「どうする?決まらないなら先に買っちゃうけど」
「あ、後ちょっとだけ待ってて貰えると嬉しいなぁ~……」
時間はデッキを選んでいる時に遡る。
正確にはあこが『ダークイレギュラーズ』に決めた直後で、リサはそれぞれの『クラン』を見ながらあれよこれよと悩んでいた。
「(思いっきり大きな竜になるのもいいし、こっちで巫女みたいな感じになるのもいいし……うわぁ~、悩むなぁ~……)」
――もうちょっと調べて来ればよかったかな?悩みながらリサは少し後悔する。
そうして少しの間悩んでいたところで、一つの『クラン』が気になってそれを手に取って見る。
「貴之、この『ネオネクタール』ってどんなところなの?」
「『ネオネクタール』は、豊穣な自然を誇る緑の国家『ズー』に拠点を置き、農作物の生産や流通を掌握する植物知性体集団だ。ちなみに『クレイ』の食料関係の内40%以上は彼らが支配しているな……。他にも、自然環境維持に努めていたりする」
ちなみに『ネオネクタール』はファイト内だと『トークン』と言う特殊なユニットを扱うことで、『ロイヤルパラディン』とはまた違った展開力を持っている。
その『トークン』の扱いを覚えるのが少々手間になるものの、癖自体はそこまで強く無いことをリサに伝える。
「なるほど~……何かユニットの見た目も可愛いの集まってるし……これにするよ」
リサが使う『クラン』を決めたので纏めて購入を行い、その後デッキの開封とあことのファイトが終わったことで、リサとファイトする直前である今に至るのだった。
* * *
「そう言えばこれはどこに置いておくの?」
「それは『イマジナリーギフト』と同じく別の場所に、区別できる状態で置いてくれ」
リサは『トークン』をどこに置けばいいかが分からなかったので、貴之に指示を仰ぎ、その通りにする。
「さて……これから始める訳だが、イメージは忘れないようにな?」
「イメージは力になる……貴之もあこも言ってたし、そこは大丈夫♪」
準備が終わったのでリサに促せば、心配する必要は無さそうだった。
なのでリサに「行くぞ」と声を掛け、頷いた彼女とタイミングを合わせる。
「「スタンドアップ!」」
「ザ!」
「「ヴァンガード!」」
リサは無理に独自の言い回しをしようとはせず、デフォルトの言い方で行くことにする。
そうしてカードを表返すことでファイトが始まり、貴之はいつもの通り『アンドゥー』に、リサは服装の一部が植物でできている、動きやすさを重視した服にバンダナを身につけている『菜の花の銃士 キーラ』に『ライド』する。
「(うひゃ~……実際に来てみると広いんだね……『
実際に『ライド』して『クレイ』に飛び込んで見て、リサも改めてそう思った。
「先攻はどうする?ルールは把握済みだし、お前が選びたいなら選んでもいいが……」
「う~ん……いつもの流れでやった方が良さそうだし、そっちが先攻で大丈夫だよ」
他の四人と違い、唯一他人がファイトしているところを数度確認している、ルールを一緒に教わっていると言う状況だったので、リサには試しに問いかけてみた。
しかしながらリサがこちらに先攻を譲ったので、いつも通りの流れで始まることとなった。
ならばと貴之はターンを始め、いつも通り『バー』に『ライド』して一枚ドロー。後列中央には『ガイアース』を『コール』する。
ここまではよかったのだが、ターン終了の前に貴之は『バー』に手を掛ける。
そう――。リサが何度か見ているのにも関わらずだ。
「……ちょっと貴之?アタシ前にもそれ見たよ?」
「まあ、そうなるよな……」
当然リサも咎めて来るので、意味がないことを悟る。
先攻が最初のターン攻撃できないことの再確認で行ったが、リサは全く問題なさそうだ。
確認できて安心したのでターン攻撃を終了し、リサにターンを回す。
「よ~し、アタシは『タンポポの銃士 ミルッカ』に『ライド』!登場時『ソウルブラスト』して『プラント・トークン』を一体『コール』!」
リサはその名の通りタンポポをモチーフとしたガンマン風の格好をした『ミルッカ』に『ライド』し、スキルで後列中央にチューリップが変異して手足を得て、小人のような存在となった『プラント・トークン』を『コール』する。
この『プラント・トークン』には二種類の見た目があり、今回はそのうちの片方が呼ばれた形だった。
