先導者と歌姫 -高みを目指して-   作:ブリガンディ

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少し遅くなって申し訳ありません。

今やっているガルパのイベントですが、今後Roseliaシナリオ2章を終えた後どうしようかとなっていた所に一つの指標がやってきたので、個人的にとても助かりました。
今後の展開次第ですが、この展開は十分基準として選べるものだと思います。

さて、本編ですが予告通り弘人と一真のファイトとなります。

弘人の攻撃ターンにミスがあったので、一部緊急修正しました。


イメージ27 望まぬ力

時は僅かに遡り、貴之と大介のファイトが前半を終えた頃……。即ち弘人と一真がファイトを始める直前になる。

 

「そう言えば、僕たちが大会で実際に当たるのは初めてだったよね?」

 

「確かに、時々カードショップでファイトしたことはあったけど、こちらではまだだったね」

 

弘人に問われたことで一真も思い出す。この二人がファイトする時は、カードショップで互いに時間が空いてるだったり、この人とファイトしたいと言う時くらいだったのだ。

大会は組み合わせ次第でその人と当たらないで終わると言うのはよくある話しで、この二人は偶然それが続いていただけに過ぎない。

そんな偶然の連続が終わり、準備を終えた二人のファイトが始まろうとしていた。

 

「準備はいいかい?」

 

「大丈夫。それじゃあ始めよう」

 

一真の問いかけに弘人が頷き、二人はファーストヴァンガードに手を添える。

 

「「スタンドアップ・ヴァンガード!」」

 

カードを表返すことで二人の……引いては全国出場者を決める最後のファイトが始まった。

弘人は『エリック』に、一真は『ぐらいむ』に『ライド』する。

一真が本大会最初のファイトをした段階では気付けなかったが、弘人はこの時何となくあることを感じ取っていた。

 

「(何を隠しているか判明すれば、少しは戦いやすいんだけどね……)」

 

それは彼がデッキの中からまだ使っていないユニットがいる事で、それが何かを探りたいとも思っている。

しかしながら無理をする必要は無く、勝てる時やこうしなければ負けるとなった時はそちらを優先するつもりだった。

ファイトは一真の先攻で始まり、彼は『アレン』に『ライド』、後列中央に『うぃんがる』を『コール』してターンを終える。

 

「『ライド』!『ステリオス』!一枚ドローして『テオ』を『コール』!」

 

弘人は『ステリオス』に『ライド』し、後列中央に『テオ』を『コール』する。

まだ『アクアフォース』の本領を発揮しづらいターンであること、次は『ブラスター・ブレード』の来る可能性が十分に高いことから、これ以上『メインフェイズ』での行動は控えることにした。

 

「早速攻撃させてもらうよ……!『テオ』の『ブースト』、『ステリオス』でヴァンガードにアタック!」

 

「ここは受けよう。『ドライブチェック』を」

 

一真に促されて弘人が行った『ドライブチェック』では(ドロー)トリガーが引き当てられた。

イメージ内で『ステリオス』になった弘人と『テオ』の集中砲火を受けた後、一真が『ダメージチェック』を行った結果はノートリガーだった。

引き出せるかどうかは分からないが、最初のターンは出てくると思ってもいないので、次の機会を伺いながら弘人はターンを一真に渡す。

 

「『ライド』!『ブラスター・ブレード』!『コール(共に行こう)』、『ギャラティン』!」

 

弘人の読み通り一真は『ブラスター・ブレード』に『ライド』する。リアガードを退却させられないで済んだことは、後々攻撃の手数を増やせることに繋がる。

今回は相手『クラン』を警戒しているのか、はたまた手札の都合でこれ以上出せないのか、新しく現れたのは前列右側に『ギャラティン』一体のみだった。

 

「こちらも行かせてもらおう……『うぃんがる』の『ブースト』、『ブラスター・ブレード』でヴァンガードにアタック!」

 

「防いでも割に合わないね……ノーガード」

 

ダメージが0、『ステリオス』パワーが9000に対して『ブラスター・ブレード』は23000と言う状況なので、ここは大人しく受けることを選択する。

この時一真は『ドライブチェック』で(クリティカル)トリガーを引き当てたのでパワーをギャラティン、(クリティカル)は『ブラスター・ブレード』に回す。

イメージ内で『ブラスター・ブレード』となった一真から剣による二撃を貰った後、弘人は『ダメージチェック』で(フロント)トリガーを引き当てる。

本当なら自分の『ドライブチェック』で引き当てたいもので、尚且つこちらの前列がヴァンガードのみの時に引き当ててしまったことは非常に痛いタイミングだった。

 

