先導者と歌姫 -高みを目指して-   作:ブリガンディ

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一真の初ファイトとなります。

それと、先日予約していた友希那の1/7スケールのフィギュアが届きました。こちらは大切に保管しようと思います。


イメージ25 戦いと苦悩

「『ライド』!『ぐらいむ』!」

 

「『ライド』!『忍獣(にんじゅう) キャットデビル』!」

 

一真は『ぐらいむ』に、対戦相手は忍びの胴着を着た二足歩行ができる猫『キャットデビル』に『ライド』する。

 

「あっ、『ロイヤルパラディン』は久しぶりに見たなぁ……」

 

『ぐらいむ』を見たリサが、初めて見た『クラン』の片方が『ロイヤルパラディン』だったことを思い出す。

燐子とあこの二人が初めて見る『クラン』だったので、ファイターたちで説明すれば「基礎中の基礎みたいな『クラン』だ」と言う認識を持ってくれた。

ちなみに貴之は彼が使っていることもそうなのだが、初めてファイトした相手、初めて自分がレクチャーした相手、初めて大会で戦った相手等……全てが『ロイヤルパラディン』だった。

これを後ほどみんなに話してみたのだが、余りいい反応がもらえず少々悲しい気分になったことを記しておく。

 

「な、何か……猫のユニットがいるけど……」

 

「ああ……ありゃ『むらくも』に所属しているユニットだな」

 

「(ああ……もう!ここに貴之がいてくれればなぁ~)」

 

『キャットデビル』を見た友希那がどこか浮ついた様子だったので、リサは貴之が下に降りてしまっている現状を悔やんだ。

この猫が好きで、見た時にあからさまな反応をするのは変わっていないことを、その目に焼き付けて欲しかったのである。

小さい頃に友希那が猫を愛でながら幸せそうにしている姿を見た時、貴之のハートに(クリティカル)トリガーが二枚どころか三枚分届いていたのは言うまでもない。

 

「『むらくも』は俺の使う『ぬばたま』と対をなす『ドラゴン・エンパイア』の隠密部隊でな……。ファイト中では特定条件下で効果を発揮するのが多い、癖が強めな『クラン』になる」

 

大介は説明しながら、デッキ構成が分からないと妙に説明で困る『クラン』だな……と少々納得いかなそうにする。

――経験者が説明しづらい『クラン』って何だろう?Roseliaの五人は疑問に思った。

『むらくも』が説明を投げ出したくなる理由として、『デッキからユニットが登場する』、『リアガードに特定ユニットがいる』、『同名のカードがいる』……等々、その条件が多義に渡っているせいでもある。

貴之も「『クラン』総合の話しならそう言うしかない」と言う辺り、『むらくも』がどれだけ特殊なのかを理解することになった。

何事も無ければこのままファイトを見ようとなるのだが、友希那の反応を見た紗夜が一つのことに気づいてしまった。

 

「……湊さん。どうやら、私たちは相容れない部分があるようです……」

 

「あら……?そういうこと?」

 

友希那は猫派なのだが、紗夜は犬派だった。音楽の方針や平時の感性が近い友希那と紗夜の二人だが、今回ばかりは決定的に違っていた。

紗夜の一言で友希那は彼女の言わんとしていることを察してしまい、二人が目線だけで静かに火花を散らすこととなる。

また、紗夜は犬型であることから『ぐらいむ』のことをそれなりに気に入っているため、ここも友希那とはそりが合わないだろう。

 

「今井さん……どうして二人はああなったんですか?」

 

「ああ~、そういうこと……?どうやら派閥の問題みたいだね……」

 

問いかけた燐子同様、あこも事情を知らないので首を縦に振って自分も同じことを伝える。

リサは友希那が猫好きであることを知っていたので、事情を察しており、同時に「意外なところで対立する部分があったね」とも思った。

また、リサのみならず小学生時代から同じだった俊哉と玲奈、前に偶然二人と共に猫を愛でる姿を目撃している大介も知っていたので、彼らは「そういうことか」で終わる。

竜馬と弘人の二人も知らない側の人になるが、そんなことより火種を鎮めるべく「ファイトを見よう」と促す。自分たちまで乗ると収集が付かないと目に見えていた。

 