登場する際の『プラント・トークン』は、イメージ内では近くにあったチューリップの花がその姿となり、リサの下へ浮遊した状態で駆けつけて行くようなものだった。
「あっ、一緒に戦ってくれるの?」
リサが問いかけて見ると頷いてくれたので、嬉しさから思わず「ありがと~!」と言いながら抱きしめてしまう。
二種類ともそうなのだが、『プラント・トークン』はかなり愛嬌ある見た目をしているので、あり得そうではあった。
幸いにも、イメージ内で『プラント・トークン』が嬉しそうな反応をしているのが救いだろうか。
「デッキとは違う場所からユニットが出た……手札を確保したまま展開できるのは便利ね」
「いい目の付け所だな……。友希那の言った通り、『トークン』を場に出すこと自体に手札の消費はしないから、後々の展開で楽ができるんだ」
「『トークン』自体は非力だから、何か補強出来たりするの?」
「ああ。場に出す以外にも、『トークン』を強化するスキルを持つユニットもいるから、使い方を覚えれば『トークン』に物を言わせた戦いだってできる」
友希那たちが着実に学んでいることを嬉しく思いながら、貴之は説明する。
『ネオネクタール』はこの『トークン』による戦い方を効果的に行えば、向こうは手札が苦しいのにこちらは余裕があると言う、複数の意味で『数の暴力』を見せつけることが可能な『クラン』である。
どこで来るかなと思いながら、リサがスキルで一枚ドローするところを見届ける。
「じゃあ、攻撃するよ~……『プラント・トークン』の『ブースト』、『ミルッカ』でヴァンガードにアタック!」
「まずはノーガードだ」
宣言を受けて『ドライブチェック』を行った結果、ノートリガーだった。
イメージ内で『プラント・トークン』に応援されて力を貰い、『ミルッカ』となったリサは軽やかな足取りで『バー』となった貴之に近寄り、手に持っているタンポポで打ち払う。
――
できることが終わったのでリサはターンを終了し、貴之にターンを回す。
「ところで、『トークン』はデッキの外から『コール』されていましたが……退却させられた場合はどうなるのですか?」
「いい質問だな……。退却させられた場合は除外……つまりは
「流石に、手札を使わないで出せるユニットが再利用できたらインチキですからね……」
貴之は紗夜の質問に答えながら、あこの反応にはごもっともだと返す。
流石に『トークン』が再利用可能だと言われたら、貴之も正気を疑うだろう。意識しなければならないものが多すぎる。
「ということで、実際に除外される瞬間を見てみようか……『ライド』!『バーサーク・ドラゴン』!スキルで『プラント・トークン』を退却させる!」
「あっ……!ちょっと……!?」
――ちょっと鬼なことやるな……。そう思いながら貴之は宣言をする。
リサの制止は間に合わず、イメージ内で『バーサーク・ドラゴン』となった貴之から炎を吹き付けられ、『プラント・トークン』は一瞬の内に飲み込まれてから悲しげな表情を見せながら光となって消滅する。
「除外された場合は『ドロップゾーン』じゃなくて別の場所に置くことになるんだが……うん。俺もあの見た目相手にやるのはちょっと後悔してる」
「頑張ってまたスキルで呼びます……」
リサがしゅんと沈んた様子を見せていたので、貴之も罪悪感が増していた。本人自身はファイトの都合があるから仕方ないと思ってくれるだけまだ良いだろう。
友希那たちが落ち込んだ彼女に少々同情するが、燐子は自分が前にもちょっと違う形でこんなことが起きていたことを思い出す。
「(あの時の私はきっと……こんな風になれるとは思ってなかったな……)」
――きっかけがあれば誰だって変われる。今の自分と照らし合わせて、貴之の言ってくれた言葉が本当であることを燐子は改めて実感する。
少しだけしてリサが気を取り直したのでファイトに戻り、スキルによるドロー処理をしてから前列左側に『アーマード・ナイト』、後列左側に『エルモ』を『コール』する。
「じゃあこっちも攻撃だ。『ガイアース』の『ブースト』、『バーサーク・ドラゴン』でヴァンガードにアタック!」
「まだ受けてないし……ここはノーガードで」
宣言を終えたので『ドライブチェック』を行うと
イメージ内で『バーサーク・ドラゴン』の炎を『ミルッカ』となったリサに浴びせた後、『ダメージチェック』が行われる。
その結果は