「頼むぞ……!『ギャラティン』でヴァンガードにアタック!」

 

「それは『バトルシップ・インテリジェンス』で『ガード』するよ!」

 

『ギャラティン』の攻撃は白い戦艦、『インテリジェンス』が壁となって阻む。

今回は攻勢が弱めだったので、比較的小さなダメージで一真のターンが終わる。

この時会場の空気に変化が起きたので確認してみると、丁度貴之と大介のファイトに決着の着いたタイミングだった。

 

「(早い……と言っても、こっちの開始が遅いから仕方ないか)」

 

トーナメントの順番を考えても仕方ないものだと理解している弘人は簡単に割り切る。何しろ一番最初と一番最後なのだから、こうなっても仕方ない。

それは一真も同じだったらしく、あまり深くは考えなくていいと判断できた。

自分のターンが始まる前に状況を確認するが、隠しているものが出るであろう気配はまだ感じることができないでいた。

 

「(あまり伺い過ぎて負けるのは笑えない……そろそろ波に乗るとしようか)」

 

弘人は『スタンド』アンド『ドロー』を済ませながら攻勢に出ることを決意する。

 

「『アルゴス』に『ライド』!『ラザロス』ともう一体の『テオ』を『コール』!」

 

「(大丈夫だ……。まだ使わないで行ける……)」

 

弘人が『ライド』するのに選んだのは『アルゴス』で、『ラザロス』は前列左側、『テオ』は後列右側に『コール』する。

一方で一真は弘人の動きを見て、ユニットとは別のものを使わなくて大丈夫だと判断を下していた。

己を高めるという目的もあるが、使用すると禁忌感があるからということも大きい。

 

「攻撃だ……『テオ』の『ブースト』、『ラザロス』でヴァンガードにアタック!」

 

「ノーガード。『ダメージチェック』……」

 

そのまま受けることを選び、一真は『ダメージチェック』を行う。

結果はノートリガーで、ダメージが2になる。

 

「次、『テオ』の『ブースト』、『アルゴス』でヴァンガードにアタック!ヴァンガードにいる『アルゴス』の攻撃が二回目以降なら、『カウンターブラスト』と『ソウルブラスト』。『ラザロス』を『スタンド』させる!」

 

「……いいだろう。我が身で受ける!」

 

トリガー次第で次を決めようと思った一真はこれもノーガードにする。

イメージ内で『アルゴス』となった弘人の集中砲火が、『ブラスター・ブレード』となった一真に浴びせられる。

この時弘人の行った『ドライブチェック』はノートリガー。一真の行った『ダメージチェック』は(クリティカル)トリガーだった。

パワーは『ブラスター・ブレード』に回すが、このままではスキル込みで『ラザロス』の攻撃が丁度届く状態だった。理由は『テオ』と『ラザロス』のスキルにあった。

 

「アタックか『ブースト』したアタックがヴァンガードにヒットした時、『テオ』のスキルで『ラザロス』のパワーをプラス8000!そのまま『ラザロス』でヴァンガードにアタック!『ラザロス』がヴァンガードにアタックした時、二回目以降の攻撃ならパワーをプラス3000!」

 

「ならば……頼むぞ、『ギャラティン』!」

 

パワーが丁度20000になって届く状態だったラザロスの攻撃は、『ギャラティン』の『インターセプト』で防がれることとなった。

あと1ダメージだけ与えられれば後が楽だったと思いながらも、弘人はターンを明け渡す。

こうして一真が次のターンを始めるところから、貴之もこのファイトを観戦し始めていた。

 

「現れよ、若き王!『アルフレッド・アーリー』!『カウンターブラスト』で『ソウル』からパートナーである『ブラスター・ブレード』を『コール』!立ち去れ、『ラザロス』!」

 

一真が選んだのは『アルフレッド・アーリー』で、『ブラスター・ブレード』は前列左側に『コール』する。

この時獲得した『フォース』を、一真は『ブラスター・ブレード』がいる『リアガードサークル』に設置した。

 

「今回はそっちなんだ……」

 

「『アーリー』のスキルで呼ばれた『ブラスター・ブレード』は、このターンパワーがプラス10000されるからな……」

 

――あっ、そう言えばそうだった……。『アルフレッド・アーリー』のスキルを思い出したリサが、ちょっぴり恥ずかしそうに口元を手で抑える。

この後一真は後列右側に『アレン』を『コール』し、スキルで前列右側に二体目の『ギャラティン』を『コール』した。

 

「(まだ使ってないみたいだな……)」

 

状態に気づいている貴之だが、本人が己に何か条件を課せているのならそれでいいとも思っている。

大事なのは本人がどうするかで、自分は意見を言う程度に留めるのが一番いい。使うなや、使えと無理に言えば本人からすればやりづらいこの上ないのだ。

 