「『ナイトスクワイヤ・アレン』に『ライド』!スキルで一枚ドローして『うぃんがる』を『コール』!」

 

「『うぃんがる』?じゃあ、あっちの彼はもしかして……」

 

「お察しのとおり、あいつのデッキは『ブラスター・ブレード』が軸だ」

 

見覚えのある動きだったことでリサが思い出し、その通りであることを竜馬が応える。

この時俊哉と玲奈は、貴之は何かと『ブラスター・ブレード』に色んな思い出を持っているなと改めて実感する。

ちなみに一真が『うぃんがる』を『コール』した場所は後列中央で、理由は間違いなく『ブラスター・ブレード』にあることを伺わせた。

 

「『ライド』!『忍竜(にんりゅう) アマツスナイプ』!スキルで一枚ドローして『忍竜 ソウコクザッパー』を『コール』!」

 

相手は蒼い躰に忍びの胴着、巨大なクナイを手にする竜『アマツスナイプ』に『ライド』し、後列中央に蒼い躰と忍びの胴着は共通だが、クナイの代わりに二つの刀を持っている竜『ソウコクザッパー』を『コール』する。

 

「『ソウコクザッパー』で『ブースト』、『アマツスナイプ』でヴァンガードにアタック!」

 

「分かった。ならここはノーガードだ」

 

まだダメージを受けていない為、一真はノーガードを選択。

イメージ内で『アマツスナイプ』に投げつけられたクナイを受けた後、『ダメージチェック』ではノートリガーを確認する。

このターンでできることは無くなったので、相手はターンを終えて一真の二ターン目が始まることになる。

 

「さあ()くぞ……『ロイヤルパラディン』の戦士たちよ。()のターン、『スタンド』アンド『ドロー』……」

 

「(……!もしかして、貴之の言っていたもう一人と言うのは……)」

 

一真の口調と一人称が変わったことで、友希那は前に貴之から聞いていた話しを思い出す。

玲奈以外にもそう言った言い回しをする人がいると言っていたが、その人が他ならぬ彼だったのだ。

 

「『ライド』!『ブラスター・ブレード』!そして集え!光の戦士たちよ!」

 

一真が『ライド』したのは『ブラスター・ブレード』。『ロイヤルパラディン』の象徴と言えるユニットだった。

ちなみに今回は前列に相手リアガードがいないため、登場時のスキルを使うことはできない。

さらに後列右側に白と青の二色で構成されている胴着を着て、分厚い本を持った『小さな賢者 マロン』を、前列の左右に『ギャラティン』を一体ずつ『コール』する。

 

「自分の他のリアガードが『マロン』と同じ縦列に『コール』された時、『カウンターブラスト』することで『マロン』のスキルを発動!山札から一枚引き、このターンの間『マロン』はパワープラス3000!」

 

「『アレン』と似ているスキルですね……」

 

紗夜も貴之が『ブラスター・ブレード』を軸にした『ロイヤルパラディン』のデッキでファイトをしてくれた時、『マロン』と『アレン』を見せてもらったので知っていた。

差異点は『自分が登場した時に仲間を呼んでパワーを上げる』のが『アレン』、『仲間が現れた時にパワーを上げる』のが『マロン』と言ったところだろう。

 

「さて、友希那たちは一回ここで復習だね……♪自分のリアガードが四体以上の時、ヴァンガードにいる『ブラスター・ブレード』は何を得るでしょう?」

 

(クリティカル)が+1……。このスキルは嫌でも相手が意識するわね」

 

友希那の言う通り、『ブラスター・ブレード』はこのスキルが最大の強みだった。

単純に与えるダメージを増やせる効果は大きく、相手に『ガード』を意識させやすくなる。

初めて知った燐子とあこは意外と速攻性が強いのかもしれないと感じたが、同時にこのスキルにある危険性にも気づいた。

それは無理矢理スキルを発動させようとした場合にあり、この場合は手札を必要以上に使うだけでなく『ブラスター・ブレード』以外は十分な強さを得られていないと言う事態を招くことになる。

このスキルを見て、使いどころを間違えては行けないことを理解した。

 

「では、こちらからも行かせて貰おう……!左の『ギャラティン』でヴァンガードにアタック!」

 

「ノーガード。『ダメージチェック』……」

 

イメージ内では『ギャラティン』の剣で、『アマツスナイプ』が斬られる。

対戦相手の『ダメージチェック』はノートリガーだったので、ダメージ以外に変化は起こらない。

 

「私が行こう……!『うぃんがる』の『ブースト』した『ブラスター・ブレード』で、ヴァンガードにアタック!」

 

「……!『忍妖(にんよう) ハンパーガッパー』で『完全ガード』!」

 

――この攻撃だけは何があっても受けたくない。それが対戦相手の考えだった。

イメージ内で『アマツスナイプ』の前に現れた忍びの胴着を着た河童の『ハンパーガッパー』が、己の忍術で水の壁を作り上げて『ブラスター・ブレード』となった一真の剣による一撃を防ぐ。

防がれたものは仕方ないと割り切って『ドライブチェック』を行ったところ、その結果は(クリティカル)トリガーだった。

 

「この場は任せたぞ、『ギャラティン』!」

 

――ノープロブレム。イメージ内でまだ攻撃していない右側の『ギャラティン』がそう言って頷いた気がした。

そして、右側の『ギャラティン』に『マロン』の『ブースト』を付けた状態で攻撃を頼み、対戦相手はノーガードを選択する。

2ダメージは痛いところだが、それ以上に手札を減らしたくないと言った判断だろう。

そして『ダメージチェック』では二枚ともノートリガーと言う、攻撃を受けた彼に取っては手痛い結果に終わる。

 

「私はこれでターンを終了する……」

 

「(ヤバい……少なくとも一体は数を減らしておきたいかな)」

 

このターンで一気に3もダメージを取られたことで、流石に対戦相手も焦ることになる。

初めてのファイトでダメージを受けた時は、仲間が逃げ出す事態を作ってしまったことを不甲斐なく思っていた友希那だが、こうして短時間で一気にダメージを稼がれるのは改めて苦しいのだと理解した。

 

「『ライド』!『早矢士(はやし) FUSHIMI(フシミ)』!更に左右にも『コール』!」

 

相手は猫の姿をした弓兵『FUSHIMI』になり、左右にも同じものが『コール』される。

『FUSHIMI』を見た友希那がそわそわした様子を見せたので、リサは早く貴之に気づいて欲しい思いになり、紗夜はここで派閥争いをしては行けないと自分を落ち着かせる。

 

「登場時、『FUSHIMI』はスキルで一体のユニットを指定し、このターンは後列のユニットにもアタックできる効果を与える!」

 

「後ろに攻撃できると、相手の『ブースト』を止められるかもしれませんね」

 

「『ブースト』したいならもう一回『コール』する必要が出てくるから、その時に手札を減らさせて相手が『ガード』に使える枚数を減らせるのはデカいよな……」

 

燐子の気づいたところに、俊哉は補足を入れながら同意を示す。

今回の場合なら『マロン』のスキル再発動を、自分から直接咎めに行けるのだ。

相手が後列ユニットにさせたい動きを直接封じることができるのは、確かに嬉しい点になる。

 

「攻撃だ……右の『FUSHIMI』で、『マロン』を攻撃!」

 

「そう来たか……すまない『マロン』。ここはノーガードだ」

 

――やってくれるな。『むらくも』の弓兵……。一真は『マロン』に詫びてから、『FUSHIMI』二体の動向を注目する。

イメージ内で『FUSHIMI』の矢をもらい、マロンは退却することとなった。

 

「『ソウコクザッパー』の『ブースト』、ヴァンガードの『FUSHIMI』で相手ヴァンガードを攻撃!」

 

「いいだろう……ここは受けて立つ」

 

攻撃対象が自分だったので、一度攻撃を受けることにする。

ここでトリガーを引かれないなら、パワー10000の『ブラスター・ブレード』にパワー9000の『FUSHIMI』では攻撃が届かないので、ガードが不要になるのだ。

その『ドライブチェック』で相手は(ドロー)トリガーを引き当てたので、一真は次に備えた動きをしようと決める。

 

「左の『FUSHIMI』でヴァンガードにアタック!」

 

「この場は任せたぞ、『ギャラティン』!」

 

最後の攻撃に対して、一真は左の『ギャラティン』による『インターセプト』を選択する。

ダメージがまだ2だったので攻撃を受けてトリガー狙いでも良かったのだが、次のターンで退却させるよりはここで『インターセプト』をしてもらった方が助かると言う考えだった。

そして対戦相手のターンが終わり、一真のターンが始まる。

 

「若かりし騎士王の姿を見よ……!『ライド』!『アルフレッド・アーリー』!登場時、『カウンターブラスト』してスキル発動!我が呼びかけに答えよ、『ロイヤルパラディン』の光の剣!」

 

『アルフレッド・アーリー』のスキルにより、前列左側に『ブラスター・ブレード』が現れる。

更に、『イマジナリーギフト』の『フォース』は『ヴァンガードサークル』に設置し、これにより『アルフレッド・アーリー』のパワーが上がった。

『メインフェイズ』ではもう一度後列右側に『マロン』を『コール』することで、場のユニットは5体となった。

 

「では行くぞ……!『マロン』の『ブースト』、『ギャラティン』でヴァンガードにアタック!」

 

「……ノーガード」

 

トリガー狙いで相手はノーガードを選択し、『ダメージチェック』に入る。

その結果はノートリガーで、有利な状況を得られないままダメージが4になる。

 

「次、『うぃんがる』の『ブースト』、『アルフレッド・アーリー』でヴァンガードにアタック!」

 

「賭けるか……ノーガード!」

 

「その覚悟、確と受け止めた……!『ツインドライブ』……」

 

対戦相手はまさかのノーガードを選択。一真はその選択を嗤うことなどせず、素直に受け止める。

そして『ツインドライブ』では一枚目がノートリガー。二枚目が(ドロー)トリガーとなり、相手はこの攻撃では敗北しないこととなった。

『ダメージチェック』では(クリティカル)トリガーだったので、防ぐ時に気持ちが楽になった。

 

「最後だ……!その剣で『むらくも』の尖兵を討て、『ブラスター・ブレード』!」

 

「二体の『FUSHIMI』で『インターセプト』!更に『忍獣 キャットローグ』で『ガード』!」

 

(ドロー)トリガーの効果で『ブラスター・ブレード』のパワーが30000となっていたので、『FUSHIMI』二体の『シールドパワー』を加えても29000なので、更にもう一体を『ガーディアン』として『コール』する必要があった。

ターン終了を宣言した段階でのダメージは一真が2。対戦相手は5と少々一方的な状況となっていた。

また、大介は自分の番が来てしまったので一声掛けてから移動を始める。少し遅れてだが、全員が応援の言葉を掛けてからファイトを見ることに戻る。

 

「どうだ?一真はまだやってるのか?」

 

「貴之速かったね……何をしたの?」

 

向かって行った大介と入れ替わるように、かなり速い段階でファイトを終えた貴之が戻ってきたので、リサが気になって聞いてみる。

すると彼の口からは、少し想像したくないような光景を語られることとなった。

 

「相手がやたらと『ウォーターフォウル』警戒するから、『オーバーロード』二体出し戦法取ってそのまま押し切った」

 

「うわぁ……なんて強引な……」

 

ただでさえ『オーバーロード』の圧力が強いというのに、もう一体隣にいるなど一溜まりもないだろう。

リアガードにいる『オーバーロード』は『スタンド』スキルこそ使えないものの、『ソウルブラスト』によるパワー増加は可能なので、貴之はそれを活かして『ガード』可能ラインを引き上げ、そのまま押し切って見せたのだ。

話しを聞いたリサは、そんな対戦相手に同情するしかなかった。

まあそんなこともあるとだけ返し、貴之は一真たちの戦況を確認する。この段階でまだ軸となるユニットが出ていないことを悟る。

 

「ここで相手が何を出すかになるな……。逆転性を求めるならあれしかないが、それらがデッキに入っているかどうか……」

 

「ん?ああ……確かに、あいつだけは慣れていても面倒な相手だからな……」

 

貴之が言わんとしていることは、ファイターたちならすぐに気づけた。『インターセプト』で場を開けたことから、その可能性は十二分にあるのだ。

対戦相手の使用している『むらくも』には一体だけ、ここから逆転勝利とまでは行かずとも、一気に有利な状況まで持っていけるユニットが存在している。

そのユニットを持っているのなら、一真に取っても次のターンがかなり苦しいことになるのは目に見えていた。

 

「これなら流石に通じるだろ……『ライド』!『決闘龍(けっとうりゅう) ZANBAKU(ザンバク)』!『イマジナリーギフト』、『アクセル』!更に『レフト・アレスター』と『アマツスナイプ』を『コール』!」

 

「(『ZANBAKU』か……これは厄介な相手だ)」

 

表情こそ表向きでは変わらないものの、柄頭(つかがしら)に非常になが鎖の繋がっている刀を持つ、武士のような鎧に身を包んだ黒き龍『ZANBAKU』を見て一真は少し焦りを感じる。

今現れた『ZANBAKU』は非常に厄介ななスキルを持っており、ここを耐えたとしても厳しい展開に持ち込まれることになる。

また、前列左側に鍛え上がった体と鎖付きの鉄球を持った二足歩行を可能とする気性の荒らそうな獣『レフト・アレスター』と、空いてる後列左側後列右側に『アマツスナイプ』が『コール』される。

 

「『カウンターブラスト』と『ソウルブラスト』をして『ZANBAKU』のスキル……デッキから一枚『ライト・アレスター』を『コール』!山札からリアガードが登場しているなら、このターン『アマツスナイプ』はパワープラス5000!」

 

前列右側に鎖付き鉄球の代わりに万力鎖のようなものを持った、『レフト・アレスター』とよく似ている『ライト・アレスター』が『コール』される。

 

「条件が全て揃ったか……。だが、それを前にしても私は引くことをしない……!」

 

「けど、ここから巻き返すのは楽じゃない……!リアガードに『ライト・アレスター』と『レフト・アレスター』がいる時、『ZANBAKU』で相手は次のターン『ライドフェイズ』ではグレード3からグレード3以上に『ライド』はできない」

 

次のターンで『ライド』を封じられるということは、『イマジナリーギフト』の獲得を阻害されることを意味する。

これによって重ね掛け等ができなくなり、本来なら通せたはずの攻撃が通らなくなる可能性が高まってしまうこととなった。

 

「さらに『ライト・アレスター』の登場時、ヴァンガードが『ZANBAKU』でリアガードに『アレスター』と名の付くユニットがいるのなら……二枚『カウンターブラスト』と手札を一枚『ソウル』に置くことでスキル発動!相手は次のターン、ヴァンガードを『スタンド』させることはできない!」

 

イメージ内で『ZANBAKU』と『ライト・アレスター』、そして『レフト・アレスター』三体がそれぞれ放った鎖によって『アルフレッド・アーリー』となった一真の首と両腕が押さえつけられ、身動きが取れなくなる。

 

「『スタンド』を封じるなんて初めてみた……」

 

「『ロイヤルパラディン』側に、対抗できるユニットはあるの?」

 

「一体だけあるな……問題は成立条件が厳しいことだが」

 

『エンジェルフェザー』なら『ダメージゾーン』に『ザラキエル』が来ればその段階で成立だが、『ロイヤルパラディン』はそのスキルを使うユニットを引き当て、更に条件を満たせるカードを山札の上から引かなければならないと言う非常に厳しいものが待っていた。

この辺りはイメージしかないかなと、貴之が締めくくったのでかなり難しいものであることが伺える。

 

「(……まだだ。まだここで使うわけにはいかない……)」

 

また、先程表情を表に出していないことで気づける人は殆どいないが、貴之だけはあることに気が付いていた。

――明白に嫌がっている。表情が変わらなくとも、こういうことはすぐに気づける貴之にとってはあまり効果を成さないものだった。

 

「行けるか……?『ソウコクザッパー』の『ブースト』、『ZANBAKU』でヴァンガードにアタック!」

 

「その盾で我らの希望を護り抜け、『閃光の盾 イゾルデ』で『完全ガード』!」

 

『ZANBAKU』の振るった刀が、白を基調とした装甲型のユニットを腕に装着した、やや黒めの肌を持つ女性『イゾルデ』によって防がれる。

この時の『ツインドライブ』は一枚目が(フロント)トリガー。二枚目が(クリティカル)トリガーで、二枚目の効果は全て『レフト・アレスター』に割り当てられた。

現在のダメージが2なのでこのターンでの敗北は無くなったことと、今攻撃を防いで無駄な手札消費を避けたいことから、一真は残った二回の攻撃は全てノーガードでやり過ごす。

 

「勝負は決まらなかったが、これで結構楽になったな……ターンを終了」

 

「(どうにか使わないで済んだか……)」

 

ここで一真が安堵しているのは重要なユニットのことではなく、もっと別のこと(・・・・・・・)になるのだが、これを今知っているのは貴之と瑞希、そして瑞希の妹たちだけになる。

故に対戦相手もそうだが、一真のファイトを見ている人たちは「彼にはまだチャンスがある」と言う認識になっている。

知っている人が少ないと言った通り、大体の人たちが持っている認識はRoseliaの五人もそうだが、俊哉たちも含まれている。

 

「(デッキに入れてるかどうか……)」

 

先程言っていた対抗できるユニットが入っていない場合、一真はヴァンガードを行動させることができない事態に陥る。

しかしながらこう言った対策の為に入れているか、或いは自分の動きを重視して入れていないかはかれ次第なので、見ていることしかできないのが現実だった。

そしてターンをもらった一真はヴァンガード以外を『スタンド』させ、山札から一枚カードを引く。

 

「今回は『ライドフェイズ』で何もできないから、今回は省略だね……」

 

――何を出すんだろう?玲奈を筆頭に、見ている人たちは気になっている。

目の前では一真が一枚のカードを手に取り、それを『コール』しようとする姿があった。

 

「正しき知恵を持つ賢者よ、その知識で我らを奇跡の扉へ導きたまえ……!『コール』!『導きの賢者 ゼノン』!」

 

後列左側に白と青の二色が基調の賢者用の服を着た、『マロン』と比べて貫禄を感じさせる賢者『ゼノン』が現れる。

ちなみにこのユニットが対抗できる存在なので、貴之は五人にこれがそうだと教える。

 

「登場時、スキルを発動!山札を上から一枚公開する……さあ、その扉を開かん!」

 

一真が山札から一枚めくると、そのユニットは『騎士王 アルフレッド』だった。

そしてこれが、窮地を脱する条件を満たした証となる。

 

「これで奇跡の扉は開かれた……!この公開したカードが自分のヴァンガードと同じグレードの場合、そのカードを『スタンド』状態で『ライド』する!」

 

「な……?ここで引き当てるのか!?」

 

『ゼノン』の一枚下にグレード3が無ければならないと言う非常に低確率なものだと言うのに、それを成功させられたことで対戦相手も動揺する。

これには対戦相手のみならず、多くの人が驚きの顔になっていた。

 

「行くぞ!『騎士王 アルフレッド』に『ライド』!『フォース』はもう一度ヴァンガードに!」

 

イメージ内で『アルフレッド・アーリー』となっていた一真は、鎧に少しの変化を起こしながら現れた愛馬の『ライオンメイン・スタリオン』に飛び乗る。

この方法で『ライド』のイメージが映し出された理由として、『アルフレッド・アーリー』は『アルフレッド』の若い姿なのだが、『憑依(ライド)』している一真自身の見た目が殆ど変わらないことが起因する。

また、『フォース』をヴァンガードに置いた理由として、『アルフレッド』のスキルが関係していた。

 

「自分のリアガードに『ブラスター・ブレード』がいるのなら、『アルフレッド』は自分のターンの間、パワーがプラス10000される!」

 

「ここに『フォース』二枚が重なって合計が43000……そのまま押し切ってしまおうということですね」

 

『アルフレッド』は『ブラスター・ブレード』さえいれば自分のパワーを簡単に引き上げることができるので、そのパワーを活用するためにある。

また、相手の手札がかなり心許ない状態なので、仮に防がれても残ったユニットで攻撃を通すことも十分に可能だった。

まだ後列左側は空いているのだが、一真はできることが無くなったのを示すかのように『うぃんがる』に手を添える。

 

「さあ……決着の時だ!『うぃんがる』の『ブースト』、『アルフレッド』でヴァンガードにアタック!」

 

「こうなりゃ賭けだ……!この四体で防いでやる!」

 

対戦相手は先程の『ツインドライブ』で引き当てた『ザンバライダー』と『アヘッドパンサー』、更に『ライト・アレスター』と『レフト・アレスター』を『インターセプト』に回す。

これによって『アルフレッド』は51000で『ZANBAKU』は52000。トリガーが何か一枚出れば攻撃が通ることになる。

そして『ツインドライブ』では一枚目がノートリガー。二枚目は(クリティカル)トリガーとなり、効果を全て『アルフレッド』へ回した。

イメージ内で『アルフレッド』となった一真が愛馬から飛び降りて、『ZANBAKU』に己の剣技を浴びせる。

そして『ダメージチェック』はノートリガーだったので決着となり、二人はファイト後の挨拶を済ませて進行に終わった合図を示してから去っていく。

 

「彼、凄いわね……」

 

「……ああ、最終的に俺はそいつに勝つ必要があるんだ」

 

一瞬間をおいて答えが来たことから友希那は不思議に思うものの、貴之が「それ以上は無し」と言いたげだったので聞くことは叶わなかった。

恐らく一真が使わなかったものは今日中には必ず使う場面が来るはずなので、嫌でも選択の時は来るだろう。

 

「(使ってもいいとは思うが、どうするかはお前次第だ……だから……)」

 

――答えはしっかりと出しておけよ……?一真の事情を理解している貴之は、彼のことを案じた。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様。どうにかなったようね?」

 

ファイトが終わった一真が上に戻れば、瑞希が出迎えに来ていた。

事情を知られているのと、あまり堂々と言えるものではないと感じているものあり、「ええ、どうにか」と一真はなるべく当たり障りのないような返答に努める。

彼女が気づいていると言うことは、恐らく貴之も気づいているだろう。自分の持っている後ろめたさは、知っている人なら分かってしまうものだ。

 

「分ってはいるんですけど……あまり使いたくなんです」

 

「難儀なものね……使わなければ届かないかも知れないけど、使えば簡単に届いてしまう……。でもそれは……あなたと仲間たちが絆を紡ぎ、共に繋がろうとしたから手にしたもの……。だからこそ嫌になりきれないのね……」

 

一真はそれを手にしたのを境に勝率が急激に跳ね上がったが、あまり使い過ぎると自分本来のファイトを見失いそうだと危惧も抱いている。

しかしながら瑞希が言う通り、ユニットとの絆が直接的なものとして現れた結果なので、そう簡単に手放すつもりにもなれない。

何しろ一人だけインチキ(・・・・・・・・)しているような効果を発揮することが、使いたがらない気持ちを助長するのだ。

貴之のように遠慮なく使っていいと言ってもらえれば気が楽になるが、なるべく使わないで戦いたい気持ちが勝っている。

もし使うことがあるとすれば、その人には勝ちたいと思った時だけだろう。誰かもう一人にでも言ってもらえれば変わるかもしれないが、これが一真の現段階で持っている答えだった。

 

「だから今は、なるべくこのまま戦いたいんです」

 

「それ以外でも自分が進めた証拠を証明したい……。そうでしょう?」

 

「ええ。できることなら彼と戦う時まで取って置きたいけど、必要になったら思い切って出してみます」

 

瑞希の問いに肯定しながら、一真はデッキから一枚のカードを取り出す。

取り出したのは制御が困難と言う理由から使用者が殆どいないユニットで、貴之ですら『かげろう』にあるこのユニットと対になる存在の使用を遠慮する程だった。

そんなユニットを使いこなし、自分はしっかりと進めたことを証明したいと言う思いが一真にはあり、瑞希もその気持ちは理解できた。

 