「次、『エルモ』の『ブースト』した『アーマード・ナイト』でヴァンガードにアタック!」
「上がったパワーが勿体ないけど……もう一回ノーガード!」
現在『ミルッカ』のパワーは18000、『アーマード・ナイト』は『エルモ』の『ブースト』とスキルが影響して合計が36000となっている。
確かに上がったパワーを活用できないことは勿体ないが、ここで多くの手札を消費するのは割に合わないと感じて防ぐのは断念した。
リサの『ダメージチェック』がノートリガーで、彼女のダメージが2になったのを確認したところで、貴之はターンを終える。
「『パンジーの銃士 シルヴィア』に『ライド』!登場時、スキルで『プラント・トークン』を『コール』!さらに二体『メイデン・オブ・サリックス』と『フルーツバスケット・エルフ』を『コール』!」
二回目のターンが回ってきて、リサはパンジーの花がモチーフとなった衣装に身を包む『シルヴィア』に『ライド』し、後列中央に『プラント・トークン』を『コール』する。
前列左側と前列右側に、まるで若葉を感じさせるような髪と衣装が目を引く、魔女のような見た目をした『サリックス』が、後列左側にはその名の通り果物の入ったバスケットを抱えるエルフの『バスケットエルフ』が『コール』される。
バトルの前に『バスケットエルフ』のスキルを使おうかと考えたリサだが、思ったよりコストが多いので止めて置いた。
「まずは、右側の『サリックス』でヴァンガードにアタック!」
「ノーガード。『ダメージチェック』……」
イメージ内で『サリックス』が杖を振るうことで、周囲の木の葉が凶器となって『バーサーク・ドラゴン』となった貴之に襲い掛かる。
『ダメージチェック』の結果はノートリガーなので、これでダメージが並ぶことになった。
「次は『プラント・トークン』の『ブースト』した『シルヴィア』で、ヴァンガードにアタック!」
「そうだな……これもノーガードで行こう」
『カウンターブラスト』に使えるコストが欲しかったので、貴之はノーガードを選択し、イメージ内で『シルヴィア』となったリサの踊るような剣技を受ける。
この時の『ドライブチェック』、『ダメージチェック』は互いにノートリガーで、大きな変化は起こらなかった。
「最後……『バスケットエルフ』の『ブースト』、左側の『サリックス』でヴァンガードにアタック!」
「『ゲンジョウ』で『ガード』!」
合計で18000となった『サリックス』の攻撃は、『ゲンジョウ』の『シールドパワー』20000を増やし、パワー30000の状態で防ぎきる。
2ダメージ与えられたのだから十分と思いながらリサはターンを終え、貴之に回した。
「よし、じゃあそろそろ行くか……」
「(……!この言い方、多分来る……)」
貴之の言葉を聞いたリサは大方予想を立てる。恐らく見ている四人も同じ予想をしているだろう。
その答えを証明するかの如く、貴之は手札から一枚を手に取り、『ヴァンガードサークル』にいる『バーサーク・ドラゴン』へと重ねる。
「ライド・ザ・ヴァンガード!『ドラゴニック・オーバーロード』!」
「(相手にしてみるとちょっと怖い……のかな?相手が場慣れしてるからなんだろうけど……)」
五人の予想通り、貴之は『オーバーロード』に『ライド』する。
改めてその姿を見れば巨大さから来る威圧感と、『
このまま『イマジナリーギフト』の処理が入るのだが、貴之は「その前に一つ復習だ」と言って自分たちから注目を貰う。
「『イマジナリーギフト』の『フォース』は、自分のターンの間パワープラス10000の効果を与えるが……設置できる場所はどこだったかな?」
「今聞いたってことは、何か理由があるんですか?」
あこの疑問は最もで、どうして今この場で確認したのかは全員が不思議に思っていた。
五人が抱いた疑問に対して、貴之は『ネオネクタール』も『フォース』を使うからであることを説明すると、自分たちの知識確認であることが理解できた。
ちなみにこの問いかけ自体は、なるべくリサに答えて貰いたいと考えている。理由は『ネオネクタール』を使っていることと、今日までの暫くの間ヴァンガードファイトの光景を見ていなかったからだ。
「ん……?この問い方だから、ヴァンガードだけじゃない……。この六つのサークルの内どれか一つってこと?」
「よく思い出せたな……。正解だ」
