先導者と歌姫 -高みを目指して-   作:ブリガンディ

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初戦の後半になります。


イメージ24 切り札

イメージ内で『ドラゴニック・オーバーロード』に貴之は『ライド』する。

見ていた人たちは様々な反応を示し、瑞希はそう来なくちゃと言いたげに笑みをこぼす。

 

「『フォース』はヴァンガードに……『ラオピア』と『バーサーク・ドラゴン』を『コール』して、スキルで『ミリオンレイ・ペガサス』を退却!更に『オーバーロード』は『ソウルブラスト』!」

 

空いている左側にユニットを『コール』し、『ミリオンレイ・ペガサス』を退却させる行動を見て、瑞希は予想通りだったので余り動じない。

『ミリオンレイ・ペガサス』のスキルは相手のターンでも(・・・・・・・・)発動すると言う最大の強みがある為、否が応でもそちらの退却に意識を割かなければならない。

――さて……どうするのがいいかな?相手に『完全ガード』が一枚あることを意識しながら、貴之は攻撃する際の思考を回し始める。

 

「どっちで使って来るか……かな?」

 

「『エンジェルフェザー』はパワーの都合上、手札を消費させたいだろうから後だろうな……」

 

燐子の思い浮かんだ二択の内、俊哉は片方を選んだ。これは『オーバーロード』のスキル手札を使わせてからと言う予想になる。

対するもう片方は、『オーバーロード』にスキルを発動させたくないから先に防いでしまうものになる。

一番懸念すべきことは『ツインドライブ』で何も出ないことになり、そうなると『完全ガード』を使わせてることができないまま終わる可能性が跳ね上がる。

 

「やるだけのことはやってみるか……『ラオピア』の『ブースト』、『バーサーク・ドラゴン』でヴァンガードにアタック!」

 

「ここはノーガード」

 

ダメージが2なので、トリガーで出るかどうかで判断することを選ぶ。

その選択によって起こる『ダメージチェック』がノートリガーだったので、瑞希は『完全ガード』の使用を視野に入れながら次の一手を伺う。

ただしその『ダメージゾーン』行きとなったユニットは瑞希に取ってはありがたく、貴之に取っては一番来て欲しくないユニットだった。

 

「(あら?これは嬉しいところね……後は過度なダメージに気を付けて、このターンを乗り切りって行きたいわね)」

 

「(なんてこった……こりゃ次のターンが面倒だ)」

 

故に瑞希は安堵し、貴之は心の中で面倒そうにする。このターンで決められると言う保証は無いので、尚更面倒に感じるのだった。

――少なくとも、『完全ガード』だけは使わせよう。心に決めた貴之は、場にいるユニットの一枚に手を触れる。

 

「よし……『ドラゴニック・オーバーロード』で、『アールマティ』にアタック!」

 

「それならノーガードにするわ」

 

「なるほど……そっちを選ぶんだ」

 

瑞希の選択がどんな意図を持つのか、呟いた玲奈と見ていたファイター組は勿論、予想ができていた燐子も理解する。

残りの四人もそう言った考え方があると同時に、手札を使わせる方法の一つを覚えた。

『ツインドライブ』では一枚目がノートリガー。二枚目は(クリティカル)トリガーだった。

 

「パワーは『アーマード・ナイト』に、(クリティカル)はヴァンガードに!さらに『オーバーロード』の『カウンターブラスト』!」

 

「あの選択は誘いに行っているのかしら?」

 

「みたいだな。手札次第じゃ使うしか無いだろうし……」

 

残された手札の内『完全ガード』を使わず、『オーバーロード』の攻撃を防げるのならそれでもいいのだが、不可能ならそれを使わせて『アーマード・ナイト』の攻撃を通そうと言う貴之の魂胆が、友希那には感じ取れた。