「では行くぞ……!『うぃんがる』の『ブースト』、『アルフレッド・アーリー』でヴァンガードにアタック!」

 

「この状態ならまだやられない……ノーガードだ!」

 

「ならば、『ツインドライブ』……ファーストチェック……」

 

まだダメージが2なので、弘人はこのままノーガードにする。

この時『ツインドライブ』は一枚目がノートリガー。二枚目は(クリティカル)トリガーだったので、パワーは『ギャラティン』に回された。

イメージ内で『アルフレッド・アーリー』となった一真の剣戟を二度受けた後、『ダメージチェック』を行うと一枚目がノートリガー。二枚目が(ヒール)トリガーだった。

この為ダメージは3で納まり、ヴァンガードのパワーを増やすことができた。

 

「頼むぞ『ブラスター・ブレード』……ヴァンガードにアタック(相手の先導者を討て)!」

 

「そうだね……これもノーガード。『ダメージチェック』……」

 

トリガー狙いでノーガードを選択し、『ダメージチェック』を行った結果は(フロント)トリガーだった。

確かにパワーを足せたのは嬉しいところだが、『ダメージチェック』で二枚もこのトリガーを引いてしまうのは非常に苦しいものだった。

これでダメージは4になり、次の『ギャラティン』による攻撃を受けても倒されることはないものの、後々のことを考えると少し不安になる状態と言える。

 

「『アレン』の『ブースト』、『ギャラティン』でヴァンガードにアタック!」

 

「『輝石通信のラッコ兵』で『ガード』!」

 

『ギャラティン』の攻撃を輝く石を持った制服姿のラッコが防ぎきる。

ターンを終了した一真は、先程以上に気を引き締める。まだ使わなければならないタイミングが来る可能性は十分残っているからだ。

ダメージが嵩んだ段階でで弘人は隠しているものを引っ張り出すと言う考えは捨て、このターンで倒すことを優先的に考える。

 

「手札的にもこのターンで決めないと苦しいな……」

 

「攻撃回数、足りるかな……?」

 

恐らく次のターンが終わると弘人の手札は『ツインドライブ』で入手した二枚と、スキルで補充できたものだけになってしまっているはずだ。そうなると次のターンはほぼ耐えることができない。

『メイルストローム』を見たことがあるので、燐子もまだ希望を持って考えることはできた。

――後は……リアガードに設置できるユニット次第か。貴之は届いてもギリギリだろうなと考えた。

 

「『ライド』!『メイルストローム』!集結せよ!『アクアフォース』の兵たち!さらに『メイルストローム』のスキルで前列のパワープラス3000!」

 

弘人が『メイルストローム』に『ライド』できたのを見て、貴之は一安心する。

『メインフェイズ』で前列右側に『ラザロス』、後列右側に『ビビアナ』、前列左側に銃を持ち、魚のような特徴がある躰を持った水龍『ネイブルゲイザー』、『アクセルサークル』に『タイダル・アサルト』を『コール』する。

『ネイブルゲイザー』のスキルはヴァンガードにいる時に攻撃し、それが三回目以降のものならユニットを一体『スタンド』と同時にバトル中の『ネイブルゲイザー』にパワープラス10000を与えるものだった。

今回はリアガードに『コール』されたので、この効果を発動することはできない。

 

「最大六回の攻撃でどこまで行けるか……」

 

「その攻撃で3ダメージを与えられるかどうかね。可能性は十分にありそうだけど……」

 

正直なところ、何とも言えないと友希那は感じていた。

後一回あればもう少し楽だと思うのは貴之も友希那も同じであった。

 

「(大丈夫だろうか……?嫌な予感がする)」

 

一真もまた、嫌がっているものを使わず耐えられるかどうかで非常に不安視していた。

非常に厳しいだろうがやるしかない。そう割り切って弘人の攻撃に備える。

 

「総攻撃を始める……!まずは『タイダル・アサルト』でヴァンガードにアタック!」

 

「……受けよう。『ダメージチェック』……」

 

『タイダル・アサルト』はスキルによって『スタンド』するため、もう一回攻撃が約束されている。

一真の『ダメージチェック』はノートリガーで、これによってパワー上昇等が起こらないまま4ダメージ目を負うことになった。

 

「次……『テオ』の『ブースト』、『ネイブルゲイザー』でヴァンガードにアタック!」

 

「防いでくれ、『エポナ』!」

 

『テオ』のスキル絡みでパワーを上げられるのを嫌い、一度『ガード』を選択する。

『ネイブルