導者と歌姫 -高みを目指して-   作:ブリガンディ

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先日発売した『Primary Melody』に出てくるカードを使ってどんなデッキ作ろうか考えていたら遅くなりました。

『カラフルパストラーレ』のみんな旋律(メロディ)によるスキル共有はヤバいって……(汗)


イメージ16 始まりは同じ

「とまあ……ここまでが『惑星クレイ』についての話しになる」

 

「……随分と、規模が大きいんですね……」

 

大雑把ながら世界観を説明してみたところ、紗夜は友希那のように呆然とした状態になっていた。

理由に関しても友希那と全く同じで、ドラゴンやら悪魔やらの想像が今一できないことにある。

そんな様子を見た友希那は、前は自分がこうなってたなと思い出す。

 

「ちなみに『クレイ』の世界観を知りたいなら、後で向こうにある資料集を買うといい。細かいところまで載ってるんだ」

 

「分かりました。必要だと思ったらそうします」

 

紗夜の反応を見た貴之がちゃっかりと宣伝し、それを聞いた紗夜は頭の片隅にその情報をしまっておく。

それを聞いた友希那が「何それ知らない」と言いたげに貴之を見つめたので、これには「後で貸そうか?」と問いかけると、借りられるならと友希那が答えた。

貸し出しは今日帰った後かまた後日かのどちらかに決まり、世界観の説明はこれで一通り終わりとなった。

 

「さて……次はどのデッキにするか決めに行こう。氷川さんはついてきてくれ」

 

「ギターは見ておくから心配しないで」

 

「……分かりました。そういうことならお願いします」

 

目線で触れないでくれと念を押す紗夜だが、玲奈はそんなことしないよと優し気な表情で返す。

そこに友希那も心配しないでいいと言う表情を見せたので、紗夜はそれを信じて貴之についていく。

 

「じゃあどの『クラン』にするか決めよう。嚙み砕いて言うならどの組織がいいかになるな」

 

「決めると言っても、種類が多いので参考が欲しいのですが……」

 

「まあそうなるか……」

 

何も知らない人がいきなり決めろと言われても無理があるのは予想できていたので、貴之はこのゲームの代表的クランの一つである『ロイヤルパラディン』を例に挙げる。

説明を聞いた紗夜は悪くないと言いたげな反応を見せるが、他のも見てから決めたいと言ったので、彼女が手に取ったものを説明していく形にシフトする。

そうして紗夜が一個一個手に取っては違うと戻すを繰り返していく内に、彼女の中でピンと来たものが一つ見つかる。

 

「この『ゴールドパラディン』と言うのはどんな『クラン』ですか?」

 

「『ゴールドパラディン』はかつて封印された英雄達を救い出すため、聖騎士団と影の騎士団が一時的に共闘する形で発足して、後に『ユナイテッドサンクチュアリ』の第二正規軍として再組織された『クラン』だな」

 

「成り行きで出来上がった……と言ったところでしょうか?」

 

紗夜が目につけたのは『ゴールドパラディン』で、彼から説明を受けた時に出たのが率直な感想だった。

その言葉を聞いた貴之は否定することはせず、「ただ……」と付け加える。

 

「成り行きで手を組んだ彼らも……最後はそこを居場所と感じて残っているんだ」

 

「成り行きと……居場所……」

 

その二つの言葉に、紗夜は今組んでいるチームのことを思い浮かべる。

友希那に声をかけられてからメンバーが揃うまでを成り行きとするなら、これから居場所の一つと感じるかどうかはこれから次第だ。

それを考えると、この『クラン』は自分たちを試しているのではないかと思えて乗ってやろうと考えた。

 

「なら、私はこれにします」

 

「分かった。後はこいつもこっちで買うから、デッキの管理に使ってくれ」

 

紗夜が使う『クラン』を決定したので、デッキケースと共にカウンターに持っていく。

 

「そう言えば、最近遠導君がこうやってデッキを購入するケース多いよね?」

 

「最近だとこれで三回目だったかな……あと二回増えそうな気もしますが」

 

レジ打ちしながら美穂が聞いてきたので、貴之はこっちに戻ってきてからこのケースで購入した回数を数える。

貴之の後二回と言うのは、間違いなくリサとあこだろうと紗夜は簡単に予想できた。それがライブ後なのかその直前かはさておきとしても、彼が頼みを引き受ける姿は案の定簡単に想像できた。

会計を終えた後、今回も忘れずにハサミを借りて友希那と玲奈が待っているテーブルに戻る。

 

「テープのついてる部分があるから、それをこいつで切って開けるんだ」

 

「……テープのついてる?あっ、ここですね」

 

気づくのが早かったので、紗夜はそのまま箱の開封をあっさりと済ませる。

使う必要が無くなったのを確認できたので紗夜からハサミを受け取り、貴之は元ある場所に戻してから再びテーブルまで戻ってくる。

 

「さあ、どっちを使うべきか……」

 

「あれ?そっちも持って来てたの?」

 

貴之が二つのケースを出したことで、玲奈はもう片方が何のデッキかを即座に察した。

念のためになと肯定した貴之が持ってきていたのは、友希那と始めてヴァンガードファイトを行った時に用いた『ロイヤルパラディン』のデッキを編集したものになる。

この編集したデッキは全国大会で当たったとあるファイターの意向を汲み取り、『ブラスター・ブレード』を軸としたもので構成されている。

 

「何故……彼は二つのケース相手に睨めっこしているのですか?」

 

「迷っているのよ。紗夜がイメージしやすい方の『クラン』を使うべきか、貴之本来の『クラン』を使うべきかで」

 

貴之が迷っている理由は友希那も理解していて、説明を聞いた紗夜は少し考える。

レクチャーする上でどちらにするべきかを迷っているなら、こちらから言えばいいことはよく理解している。

 

「大会等が近いのなら、無理に合わせなくても大丈夫です」

 

「そうか。なら、そうさせてもらうよ」

 