それを確認して見たところ、俊哉からも肯定が帰って来たので、少し嬉しくなった。

イメージ内で『アールマティ』が『オーバーロード』の炎に焼かれて退却し、自身が『スタンド』したことを表すように『オーバーロード』は咆哮する。

 

「『ラオピア』の『ブースト』、『オーバーロード』でヴァンガードにアタック!」

 

「『恋の守護者 ノキエル』で『完全ガード』!」

 

パワーが46000となっていた『オーバーロード』の攻撃でも、『完全ガード』を前には届かない。

貴之は使わせただけでも御の字だと思って割り切り、『ドライブチェック』を行ったところ、結果は(クリティカル)トリガーだった。

 

「効果は全て『アーマード・ナイト』に」

 

「相手は防ぐのかな?」

 

「どうでしょう?防がなくても、このターンで負けることは無くなりましたから……」

 

現在瑞希のダメージは3であること、『アーマード・ナイト』の与えるダメージが2になっていることから、個人差の出る状況となっていた。

ちなみにこの時リサや紗夜はダメージを基準にした考え方をしているが、これは別段間違っているわけではない。

受け側は『エンジェルフェザー』なので、入れ替え可能な回数を増やすべく敢えてダメージを受けるという考え方もできればより良かったと言えるものだった。

そのことをファイターたちが教えてやれば、彼女たちも近くに置かれてある電球のアイコンが光ったかのように納得する。

 

「『ガイアース』の『ブースト』、『アーマード・ナイト』でヴァンガードにアタック!」

 

「ノーガード。『ダメージチェック』……」

 

瑞希の選択を見て、彼女たちは入れ替えできるユニットが欲しかったことを理解する。

イメージ内で『アーマード・ナイト』の剣に、『ミリオンレイ・ペガサス』となった彼女が切り裂かれる瞬間が見えたものの、落ち着いた様子で『ダメージチェック』を行う。

その結果は一枚目が(ドロー)トリガー。二枚目は(ヒール)トリガーだった。

 

「うわぁ……凄いダブルトリガー……」

 

「あれも……イメージが生んだものかしら?」

 

あこは呆然とした、友希那は考え込む様子を見せる。

貴之が言っていたことから、『イメージは力になる』という言葉は定着しつつあるが、他の人が実際にやってのけるところを見て改めて凄いと思うのだった。

できることを全て終えたので、貴之はターン終了を宣言する。

 

「私のターン、『スタンド』アンド『ドロー』……。あなたがこれを見てもまだ進むと言えるか……試させてもらうわね?」

 

「試すって言うならいつでもどうぞ?」

 

――何が来ようと、俺は乗り越えるだけです。貴之は笑みを崩さないまま言い切って見せる。

そんな自信を持った笑みを見せられたら、瑞希も崩してみたいと言う情に駆られて笑みを返した。

 

「なら、それを見せてあげましょう……『ライド』!『団結の守護天使(ソリディファイ・セレスティアル) ザラキエル』!」

 

「(この後もう一回『ライド』で『プロテクト』が二枚になる……確かにこのまま何も起こらなかったらどうしようもないだろうな)」

 

貴之は彼女の動きを予想して、場にいるユニットだけ(・・・・・・・・・・)なら突破できないことを認識する。

所々左右非対称となっている白と黒の衣装と、青い翼が目を引く『ザラキエル』となった瑞希を見て、こいつが一瞬守護天使ではなく告死天使なのではないかと思ったが、その思考を即時に振り払う。

――あいつが来ることをイメージして、この場を耐えきって見せろ……!彼女の思惑を真正面から突破できる唯一のユニットが到着することを信じて、貴之は前を見据える。

また、貴之が思考を回していた通り『エンジェルフェザー』の『イマジナリーギフト』は『プロテクト』で、これが非常に厄介さを助長している。

 

「俺じゃなくて良かったな……『クラン』の特性上こうなったら封殺コースに入っちまう」

 

「手数も少ない、一撃必殺を信条とする『ディメンションポリス』じゃ流石にな……」

 

