まずは導入と一戦目の前半です。
地方予選前日の夜。貴之は自室で最後のデッキ調整を行っていた。理由は普段共にファイトをしている俊哉たちを想定してだった。
以前の場所であれば、自分がどのような組み合わせなら勝ちやすいかを考えて組めばいいのだが、今回はそもそも身内のファイターが強いのと、自分を知っていることから無策で来ないと感じている。
故にこちらも何か隠し玉となるユニットを探していた。大きなな変更を加えると当日に支障をきたすので、本当に微調整程度のことしかしない。
「(隠し玉には……こいつが使えそうだな。戦い方が崩れやすくなるから一枚しか入れられないが、そこはイメージで補える)」
――イメージは力になる。これは自分がレクチャーをする上で何度も言ってきたことで、そう言ってきている自分が、イメージを信じない理由などどこにもなかった。
そうして微調整を終えてデッキをケースにしまう時、『オーバーロード』のカードを手に取る。
「明日は頼むぜ……お前だけじゃなくて、『かげろう』のみんなもな……」
『オーバーロード』と残りのデッキに集まってくれた
――任された。明日は共に勝利を掴もう。彼らからそんな声が聞こえたような気がして、貴之は安堵する。
全ての準備を済ませた貴之は明日に備え、睡眠に入るのだった。
* * *
「ここに来るのも五年ぶりか……」
「昔はお前と俺、玲奈の三人は固定。残りは来れる人や来たい人が来るくらいだったからな……」
「ここに三人揃って来るのって、本当に久しぶりだね」
翌日の朝。地方予選の会場に到着した貴之は懐かしい思いをしていた。
それは俊哉と玲奈の同様で、改めてこの時間が戻って来たことを実感させられる。
ちなみにこの地方予選の会場だが、商店街の最寄り駅から三駅程進み、その駅から降りて10分もしない場所にある。
「よう。元気にしてたか?」
「身内で集まってくるのは、そっちも同じだったみたいだな」
少し遅れて、大介と竜馬、弘人の三人もやって来た。
この場に集まっている六人は現地集合と言う形になっていたのだが、どうやら同じ小学出身同士で集まってから来たようだ。
ちなみにRoseliaの五人は運悪くライブハウスが取れなかったのもあり、今回はこちらに来るようだ。
ただし大会参加者以外は一般入場者として最初の一定時間は入れないようになっている都合上、彼女たちは少し遅く来ることになっている。
こうなったのもエントリーの都合で混雑を避ける為にある。その辺りはここに来る人たちはしっかり把握しているので問題はない。
会場自体は前日からしっかりと準備がされているので、残りはエントリーとトーナメントの確認、席の確保になる。
「お、おい……あれ……」
「マジかよ……!あいつ別の場所じゃなかったのか?」
貴之がいることに気づき、会場に少しのどよめきが走る。
無論注目されている貴之も何故こうなったかは理解しており、同意はしないが彼らの気持ちも理解はできる。
「(どよめいていようとなんだろうと……そんなこと気にせず戦うだろうけどな)」
結局はこの考えにたどり着いた。この大会に挑む人たちは実力を試したかったり、上を目指している人たちばかりなので、一度ファイトが始まればこの時のどよめきなど忘れているだろう。
「エントリーは僕で最後?」
集まった六人の中で一番最後にエントリーを済ませた弘人の問いに、全員が頷いて肯定する。
この後人数の確認を終え次第、プログラムによる自動でトーナメント作成が行われるので、今のうちに席を確保しに向かうことになった。
席に関しては会場をコの字で囲って上から見渡せるようになっているので、複数の場所を見やすい進行の向かい側を確保に行き、無事に成功する。
もう間もなく一般入場が始まり、開催宣言の少し前にトーナメントの決定が行われるので、そこまではデッキの確認等や知っているファイターがどこにいるか等がやることになる。
貴之自身は身内以外知っているファイターが殆どいないので、後々来るRoselia五人の為に先に自分たちが座っている場所だけ伝える。