この少々意地悪な振り方のおかげで、リサは正解に辿り着けたのでそれに安堵する。
ヴァンガードのみだと勘違いしかけたのは、自分の戦術故に起きた事だろうと貴之は予想を付ける。
「今回も俺はヴァンガードに設置するが、当然リアガードに置くことだってアリだ。俺の場合、主力のユニットがヴァンガードで効果を発揮しやすいからこうしてるんだ」
貴之の説明を聞いて、友希那は彼の考え方を理解する。
この後『メインフェイズ』で前列右側に『ラーム』、後列右側に『ガイアース』を『コール』し、『オーバーロード』の『ソウルブラスト』を行う。
「さて……『エルモ』の『ブースト』、『アーマード・ナイト』でヴァンガードにアタック!」
「うーん……ここはノーガード!」
まだダメージは2であったのでここはノーガードを選択する。
リサの『ダメージチェック』はノートリガーで、合計のダメージは3になった。
「次、『ドラゴニック・オーバーロード』でヴァンガードにアタック!」
「えっ!?えぇっと……」
『オーバーロード』のスキルは前にも見ていたので、リサは焦りながら手札を確認する。
すると一枚、確実に攻撃を止められるカードがあったので、それを手に取る。
「『
「いい選択だな。こっちも『ツインドライブ』だ……」
パワーが33000となっていた『オーバーロード』だが、『完全ガード』で防がれる為効果はない。この選択には貴之のみならず、四人もリサの選択を称賛する。
ちなみに『オニ・ゴ・ボー』は胴着を着たゴボウのような見た目をしており、彼は持ち前の護身拳法で『オーバーロード』となった貴之の攻撃を裁き切った。
そして行われた『ツインドライブ』は一枚目がノートリガー。二枚目は
「最後、『ガイアース』の『ブースト』した『ラーム』でヴァンガードに攻撃だ」
「これは悩みどころね……」
「『ガード』をしないと2ダメージで、『ガード』をするならちょっと多めに使っちゃいますね……」
現在『ラーム』のパワーは『ブースト』もあって28000。ダメージを受けると2ダメージになるので、友希那と燐子の言う通りかなり悩まされる。
リサのダメージが3なので、これを受けても敗北することはないが、余裕を持って次のターンを迎えるなら防いでおきたいところだった。
「ならアタシは……手札の『サリックス』で『ガード』と、右側の『サリックス』で『インターセプト』!」
攻撃に対し、リサは『インターセプト』も活用して最低限の手札消費で防ぎきって見せた。
彼女が『インターセプト』をしっかりと覚えていて、活用して見せたのに安堵しながら貴之はターンを終える。
「『メイデン・オブ・トレイリングローズ』に『ライド』!登場時に『プラント・トークン』を『コール』するけど、このユニットがヴァンガードにいるから二体出すよ!」
リサが薔薇をモチーフとした衣装と髪飾りが特徴の『トレイリングローズ』に『ライド』し、先程の『インターセプト』もあって完全に空いた右側の縦列に二体の『プラント・トークン』を『コール』する。
この『トレイリングローズ』の登場時スキルは、リアガードで発動した場合は一体の『コール』になる為、なるべくヴァンガードで使いたい効果であった。
「『イマジナリーギフト』、『フォース』!今回はアタシもヴァンガードに置かせてもらうね」
この『イマジナリーギフト』をどこに置こうか少し悩んだものの、現状はヴァンガードの攻撃が最もヒットさせやすいのでリサは『ヴァンガードサークル』に設置を決めた。
「ここで『トレイリングローズ』の『ソウルブラスト』!『プラント・トークン』三体のパワーをプラス5000!」
イメージ内で『トレイリングローズ』となったリサが光のようなものを『プラント・トークン』たちに送り込み、受け取った『トークン』たちは力が湧いてきたことで張り切った様子を見せる。
その様子は見ていた四人に、『トークン』たちに変化が起こったことをはっきりと理解させるには十分だった。
「それじゃあ、攻撃行くよ~……!後列右側の『プラント・トークン』で『ブースト』して、前列右側の『プラント・トークン』でヴァンガードにアタック!」
――言い方ややこしい~!これに関しては宣言しているリサだけで無く、他の五人も全員がそう思っていた。
貴之も『左の……』だけで済むならまだいいのだが、流石に『後列右側の……』となると面倒だ。
