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『FWFに出て結果を残してプロ入り』と言うように書いていた部分が、『コンテストで結果を残してFWFに出る』と言うのが正しいことに気付く。
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やっべ!直さな!(細部修正)
こうなって少々遅くなりました……(泣)
この辺間違えると見られかた大きく変わってしまうので気を付けたいです。
貴之は案外すぐに約束果たせそうだけど、友希那は途轍もないほど約束までの道のり長ぇやん!とかってなったりしますから……
久しぶりにRoseliaシナリオに戻ります。
今回は10話部分……つまりはファーストライブです。
「~♪」
Roseliaのライブが控えた前日の放課後。帰宅していた日菜は鼻歌を歌いながらギターの練習をしていた。
自分も自分で、翌日募集が掛かっている場所にギターでオーディションを受けに行くので、今日は最後の確認をしている。
紗夜に見てもらったことで早く基礎を覚えきった日菜は、その後は自分でギターを弾ける場所を探して応募。そのまま送られてきた課題曲の練習を始めて今に至った。
「う~ん……一人でずっと同じ曲弾いてるってのもなぁ~……」
明日が本番なのでもう少し練習しててもいいと思う日菜だが、絶対にただ疲れるだけのタイミングが来るだろうと分かってしまっていた。
何しろ練習しようにも楽譜は見ないで弾けるようになってしまい、精度も高い状態を維持できているので、最早やることが無い。
強いて言えば始めたばかり故に表現力と言うもの理解が乏しい点を思い出し、それの練習をしてみることにする。
こうして殆どの物事……当然ギターも例外なくあっさりと出来るようになって見せた日菜だが、彼女の致命的な部分が一つある。
「(あたし……人の気持ちがよく分からないからダメなのかな……?)」
日菜は昔から度々「人の気持ちが分かっていない」と言われていた。
本人自身に悪気があるわけではないのだが、ちょっとだけ物事に触れさえすればあっさりとそれをこなしてしまうのは今に始まったことではない。昔からそうなのだ。
子供の頃からそうなので、物事の捉え方も自分基準になってしまい、他の人が上手く行かない所を見て純粋に聞いて見れば、怒りを露わにした状態で「お前に何が分かる」と言った趣旨の回答が返って来る。要するに『持たざる者の持つ者に対する妬み』である。
最初の方こそ紗夜は「人それぞれ」だと窘めてくれたが、後に彼女からも責められてしまうことになった。彼女は能力差を感じてのものだが、それでも実の姉から距離を置かれるのは堪えるものがあった。
しかし最近は向こうから歩み寄ろうとしてくれてるので嬉しさが勝るが、未だにどうしてそうするようになったかが分からず、いつか話して欲しいと思っている。
「日菜、いる?」
「……!いるよ~!」
ノック音と紗夜の声が聞こえたことで、自分の手が完全に止まっていたことに気づいた。
流石に心配されたのだろう。慌てて答えたら「入るわよ?」と一言入れてから彼女が部屋のドアを開ける。
部屋に入ってきた彼女は制服姿で、外も暗くなっていることから、本番前の最終確認をチームのみんなで終えた後だと分かる。
「あら、練習していたの?」
「ああ~……してたにはしてたけど、表現って言うのがちょっと分からなくて……」
――これどうすればいいの?日菜はいつも通り聞いてみたのだが、珍しく紗夜がどうするべきか迷っているような表情を見せた。
「あ……あれ?何かダメだった?」
「い、いえ……その部分は私もあまり得意じゃないから……」
聞いては行けないと言うわけではないことが分かって安心するが、今度は解決が楽じゃないことに困る羽目になった。
それに対して、紗夜がこれから学んで行けばいいと答えを出したので、それに乗っかることにする。