「(さて……警戒するべき相手は誰がいるんだ?)」
「あっ……もしかして、そこにいるのは貴之かい?」
聞いた方が早いと思って五人の内誰かに聞こうと思ったところに、聞き覚えのある声が後ろから届いたのでそちらを振り向く。
するとそこには金色の髪とエメラルドグリーンの瞳を持つ、絵に描いた『白馬の王子様』と言えるような風貌をした少年がいた。
「お前……
「こちらこそ久しぶり。僕も君がこちらに来るとは思っていなかったよ……」
名を呼ばれた少年、
彼と知り合いだったことには目撃した多くの人が衝撃を受け、思わず注視してしまう。
その中には俊哉たちも含まれており、離れていた五年間で何があったんだと気になっていた。
「俺は引っ越しの都合でこっちに来た……と言うより、戻って来たが正解か。お前が始めるより前の頃はこっちにいたからな」
「ということは、これからはここの段階で戦うことになるんだね……」
貴之が場所を移したことは、この二人が当たるタイミングが早まることを意味している。
こうなると最悪の場合、トーナメント次第では地方予選で落とされる可能性すら懸念される。
「当たった時は……もう解っているよな?」
「ああ。お互いに最高のファイトをしよう」
だからといって手を抜く理由などなく、二人は互いに誓い合って右手の甲を軽くぶつけ合う。
「……貴之ってコイツと知り合いなのか?」
「一真とは何度か顔を合わせてるし、全国大会でも戦ってるからな……」
貴之は遠征をしている頃に一真と行先で何度か顔を合わせている。
出会った時はこれから始める初心者だったのに、今や全国で自分と戦い、前回に至っては優勝までして見せたのだから、彼の成長具合が伺える。
また、貴之に問いかけたのが竜馬だと言うことに気づき、一真は問いかけることにした。
「彼とはいつ知り合ったんだい?」
「一か月弱くらい前だな……。そういや一真って学校どこだ?」
貴之は答えたところで、気づいたことを問いかける。竜馬を知っているということは、どこかに理由があるはずと踏んだのだ。
「僕は宮地だけど……そういう貴之は?」
「俺は後江だ。学校同じならそりゃ知っててもおかしくはねぇよな……」
一真の答えを聞いたことでようやく
また、貴之が高校生になったのを境に遠征で顔を合わせなくなったので、恐らく引っ越しに合わせて宮地を選んだのだろう。
こんなところで全国大会で結果を残しているファイター二人が会話をしているものだから、本人たちにその気がなくとも注目を集めてしまうのは仕方がないところである。
「ああ……これでは人通りが大変なことになってしまうか。僕はそろそろ行くよ」
「分かった。また後でな」
場所が込み気味になってしまっていたので、話しを切り上げ、一真は通りが悪くならない配慮として少し離れた場所に移動していった。
――最優先で意識するのはあいつだな……。誰かに聞くまでもなく、貴之がそれを決めた瞬間だった。
「あいつ宮地だったんだな……」
「ああ。同じクラスだから時々話すんだけどよ、お前のことは『自分をここまで導いた先導者』って言ってたぞ」
「全く、みんな揃って俺をそう言うか……」
竜馬からそう言われたものの、貴之自身悪いとは思っていなかった。
彼のみならず、多くの人が自分のことを買ってくれているのなら、自分はそんな彼らに応えられるようなファイトをしようと改めて心に決めた。
「お前の遠征生活ってのはとんでもないな……」
「色んなところに行ったのはいい経験だったぜ。まあ、ああやって凄腕のファイターを掘り出せたのは予想外だったがな……」
まさか何度かファイトを繰り返して教えていく内に、ああなるとは誰が予想できただろうか?本当に何が起こるかわからないものだと感じた。
遠征時代は何も強い相手から教えを貰うだけではなく、下の相手と戦った時は逆に教え、同等クラスの相手とは意見交換を行ったりもしており、それが貴之の現在を作り上げている。
そしてその過程で何をしているかを教えた際に一真も遠征を行い、現在の実力を身につけたことに関しては、自ら約束を果たす遠回りをしたとは思っておらず、強いファイターが生まれたことを喜ぶべきだと思っている。
「今度、どうやって彼をあそこまで引き上げたか聞いてもいい?貴之の教え方が気になったからさ……」
「なるほど……それなら落ち着いた時にどこかでやろうか。と言っても、俺が全国行けるまで鍛えられたのは二人しかいないが……」
少しだけ渋った様子を見せる貴之に、「それだけできれば十分凄いよ」と玲奈が言ってくれたので、それならばと引き受けることにする。
二人の内一人が一真、もう一人がここを離れている間に仲良くなった少年となっているので、後で思い出しておこうと貴之は考えた。
最初は強いファイターを警戒しようかと思った貴之だが、そもそも一緒に来ているファイターたちが警戒すべき相手でもある為、深く考えるのはやめにした。
「こういう時よくあることだけど、どこで誰と当たってもそこはとやかく言わないようにしよう」
弘人の言うことは最もなので、全員が頷く。こればかりはトーナメント次第だからとしか言いようがない。
当然のことながら、戦うことになっても手を抜かないのは全員が決めていることなので、この辺りは何も心配は無かった。
「あっ……そろそろ一般入場が始まる時間だな」
「てことは、もう少しでトーナメントが決まるな……」
携帯電話で時計を確認していた俊哉の呟きを大介が拾った。
これはもう間もなく友希那たちが入って来て、もう間もなくトーナメントの決定と開催宣言をされることを意味していた。
「(そう言えば、今回の参加者はどれくらいなんだ……?)」
地方で区切られているだけあり、全国に行ける人数はそれなりに多いのだが、それでも16人とかなり少ない。
人数の多さは勝つ必要数の多さも意味するのだが、同時にファイトができる回数の裏返しでもあった。
貴之自身は多くても勝てばいいので余り必要勝利数はそこまで気にしていないが、どれだけ参加を決めているかは気掛かりだった。
「(やるべきことはやってきている……)」
「貴之。みんなもここにいたのね」
――だから後は、全力で戦うだけだ。貴之が心の中で呟くと同時に、透き通るように聞き覚えのある声が聞こえてそちらを振り向く。
振り返ってみれば、そこには丁度やってきたRoselia五人の姿があった。
その為貴之は五人が来たことを知らせて、事前に確保しておいた場所から荷物をどけて彼女たちが座れるようにする。
「なんだろう……?賑やかっていうより、ざわついてる感じがしませんか?」
「ああ、空気がそうなった元凶その1がそこにいるぞ」
座ってからすぐに気づいたあこが率直に聞いてみると、俊哉が貴之を指さす。
そして指さされた当の本人である貴之は、完全に自覚ありだが仕方ないだろうと言いたげな笑みをしていた。
何があったんだとRoselia五人は首を傾げることになるが、玲奈から別の場所で名を上げた貴之がこっちに来たらどうなるかを問われ、そういうことかと納得する。
ここで特に納得が早かったのは友希那で、自身が改善に努め始めた頃は周りがかなり驚いていたのを思い出した。
「……というと、他にも元凶となった人がいるのね?」
「あいつは混雑回避の為、別の場所に行ったよ……つか、ここももう少し遅かったら場所の確保無理だったかもな」
貴之たちが取っていた場所は入口から遠い場所だが、ファイトを最も見やすい場所だったのでそれなりに人気のある位置だった。
その為リサの問いに答えてる間にも、もうそろそろ空いてる席が無くなりそうなった状況になっていた。
「そう言えば、ここにいる全員の顔を知っているのは私と貴之だけかしら?」
「言われてみればそうか……今日、この人とは初対面って多いよな?」
意外なことに、この場にいる全員とまともに顔を合わせたことがあるのは貴之と友希那だけだった。
次点で多いのは弘人以外は顔を見たことがある俊哉で、逆に最も少ないのは貴之と俊哉以外のファイターを知らなかったあこになる。
そんなこともあり、顔を合わせたことの無い人たち同士で慌てて自己紹介を済ませる。
――お前らあんな自然に話してたのに初対面かよ!?そうツッコミたい人も何人かいたようだが、彼らが全く気にしていないのもあり、届くことはないだろうと簡単に予想させてくれた。
一応大会に参加しない五人が始めたばかりで、分からないことだらけだから教えられる時があったら教えて欲しいと言うのは貴之らで共有しているので、その心配はなかった。
『お待たせ致しました。只今、トーナメントの決定が完了しましたので、これよりモニターへの表示とトーナメント用紙の配布を開始します』
どの位置に居ても見られるように、モニター自体は三つあり、それら全てにトーナメント表が映し出される。
これだけ見ると用紙が必要無いと思われるかもしれないが、ファイターたちの『勝ち上がった人たちの名前を記録して覚えておきたい』と言う声が散見されて、用紙の準備は継続されていた。
準備をしてくれることはとても有り難いところであり、こう言った配慮の良さは一定以上の評価を得ている。
モニターに映し出されると同時に、参加者は自分の位置と知っているファイターの場所を探し始めた。
「俺はすぐに始めるのか……早くやれるならそれはいいけどな」
貴之の位置は一番左上で、開始宣言終了直後に早速一戦することが決まった。
ちなみに今回の参加人数は256人なので、4回勝てば全国大会への切符は獲得できることになっている。
その後自分がマークしている人たちがどこにいるかを確認しようとして、大介に肩を叩かれた。
「俺たちは、全国への切符取るところで戦うみたいだぞ?」
「本当だな……」
大介が自分のいる位置を指さしながら教えてくれたので、貴之も確認してそれが合っていることを認識する。
地方で当たるだろうからそこで戦おうという約束はしたが、当たる位置がそこであるのは何かの因果を勘ぐってしまう。
――その時は全力で。二人はアイコンタクトで示し合ってからトーナメントの確認を再開する。ちなみに貴之と大介以外には俊哉と竜馬が左側にいて、玲奈と弘人は右側だった。
この時貴之は一真が自分とは反対の最も右下にいるのを確認し、当たるのは決勝になることを意識させられる。
「さて……用紙取りに行ってくるけど、欲しいやつ何人いる?」
俊哉が問いかけたので、ファイター五人が手を上げる。
自分を含めて六枚だと数えた俊哉は、混雑しない内にさっさと移動を始めた。
早い段階で移動できたのが幸いし、俊哉は混雑するよりも早く必要枚数分の用紙を手に入れることができた。
そうして受け取った五人と俊哉がペンを取り出して用紙と睨めっこを始めたのを見て、この人たちは本気だということが友希那たちに伝わる。
ちなみにこの用紙に行うのは、自分が気を付けようと思ったファイターに印付けと、誰が勝ち上がったかの線引きである。
「(……?この人、まさかだが……)」
貴之は自分と戦うことが確定している……つまり最初の相手となっているファイターの名を見て、自身が知っている名前であることに気付く。
確かにファイターとしての腕前はあるのだが、こう言った大会等には余り参加しない人だったので、どういう風の吹き回しだろうか?貴之は思わず勘ぐってしまった。
ならファイトする際に聞けばいいと考えたところで、開催宣言が行われ、それと同時に左上にいるファイターたちから順番に呼ばれることになり、招集を受けた彼らは下へ降りて早速戦うことになる。
「よし、行ってくる」
「貴之、いいファイトを」
宣言して立ち上がると、友希那を筆頭に応援の声を貰った貴之はジェスチャーで答えながら移動を始める。
自分と対戦相手が指定された場所の台に移動すると、そこには水色の髪を持つ見覚えある女性がいた。
「珍しいですね。
「あなたがこの近くに引っ越したと聞いたから、探すついでに出ようかと思ったの。お店も移動したからね」
女性……
彼女はカードショップを一つ経営しているのだが、その場所がたまたま貴之がここを離れていた時の自宅からそこまで時間を要さない場所にあった。
去年辺りに引っ越しの都合で店を移動していたのだが、移動先が偶然貴之が帰ってきた場所と近かったようだ。
ここまで来ると、貴之としては何らかの因果を感じてしまう。
「知り合いっぽいな……」
「あの人始めて見るけど……最近始めたって感じはしねぇぞ?」
俊哉が呟いた通り、話している様子から交流があることが伺えるのは間違いない。
また、彼女の放つ雰囲気が明らかに経験者のものだった故に竜馬が困惑する。
この時友希那が貴之が瑞希に気があるのではと疑ったので、リサと玲奈は二人してその考えを否定しながら、貴之の意中を伝えたいのに伝えられないもどかしさに悶える羽目になった。
「無理にとは言わないけど、今度機会があったら寄って見てくれるかしら?」
「そうですね……。前向きに考えておきますよ」
準備をしながら軽い口約束を済ませ、互いにいつでも始められることを確認してファーストヴァンガードに手を乗せる。
『スタンドアップ!』
二人が他の場所よりも僅かに早く始めたので、多くの人たちがそちらに注目を寄せる。
「ザ!」
貴之の『ザ』という掛け声に、実際に聞けた人たちが様々な反応を示す。
『ヴァンガード!』
両者がカードを表に返すことで、地方予選が幕を開けた。
「『ライド』!『リザードランナー アンドゥー』!」
「『ライド』!『
貴之はいつもの通り『アンドゥー』に、瑞希は青き小さな翼が生え、救急箱を持っている天使『ペヌエル』に『ライド』する。
「対戦相手は『エンジェルフェザー』……『ユナイテッド・サンクチュアリ』に所属する医療部隊だな」
彼女らに『かげろう』の説明は不要なので、対戦相手側のみの説明となる。
治療するだけでは戦闘能力を持たないのでは?と思うが、『エンジェルフェザー』に所属するユニットたちはしっかりと戦闘能力を有している。
彼らは主に戦場で治療活動を行うので、襲われた時に己の身を守る必要があるのだ。
また、ファイト内では『ダメージゾーン』を活用する機会の多い『クラン』だと説明するが、彼女たちは『カウンターブラスト』を使うユニットが多いのかと思って首を傾げる。
確かに口だけでは難しいので、どういうことかはファイトを見ながら話して行くことにした。
「デッキから感じ取れるものが明らかに違う……。それがファイターとして、瑞希さんの使うデッキですね?」
「ご明察……。流石の察知能力ね」
瑞希は普段、これから始めようとする人が気にしている『クラン』や、新しく実装された『クラン』があればそれでファイトする人だった。
故に彼女の使うデッキからは組まれたばかりだったり、予め準備されたものだったりで、そのデッキに込められたものが感じ取れなかったことから、貴之は彼女の本来使う『クラン』が前々から気になっていた。
そして今日、その本来使うデッキを知ることができ、それには込められたものがしっかりと感じ取れたので、貴之は心の中で安堵する。
「俺の先攻……『バー』に『ライド』!スキルで一枚ドロー。『ラオピア』を『コール』!」
ファイトは貴之の先攻から始まり、後列中央に『コール』されたのが『ラオピア』なこと以外は完全にいつも通りの動きだった。
「『ライド』!『ドクトロイド・サーカディアン 』!スキルで一枚ドロー……『
瑞希は看護婦のような格好をしたロボットの『サーカディアン』に『ライド』し、後列中央に蒼白い翼と左目は青、右目は赤のオッドアイが目を引く天使の『アバラキ』が『コール』される。
この段階では『エンジェルフェザー』の真価が何かは分からないことを、話しを聞いていた五人はこの段階で察することができた。
「攻撃させて貰うわ……『アバラキ』の『ブースト』、『サーカディアン』でヴァンガードにアタック!」
「……ノーガード」
早速ダメージを受けることになるが、こんなところで焦って本来のファイトを崩すようでは勝てない。それは貴之が一番よく分かっていた。
瑞希の『ドライブチェック』はノートリガーで、イメージ内で『アバラキ』の注射器のような見た目をしたマシンガンと、『サーカディアン』のこれまた注射器のような見た目をしたレーザー銃の集中砲火を浴びる。
この時始めてアタックを見ることになったRoseliaの五人は反応が二つに割れて、「あんなのアリ!?」と驚くのが友希那とリサ、紗夜の三人。「そう言う戦い方が『
貴之は『ダメージチェック』で
「『バーサーク・ドラゴン』に『ライド』!スキルで『アバラキ』を退却させ、『アーマード・ナイト』と『ガイアース』を『コール』!」
『バーサーク・ドラゴン』のスキルも合わさりこちらは四体、相手はヴァンガード一体の状況を作り上げる。
相手は『ダメージゾーン』をどの『クラン』よりも有効活用する『エンジェルフェザー』だが、気にしすぎていたら勝利を掴めないので、貴之は攻撃を行うことにする。
「よし、こっちも攻撃だ……『ラオピア』の『ブースト』した『バーサーク・ドラゴン』で、ヴァンガードにアタック!」
「ノーガード。さあどうぞ?」
ダメージが0なのにパワー23000となった攻撃を防ぐのは割に合わないと判断し、ノーガードを選択する。
この時貴之が『ドライブチェック』を行い、結果は
『ダメージチェック』は一枚が
「(……?貴之が少し焦ったわね……)」
どうしてかまでは分からないが、友希那は一瞬だけ貴之が「ヤバい」と言いたげな表情をしたのに気付く。
そしてこれは、瑞希のターンが回ってきた時に分かることになる。
「次だ。『ガイアース』の『ブースト』、『アーマード・ナイト』でヴァンガードにアタック!」
「なら私は、『サニースマイル・エンジェル』で『ガード』!」
トリガー効果と自身のスキル、そして『ブースト』も合わさって33000となっていた『アーマード・ナイト』の攻撃は、『サーカディアン』のパワーが37000となったことで防がれる。
イメージ内で白き小さな羽が幾つか生えていて、救急箱を持っている天使の『サニースマイル・エンジェル』が『アーマード・ナイト』の剣を防いだ後、輝く太陽のような笑みを『サーカディアン』となっている瑞希に送りながら退却していく。
「へぇ~……あんなユニットも駆け回ったりするんだ?」
「まあ、外見だけ見ると戦いに向かなそうだよね」
意外そうに、それでいて興味深そうに呟くリサに、弘人は始めて『エンジェルフェザー』を見た時に抱いた感想を思い起こしながら同意を示す。
持っていた道具からして、『サニースマイル・エンジェル』は体の傷ではなく、心を癒すのが得意なのだろう。そう思えた。
そして貴之がターンを終了したので、瑞希のターンが回ってくることになる。
「ここから『エンジェルフェザー』が、『クラン』としての片鱗を見せてくるよ」
もう大丈夫だとは思うが、Roseliaの五人が気になっていたものを見逃さないようにと玲奈がアナウンスをしておく。
このターンで、彼女たちが予想していたものと違う使い方であることを知ることになる。
「『ミリオンレイ・ペガサス』に『ライド』!これは右側にも『コール』させて貰うわ。更に『
瑞希は白と赤を基調とした体と、金色の
これと同時に黒い翼と一振りの剣を持った、生真面目さを感じさせる天使『ハスデヤ』は後列中央に『コール』された。
「手札から『コール』された時、『カウンターブラスト』をして『ハスデヤ』のスキル発動!手札のユニット一枚と、『ダメージゾーン』のカード一枚を入れ替えるわ」
「『カウンターブラスト』以外で、『ダメージゾーン』に触れた……?」
「あれが『エンジェルフェザー』の特色なんだ。逃げ出してしまったユニットを癒し、再び戦いの舞台に引き戻せる。他の『クラン』じゃ全く真似できないものだ」
瑞希の処理を見て困惑した紗夜の声には大介が答える。
説明も一緒にもらえたことで、『エンジェルフェザー』へ抱いていた疑問が氷解したので紗夜たちは一安心する。
ちなみに、このスキルで手札に加えたユニットは『
「ねぇ、あのユニットを手札に加えた理由は……」
「うん……次に貴之が何をするかを見越してだね」
ちなみに理由も予想がついてしまった友希那が聞いてみたところ、その予想は当たっていた。
しかしながら、たったそれだけでお手上げになるほど貴之が弱くないことを知っているので、友希那は信じて見守ることにする。
また、この時新しく『ダメージゾーン』に置かれたカードが存在するので、二体の『ミリオンレイ・ペガサス』はパワーと『シールドパワー』にプラス5000を得ていた。
「この調子だと『ダメージゾーン』から『ライド』できるユニットとかありそうだよね……?」
「あこちゃんの言うこと……結構当たるからちょっと怖いよ……」
あこが至って平静さを保ったまま率直に言うので、燐子は困った笑みを浮かべる。
友希那が演奏するライブハウスに連れて行って貰った時もそうだが、それは本当にいいものだったし、その他もあこは狙っているつもりはないはずだが言ったことは結構な確率で当たる。
そして貴之を応援している今回ばかりは当たって欲しくない事を言って来たが故に、あったら面白いと言うのは難しかった。
「まだまだ……『
前列左側に蒼い翼に注射器を持った天使『アールマティ』が、スキルによって後列左側に白い体と金色の鬣を持つ小さき天馬『サウザンドレイ・ペガサス』が『コール』される。
「行くわね……?右側の『ミリオンレイ・ペガサス』でヴァンガードにアタック!」
「まだ大丈夫……ノーガード」
本来のパワーは9000なのだが、スキルによって14000となっている『ミリオンレイ・ペガサス』の攻撃は『バーサーク・ドラゴン』に届く。
イメージ内で『ミリオンレイ・ペガサス』に蹴られてから『ダメージチェック』を行うが、これはノートリガーだった。
「次は『ハスデヤ』の『ブースト』した『ミリオンレイ・ペガサス』で、ヴァンガードにアタック!」
「いいぜ……これもノーガードだ!」
『ドライブチェック』はノートリガーで、『ダメージチェック』もノートリガーだったため、互いにパワー増加がないまま貴之のダメージが3になる。
「最後……『サウザンドレイ・ペガサス』の『ブースト』、『アールマティ』でヴァンガードにアタック!」
「そいつは『ター』で『ガード』!」
合計パワーが17000だった『アールマティ』の攻撃は、『ター』の加勢でパワー25000となったことにより防がれる。
新しく『ダメージゾーン』に置かれたカードはあるものの、『カウンターブラスト』ができないことから『サウザンドレイ・ペガサス』はスキルが使えなかったのだ。
仮に使えた場合はパワーが10000プラスされるので、その場合は『ター』で防げなくなっていた。
「ターン終了。流石に強いわね……」
「いや、瑞希さんも十分に強いですよ。特に『ハスデヤ』のスキルの使い方は見事でした」
二人は全力で戦えることを喜んでいた。ここから本番の領域に入るのが解っているため、尚更だった。
「私は今、『完全ガード』を手に持っている……でも、そんなことであなたは挑むことを辞めない……そうでしょう?」
「勿論。俺は自分にできる全てをやるだけです」
瑞希の問いかけに肯定しながら、貴之は手札の内一枚を手に取る。
「ライド・ザ・ヴァンガード!」
地方予選はまだ始まったばかりだが、貴之の闘志は限りなく燃え滾っていた。
対戦相手である瑞希のデッキはブースターパック『ULTRARARE MIRACLE COLLECTION』に入っている『エンジェルフェザー』のカードで組んだデッキになります。
このパックの『クラン』はこれで全て出し切ることになりました。
オリジナルキャラの容姿のイメージをまた数人挙げると……
遠藤小百合……『ソードアート・オンライン』の『結城明日奈』がベースになり、ほぼまんまです。
神上竜馬……『カードファイト!!ヴァンガード(2018)』の『石田ナオキ』がベースで、笑み等が凶悪にならないようにした形となります。
篠崎弘人……『魔装機神シリーズ』の『マサキ・アンドー』がベースで、表情を全体的に柔らか目なものに変えます。
秋津一真……『Fate/Prototype』の『セイバー(アーサー・ペンドラゴン)』がベース……というかまんまです。
秋山瑞希……『カードファイト!!ヴァンガード(2018)』の『立凪スイコ』がベースで、こちらも目立った変更点は特にないです。
その他の人物も、登場次第また挙げて行こうかと思います。
次回はこのファイトの後半を書いて行きたいと思います。