紗夜に言ってもらったことで、貴之は自分の使うデッキを『かげろう』に決定する。

微調整を行ったユニットの確認だけなので、それを終えたら普段通りのレクチャーに回るつもりでいた。

 

「さて……じゃあファイトを始める前に、今から俺が言うことをイメージしてくれ」

 

「イメージですか?分かりました」

 

貴之に促された紗夜が目を閉じてイメージを始める。

 

「今の俺たちは、地球によく似た惑星『クレイ』に現れたか弱い霊体だ」

 

「霊体……ですか」

 

言われるがままに想像(イメージ)してみる紗夜だが、上手くいかない様子が見えたので玲奈が手伝うことでどうにか形にする。

大丈夫なことが確認できた貴之は『コール』と『ライド』のことを説明し、『ライド』した自分たちを『先導者(ヴァンガード)』と呼ぶことを伝える。

紗夜は騎士となった自分が仲間を率いる姿を考えるものの、何とも言えない感じがしていた。一般女子学生にいきなり騎士となった自分の姿を想像しろと言うのは中々無理難題なところがあるので、そこは慣れて行ってもらえればいいと考えている。

 

「さて、舞台の話しはここまでだ。これからはファイトの流れを説明していくぞ」

 

貴之はまず初めに『ファーストヴァンガード』を裏向きで設置し、デッキをシャッフルすることを説明しながら行う。

紗夜が難儀しているところは玲奈がフォローし、大丈夫そうなところは友希那も手伝うのでそこは問題なく進行して行く。

また、紗夜がシャッフルを行う際は構築済みデッキはカードが固まっているから、複数の方法でシャッフルを行うことを推奨することも忘れない。

貴之が実践して見せたのを紗夜も真似して行い、後で教えられるようにメモを残しておく。

 

「シャッフルが終わったら山札の上から五枚引いて、それを手札として加える。この時一回だけ引き直しができるから、それをするかしないかを決めた後は開始するだけになるが……引き直しはするか?」

 

グレード1から3のユニットが一枚ずつあることが理想であることを説明すると、紗夜が引き直しすることを選ぶ。

それを聞いた貴之はやり方を説明しながら実際にやってみせ、その後紗夜も引き直しを行う。

 

「これが終わったら、後は『スタンドアップ・ヴァンガード』の掛け声と共にファーストヴァンガードを表に返して、ファイトを始めることになる」

 

「えっと……その掛け声は必須なのですか?」

 

お年頃の少女である身としては抵抗感があったので聞いてみた紗夜だが、残念ながら即答で肯定された。

しかしこの店内のファイターたちは誰であろうと必ず掛け声をしているので、お約束なのだろうと紗夜は腹を括る。

 

「中には『スタンドアップ』と『ヴァンガード』の間に何か付け加えたりする人もいるが……無理にやらないでも大丈夫だ」

 

「そうですね。いきなりあれもこれもと言うのは収拾がつきませんから」

 

その話しに紗夜は素直に従う。それは後々つけたくなったらで構わないだろう。

しかしながら、自分はそれを付け加えたりすることはなさそうだと紗夜は感じた。寧ろあこやリサが付け加えそうだと思っていた。

 

「付け加えたりする人もいるって言うけど……貴之が丁度その一人じゃん」

 

「最初の掛け声と、そのデッキの主力となるユニットに『ライド』する時、『ザ』を付けているわね」

 

「あ、おい……」

 

――せっかく開始の時に明かそうとしてたのに……。二人にネタバレされた貴之はがっくりと項垂れる。

ちなみに紗夜が「本当に言ってるの?」と言いたそうな目で見てきたが、貴之自身はあまり気にしていない。気にしているくらいならこの方式を続けていない。

どうせならと「理由はイメージしやすい」からと言うのと、イメージは力になることを話すものの、紗夜はその話しを飲み込めずに首を傾げる。

 

「紗夜も、騙されたと思ってやってみるといいわ」

 

「これ以外と大事なんだよ?この前貴之が教えた白金さんも、それが後押ししてくれたからね」

 

「……お二人がそうまで言うなら、やってみます」

 

流石に友希那と玲奈もそう言うのなら信じるしかない。紗夜はそう判断して裏向きのファーストヴァンガードに右手を置いた。

それを見た貴之もファーストヴァンガードに右手を置きながら「大丈夫だな?」と声を掛ける。

 

「最初に立つ位置は誰だって同じだ……だからリラックスしてくれて大丈夫だ」

 

少々緊張していた紗夜は、その言葉のお陰で少し気が楽になった。そして、今度こそ残りは始めるだけになった。

 

「「スタンドアップ!」」

 

紗夜は真剣な様子で、貴之はいつも通りの様子で宣言を始める。

 

「ザ!」

 

付け加えているファイターである貴之はここで『ザ』を入れるが、初めての紗夜は無理に付け加えたりせずデフォルトで行くことを選ぶ。

 

「「ヴァンガード!」」

 

二人がファーストヴァンガードを表に返すことで、ファイトが始まる。

 

「『ライド』!『リザードランナー アンドゥー』!」

 

「『ライド』!『紅の小獅子(こじし) キルフ』!」

 

貴之は『アンドゥー』に、紗夜は獅子をモチーフにした紅い鎧を身に纏った騎士の『キルフ』に『ライド』する。

イメージ内で『キルフ』となった紗夜は、そんな自分の姿を見て呆然とする。『憑依(ライド)』と言うのだからユニットの姿そのままかと思ったのだが、顔つきが自分のものに成り代わっていたのも大きい。

それによって抱いた感想を率直に伝えると、貴之は一部のユニットは本当にその姿そのままになると教えてくれる。人間そのものの『ヒューマン』や、人に限りなく近い『ノーブル』と呼ばれる種族等が多いと『ライド』した時に『キルフ』のようになりやすいことを教わった紗夜は、人と似ているか否かを意識しておくことにした。

 

「さて……教えながらっていうのもあるから、俺が先攻で行くけど大丈夫か?」

 

「構いません。どうぞ」

 