この二人、教えた者と飲み込みが異様に早い者と言う組み合わせなので、技量的な面では心配は要らないのだ。
「そう言えば、明日私たちはライブがあるけれど……」
「あたし……明日はこっちでオーディションがあるから行けないんだよねぇ~」
日菜に募集要項の紙を見せてもらった紗夜は、それが『アイドルバンド』と言うまた新しいものを行おうとしているのを知る。
それを見て、日菜がギターを募集していると言う理由で志望したであろうことは、簡単に予想できた。
ちなみにライブに関してだが、リサにも一度誘われており、日菜はそれも同じように断る羽目になっている。
「ああ!あたしも行きたかったよぉ~っ!」
「もう……今回は仕方ないでしょう?」
頭を抱えながら唸る日菜を見て、紗夜は苦笑交じりに窘める。
気を取り直して学ぼうと言うところで夕食ができたことを彼女らの母に言われたので、また後でやろうと言うことになった。
* * *
「待たせたな」
ライブ当日の放課後。ファクトリーの前で待っていた貴之と俊哉の下に、竜馬がやってきた。
学校の帰りだったので今日は三人とも制服姿で、竜馬一人だけ黒を基調としたブレザー制服を着ていた。
「お前のそれ
「ああそうだ。俺が後江行くには家が遠すぎたからな……」
宮地高校は以前貴之たちが行った『ルジストル』より更に商店街から離れている場所にある学校で、バンドとヴァンガードの人口がどちらも少なめの進学校だった。
そんな進学校でもバンドの人口があるのは近くにあるライブのお陰で、ヴァンガードに関してはとあるファイターが人口確保に一助しているのだが、それはまた後ほど知ることになる。
合流出来たことから時間も無いので、早速三人は近くのスーパーで差し入れ用の飲み物を買ってからライブハウスに移動を始める。
「これ……俺が渡した方がいいよな?」
「ああ……確かに、全員とまともな面識持ってんのなんてお前だけじゃないか?」
貴之の問いに俊哉が肯定する。現状全員と普通に話したことのある人間は貴之ただ一人だった。
これに関しては友希那と燐子以外の顔を知らない以上、竜馬も反対はしない。
俊哉の場合も友希那とリサ以外だと妙な空気が流れる可能性を否めないので、やはり貴之が一番すんなりと行くだろう。
「『セトリ』の一部が隠れてる……本番のお楽しみか?」
「それって確か、何を演奏するかの一覧表みたいなやつだっけ?」
「ああ、それで合ってる。隠れてるってことは新曲混じりか……」
移動する最中に確認していた『セトリ』の内、二曲だけ非公開だった。
友希那が曲を作るのに協力していたので、貴之はもしそうならと考え、本番まで待つことにした。
確認していた竜馬自身も「知れたらラッキー」程度に考えていたので、それ以上深く探らないことを選ぶ。
「おっ、見えて来たな……」
暫く歩いていると目的のライブハウスが見えてきた。
まだ時間はあるものの、時間を掛け過ぎてRoseliaの調整時間を奪うつもりは無いので、手短に終わらせようとこの場にいる三人は意識を固めていた。
受付で差し入れのことを話すと、メンバーが控えている場所に案内すると言ってくれた。
「じゃあ俺たちは先に場所取っておくから、後で合流しよう」
「ああ。すぐに戻ってくる」
差し入れを渡しに行くのは貴之一人となり、俊哉と竜馬は先に場所取りに行ってくれた。
場所を教えてもらったので控え室に行こうとしたところ、そこに「私もいいですか?」と呼び止める声が掛かる。
そこには後江の制服を着ている、茶色の髪をポニーテールにした女子生徒が一人いた。
「君は……?」
「私は、隣りのクラスにいる
女子生徒……梨花の問いに貴之は肯定を返し、隣りのクラスならば確かに面識は無くてもおかしくはないと考える。
何しろ貴之は転校生。一ヶ月あるかないかの時間では把握できる人にも限りがある。
さらに言えば、貴之は自分がヴァンガードファイターで友希那たちと関わりがあったことから交流関係の固まりが早く、その人たちといる時間が自然と多くなっていた。
「ところで、真崎さんはRoseliaにどんな用があるんだ?」
「実は私、最近まで湊さんとバンドを組んでたの……」
――だから、ちょっとだけ顔を出しに行こうと思ったの。率直に聞いてみた貴之に対して、梨花は寂しげな笑みを見せて答える。
その表情を見て、貴之は何かマズイことを聞いたかも知れないと思って詫びるが、梨花は自分の近況と彼女への応援等をして新しく歩き出す旨を伝えに行くつもりでいることを教えてくれた。
彼女の話しを聞いた貴之は、そう言うことならと彼女の同行を受け入れた。
* * *
「実際にライブをするって分かると……どうしても緊張しますね……」
「あこも……ここに入ってから妙に震えてる感じが……」
貴之が来る数分前、Roseliaのメンバーは控え室で待機していた。
練習を散々やってきたから大丈夫と言いたいところだったが、本番直前と言うのが緊張を強いる。
「大丈夫だって……二人とも、肩の力抜いて行こ?いざって言う時に動けなかったら……大変だし……」
「リサ……あなたも震えているわよ?」
実際にライブに出るのが始めてとなる燐子とあこを見て、気を楽にしてあげようとしたリサは自分の緊張を隠せなかったことで友希那に指摘を受けた。
リサは久しぶりだからと言うのもあるが、彼女が慣れない内は緊張しやすい人だと言うのは友希那には筒抜けである。
そんなこと無いと言って誤魔化そうとするリサだが、目が泳いでしまって上手くいかないでいた。
リサがそうなっているので、燐子とあこも慌てて始める。そんな様子が見えた友希那はやれやれと言いたげに肩をすくめ、一言投げることにした。
「あなたたち、イメージしなさい。今日のライブでいつも通り上手く演奏できて、見ているお客さんから称賛を受ける……そんな姿を」
『…………!』
まさかの友希那が行う貴之式の意識誘導だが、それによってハッとした三人が落ち着いて
少しすれば三人の気が楽になり、落ち着いたと言う旨が返ってきたので友希那としても一安心だった。
「湊さん……染まりましたか?」
「そこまででは……無いと思うわ。ただ、この三人にはこれが早いと思ったの」
紗夜に問われて一瞬友希那が焦って顔を朱色に染める。
自分から頼み込んだのもあるが、貴之がここに戻ってきて以来ヴァンガードに関わる時間が急激に増えたからその可能性を否めないでいた。
何とも言えない空気になりそうなところで、自分たちがいる控え室のドアをノックする音が聞こえた。
これに反応した五人の中で、たまたま一番出口に近かったリサが進んでドアを開けに行った。
「あっ、貴之……今来たの?」
「丁度今来た。これ、差し入れで人数分だ」
やって来たのは貴之で、ビニール袋にペットボトルを五本入れた状態でやってきていた。
それを渡されたリサは「ありがとう」と言って受け取る。
「でもごめんね?出てきたのが友希那じゃなくてさ?」
「ば……!今はその話ししなくていいだろうに……」
多分出てくるのはリサだろうと思ってはいたが、友希那が出てくることも期待していた貴之にとって、それは完全に図星だった。
それ故に、案の定頬を赤くしながらリサに反論する。しかしそんな状態を長く続けるわけにもいかないので、即座に気を取り直す。
「ああ、そうだった。友希那に用のある人が来てるんだが……今大丈夫か?」
「……お客さん?ちょっと待ってて」
リサがそのことを伝えると、友希那は「すぐに行くわ」と返してリサと交代する。
「待たせたわね。それで……私に用がある人って?」
「ああ。その人なんだが……」
貴之がその人を紹介しようとすれば、その本人が大丈夫と言いながら、貴之の肩の近くから顔を出した。
「私だよ。湊さん」
「……えっ?真崎さん……?」
まさかの来客が梨花だったこともあり、友希那は驚いた。まさか最近まで組んでいた人がこちらに来るとは思ってもみなかったのだ。