リサが頭を抱えた気持ちに理解を示しながらノーガードを選択し、『ダメージチェック』を行う。
その結果は
今回の攻撃で貴之のダメージは4となり、再び逆転する形となった。
「次は『プラント・トークン』の『ブースト』した『トレイリングローズ』で、ヴァンガードにアタック!」
「なら、『ワイバーンガード バリィ』で『完全ガード』!」
イメージ内で『トレイリングローズ』となったリサの放つ攻撃は、目の前に現れた『バリィ』が防ぐ。
『イマジナリーギフト』と『ブースト』、スキルによる三つが合わさってパワー33000となっていた攻撃だが、それでも完全ガードの前では通すことはかなわない。
防がれるのが確定したことで、リサは嫌な汗を一つ流す。
「リサ、まだ『ツインドライブ』があるわよ?」
「あ、そっか……!」
友希那が言ってくれたおかげで、グレード3になったことによる最大の恩恵を思い出した。
その結果一枚目はノートリガー。二枚目は
「最後に一回……『バスケットエルフ』の『ブースト』……『サリックス』でヴァンガードにアタック!」
「『ター』で『ガード』!それから『アーマード・ナイト』で『インターセプト』!」
パワー28000となった『サリックス』の攻撃は合計パワー33000の前に防がれてしまい、貴之のダメージは4で留まる。
嫌な予感を感じるものの、できることが終わった以上仕方ないのでリサはターンを終了する。
「ここで見せるのは始めてかな……?『フォース』を二枚以上使う時の一例を見せるぞ」
「じゃあ……もう一回『ライド』するの?」
燐子の問いに対しては頷くことで肯定を返す。言っていることが答えも同然なので、隠すことに意義は感じなかった。
そして宣言通り、貴之は手札の内一枚を手に取って、ヴァンガードに重ねる。
「もう一度、『ドラゴニック・オーバーロード』に『ライド』!『フォース』も同じくヴァンガードに……。更に『バーサーク・ドラゴン』を『コール』して『サリックス』を退却させ、『オーバーロード』は『ソウルブラスト』!」
「ええっと、『フォース』二枚と『ソウルブラスト』だから……もう43000!?」
「俺が『フォース』を重ね掛けして使いたい理由の一つがこれだ。『かげろう』の主力ユニットは、ヴァンガード単体で力を発揮するのが殆どだからな」
そのパワーの上昇具合を見てリサは焦り、見ていた四人も貴之の説明を聞いて重ね掛けした理由を理解する。
――これ……耐えられるかな?相手の盤面を見て、リサは不安になった。
「じゃあ行くぞ……?『エルモ』の『ブースト』、『バーサーク・ドラゴン』でヴァンガードにアタック!これはスキルによって合計24000だ」
「これを受けてもダメージは4だから……ノーガード!」
リサのノーガードには、トリガーが引ければ御の字と言う思惑もあった。
しかし、その『ダメージチェック』ではノートリガーで、パワー上昇を得られないまま残りの攻撃を受ける必要ができてしまった。
「次は『オーバーロード』で『プラント・トークン』にアタック!」
「ごめんね……これもノーガード!」
また『プラント・トークン』を助けられないことを悔みながら、リサは宣言する。
『ツインドライブ』では一枚
イメージ内で『プラント・トークン』が『オーバーロード』となった貴之の炎に焼かれて退却させられ、更に『オーバーロード』はスキルで『スタンド』する。
「本命だ……『ガイアース』の『ブースト』……『オーバーロード』でヴァンガードにアタック!この時、グレード3以上のユニットを『ブースト』した『ガイアース』のスキル発動!」
「……!『ミルッカ』と『ウォータリング・エルフ』……それと『ダンガン・マロン』で『ガード』!」
リサは現状の手札を鑑みて、貴之がトリガーを引かないことに賭けて最低限の数値で『ガード』を狙う。
こうなってしまったのは、先程退却させられた『サリックス』の存在が響いていた。
「……!さっきの『メインフェイズ』……!」
「『インターセプト』をできないようにしていたのね……」
燐子と友希那を筆頭に、『バーサーク・ドラゴン』のスキルで行った意図に四人が気付く。
ここに『サリックス』がいたのなら、リサはそれを『インターセプト』に出すことで『オーバーロード』の攻撃を確実に防ぐことが可能だった。
しかしそれを退却させられてしまった以上、現在はこうすることで精一杯だった。
「じゃあ行くぞ?『ドライブチェック』……」
貴之の『ドライブチェック』の結果は二枚目の
「あれ……?回復の処理はしないんですか?」
「俺のダメージと、リサのダメージを見てくれ……。どっちの方が多くダメージを受けてる?」
「今井さんの方が多いですね……」
「じゃあ、
貴之に言われて思い返すことで、五人は納得した。今回のケースだと貴之はパワー増加しか行えないので、ダメージは3のままだった。
そしてイメージ内では『オーバーロード』となった貴之が『ガーディアン』たちを蹴散らし、『トレイリングローズ』となったリサに剣で斬撃を浴びせていた。
ダメージを受けたのでリサは『ダメージチェック』を行うことになるが、この時自分の手が震えていることを自覚する。
「(やばっ……。実際にやってみると前よりも引っ張られてる……)」
――ダメージ6になった時は全てのカードとの契約が解除され、霊体に戻って消滅する……。以前、貴之にしてもらった世界観説明がここに来て尾を引いていた。
ついて来てくれた仲間たちは逃げ出しているので助けてくれない。対峙している勢力は敵対者なのでこちらが消えゆくのを見守るだけ……。そう考えると僅かに恐怖感が襲ってきていた。
「まだ終わっていないわ」
「……友希那?」
思考の袋小路に入りかけたところで、友希那が現実に引き戻してくれた。
貴之も友希那の言葉に同意を示し、「こんな時だからこそ落ち着いてイメージするんだ」と投げかけてきた。
そう言われた時、リサは『ネオネクタール』の仲間たちが逃げ出すのではなく、攻撃を受け倒れ込んでいる自分を案じているイメージが見えた。
「(みんなが待ってくれているなら、アタシ一人怖がってちゃダメだね……♪)」
落ち着きを取り戻したリサは、一度深呼吸をしてから『ダメージチェック』を行う。
その結果は一枚目がノートリガー。二枚目は見事に
「言ったでしょう?まだ終わっていないって……」
「あはは~……さっきまで慌ててたのが嘘みたいだよ」
脱力感と安心感、それからちょっとの恥ずかしさを感じながらリサはパワーをヴァンガードに回してダメージを回復する。
これで『トレイリングローズ』のパワーが23000。『バーサーク・ドラゴン』のパワーは『ガイアース』の『ブースト』をしても21000で止まる。更には前列のユニットが他にいないので、貴之はターンを終了させた。
「(そっか……仲間と一緒って、こういった形もあるんだね)」
今ファイト四回目の『スタンド』アンド『ドロー』を済ませた時、引いたユニットが「お待たせ」と言ってくれたような気がしたので、先程のイメージも相まってリサはそう思った。
――Roseliaのみんなとも、色んな『絆』が作れるかもしれないね……♪少々気持ちが弾みながら、リサはターンを進める。
「『白百合の銃士 セシリア』に『ライド』!『フォース』は前列右側の『リアガードサークル』に!」
リサは白い百合の花がモチーフとなった衣装に身を包んだ『セシリア』に『ライド』する。
この時リサが『フォース』の重ね掛けをしなかったのは、この次に行うスキルが関係している。
「『カウンターブラスト』とリアガード一体を退却させることでスキル発動!山札を上から五枚見て、その内二枚までを『コール』……と言うのは通常時の処理で、今回は『ソウル』にグレート3があるから三体まで『コール』して、前列にいるユニット三体のパワーをプラス10000!」
退却するリアガードは『プラント・トークン』を選び、前列右側に『サリックス』、前列左側に『シルヴィア』、後列中央に二体目の『バスケットエルフ』が『コール』され、『シルヴィア』のスキルによって空いている後列右側に『プラント・トークン』がコールされる。
「合計でパワーがプラス20000になったユニットが二体……今井さんが別々に置いた理由はこれだったんだ」
「ああ。こうやって『プラント・トークン』やその他のユニットをスキルで呼び、強化して瞬間的な押し込みを手に入れる……。これが『ネオネクタール』の戦い方なんだ」
この話しを聞いた時、友希那は『ロイヤルパラディン』に近いと性質だと思った。理由は『仲間を揃えることで力を発揮しやすい』ところにある。
「更に『ソウルブラスト』と、自分を退却させることで『バスケットエルフ』のスキル発動!『プラント・トークン』を二枚まで『コール』して、ヴァンガードのグレードが3以上ならこのターンの間、このスキルで『コール』された『プラント・トークン』はパワープラス5000!これをもう一体も行うよ!」
「じゃあ、今呼ばれた『プラント・トークン』のパワーは10000なんだ……!」
「ここに二枚の『フォース』と『セシリア』のスキルが加わる……。貴之君とは反対に、全体が満遍なく強化されていますね……」
紗夜が気づいた通り、ヴァンガード単体で強力な攻撃を放った貴之と、リアガードと共にある程度強い攻撃を連発しようとしているリサは強化の方向が対比関係だった。
無論貴之もそこに気づいており、「仲間と共にイメージをぶつけてこい」とリサに促している。
その促しに彼女も頷き、場に出されているカードに手を掛ける。
最初に二体のリアガードによる攻撃を行った時、貴之はどちらともノーガードを選択し、『ダメージチェック』は両方ともノートリガー。これでダメージが5になった。
「じゃあ行くよ……!『プラント・トークン』の『ブースト』、『セシリア』でヴァンガードにアタック!」
「なら俺は、『ゲンジョウ』と『ラオピア』で『ガード』!更に『ラーム』と『バーサーク・ドラゴン』で『インターセプト』!」
現在、『フォース』と『ブースト』、スキルの恩恵を受けた『セシリア』のパワーは43000。『ガーディアン』の『シールドパワー』を貰った『オーバーロード』のパワーは58000となっている。
つまりはこの『ツインドライブ』で勝敗が付くか否かになるのだが、先程の窮地を乗り切ったリサは不思議と落ち着いていた。
「よ~し、『ツインドライブ』!ファーストチェック……」
一枚目は
これによって次もトリガーならダメージを与えられることになった二枚目のチェックで、リサは見事に
「……!効果は全てヴァンガードに!」
「うん。いいイメージだった……」
イメージ内で『セシリア』となったリサが手に持っている赤みを帯びている刃が目を引く剣を使い、華麗なる連撃で『オーバーロード』となった貴之を切り裂く。
剣での攻撃を終えた『セシリア』となったリサが剣で空を斬った時、周囲の花びらが風を舞い、『オーバーロード』なった貴之も流されるようにゆっくりと霧散していくように消えていった。
そのイメージに従うかのように、『ダメージチェック』の一枚目がノートリガーで、ここで貴之のダメージが6なので勝負がついた。
「とまあ……これで一戦終わった訳だが、リサは見た感じ普通に入り込めてた感じあるな……」
「最後の方とか、周り全く気にしてなかったよ……」
ファイトが終わったら問いかけようと思っていた貴之だが、余りにも問題が無さ過ぎてなんて言おうか迷ってしまった。
それを理解されたリサも、指で頬を撫でながら照れた様子を見せる。全員が見事入口を叩けたことに貴之は満足する。
ファイトを終えた余韻に浸りながら、二人は「ありがとうございました」と終わりの挨拶を忘れずに行う。
「あっ、そうだ!今度どこかで一回だけ、みんなでファイトしてみない?」
せっかく全員がヴァンガードを始めたのだからというリサの提案に、四人はなるほど……と考え込む。
あこと燐子の場合は是非ともやってみたいと思っていたので、即座に賛成だった。
「やるにしても、本当にどこか一回だけが限度でしょうね……今はコンテストも控えていますから」
何もその提案が悪いわけでは無いのだが、時期が時期だった。
もしこれがコンテストを終えた後と言われれば、一日中通しでやる日があっても大きなライブ等が控えていないなら問題は無いだろう。
とは言え、流石にそこまでの体力や気力があるかと言われれば無条件で頷くのは難しいが……。
「それなら、今日……思いっきりやってしまいましょう」
『あっ……!』
友希那の提案は、今日が一番簡単に合わせられることを思い出させてくれた。
そういう事ならと、思い切った息抜きやコンテスト前に英気を養う等。様々な理由付けを準備してRoseliaの五人はファイトをすることにした。
「ファイトの相手が必要なら呼んでくれ。待っているだけじゃファイトしたい衝動抑えるの大変だろうし……」
「なら、相手をお願いしてもいいかしら?あなたのファイトを……目の前で感じたいの」
「分かった。それなら全力で相手するぜ」