この方式でファイトする度に本当は選ばせてあげたいと言う気持ちも湧いて来るが、仮に先攻を譲った場合は実際に見せて教えることが難しくなるので、それは諦めている。

教えてもらう身である以上紗夜も我が儘を言わず譲ってくれたので、早速自分のターンを始め、『スタンド』アンド『ドロー』を済ませた後、『ライドフェイズ』で『ライド』できる条件を教える。

 

「じゃあ、実際に『ライド』するぞ。俺は『鎧の化身 バー』に『ライド』」

 

イメージ内で貴之の姿が『バー』のものに変わったのを見て、紗夜は『ライド』がどういうものかを知る。

また、カードの左下に表記されているパワーが大きくなった分なのだろう。イメージ内での威圧感が大きくなったように思えた。

この時『ライド』された『アンドゥー』スキルで山札から一枚加えた貴之は、『キルフ』にもあることを教え、それを見た紗夜は何故分かったのかと聞いてみる。

 

「分かったと言うよりは知っていただな……。大会に出る身だし、こういう事は理解しておかないと対策を立てられないんだ」

 

「なるほど……。それなら納得です」

 

よくよく考えたらそれはそうだろうと言う理由だったので、紗夜は特に猜疑心を持たない。寧ろユニットの情報を把握していなかったら、教える側としての正気を疑っていただろう。

その後貴之は『メインフェイズ』でできることを説明し、後列中央に赤と白の身体が特徴で、片手に杖を持った竜人『リザードソルジャー ラオピア』を『コール』する。

本来ならばこれ以上やることのない貴之だが、彼は紗夜に教えるのと驚かすのを兼ねて『バー』に手を触れる。それを見た瞬間、友希那と玲奈は「こいつまたやるつもりだ」と困ったような笑みを見せる。

 

「アタック……」

 

「……!?」

 

思惑通り驚く紗夜だが、貴之がしてやったりな笑みで「冗談だよ」と言って来たので、拍子抜けした表情になる。

 

「先攻は最初のターン攻撃することができない。だから俺はターン終了だ」

 

「……新手の嫌がらせか何かですか?」

 

「いやなに、この方が覚えやすいだろうと思ってな」

 

――この手合いの人にはやらない方が良さそうかな?紗夜の反応が少々悪目なので、貴之は少し考える。

今まではこの方法で「覚えられた」と言う意見しか来なかったので、初めての反応を見て考えると言う判断が新しくできた。

一先ずこれでターン終了を宣言したので、紗夜は貴之がやった通り『スタンド』アンド『ドロー』から始める。

 

「では私は……『美技(びぎ)の騎士 ガレス』に『ライド』!『キルフ』のスキルで一枚手札に加えます」

 

紗夜は金色の鎧を身に纏った、如何にも『ゴールドパラディン』だと言いたい見た目をした騎士『ガレス』に『ライド』する。

先程貴之に言われていたので、スキルによる手札に加える処理も忘れずに行う。これで『ライドフェイズ』が終わったので、次は『メインフェイズ』に突入する。

 

「『降魔剣士 ハウガン』を『コール』します」

 

紗夜の後列中央に金と赤の二色で作られた鎧を身に纏い、腹の大きい片手剣を持った剣士の『ハウガン』を『コール』した。

これで紗夜は『メインフェイズ』を終えるつもりだったので、貴之に確認を取ることにした。

 

「後攻は最初から攻撃ができるんでしたね?」

 

「ああ。それじゃあ『バトルフェイズ』に移ろうか。攻撃する時だが……」

 

肯定した貴之は『バトルフェイズ』において攻撃する際の方法を説明する。

ただし、この時他の部分を詳しく説明しないのは二人の視線を感じ取ってのものだった。

 

「左下の数字がパワーで、ここの合計で攻撃側と防御側の勝敗を決めるの。ちなみに合計値が同じ場合は攻撃側の勝ちになるわ」

 

玲奈から友希那に説明させてあげて。友希那からはこの部分を説明してみたいと言う視線だったので、貴之はそれならばと譲ったのだ。

その後『ブースト』のことは玲奈が説明し、これで攻撃方法は問題なく伝わった。

 

「行きます……『ハウガン』の『ブースト』、『ガレス』でヴァンガードにアタックします!」

 

「分かった。この時攻撃された側は、『ガード』する為に『ガーディアン』としてユニットを『コール』するかを選べるが……今回はノーガードにしよう」

 

「それじゃあ、ヴァンガードがアタックしたから……氷川さんは『ドライブチェック』をしよっか」

 

貴之が防御側の宣言を終えたので、玲奈が『ドライブチェック』を説明する。それを見て貴之は教えに参加できる人数が多いと楽だと思った。

何せ基本的に一対一でレクチャーを行うので、説明する場所が多いうえに忘れたら大変なことになるからだ。

『ドライブチェック』の方法を教えて貰った紗夜は山札の上から一枚カードをめくり、それを『トリガーチェックゾーン』に置く。

 

「カードの右上にアイコンがあるのが『トリガーユニット』で、トリガーごとの恩恵を得られるんだが……今回はノートリガーだから特になしだな。ヴァンガードでアタックし場合はここまでやって初めてパワー計算を終えるんだ」

 

「と言うことは、防がれるはずの攻撃が通るかもしれない……と言うことですね?」

 

紗夜が意図を理解してくれているので、貴之は頷くことで肯定を示し、『ドライブチェック』で引き当てたユニットは手札に加えることを教える。

そして、イメージ内では『ガレス』となった紗夜が華麗なる剣技で『バー』となった貴之に一撃を与え、攻撃が通ったことを示していた。

 

「ダメージを受けたから、俺は『ダメージチェック』を行う。今回は1のダメージを受けたから一枚だな」

 

貴之の『ダメージチェック』はノートリガーで、これは『ダメージゾーン』に送ることと、ここに6枚送られた時は契約が解除されて消滅……そのプレイヤーの敗北であることを教える。

それを聞いて少々躊躇いの感情を持つ紗夜だが、貴之が遠慮せず思いっきり来いと言いたげだったので、その感情は捨て去ることにした。

 

「さて、ファイトに戻るが……そっちのヴァンガードの攻撃がヒットしたから『ハウガン』のスキルが使えるな」

 

「本当に使える……では、早速使わせてもらいます。まずは山札の上から一枚見て、ヴァンガードのグレード以下のユニットかを確認します」

 

貴之の案内によって紗夜は『ハウガン』のスキル発動を宣言し、山札の上から一枚確認するとグレード1以下のユニットであることが判明した。

 

「グレードがヴァンガード以下のものなので、『ウェイピング・オウル』を『コール』させてもらいます!」

 

紗夜の前列左側に、己の体格に合わせて用意された鎧を身に纏った梟『ウェイピング・オウル』が『コール』され、役割を終えた『ハウガン』はスキルによって退却する。

この時イメージ内で、『ハウガン』は選手交代と言わんばかりに自分の右手と『ウェイピング・オウル』の右翼でハイタッチをし、『ガレス』となった紗夜に応援している旨を伝えて戦線から離れる形で退却した。

それを見た玲奈が「違う種族でも築ける信頼関係っていいよね」と言っているのが聞こえ、所々男子に近い発言や思考をしているのが、中々異性が寄ってこなかったり原因なのでは無いかと貴之と友希那の二人は考えてしまった。

 

「『ウェイピング・オウル』のパワーは9000。俺が何もしないならパワー8000の『バー』に届くが……どうする?」

 

「攻撃しない手はありませんね。『ウェイピング・オウル』でヴァンガードにアタックします」

 

「じゃあ今回は『ガード』しよう。俺は『槍の化身 ター』で『ガード』だ」

 

『ウェイピング・オウル』の体当たりによる攻撃は、間に割って入るように現れた『ター』によって防がれる。

この処理を終えた後、『ガード』を行った場合はカードの左側に書かれている『シールドパワー』を加算することと、『ガーディアン』としての役割を終えたユニットは退却して『ドロップゾーン』に送られることを説明する。

ヴァンガードでアタックした場合は『ドライブチェック』があるから、結果次第で『ガード』を突破できる可能性があるので、『ガード』されてもまだ望みはあることも忘れずに教え、それを聞いた紗夜は一つずつ覚えることを意識しながらターン終了を宣言する。

 

「俺のターン、『スタンド』アンド『ドロー』……。おっと、こうなったか」

 

手札を確認した貴之が声を上げ、紗夜が不思議そうに見てきたのでその理由と同時にこうなった場合の対処を説明することにした。

 

「いい機会だから、一つ上のグレードに『ライド』できない事態に陥った場合に使える『アシスト』を教えるぞ」

 

「(この前使うことになりかけたものね……)」

 

貴之と竜馬のファイトを思い返しながら、友希那は耳を澄ませる。以前逃したものを聞けるから、しっかり聞こうと考えたからだ。

何ですかそれはと言いたそうな紗夜に対して、貴之は自分の手札を公開した。その手札にはグレード2のユニットが存在していなかった。

 

「今俺の手札に、グレード2のユニットがないことは確認できるな?」

 

「ええ。確認できました」

 

――続きをどうぞ。紗夜が催促したので、貴之は手札の公開を終了し、次の処理を始める。

 

「そうしたら次はデッキの上から五枚引いて……そこに一つ上のグレードのユニットがあるなら、そいつを見せて手札に加えることができる。今回はグレード2の『バーサーク・ドラゴン』があったから、こいつを見せて手札に加える……。残りはデッキに戻してシャッフルだ」

 

ここまでだと『事故が起きた際の緊急処置なのに、手札がさらに一枚増やせた』と言うことになるので、それは色々大丈夫なのかと紗夜は不安になる。

――流石にペナルティはあるけどな。貴之がそう言ったので一先ずの安心をすると同時に、ペナルティ内容に耳を傾ける。

 

「これが終わった後、手札から二枚をゲームから除外(・・・・・・・)しなければならない。これがとても大きな代償だな」

 

「『ドロップゾーン』はユニットの能力次第で利用することはできるけど、除外になるとこのファイト中、そのユニット(仲間)とは一緒に戦えない(・・・・・・・)ことになる……。できることなら避けたいよね」

 

貴之の説明と玲奈の言葉を聞いた紗夜は頷く。前に自分からチームを抜けた時とは事情が違うのもあり、どうでもいいとは言えなかった。

これはファイト的な意味でも、仲間を蔑ろするように見える的な意味でもあまりやりたくないと貴之が言う辺り、本当に最後の手段なのだろう。

 

「さてと……ファイトに戻るが、ここで『ダメージゾーン』のカードとヴァンガードの下に重なっていくカードたち……『ソウル』を使うところを見せよう」

 

そう告げながら、貴之は先程『アシスト』によって手札に加えた『バーサーク・ドラゴン』に『ライド』する。

その後登場時のスキル発動を宣言し、『ダメージゾーン』のカードを1枚裏返して『カウンターブラスト』と、『ソウル』から一枚『ドロップゾーン』に送る『ソウルブラスト』を同時に行い、『ウェイピング・オウル』を退却させる。

 

「今のが『カウンターブラスト』と『ソウルブラスト』で、これはユニットのスキルで使用することになる。手札の消費を避けたい。次のターンに『カウンターブラスト』を使いたい。『ガード』できる状況下でもそれをしないときはこのどっちかが基本的な理由になるな」

 

「なるほど……その辺りが読み合いになると言うことですね?」

 

察しがいいなと思いながら貴之は頷いて肯定する。

他にも『トリガーチェック』でトリガーを引き当て、その上昇したパワーで耐えるのを狙う為に受けるのもあるが、まだお互いにそのタイミングでトリガーを引けていない以上、これは後回しにした。

 

「さて……相手のリアガードを退却させたことで、『ラオピア』はスキルでこのターンの間パワープラス5000。『バーサーク・ドラゴン』スキルは『ヴァンガードサークル』で発動させた場合、山札の上から一枚手札に加える」

 

パワーの増加が合図となり、『ラオピア』は身体に炎のような闘気(オーラ)を纏って咆哮する。

貴之が確認したかったのは『ラオピア』をデッキに入れた(仲間に呼び寄せた)時、どのように変わるかの確認をしたかったので、後はティーチングを徹底するつもりでいた。

ちなみにこの『ラオピア』のスキルだが、退却させたユニットの数と()()()()()発動する。つまり五体のユニットを退却させた場合はプラス25000となる。

 

「このターンからは先攻の俺も攻撃できる……。と言うわけで『ラオピア』で『ブースト』した『バーサーク・ドラゴン』で、ヴァンガードに攻撃。さて……『ガード』はするか(どっちを選ぶ)?」

 

「いえ、ここはノーガードにします」

 

紗夜は先程例に挙げて貰った『手札の温存』を狙ってノーガードにする。

宣言を聞いた貴之が『ドライブチェック』を行い、結果は(クリティカル)トリガーだった。

 

「このユニットのように、右上にアイコンがあるのが『トリガーユニット』で、引き当てた時にトリガーに合わせた能力を与えてくれる」

 

「貴之が引いたのは(クリティカル)トリガー。パワーのプラス10000と、ダメージのプラス1をそれぞれ好きなユニットに与えることができるの。もちろん、両方の効果を一つのユニットに与えるも可能だよ」

 

説明を終えた貴之は効果を全て『バーサーク・ドラゴン』に割り振る。『ラオピア』の『ブースト』もあって、『バーサーク・ドラゴン』のパワーは33000まで跳ね上がる。

イメージ内で『バーサーク・ドラゴン』となった貴之の炎に、『ガレス』となった紗夜が焼かれた後、『ダメージチェック』を行う。

一枚目はノートリガーだが、二枚目は(ドロー)トリガーを引き当てた。その時に説明を受けた紗夜はパワーを『ガレス』に与えて山札の上から一枚手札に加えた。

 

(クリティカル)トリガーによって増えたダメージ量が、大きな動揺を与えたことになるな」

 

「そして、ユニットが6体(ある一定量)逃げ出すとその流れが止まらなくなる……気を付けなければなりませんね」

 

(クリティカル)トリガーの影響を知った紗夜が警戒心を引き上げる。

その様子を見てこちらの言いたいことを理解してもらえたのを確認し、貴之は紗夜にターンを回す。

 

「……!私も『アシスト』を使います」

 

紗夜が宣言して手札を公開したので、確認した貴之は頷いてその先を促す。

 

「……!?」

 

紗夜が動揺したのが見え、貴之がグレード2のユニットが無かったことを確認すれば案の定頷いた。

 

「その場合は五枚全てを山札に戻してシャッフルした後、『メインフェイズ』に移ろう」

 

「……分かりました」

 

――こう言う場面はいずれ直面するだろうとは思っていたが、まさか初戦からとは……。口には出さなかったものの、こればかりは運が悪かったなと言わざるを得ない。

単純にパワーだけを見ても『ライド』すれば守りが気休め程度でも楽になるのを理解してたので、頷く紗夜の表情も少し曇った。

確率の問題だったにしろ、順調に『ライド』してる経験者と『ライド』事故を起こした初心者。この差はとても響くと思っていたところに「まだ諦めるのは早い」と、貴之が声を掛ける。

 

「例え『ライド』できなかったとしても、このターンでできることは残されてる……それをやらずに負けるのはつまんないだろ?」

 

貴之の言葉に頷いて、紗夜は『メインフェイズ』を始める。そこに曇った表情は無く、やりきろうとする意志が見て取れた。

――人が変われた理由を知りたいと思っていた私が諦めてしまう……それでは何のために始めたか分からないじゃない。自分が踏み入れようとした理由を思い出した紗夜は、気を取り直してファイトに戻る。

そして、『メインフェイズ』では後列中央に再び『ハウガン』を、前列左側にもう一度『ウェイピング・オウル』を『コール』する。

ヴァンガードのグレードが1のままな以上、できることはここまでになってしまうが、それでも何もしないよりは全然マシな状態だった。

 

「これ……促しているね」

 

「ええ。私の時も……最後まで諦めないように投げかけていたわ」

 

――人が躓きそうになったらそれを支え、最後は前に進めるようにする……確かに、その姿は私たちの先導者ね。貴之の意図を理解できた友希那は微笑む。

そして『メインフェイズ』を終えた紗夜は『バトルフェイズ』に移るのだが、もう先程の暗い表情は無かった。

 

「では、『ハウガン』の『ブースト』、『ガレス』でヴァンガードにアタック!」

 

「ノーガード。さあ来い……!」

 

紗夜は『ドライブチェック』を行い、(ヒール)トリガーを引き当てる

 

「それはダメージを1回復させることのできるトリガーだ。パワーをどれかのユニットに割り振った後、『ダメージゾーン』のカードを一枚『ドロップゾーン』に送るんだ」

 

「確か、相手よりダメージが少ない場合は回復ができないのよね?」

 

「うん。だから、その時は注意だね」

 

貴之の説明と、友希那と玲奈の会話による注意点を理解した後、紗夜はパワーを『ウェイピング・オウル』に回してダメージを回復する。

イメージ内で再び『ガレス』となった紗夜の剣技を受け、貴之は『ダメージチェック』を行った結果はノートリガーで、ダメージが2になる。

この後紗夜は『ハウガン』のスキルで再び『ウェイピング・オウル』を引き当て、これを後列左側に『コール』。そのまま『ブースト』を受けて『ウェイピング・オウル』で攻撃をする。

 

「ノーガード。『ダメージチェック』……」

 

次のダメージチェックでは(ドロー)トリガーで、手札を一枚加えた。

『バトルフェイズ』による攻撃も終え、紗夜はターンを終了する。

現段階で紗夜のダメージは1、貴之のダメージは3と、ここまで見ると紗夜がかなり有利な結果になっていた。

 

「さあ……本番であるグレード3の姿を……そして」

 

何か大切な部分を教えようとしている意図が見て取れたので、紗夜は貴之の言葉に耳を傾ける。

また、このターンで紗夜は以前燐子の話していた、彼の人物評にある内の『厳しい』と言う部分を理解することになる。

 

「俺の……この世界における分身を見せる……!ライド・ザ・ヴァンガード!」

 

「……!?」

 

イメージ内で『オーバーロード』に『ライド』した貴之を見て、紗夜は身体が震えるのを感じる。今までと比べて別格の威圧感だった。

友希那と玲奈もこの選択に最初こそ驚いたが、何らかの意図があるのが見て取れたので、すぐに落ち着きを取り戻す。

 

「更に、グレード3以上の特定のユニットに『ライド』できた場合、それの祝福として『イマジナリーギフト』が与えられるんだ」

 

「『イマジナリーギフト』……ですか?」

 

『イマジナリーギフト』種類の名称と、自分が使う『かげろう』の持っているのは『フォース』で、それの効果を説明してから貴之はヴァンガードに効果を与えた。

更に前列右側に『アーマード・ナイト』、後列右側に『エルモ』をコールし、『オーバーロード』はスキルで更にパワーを引き上げた。

 

「よし……まずは『オーバーロード』で、『ウェイピング・オウル』にアタック」

 

「(攻撃をリアガードに……?それに『ブースト』も使わないし、どういうこと……?)」

 

理由は分からないものの、ダメージが増えないならと紗夜はノーガードにする。

それを聞き届けた貴之は『ツインドライブ』を説明しながら二回の『ドライブチェック』を行い、一枚(クリティカル)トリガーを引き当て、その効果を全て『オーバーロード』に回す。

 

「俺が先に『オーバーロード』単体で攻撃した理由はこれだ……『カウンターブラスト』と手札を二枚捨てることで、『オーバーロード』を『スタンド』!」

 

「……!?トリガー効果はそのターンの終わりまでだから……」

 

貴之の狙いに気づいた紗夜は『ガード』した方が良かったかもしれないと考えたが、あの段階でトリガー効果で突破をされたらもっと危険だったろうから、そうならないだけ良かったと考える。

更にこの時も『ラオピア』のスキルは発動しており、再びパワーがプラス5000されていた。

 

「次だ……『ラオピア』の『ブースト』、『ドラゴニック・オーバーロード』でヴァンガードにアタック!」

 

「……!二体の『エリクサー・ソムリエ』と『ハウガン』で『ガード』!」

 

『オーバーロード』となった貴之の進む先に、薬師の為に用意された衣装に身を包んだ白い髪の男性『エリクサー・ソムリエ』と、このファイトでは三体目の『ハウガン』が立ちはだかる。

現在『オーバーロード』のパワーは56000。『ガレス』は58000とギリギリの数値によるガードである為、『ドライブチェック』で結果がパワー比べての勝敗が決まる形になる。

そして、その『ドライブチェック』は(クリティカル)トリガーで、効果は全てヴァンガードに割り当てられる。

 

「今みたいに、『ガード』されてもトリガー次第では攻撃が通るも知れないから、この辺りが駆け引きになって来るんだ」

 

「ええ。十分に理解できました」

 

攻撃を通されてしまった紗夜は一瞬苦悶の表情を浮かべた後、気を取り直して『ダメージチェック』を行う。

この時(ドロー)トリガーを一枚引き当てたので、パワーをヴァンガードに回し、防ぎやすいようにしておいた。

 

「あと一回ある……『エルモ』の『ブースト』、『アーマード・ナイト』でヴァンガードにアタック」

 

紗夜はここで『ガード』すると次のターンで手が打てなくなると考え、ノーガードにした。幸いダメージは4なので、このターンで負けることはない。

その『ダメージチェック』がノートリガーであることを確認し、貴之はターンを終える。

 

「(これは……私が見ても分るくらい絶望的な状態ね)」

 

「(『ライド』ができるのは1ターンに一度……どう見ても勝ち目が無い……)」

 

友希那と紗夜が状況を理解して暗い顔になっているところ、貴之が「諦めるには早いぞ」と言うので二人は思わず彼の方に顔を向ける。

玲奈は紗夜のデッキの内容を頭の中で書き出して、一つだけ逆転できるカードがあるのを思い出した。

 

「実はそのデッキには一つだけ、その状態からグレード3に『ライド』できる手段がある」

 

「この状態から……?」

 

分からないまま手札を確認する紗夜だが、確かに一枚だけ条件が揃えば『ライド』できるグレード3のユニットが存在していた。

 

「確かに初めてのファイトだから上手く行かないかも知れないし、負ける可能性だって十分にあり得る……でもさ」

 

――やること全部やった方が、結果として受け止めやすいと思うんだ。そう言われた時、紗夜は少し前までのことを思い返した。

日菜が自分と同じことを後から始めた場合、最初の頃はあまり気にせず続けていたが……その後は違うと思えた。

だからこそ日菜から逃げるように別のことを始めていき、今まで日菜が反応を示さなかったギターを続けていたが、もう間もなく別のことをやっていく(逃げ続ける)ことは叶わなくなる。

 

「さっきあなたは、『最初に立つ位置は誰だって同じ』だと……そう言っていましたね?」

 

「ああ。それはヴァンガード(この世界)でも例外じゃない。今日始めたばかりの氷川さんも、最近始めた友希那と燐子も。そして、長い間続けている俺だって変わらない……」

 

――最初は分からないことだらけ。右も左も分からないから教えてもらったり、やり方を学んだり……。そう言うところはな。それを聞いた紗夜は、引っかかっていたものが取れたような気がした。

その後の伸びる速さなどは確かに違うものの、最初にやり方を教わったりすることは自分も日菜も変わらない。日菜が始めようとするギターだって、自力で調べるかこちらに教わりに来るかのどちらかになることは目に見えていた。