大抵の人は自分が抜けていった後は距離を置く傾向があるのだが、彼女はただ一人、そうであっても自分から歩み寄ろうとしてきた例外中の例外となった。
梨花は友希那と二人で話したいと言うことを伝えたので、貴之は受付の近くで彼女を待つ事にした。
「えっと……」
貴之が移動している間も梨花の表情を見ていたのだが、彼女の表情が穏やかなままだったので、友希那は何から話せば言いかに困った。
これが恨み節に近いような表情なら、言いたいことを全部吐き出して貰えばいいと考えていたのだが、その考えはあっさりと崩されている。
そうして友希那が迷っている内に、彼女の方から口を開き、話を持ち掛けて来てくれた。
「久しぶりだね。新しいチームはどう?」
「……技術面を見れば今までに無いチームになった……のかしら。向上心も十分だから、私の歌が他の人を塗りつぶすことも無いと思う……」
梨花は率直な質問を投げるが、それですら友希那はぎこちない回答をしてしまう。
仕方のないことだろう。言い訳をしてまで彼女のいるチームを抜け、それから程なくして新しく組んだ人たちとファーストライブをしようとしているのだ。
何か一つ間違えれば強く糾弾されてもおかしくはない。その考えが、友希那の声を震えさせていた。
「大丈夫?いつもと比べてぎこちないよ?」
「……あなたこそいいの?あなたには……いえ、以前私がいたチームの人たちみんなが……私を恨む権利がある……」
特に自分が抜けた直後に嗚咽の声を上げていた梨花は、他の誰よりも恨んでいいはずだと友希那は考えていたが、その本人が全くそんな様子を見せなかった。
当の本人に至っては「なんだそのことか」と全く気にしていない……というより、気持ちを切り替え切った状態だった。
梨花もそうだが、残されたメンバーたちが友希那を恨んではいないことを伝えると、友希那が目を点にして困惑している様子を見せる。
「あの後、みんなで話し合って『私たちも上に行きたい』ってなったの。ボーカルは今いるメンバーでやりたいって理由で私になった」
「そうさせてしまったのが私で、本当なら謝らなければ行けないというのに……あなたたちが続けてくれていたことを嬉しく思っているわ……」
自分が脱退した後、折れてしまったかも知れないと思っていたが、それどころか更なる向上心を得たと言うことを知った友希那は目が潤んだ。
友希那の言う通り、事情もあって手放しで喜ぶことはできない。何しろこのような状況を引き起こしたのは友希那本人だからだ。
こう言う場面に直面すると、リサが脱退するより前の頃の方が楽だったと思うが、今更あの頃に戻りたいとは思えない。
どうするべきかに迷う友希那だが、梨花がもう一度「メンバー全員がもう大丈夫だから、気負わないで欲しい」と言われたので、これ以上この考えは持たない事にした。
できればもう少し話したかった二人だが、いい加減ここで切り上げないとライブが始められなくなってしまう時間になってきていた。
「それじゃあ、ファーストライブ頑張って。良かったらまた今度一緒にライブしようね」
「ええ……その時は、お互いに最高の演奏をしましょう」
梨花から差し伸べられた右手を取って、短く握手を交わす。
彼女の言葉と行動は友希那の気を楽にしてくれたと同時に、心にのしかかっていた重りを幾分か軽くしてくれた。
* * *
「結局四人で固まることになったな……」
「な、なんかごめんね……せっかく三人で見るはずだったのに……」
「いやいやしょうがないって……もうどこも開いて無かったんだし」
友希那と話しを終わらせて会場の部屋にやって来た梨花だが、友希那の『歌姫』と言うネームバリューのせいかどこにも入れる余地が無かったので、俊哉と竜馬が確保してくれていた場所に混ぜてもらうことになった。
ただでさえその技量で有名となっている友希那が、集まってくれたチームの人たちと演奏すると言うのだから、集まれる人たちは一気に集まって来るのだ。