俊哉は瑞希と戦っているのが貴之で良かったと、頭を抱えながら苦悩する。

何をするかが理解できているファイターは、削りきれるかどうか、どうすることもできずに詰みの三つに分かれていることを悟る。

削りきれるかどうかは玲奈、竜馬、弘人の三人。詰みは俊哉になる。

今現在大介は貴之と同じくファイト中なのでこの場にはいないが、彼の場合は長期戦が決定することになる。

 

「『パドラプル・フェニックス』を『コール』!」

 

「(狙いは『ダメージゾーン』の『サニースマイル・エンジェル』か……。とにかく耐えきるしかねぇ)」

 

前列右側に『コール』された白い不死鳥『パドラプル』を見た貴之が彼女の狙いに気付く。

自分のターンでは特に効果を発揮しないユニットだが、自分のヴァンガードがアタックされた時、己を退却させることで『ダメージゾーン』から一体『ガーディアン』として呼べると言う、非常に面倒なスキルを持っていた。

ただでさえダメージを与えづらい状況になるというのに、厄介なスキル持ちを増やされると少しげんなりする。

 

「さらに、相手ヴァンガードのグレードが3以上の時、山札の上から一枚を裏側で『ダメージゾーン』に置いて……『ダメージゾーン』にある『ザラキエル』のスキル発動」

 

『……ダメージゾーンでスキルを発動?』

 

奇跡的にRoseliaの五人が口を揃えて疑問を呟く。

場にいる状態や、手札からスキルを使うユニットを見せて貰ってはいたものの、『ダメージゾーン』からスキルを使えるユニットはこれが初めてだった。

ちなみにこの時、あこは嫌な予感がして冷や汗を流していた。

 

「『スタンド』状態で、『ザラキエル』に『ライド』できる!さらに、このターンの間『ダメージゾーン』に新しくカードが置かれたのなら、『ザラキエル』のスキルで前列にいるユニットはパワープラス3000!」

 

このスキルによる『ライド』も、『プロテクト』の獲得は可能であり、これによって少なくとも二枚の『完全ガード』を手にしたことになる。

 

「……あこちゃん?もしかして知ってた?」

 

「わ、わざとじゃないよ~!あるかもしれないって思っただけなの~っ!」

 

彼女の予想が当たってしまった瞬間を目の当たりにした燐子は、小さな汗を見せながら困った笑みと共に問いかける。

初ファイトする時は事前学習をしていたあこだが、流石に他の『クラン』までは調べきっていなかった。

故に必死に弁明する彼女の姿を見て、燐子はこれ以上の追及をやめにした。

 

「あっ、俺ら呼ばれたな……」

 

「どう突破するか見たかったけど仕方ねぇ、多分あいつならどうにかするし……ちょっと行ってくる」

 

最後まで見たかったものの、進行の速かったところが対戦を終えていた為、竜馬と俊哉は自分の番が回ってくる。

彼らはもう少し先で戦うことになる為、今は気にしなくていいのは幸いだった。

下に降りていくので、残っている友希那たちは応援の声を送ってからファイトを見るのに戻る。

 

「では……『ハスデヤ』の『ブースト』。『ザラキエル』でヴァンガードにアタック!」

 

「ここは『ラクシャ』で『ガード』!」

 

スキルで3000プラスされていることで、パワー23000となっている攻撃に対して『ラクシャ』を呼んでパワー28000で対応する。

防げるならそれでいい。ダメならトリガーが引ければ御の字。そう言った考え方によるものだった。

 

「『ツインドライブ』。ファーストチェック……」

 

一枚目の結果は(ドロー)トリガーで、効果をヴァンガードに回されて攻撃のヒットが確定する。

それも確かに嫌な知らせなのだが、このトリガー結果はそれ以上に嫌なものを教えてくれた。

 

「うわ、三枚目だ……!」

 

リサが驚きの声を上げた通り『完全ガード』がこれで三枚になってしまった。

使い方が非常に雑な方法ではあるが、これらを三枚使うことで全ての攻撃を防ぐことが可能となってしまったことを意味する。

――どうすればいいのこれ?見ていた殆どの人たちがそう思った瞬間だった。

 

「さっきからずっと……何かを待っているね」

 

「やっぱりそう思う?こんな状況でも諦めが見えないからね……」

 

その中で、弘人と玲奈は貴之がまだ何かできると言いたげな様子に気付く。

――確か……『かげろう』には一枚だけ、この状況を突破できるユニットが存在していたはず。ファイトを見守りながら、玲奈はどうにか思い出そうと記憶を探る。

 

「セカンドチェック……」

 

二枚目は(クリティカル)トリガーが引き当てられ、パワーは『パドラプル』、(クリティカル)はヴァンガードに回される。

イメージ内で『ザラキエル』となった瑞希の攻撃に使う成分が含まれた歌を聴かされ、『オーバーロード』となった貴之は苦悶の声を上げた。

貴之のヴァンガードを始めた事情を知っている玲奈とリサは、これを見て一瞬いたたまれない思いをする。何しろ全ての始まりと希望を貰った歌に苦しめられるとなれば堪ったものでは無いだろう。

その苦悶を表すかの如く、『ダメージチェック』では二枚ともノートリガーという最も痛い結果を残した。

 

「これで決まるとは思わないけど……『サウザンドレイ・ペガサス』の『ブースト』……このターンの間『ダメージゾーン』に新しくカードが置かれているなら、このタイミングで『カウンターブラスト』!『サウザンドレイ・ペガサス』のパワーをプラス10000!そのパワーを得た『パドラプル・フェニックス』でヴァンガードにアタック!」

 

「こんなところで喰らえるか!『ワイバーンガード バリィ』で『完全ガード』!」

 

合計でパワー43000となっていた攻撃は、手札に持っていた『バリィ』を使ってでも無理矢理防ぐ。

しかしそれは、もうそれ程までに追い込まれていることも意味しており、貴之の手札はこれで残り一枚になってしまっていた。

ただそれでも、こんな状況下だというのに全く諦める様子を見せない貴之が何をしてくれるのか。それを楽しみに思いながら瑞希はターン終了を宣言する。

 

「貴之は……まだ戻ってきて無いのか」

 

「ああ……かなり危ない状況になってる」

 

貴之より速くファイトが終わったので戻ってきた大介の声を聞き、弘人が一言だけ伝えて見ることを促す。

相手の『ツインドライブ』による結果を教えて貰えば、どれだけ絶望的な状況なのかは嫌でも伝わった。

 

「貴之……大丈夫よね……?」

 

確かに焦った様子など見せてはいないが、それでもここからどうすればいいのか。少なくとも友希那には全く思い浮かばない。

それもあって誰かに頷いて欲しいという願いの籠った呟きに繋がるのだが、Roseliaのメンバーはおろか、一緒に見ているファイターたちすら無条件に頷くことはできなかった。

 

「(どうにか耐えきったな……)」

 

――さて、ここからだ。耐えきっただけでは安堵することはできず、貴之はこのターンで決めなければ負けだということを改めて理解する。

更に相手は『完全ガード』が三枚。こうなると本当に切り札となるユニット以外では活路が開けない状況で、更に今手札に残っているのは『ラーム』一枚という非常に不味い事態だった。

とは言えこんなところで諦めてしまったら絶対に勝機など来ないので、落ち着いてイメージを行う。

 

「さあ、ここからどう覆すのかしら?」

 

「正直博打にも程があるものですが……他に策がないんで、それに賭けます」

 

まだ勝ち目があるということに驚愕する人もいれば、博打ということに不安を更に煽られた人もいる。

貴之は自分のターンを始める宣言をしようとした時、白き翼を持つ竜が咆哮するイメージが見えた。

 

「俺のターン……『スタンド』アンド『ドロー』」

 

貴之は引いたカードを見て、望んでいたユニットが来たことを確認する。

――よく来てくれたな……。貴之が表情を変えたので、瑞希や見ていた人たちが不思議そうに彼を見る。

 

「この時が……この状況を打開できる切り札を使う時が来た!」

 

『……切り札?』

 

貴之の宣言に、Roseliaの五人が首を傾げる。彼女たちはてっきり『オーバーロード』が切り札だと認識していたのだ。

言い訳地味ているかもしれないが、分身と切り札は必ずしも同じとは限らない(・・・・・・・・・・・・)

 

「……そうか!あのユニットなら突破できる!」

 

「しかもあの手札の数で『完全ガード』が三枚なら、そもそも防げない可能性が十分ある!」

 

「ついでに『パドラプル』を追い払えるから、『ダメージゾーン』のユニットを呼ばれる心配もない……正真正銘の大逆転が見れるな」

 

三人も寸でのところで貴之が出そうとしているユニットを思い出し、それなら見事にひっくり返せることに気付く。

五人が困惑しているというのに三人で盛り上がるのはいかがなものなので、見ていこうと促す。

ちなみに現在瑞希の手札は二枚の『プロテクト』を含めて七枚で、ここに『ノキエル』が一枚ある。

 

「行くぜ……!ライド・ザ・ヴァンガード!」

 

貴之がカードを重ねた瞬間、イメージ内で『オーバーロード』の周りが荒れ狂う水流の竜巻で覆われる。

水の竜巻が落ち着くと、そこには白と水色の体と二対の翼。己の体格に合わせた片手で振るうことのできる剣を持った巨竜がいた。

 

「『ドラゴニック・ウォーターフォウル』!」

 

「あっ、『オーバーロード』と真逆の色合いだ……」

 

その巨竜の名は『ドラゴニック・ウォーターフォウル』。この絶望的な状況を切り開ける、最大の切り札だった。

『ウォーターフォウル』の色合いに気づいた燐子が呟き、言われてみればと残りの四人もそこに気付く。

 

「『ドラゴニック・ウォーターフォウル』……ここでその一枚を引き当てたと言うの?」

 

デッキの一番上から引かなければならないと言う低確率だったので、実際に実行された瑞希は動揺することになる。

何事も無ければ『完全ガード』と、『ダメージゾーン』に残っているユニットを使って防いでしまえば良かったのだが、『ウォーターフォウル』に『ライド』されたことで全てが水の泡になってしまうことが決まった。

 

「ヴァンガードとして『ウォーターフォウル』が登場した時、スキル発動!グレード2以上の相手リアガードを一枚選び、退却させる……。浄化の水流に飲まれろ、『パドラプル・フェニックス』!」

 

イメージ内で『ウォーターフォウル』となった貴之が手元に水の球を作り、それを『パドラプル』に投げつける。

その球に内包された水圧に負け、『パドラプル・フェニックス』は光となって消滅する。

退却させられるユニットがそれしかいなかったのもあるが、『パドラプル』を退却させたことでどうなるかを大介が教えると、確かに大事なものだと理解できた。

 

「ここから攻撃になると思うけど……『ウォーターフォウル』のとんでもないスキル、ちゃんと聞いてたほうがいいよ?」

 

玲奈が含むように言ったので、疑問に思いながらも五人は貴之のファイトを見る。

そのタイミングで、貴之は丁度攻撃に入るような仕草を見せていた。

 

「勝負だ……!『ラオピア』の『ブースト』、『ドラゴニック・ウォーターフォウル』でヴァンガードにアタック!」

 

イメージ内で『ウォーターフォウル』となった貴之が咆哮し、『ザラキエル』となった瑞希へ向けて飛び立つ。

この段階で合計パワーが46000とかなりの数値なのだが、この状況を打開するスキルはこの時に発動される。

 

「ヴァンガードにいる『ウォーターフォウル』がアタックした時、グレード3のユニットを『ソウルブラスト』することでスキル発動!このバトル中、『ウォーターフォウル』はパワープラス10000と(クリティカル)プラス1!さらに……『守護者(センチネル)』は『コール』できない!」

 

「えっ!?何そのスキル!?」

 

真っ先に驚愕の声を上げたのはリサだった。

『完全ガード』を封じただけかと思ったら更に追加効果があるので、防ぎたいのにそもそも防ぎづらいと言う非常に厄介なものだった。

 

「『ソウルブラスト』の制限が無かったらバランス崩壊ものだよぉ……」

 

「グレード制限があるから許される……と言うことですね?」

 

あこの言いたいことは紗夜も理解できた。確かにこれだけの制限があるのにパワー追加等が無かったら割に合わないだろう。

ここまで強大なパワーを得られるのは『フォース』ならではのものであり、貴之がヴァンガードに重ね掛けを好む理由はこう言ったところにあるだろうことが伺えた。

 

「これ……『プロテクト』もダメなんですよね?」

 

「あれも『守護者(センチネル)』を『コール』する行動だからな……。あのスキルには無効化されちまう」

 

逆転の切り札だからまさかと思ったが、大介から帰ってきたのは一種の死刑宣告であり、燐子は引きつった笑いになる。

『完全ガード』を増やせると言う他にはない強みを持っている『プロテクト』だが、こうして封じられると何もできないのが最大の弱みだった。

 

「(あの時もそう……。貴之は諦めないその姿勢でユニットを待ち続け、ユニットはそんな貴之に応える)」

 

――あれが、ファイターとユニットの信頼関係なのね……。竜馬と貴之が戦った時のことを思い出して、友希那は改めてそれを理解する。

また、この光景が迷っている自分に「諦めるな」と励ましているようにも思えて、少し嬉しくなる。

自分は父の無念を晴らしたいのか、それともみんなと共に上を目指したいのか。彼らの励ましに応えるべく、絶対に答えを見つけ出して見せると友希那は心の中で誓った。

 

「くっ……防げないわね。ノーガード」

 

「よし……『ツインドライブ』、ファーストチェック……」

 

瑞希は今の手札で、パワー56000となった『ウォーターフォウル』の攻撃は防げないことを悟る。

『ツインドライブ』の一枚目は(クリティカル)トリガーが引き当てられたのだが、ここで決着をつけられなければ敗北が待っているので、貴之は効果を全てヴァンガードに回す。

そして二枚目のチェックは――これも(クリティカル)トリガーが引き当てられた。

 

「ゲット!(クリティカル)トリガー!効果は全てヴァンガードに!」

 

「あっ、これ貴之の勝ちだ……冗談抜きで」

 

貴之のトリガー結果を見た瞬間、全てを悟った弘人が口にする。

その原因は瑞希のデッキから出ている(ヒール)トリガーの数にある。

 

「……相手の(ヒール)トリガーは何枚出てるんだ?」

 

「ガードで一枚、『ダメージチェック』で一枚だから二枚出てるよ」

 

「そして今、ダメージが4の時に4ダメージを受けると……こりゃ助からないな」

 

(ヒール)トリガーはデッキに4枚までしか入れることができず、現在2枚出ている。

そして今から4ダメージを受けると言うことは、何があっても2ダメージは受ける(・・・・・・・・・)ことになる。

これがダメージ4の時に起こったので、瑞希はこの段階で敗北が決定してしまったのだ。

それを聞いた瞬間、友希那を省くRoseliaのメンバーが「なにそれ……?」と言いたげな顔になった。こんな絶望的な終わり方は見たことがなかったのも重なっている。

 

「(諦めることなく、最後は前に進む……それでこそ『先導者(ヴァンガード)』ね)」

 

ただ一人、友希那だけは貴之の勇姿を見て、頬を朱色に染めながら笑みをこぼす。それだけ彼が格好良く見えたのだ。

イメージ内では『ウォーターフォウル』となった貴之が剣を逆手に持ち替えて、『ザラキエル』となった瑞希に突き立てる。

そのまま剣から自身の力によって水流を流し込み、耐えられなくなった瑞希は『ライド』が途切れて『クレイ』から消滅することとなった。

『ダメージチェック』は最初の二枚がノートリガーだったが、どの道回復が追いつかず敗北することになっていたので、あまり関係ないことだった。

 

「流石ね……見事にやられたわ」

 

「こっちも、『完全ガード』三枚には肝を冷やしましたよ……」

 

――一戦目からこれはとんでもねぇな……。瑞希と言葉を交わしながら、貴之はそう思うのだった。

瑞希としては『ウォーターフォウル』を警戒し損ねたことを反省点として、貴之は相手のダメージコントロールに気を付けたいと考える。

ファイトが終わったので近くにあったプレートを進行に見せ、次のファイトを入れられるようにしてから、最後に大事なことを伝える。

 

「ありがとうございました。いいファイトでした」

 

「こちらこそ、楽しいファイトでした」

 

挨拶と共に貴之が差し出した右手を、瑞希が手に取る形で握手を交わす。

その後は次の試合をするファイターたちのために場所を開け、一旦上に上がることになる。

 

「それじゃあ妹たちもいるし、私は向こうに行くわ。多分最後までいるでしょうから、頑張ってね」

 

「分かりました。俺も自分にできる最高のファイトを続けます」

 

瑞希には二人の妹がいて、その内上の方の妹は貴之と同年代に当たる。

違う方へ移動することになったので、二人は短く言葉を交わしてから別れる。

そのまま確保していた席に戻っていくと、玲奈がファイトするためにこれから下に降りようとしていた。

 

「お疲れ様♪あたしはこれから行ってくるね」

 

「おう。玲奈も頑張れよ」

 

それぞれ労いと応援の言葉を送って、互いが行くべき場所へ移動する。

 

「お疲れ様。最初から大変だったね」

 

「ああ。いきなり危ないファイトだったぜ……」

 

初戦からあんな窮地に追い込まれたのもあってか、微妙に脱力感がある。

とは言え、まだまだ先は長いので気を抜きすぎるのは許されない。

――それでもちょっとだけ休憩しておきたいかな……。そう思っていたところに友希那が冷えた飲み物を持って来てくれたので、貴之は礼を言って受け取る。

 

「凄いのね……あなたの切り札。さっきの状況を覆すんだから……」

 

「だろ?ああなった時にあいつがいれば、返って気が楽になるんだ」

 

友希那に勝利の鍵となったユニットが称賛されたことで、貴之はちょっとだけ得意気な笑みになる。

その様子から彼があのユニットをかなり信頼していることが伺え、友希那も笑みが続く。

 

「さっき見てて思ったんだけど……『イマジナリーギフト』って、じゃんけん関係みたいになってないかな?」

 

「よく気づいたな……せっかくだし、そこについても今のうちに話して置くか」

 

燐子へ称賛を送ると同時に「あくまでも有利不利ってだけで、絶対じゃないからな?」と貴之は念押しをする。

貴之がそれぞれの『イマジナリーギフト』に勝っている姿を見ていたので、友希那と燐子は他の三人より早く納得できた。

 

「『フォース』はパワーを増やして強力な攻撃を行えることから、手札消費の激しくなる『アクセル』に有利。『アクセル』は手数の多さから、『ガード』を使わせやすく『プロテクト』に有利。『プロテクト』はそれ一枚で攻撃を防げることから、強化したパワーを封じれて『フォース』に有利……と言った感じになるんだ」

 

「ああ……絶対じゃないって言ったのはそう言うことか」

 