待っている時のもどかしさを知っている貴之が口を出せば、組み合わせが奇しくもテスト勉強をやっていた時と同じ組み合わせになっていた。
また、これも何かの偶然か、開始の宣言を行う直前までは全員が同じタイミングで終わっていた。
『スタンドアップ!』
「「ザ!」」
『ヴァンガード!』
そして、貴之と言うこの五人にとっては様々な意味での先導者を据えて、Roseliaの第一回ヴァンガードファイト会が始まった。
* * *
「すげぇやりきった感じがある……」
「というか、二か月以内で五人も勧誘ってとんでもないなお前……大介は予想できたか?」
「……無茶言うな。こんなの誰にも予想できないって」
そして休日明けの学校にて、貴之らはこの前のリサとあこの二人が教えを頼んできた日のことを話していた。
案の定この短期間でこれだけの人に教えるのは誰だって予想外なのが分かり、貴之は心底安心した。
ちなみにクラスの男子生徒に今回のことを問われたので素直に話し、Roseliaの内友希那とリサが幼馴染みであることを説明すると「まあお前に聞くわな」と普通に納得してもらえた。
ここで「俺と変われ」などと言われようものなら血管が切れていたであろうところだが、「進展は無し?」と聞かれた時は素直に肯定するしかなかった。
「おい玲奈……大丈夫か?さっきから沈みっぱなしだが……」
レクチャーのことを話したっきり、玲奈が終始無言だったので心配になった俊哉が声を掛ける。
しかしそれが、玲奈がため込んでいた悲しみを吐き出す為の引き金となり、物凄い勢いでがっしりと貴之の肩を掴む。
「ねえ何で!?どうしてあたしがいない時に女の子へのレクチャーが終わってて!何で毎回貴之はその場に居合わせてるの!?」
「落ち着け!タイミングとしか言いようねぇよ……ってか、お前は紗夜に教えてる時居合わせてただろ!?」
「だってその時相手を担当したの貴之じゃん!」
「完全に初対面のお前と一回だけでも顔の合わせたことのある俺って言われたら……そりゃ俺の方が頼みやすいだろうよ!」
思いっきり前後に肩を揺さぶられるので、貴之は引き剥がそうとする。
しかし言い返した瞬間に更に顔を近づけて抗議してきたので、貴之は自分の抵抗が雀の涙にしかならない様な気がしてきていた。
更に勘弁して欲しいこととして、玲奈の目尻から涙が見えていることにあり、完全に自分が悪いことをしたように見られそうで気が滅入ってしまう。
「俺かと思ったら貴之に向かって行った……」
この光景を見た全員が呆然としているのだが、中でも一番呆然として困惑も混じっているのが俊哉だった。
――どうやったらこの流れで貴之に行くんだ……?玲奈の位置に対する正確性にも驚きだが、何よりもこっちのせいで理解が及ばないでいる。
「取りあえず手伝ってやるか……。あれを一人でどうにかするのは大変だろ」
「そうだな。これで勘違いとかされたら目も当てられないしな」
朝から嫌な汗を流す羽目になっている貴之を見かねて、俊哉と大介は助けに入るのだった。
リサのデッキはブースターパック『ULTRARARE MIRACLE COLLECTION』に入っている『ネオネクタール』のカードで作ったデッキとなります。
本当にリサは一番悩みました。プロフィールやその他色々と確認していましたが、リサは『器用すぎる』のが理由で絞り込むのが大変でした……(汗)。
実はこのRoseliaメンバーに初ファイトをさせる順番を守れていたのは友希那とあこの二人だけで、残りの三人は順番がずれています。
特にリサに至っては初期プロットでは二番目のはずが、実際に書いてみると一番最後になっていました……。
本来の順番としては
友希那→リサ→燐子→あこ→紗夜の順番でした。
前回あこのイメージ能力が高いという触れ方をしましたが、Roseliaメンバーだけで現段階の能力を高い順に比較した場合……
(高い)あこ>燐子=>リサ>友希那>紗夜(低い)
この様な形となります。
下二人は音楽命と真面目な性格故のものなので、改善出来れば他の三人より伸びしろが大きい裏返しになります。
次回から貴之らの地方予選における話しを書くので、ファイト展開が連続することになります。
Roseliaシナリオ本編を楽しみにしている方には少々申し訳ない展開が続くことになるので、そこだけは本当にすみません……