自分がいなければ「友人同士、男三人水入らず」になっていた筈なので申し訳ない気持ちになっていたが、俊哉の言う通り今回ばかりは本当に仕方ないだろう。
「…………?」
「?俺の顔に何か付いてる?」
梨花の視線に気づいた貴之が問いかけると、そうではないと返される。
最初に目が合った時からそうなのだが、貴之を見て気づけたことが一つだけあったのだ。
「遠導君と湊さんの目が……似ているように思えたの」
「俺と友希那が……?お互い打ち込んでいるものがあるからかな?」
梨花の発言に貴之は予想が付いていた。
分野が違えど、一つの物事で上を目指して進み続けるところは確かに同じだろう。
「こいつも友希那の歌みたいに、打ち込んでるものがあるんだ。ヴァンガードって言えばわかる?」
「ああ。あのカードゲームの……」
「俺らもやっててな……今日はバンドに興味があるヴァンガードファイター三人で集まったんだ」
――あれ?何この一人だけ場違いな感じ……?俊哉たちに教えてもらった梨花は変な汗が流れた。本当は互いに恋慕の情があることも関係しているのだが、俊哉はそのことを言わないでおいた。
自分だけ明らかに違う立ち位置になって、少しづつ焦りが出てきていた。一人だけ異性でヴァンガードファイターでは無くて、バンドをしている人……こうして自分のことを纏め上げると、余りにも場違いすぎた。
その様子を見て、流石に配慮不足だったことに気づいた貴之たちもフォローを入れようとした時、Roseliaのライブが始まると言うアナウンスが流れ、会場が一気に静まり返る。
「(あれが集めたメンバーか……)」
ステージ裏から入ってきたメンバーを見て、竜馬は意外にバラついた感じがあると思い、その理由はメンバーごとの第一印象にある。
友希那と似て非なる真面目さを感じさせるギターの紗夜。見た目こそギャルそのものだがどことなく優しさを感じさせてくれるリサ。その小柄な体格と
ちなみに友希那と燐子に関しては、二人とも話してみれば柔らかい人だなと言う共通点はあった。外見だけなら友希那が真面目そう、燐子は大人しそうだった。
「初めまして、Roseliaです。今日は来てくれてありがとうございます」
友希那が挨拶をすれば会場が湧き上がり、その様子を見て貴之は一瞬だけ啞然とした。場の空気に対して中途半端に飲まれなかったことが原因だった。
それと同時に、周りの人に向けて一瞬で熱を与えたことを認識できることにも繋がっていた。すぐ近くにいる三人もその影響を受けていることが伺えた。
――このライブ、しっかりと胸に刻もう。そう決めた貴之は話しを最低限にライブを観ることに集中した。
「それでは、メンバーの紹介をします」
友希那が順番にメンバーを紹介していき、名を呼ばれたメンバーはパートごとのソロを軽く演奏することで答える。
最後に友希那のことはリサが呼び、四人で軽く演奏するのに合わせて友希那がお辞儀をすることで答えた。
紹介が終わったところに友希那から「今日はこの最高のメンバーで、最高の演奏を届ける」と言う宣言が飛び、それを聞いた観客たちが歓喜の声を上げる。
それだけ『歌姫』と呼ばれる程に至った友希那の影響力の大きさを表していた。
「メンバー紹介が終わったところで、早速始めます」
――私の答えはどうなるかしら……?心の中で自身に投げかけながら開始の宣言をすると同時に演奏する曲名を告げ、Roseliaのファーストライブが開始される。
ここからカバー曲を数曲歌っていくのだが、最初の一曲目から会場にいる人たちを一気に湧きあがらせて行った。
「おお!友希那が選び抜いただけあるな……!」
「あそこの人は前にも見たけど……他の三人は初めて?それにしても凄い腕前……」
「こんだけのモン見せてくれるなら何だっていい!もっと見せてくれ……!」
「(すげぇもん見せてくれるな……。新曲できてから余り時間が無かったのにこれらも全部こなすなんて、俺には真似できなそうだ……)」
俊哉はこの場にいる人たちの代弁をするかのように興奮を示し、梨花はメンバーの技量を見て感嘆する。