「なら、楽しみにさせてもらうわね?あなたがそれを使いこなすところを見れるのを……」

 

「はは……。その期待に応えられるよう頑張ります」

 

頭を掻きながら笑う一真を見て、瑞希は満足そうに頷く。

引き留めたことを詫びてから瑞希が戻って行くので、一真も戻っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

更に時間は進み、六人全員……一真も含めた場合は七人のファイター全員が三回戦を突破し、全国出場の切符が掛かっている四回戦が始まろうとするところまで来た。

ちなみにベスト16まで決まった後は台の数を減らして、一つのファイトを見やすいようにするらしい。

 

「よし、行くか」

 

「ああ。思いっきりやろうか……!」

 

貴之と大介はここで当たるのでどちらかがここで脱落と言う形になるのだが、この二人は恨み言を言ったりはしない。

何よりも、ファイトして以来ここで再戦しようと言う約束を果たせることが嬉しく、どんな結果になろうと全力で戦うことを決めている。

そんな二人を見たらどっちか一方を応援と言う無粋な真似をする気は起こらないので、最後までファイトを見届けようと決意した。

 

「知ってるか?貴之が戻ってきて最初に戦ったのは大介なんだぜ?」

 

「あっ、そうだったんだ……」

 

俊哉のカミングアウトには燐子のみならず、Roseliaの全員が驚く。ファイターたちは話しをそれぞれから聞いていたので平気だった。

 

「しかしまあ、戻って来てから結構早いもんだな……。気がついたらお前とここでまたファイトすることになってる」

 

「お前も色々走り回ってたからな……そりゃそう感じるだろうよ」

 

準備をしながら二人は軽く会話のやり取りを行う。

確かにRoseliaへの協力で最も走り回ったのは貴之だし、それ以外にもファイト漬けの日々を送っているのだからそう感じるのは無理のないことだった。

そうやって色々なことがあったものの、今はファイトをしに来たのだから、準備を終え次第二人はアイコンタクトでその旨を伝える。

 

「「スタンドアップ!」」

 

二人の声を聞いて、待機中だった友希那たちは会話を止めて二人の方へ目を向ける。

 

「ザ!」

 

貴之の掛け声が始まりが迫っていることを告げてくれ、見ている人たちに緊張を与える。

 

「「ヴァンガード!」」

 

そしてファーストヴァンガードを表返したことで、全国出場決定戦の一回目が始まりを告げた。




一真のデッキはトライアルデッキ『先導アイチ』をブースターパック『結成!チームQ4』とブースターパック『相克のPSYクオリア』に出てくるカードで編集した『ロイヤルパラディン』のデッキとなり、貴之の『ロイヤルパラディン』と縁が深い理由の一人となります。
また、対戦相手はブースターパック『最強!チームAL4』に出てくるカードで作った『むらくも』のデッキとなります。

妙にアイチ対キョウのファイトと似通った部分が強いので、味気無さを感じさせてしまったら申し訳ございません。燐子の初ファイトの時に没案となったテストファイト程露骨にはなっていないのですが……。

一真が持っている能力に関してはこの大会中に必ず公開するつもりでいるので、もうしばらくお待ちください。
能力の招待が何となくバレている感じはしますが……(汗)。

ちなみに貴之と一真二名の現時点による強さは

一真(能力解放)>貴之>一真(通常)

と言う構図になります。貴之は地の力で優位に立っている状態ですが、能力を使われると一気にひっくり返されます。
ここは貴之の頑張り次第でまだくらい付ける状態です。

次回は貴之と大介による対決になります。

ここから貴之は『ヌーベルバーグ』に慣れて行くのですが、この為のファイト展開の量ややり方はどのくらいがいいでしょうか?

  • 作者にお任せ
  • なるべく多めに入れて、細かくやって欲しい
  • 少なめで、飛ばし気味がいい
  • 多めにやって欲しいが、内容は簡潔に
  • 少なめにして欲しいが、内容は細かめに
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