気が楽になった紗夜は貴之に礼を言ってから、自分のターンを始める。しっかりとイメージしてから『ドロー』をしたことで、逆転の為に必要なものが全て揃うことになった。

 

「『神技(しんぎ)の騎士 ボーマン』に『ライド』!」

 

「引き当てたな……なら、そのままイメージを形にしよう」

 

紗夜は胴を覆う部分が獅子を形どっている、金と赤の二色で構成された鎧と、それに合わせた剣と盾をもつ剣士『ボーマン』に『ライド』する。

貴之の促しに頷き、紗夜はそのままターンを進める。どうせなら思い切ってやってみようと、ギターを始めて以来久しぶりにそう思うことができた。

 

「手札から登場した時、手札を一枚捨てることで『ボーマン』のスキルを発動!山札から一枚、『ガレス』を手札に加え、そのまま『コール』します!」

 

後列中央に『ガレス』を『コール』したことにより、とあるユニットに『ライド』するための条件は全て整い、紗夜は一安心した笑みを見せる。

 

「あなたは……これを予見していたんですか?」

 

「俺にそんなことはできねぇな……。ただ、お前の為に集まったユニットたちの諦めたくない想いは感じ取れた……。そんなところかな」

 

――さあ、今こそ『昇級(ライド)』する時だ。そう言われた紗夜は笑みを浮かべて頷いた。

 

「手札にいる『灼熱の獅子 ブロンドエイゼル』のスキル!『ボーマン』と『ガレス』が『ヴァンガードサークル』、または『リアガードサークル』にいる時、『キルフ』を『ソウルブラスト』することでこのユニットに『ライド』します!」

 

紗夜は獅子をモチーフとした鎧に身を包んで、左右に一対の剣を持つ『ブロンドエイゼル』に『ライド』する。

 

「『ゴールドパラディン』……。他の『パラディン』と名の付いた『クラン』と比べて、かなり攻撃的ね」

 

「他の二つと比べると安定性には欠けるけど、その分条件が揃った時の爆発力が強みだね」

 

友希那は『ゴールドパラディン』の特徴を理解し、玲奈と貴之は再確認する。

また、この方法でも『ライド』したことに変わりはないので、紗夜は『イマジナリーギフト』の『アクセル』を獲得し、能力を説明してもらってその通りに処理を行う。

 

「この方法で『ライド』したターン……『ブロンドエイゼル』は相手のヴァンガードがグレードが2以下の場合、ドライブを1減らされてしまいますが……」

 

「今回は既にグレード3の『オーバーロード』になっているからそのペナルティは受けない……さあ、思いっきり来い」

 

貴之のお言葉に甘えて、紗夜は『アクセルサークル』に銀色の鎧を身に纏った『戦場の嵐 サグラモール』を『コール』する。

手札から『コール』したので『ソウルブラスト』をすることで山札の上から一枚引き、手札の中から『ガレス』を後列右側に『コール』する。

更にカードの効果によって『コール』したことので、『カウンターブラスト』をして『ガレス』のスキルを使いパワーを10000プラスする。

 

「まだあります……!もう一体『サグラモール』を『コール』して『ソウルブラスト』……!一枚引いてから『守護聖獣 ネメアライオン』を『コール』!手札から登場したので、このターンの間『ネメアライオン』はパワープラス3000と、『シールドパワー』プラス5000になります!」

 

空いている前列左側に『サグラモール』が、更にスキルで前列左側に赤い体を持ったライオン『ネメアライオン』が『コール』され、紗夜は全ての用意を終えた。

 

「では行きます……!『ガレス』の『ブースト』をした『ブロンドエイゼル』で……ヴァンガードにアタック!」

 

「ここは『ラクシャ』で『ガード』だ!」

 

宣言を聞いた紗夜は『ツインドライブ』を行い、一枚目に(フロント)トリガーを引き当てる。

どういう効果を持っているかを玲奈に教えて貰って処理を行い、二枚目を確認すると(クリティカル)トリガーだった。

 

「パワーは『ネメアライオン』に……(クリティカル)はヴァンガードに回します」

 

既に合計パワー28000の『オーバーロード』に、パワー30000になった『ブロンドエイゼル』が勝っているので、ガードしづらい状況を作り上げておく。

イメージ内で『ブロンドエイゼル』となった紗夜の放つ荒々しくも洗練された剣技に、『オーバーロード』となった貴之が斬られる。

その後『ダメージチェック』を行った結果はノートリガーだったことでダメージは5になり、紗夜はあと一回攻撃を当てれば勝ちとなる。

 

「後三回……!『ウェイピング・オウル』の『ブースト』した『サグラモール』で、ヴァンガードにアタック!」

 

「『ター』で『ガード』!」

 

再びパワーが28000となった『オーバーロード』に、パワー21000の『サグラモール』では攻撃が届かず、イメージ内で『ター』の槍裁きに防がれてしまった。

 

「『ガレス』の『ブースト』……『ネメアライオン』でヴァンガードにアタック!」

 

「二体の『ター』と『バーサーク・ドラゴン』で『ガード』……さらに『アーマード・ナイト』で『インターセプト』!」

 

トリガー効果とそれぞれの上昇したパワーが重なり、合計値50000を叩き出した『ネメアライオン』の攻撃は、ユニットの集結によって合計値53000となった『オーバーロード』には届かなかった。

仕方がないのでもう一度攻撃をしようとした時、紗夜のみならず友希那と玲奈も貴之の状態に気づいた。

 

「あの攻撃で……全てを使い切ったのね」

 

「ああ……仲間を追いやっての勝利は、俺に合わないらしいな」

 

貴之の手札は無くなっており、『インターセプト』も使えない今、パワー32000となっている『サグラモール』の攻撃は防ぎようが無くなっていた。

先程の『アシスト』による代償が大きくのしかかって来ていたのだ。その状態は行動による報いかのようにも見え、貴之は自嘲するような表情になっていた。

――今なら、もう少し向き合えるかも知れないわね。そう思いながら、紗夜は『サグラモール』で攻撃をする。

この時の『ダメージチェック』はノートリガーだったので、ダメージ6となった貴之の敗北が決まった。

 

「とまあ、これでヴァンガードファイトは終了になるんだが……どうだった?」

 

「そうですね。難しいや、覚えることが多いなど、色々と思うところはありますが……」

 

確かに今答えていることも本音ではあるが、先に伝えることがある。そう決めていた紗夜は、それを伝えることにする。

 

「何か、忘れていたものを思い出せた……そんな気がするんです」

 

それが何かとは言うべきではない気がしたのでそこは伝えなかったが、いい意味のものであることは確かに伝えることができた。

意図を理解してくれたのか、貴之は「それは良かった」と満足そうに頷いた。

 

「あら?今度は人に思い出させるなのね……」

 

「流石あたしたちの先導者……やることがひと味違うね」

 

――またそれかよ……。二人に言われた貴之が困った笑みを見せる。

紗夜は困惑するだろうと思っていたが、口元を抑えて笑っていたので三人ともそちらに顔を向けた。

 

「お二人の言う通りだと思いますよ?」

 

紗夜の言葉を聞いて貴之は目を点にし、玲奈は貴之の肩を指で何度かつつき、友希那は貴之に向けて微笑みを見せる。

――この先も暫く続くだろうなこれは……。紗夜にもそう思われていることから、貴之は否が応でも認識せざるを得ない状況になった。

 

「さて……この後はどうする?氷川さんが望むならもう少し続けてもいいが……」

 

「私には妹がいますから、紗夜で構いません。参考が欲しいので、他の『クラン』も見せてもらってもいいですか?」

 

「分った。紗夜が望むならそうしよう。俺も姉がいるから貴之で構わない」

 

気を取り直してからどうするかを決め、互いに名前呼びの関係となってからもう一度ファイトの準備をする。

ちなみにこの二人は兄弟姉妹がいる都合上のものなので、友希那や玲奈が追及することは無かった。

貴之ともう一戦行った後は友希那と玲奈とも紗夜はファイトを行い、帰りに話しに上がっていた資料集を購入していた。

メロディ作りに関しては再びどこかで時間を合わせて作ることが決定し、紗夜はそれまでに練習と並行して資料集を読み進めることで、メロディ作りの参考を増やすことにした。

また、もう大丈夫だと言う判断の下、実は全員が日菜のことを知っていると話したら紗夜は「それなら先に言ってくれてもいいじゃないか」と顔を赤くしながら反論したが、荒れない状態で返せただけ大分良くなったと紗夜自身が安心していた。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

ヴァンガードに触れてから二日後。スタジオの予約が取れなかったので、紗夜は自主練習と資料の読み進めをするべく自宅に戻っていた。

部屋に戻って荷物を置き、着替えてから練習を始めようと思ったところで、日菜の部屋から拙いギター音が聞こえてきた。

しかしながらギターの入ったケースは自分が持っているので、誰が弾いているのかと考えて前にあったことを思い出す。

 

「(届いたのね……)」

 

とうとうこの日が来てしまったかと思った紗夜は、少々不安になる。

それは日菜があっさりと抜き去るかどうかではなく、自分が荒れないで済むかどうかだった。

自分が変わろうと思っているからか、以前とは違う不安だと思いながら日菜の部屋に向かい、ドアをノックする。

 

「……?誰?」

 

「私よ、日菜」

 

「……おねーちゃん!?」

 

珍しいと思いながらも、向こうから来てくれたのが嬉しいので日菜はすぐにドアを開け、「どーしたの?」と問いかける。

 

「あなたの部屋からギターが聞こえたから気になって……届いたのはいつ頃?」

 

「あたしが帰って来てからすぐだよ!最初だから上手く弾けないけど……」

 

頬を指でなぞりながら「あはは」と照れたように笑う日菜を見て、紗夜は貴之の言っていた「始めは誰だって同じ」と言うのを改めて理解する。

それによって少し気が楽になった紗夜は日菜から練習法を聞いた後、一度自室に戻って自分が初心者時代に使っていた物を渡す。

 

「これを参考にすれば、少しは楽に練習できるはずよ」

 

「……いいの?」

 

――ホントに何があったんだろ?不思議に思いながら日菜が問いかけると、紗夜は「今はあなたが持っておいた方がいい」と答える。

ここで大事なのは「もう要らないから」と言う諦めではなく、「今は自分よりもあなた」と言う継続を示す言い方に変わっていることだった。

また辞めるのかと不安になってはいたが、「使わなくなったら返して」と言われたことで日菜は笑顔で礼を言う。

 

「あっ、これってどう使うの?」

 

「説明書を開いて。見ながら教えるから」

 

始めてだから分からないと言うところは同じ。違いは参考資料等を使って独学中心の紗夜と、紗夜から教わるのが多くなりそうな日菜だった。

二日前にヴァンガードに触れていたからなのかもしれないと、長い時間普通に話せる自分に気づいた紗夜は安堵していることを感じた。

 

「(これからどうなるかは分からないけど……簡単に負けるつもりはないからね?)」

 

日菜に教えている最中、紗夜は日菜に向けての対抗心が久しぶりについているのを感じた。




紗夜のデッキはブースターパック『ULTRARARE MIRACLE COLLECTION』に入っている『ゴールドパラディン』のカードで組んだデッキになります。
中の人ネタで『ペイルムーン』も考えましたが、玲奈が既に使っていることと、それをやったら他の人でもやる必要に駆られそうなのでそれは無しにしました。

日菜のギター関係の話しは「紗夜はギターが残されたものと認識しているから、こういう所の反応は敏感でも良さそうだ」と思ってこうしました。
Roseliaシナリオ1章で気づけなかった理由も、音漏れ対策してたと考えれば大丈夫そうですが、こちらでは紗夜が変わろうと頑張ってるので既に気づいていると言う展開に。

次回かその次回が終われば再びRoselia1章の本編に戻ります。
本編を楽しみにしている人は待たせてしまってすみません。
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