紗夜のことは何度か見ている梨花は、他の三人は一体どこでどんな練習をしていたかが気になってもいた。
リサは暫くぶりの復帰なのだが、梨花がバンドをしようとギターを始めたのはリサがベースを辞めるのとすれ違いのタイミングだった為、知らないのは無理も無かった。
竜馬も俊哉と同じで純粋に楽しむ為に来た身なので、練習の過程等は特に気にしていない。相当量やっているだろうなくらいの考えに留め、彼女らの奏でる音を聞くことに集中する。
貴之もまた、Roseliaのメンバーが重ねてきた努力を感じ取り、それによって出来上がった演奏には脱帽しかなかった。
「残す二曲はどちらもオリジナルの曲になります」
カバー曲の演奏が全て終わったところで、残すのは新曲であることを友希那が告げると、会場が再び湧き上がる。
――さて、どっちが来るかな?事情を知っている貴之と俊哉は予想を立て始める。
梨花は事情を知らないので新曲があるんだと、竜馬は何曲あるかまでは聞いていなかったので二曲あるんだと言う反応だった。
ただそれも悪い方向の受け取り方をしている訳では無く、こんな高レベルの人たちが奏でる新曲はどんなものかと言う期待だった。
周りにいる人たちも「その曲で盛り上げてくれ」等を、会場の空気で感じさせてくれる。
「では、まずは一曲目……『Legendary』を聴いてください」
先に選ばれたのは『Legendary』。この曲はいきなり歌いだしから入ることになるので、あこがドラムのスティックで合図を作ってから始まる形になる。
そしてその歌いだしの部分を聞いた瞬間、貴之と俊哉の二人はこれがどちらかにすぐ気づいた。
「貴之!これって……」
「間違いねぇ……!こっちが手伝い頼まれた方だ……」
今演奏しているこの曲こそ、友希那がヴァンガードをテーマにした新曲だった。
始めたばかりでも一切妥協しない姿勢が生み出したその曲は、歌いだしが終わった段階でしっかりと観客たちに熱を与える。
ちなみにこの曲を最後に持って来なかったのは、最初から作り上げていたもう一つの曲で締めくくるべきだと考えがあったからだ。
「なあ、ライブ終わった後ファイトしに行かねぇか?」
「ああ……!いいなそれ!どれくらいやる?」
「最低でも一周は回して……その後は場の流れでいいんじゃねぇか?」
「(やっぱり一人だけ場違いな感じが凄い……)」
演奏を聴いている途中、竜馬から出された提案に二人は乗っかる。
この曲を聴いていると、無性にファイトがしたくなってきていたのは三人共共通の思いだった。
当然のことながら、ヴァンガードファイターでない梨花は一人だけその空気に置いていかれることとなる。こればかりは触れない限り絶対に分からないことなので諦めるしかなかった。
空気的に置いていかれたことを割り切って聴くことに集中していた梨花は、「今月
今回のライブは実際の会場で見れない人たちの為に配信されており、その見ている数が非常に多いらしい。
また、その声を上げていた人物が注視しているPV数は、残り二曲がオリジナルと言うことで更に伸びる勢いを増しているらしい。
「(この曲が昔のような道に戻る可能性なら、次の曲はこのまま進む可能性と言うべきかしら……?)」
演奏が終わり、観客たちの歓声を聞きながら友希那は考えた。
この曲は自分が作曲したものの中では大分明るい方に入っており、次の曲はそれなりに暗めな方になっている。
友希那にはそれが、これからどちらに転がるかの分岐のようにも思えていた。
最後の一曲を演奏する前にメンバーの皆に顔を向けてみると、大丈夫だと言うことを頷くことで示してくれた。
「ラストになります、聴いてください……『BLACK SHOUT』」
ラストを飾ることになった『BLACK SHOUT』。これが元々考えていた方の曲であった。
宣言と共に演奏が始まり、歌いだしの前に入るメロディの段階で人を惹き付ける。