今さっき不利と言われた『フォース』対『プロテクト』を貴之が制しているので、『あくまでも有利不利』と言うのが改めて理解できた。

また、この時戦術の幅はどれくらい差があるのかを聞いてみると、貴之からは多い順に『アクセル』、『フォース』、『プロテクト』だと返ってくる。

ここで『アクセル』が上に来たのはユニットを展開できる場所が増える点にあり、これは他の『イマジナリーギフト』には真似できない絶対的な強みだった。

 

「じゃあ今教えたことも踏まえて、色々とファイトを見ていこうか。俺はまたもう少ししたら降りることになるけど……」

 

「彼のファイト、見るのを頼んでおく?」

 

弘人の気が利いた問いには肯定を返した。一真のファイトが行われる頃には、貴之も次のファイトに入ってしまうので見ることが叶わないからだ。

こうして聞いて来たのは自分の番が来たので、降りるついでに伝えておこうと言う考えがあった。

頼みを承諾した弘人は、応援の声を受けながらそのまま下に降りていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

貴之がRoseliaの五人と休んでいる間にも、大会は進んでいく。

 

「手札からトランスディメンジョン!『グレートダイユーシャ』!」

 

俊哉はスキルで『グレートダイユーシャ』にライドし、そのまま波状攻撃を掛けて勝利する。

 

「アタックした時、二枚『カウンターブラスト』することで『パーフェクトライザー』のスキル発動!リアガードを二体『スタンド』!」

 

竜馬は『パーフェクトライザー』のスキルを使い、相手が本領のグレード3になるよりも速くダメージを与えて押し切る形で勝利する。

 

「ショーのフィナーレを飾りましょう……『アーティラリーマン』でヴァンガードにアタック!」

 

玲奈は相手の手札が無くなったところに『アーティラリーマン』の攻撃をヒットさせて勝利する。

 

「リアガードの攻撃がヒットした時、三回目か四回目の攻撃なら手札を二枚捨てて、『メイルストローム』は『スタンド』する!」

 

弘人は『メイルストローム』のスキルによる連続攻撃で相手の手札切れを誘発し、そのままの勢いで勝利する。

これにより、貴之ら六人は全員が一回戦を突破したことになる。

 

「よし、じゃあ俺は二回戦行ってくる。一真のファイトは頼んだぜ」

 

「心配するな。安心して行って来い」

 

「行ってくるの?頑張ってね~♪」

 

俊哉のサムズアップと、リサを始めとした待機中の人たちから応援をもらい、貴之は下に降りていく。

見送ってすぐに一真の入る場所を見つけた玲奈が促し、全員がそちらの方に注目する。

相手は彼や自分たちと同年代くらいの男子で、互いに引き直しが終わったところだった。

 

「さあ、始めよう……」

 

一真の声音から真剣さが感じ取れて対戦相手は一瞬怯むが、気を取り直して頷く。

 

「「スタンドアップ・ヴァンガード!」」

 

互いにカードを表返したことで、ファイトの開始が告げられた。




貴之の現段階における切り札は『ウォーターフォウル』です。
このファイト、後半だけで9000字オーバーしていたので区切って良かったなと思いました……(汗)。
凄い紛らわしいと思われるかもしれませんが、こちらは『切り札』であり、前回に触れた『隠し玉』とはまた違うユニットとなります。そう思わせてしまった場合は本当にすみません。

『イマジナリーギフト』の相性関係に関しては、無料で配られていた『ヴァンガードはじめようブック2018』にあった4コママンガを参考に、戦術幅に関しては実際に聞いた話しを参考にしています。

次回は一真のファイトを書いていきたいと思います。

ここから貴之は『ヌーベルバーグ』に慣れて行くのですが、この為のファイト展開の量ややり方はどのくらいがいいでしょうか?

  • 作者にお任せ
  • なるべく多めに入れて、細かくやって欲しい
  • 少なめで、飛ばし気味がいい
  • 多めにやって欲しいが、内容は簡潔に
  • 少なめにして欲しいが、内容は細かめに
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