新しい始まりを感じさせる『Legendary』とは打って変わりダークな雰囲気の強い曲だが、この曲でも見事に会場を沸かせて見せる。
この曲の演奏が続いている間、竜馬は純粋に楽しみ、梨花はその技術力に終始圧倒されると言う状態になっていた。
俊哉の場合は「こういう時は余計なことを考えない」と言う信条の下、竜馬と同じく演奏を聴き入っている。
「(なるほど……聴いていれば所々遠回しな表現があるな……)」
――これが、俺が知らない間に抱え込んでたものなのか……。それを理解してしまった貴之は手放しで喜ぶと言うことはできなかった。
しかしそれが顔に出てしまえば要らぬ誤解を与える可能性があったので、それは避けてライブを楽しんでいる表情を見せることに務めた。
やがて最後の曲である『BLACK SHOUT』の演奏も終わり、会場が今日一番大きい歓声で包まれる。
「(凄いノリノリで行けたっ!もっと見てっ!Roseliaって超ーっカッコイイでしょっ!)」
「(最初は緊張してたのに、途中からすごく楽しんでた……。これならもう大丈夫。みんなと一緒だから……)」
「(久しぶりだけど上手くいってよかった~……。一人の時よりずっと上手く弾けるし、このバンドにはきっと、何かあるんだね♪)」
「(三人とも練習の成果が出てる……。本番が呼び起こしたのかは分からないけれど、この前以上に引き寄せられる感じもあった……)」
「(行けるかもしれない……このバンドなら)」
ライブをやりきって、Roseliaのメンバーはそれぞれの所感を抱く。
その中に誰一人として後ろ向きの考えを持ってる人はおらず、前向きなものだった。
今回のライブで答えが出るかと思った友希那だが、『FWF』を目指していることを伝えられるのが確定したが、まだその他の答えを出しきれないでいた。
「(でも……簡単に終わりたく無いと思っている。私も我が儘になったわね)」
もう少しだけ時間が欲しいなと思いながら観客に向けて挨拶をすると、大きな歓声と無数の拍手が返ってきた。
「(ここからが新しい分岐の始まりか……。友希那、後悔の無いようにな?)」
――それはさておき、今日は良いライブだったよ。考えを口には出さず、貴之も惜しみない拍手を送る。
Roseliaのファーストライブは大成功と言える結果になり、後日メンバーの技量等で大きく話題となった。
* * *
「あの三人は『Legendary』で焚き付けられてヴァンガードしに行ったと……元気だねぇ~」
ライブが終わった後の帰り道で、リサが気の遠くなったように言う。
あの後ヴァンガードファイターの三人は、貴之が代表でこちらに感想を伝えた後、三人でヴァンガードをしにファクトリーへ急いでいった。
全員に面識があるのが貴之なのが選ばれた理由で、俊哉たちの思ったことを上手く纏めて話してくれた。
その様子を思い出した燐子も、同意の旨をリサに返した。
ちなみにヴァンガードをしに行く直前に三人が口を揃えて『今なら負ける気がしねぇぜ!』と言っていたのを見た時は、紗夜のみならず全員が数瞬呆然としていたことを記しておく。ちなみに立ち直りが最も早かったのは友希那だった。
「あれだけの元気……あこにも分けて欲しいよぉ~……」
「流石にドラムを叩き続けたから疲れているようね……どこか休める場所に行きましょう」
あこの疲れきっている様子を見かねた友希那の言葉を拾ったリサが、ファミリーレストランに寄ることを提案する。
丁度空腹感もやって来た頃だったので、これに関しては特に反対意見は出なかった。
強いて言えば一瞬だけ紗夜が渋ったが、他に案も出ないので受け入れることを選んで話しが決まった。
* * *
そうしてファミリーレストランに入った後、席に案内されてから少しの間は休憩として雑談の時間を軽く設けてみた。
「あははっ……!お腹いたい!あこ、もっかい!もっかいリクエスト!」
「この……闇のドラムスティックから……えと、何かが……アレして、我がドラムを叩きし時、魔界の扉が開かれる……!
リサはあこの『カッコイイ口上』を聞いて爆笑していた。普段のあことは打って変わった言い方が純粋に笑いのツボを押さえていた。
ちなみに貴之や俊哉もこれを聞いたら笑っていただろうが、それは『何かが……アレして』と言うカッコよく決めようとして上手く言えてない部分でになるだろう。
また、この時燐子がいつも通り「あこちゃん、カッコイイよ」だなんて言うものだから、もう一回『カッコイイ口上』が入り、再びリサが爆笑する羽目になった。
「……これ、ずっと続くのかしら?」
「流石に途中で止まると思いますが……」
一方で、その口上の良さが分からなかった友希那と紗夜は少々置いてけぼりになりかける。
続くにしろ流石にリサが持たないのと、あまりはしゃぎすぎるのも良くないので一回だけ注意喚起をする。
「はぁ~。笑い疲れた……ヴァンガードに闇とかが入ってる『クラン』ってあるのかな?あこ、それで始めたらいいじゃん」
「最後は本人次第ですが……その決め方は大丈夫なのですか?」
リサの提案も悪いわけではないのだが、紗夜は少々不安になった。そんな安直で大丈夫かと言う疑問が強かった。
「大丈夫じゃないかしら?貴之もそのユニット一つで『クラン』を決めたのだから……」
「ああ、前にコメントの部分で言っていましたね……」
友希那の回答で、燐子は以前に読んでいただ記事の内容を思い出す。
それはあこも読んでいたものだから知っていて、リサも昔から話しを聞いているから動じない。その結果、紗夜だけ一人困惑することになった。
「さて……遅くなりすぎない内に今回の結果と今後のことを話しましょうか」
「ええ。休憩も必要ですが、こちらを後回しにするわけにも行きませんから……」
ライブハウスから出た段階で空が暗くなっていたので、これ以上遅くなりすぎると帰りが相当な時間になってしまう。
休憩も十分だろうと判断して、友希那が切り出した。
「技術に関してですが、三人のレベルは短時間でかなり上がったと言って差し支えないでしょう」
「ええ。その結果が今回のライブを成功に導いた……。それは覚えておいて」
勿論、今の実力で満足せず更に実力をつけるつもりでいることは忘れないで欲しい。
友希那が言えば彼女たちは理解してくれていたようで、頷いて返してくれた。
「これからこの五人で本格的に活動するなら、あなたたちに目標を教えるわ」
「私は元々その為に組みましたから……ここで意思確認は必要ですね」
「「……?」」
「(ああそっか……まだあこと燐子が聞いてなのか)」
『目標』という言葉が出たことに、事情を知らない二人が首を傾げ、リサは理由に気づけた。
確かに最初から互いに意思疎通を済ませている紗夜と、友希那の前で宣言した自分とは違って、二人はまだ『一緒にやりたくてその技量を持っている』で留まっていたのだ。
「目標は『FUTURE WORLD FES.』の出場権を掴むために、次のコンテストで上位3位以内に入ること……その為に極限までレベルを上げてもらうことになるわ」
その練習メニューは後ほどメールで送ることと、音楽以外のことをする時間が大幅に減るのを留意して欲しいと伝える。
以前のままであれば、ついていけなくなった人には抜けて貰うと伝えていただろうが、ライブが終わった時に抱いた願望がそれを阻止した。
「ふゅーちゃー……」
「ワールドフェス……?」
あこと燐子が示し合わせたかのように言葉を繋げ、「何それ?」と言った様子を見せる。
これに対して入賞すればプロデビューも狙える大型の音楽フェスだと友希那は教え、詳しいことはサイトで見て欲しいと伝える。
「それだけ大きいフェスに出ることを目指しているの……だからこの場で聞かせてもらうわ」
――あなた達、Roseliaにすべてを賭ける覚悟はある?微笑みを見せながら、しかし真剣な様子で友希那は問いかけた。
Roseliaシナリオ10話が無事終了しました。主な変更点は……
・ライブ前日の会話がリサと日菜の二人ではなく、氷川姉妹の二人
・ライブ前に友希那が三人のフォローを行う
・この段階でRoseliaのオリジナル曲に『Legendary』が追加されている
・ライブ後の休憩を提案された時の対応が変化
・目標を話す友希那の言い方がある程度柔らかいものに
大雑把に上げるとこの辺りでしょうか。
ちなみにライブで演奏した楽曲を詳しく書いてはいませんが、カバー曲はガルパでプレイすることのできる、Roseliaが歌っているカバー曲の中から数曲抜粋されているものと考えて下さい。
『Believe in my existence』は本小説の場合『Legendary』の存在から採用を見送った形になります。
次回は学生には避けて通れないものの話を書こうかと思います。
また本編進まないのかと思った人はすいません……(汗)。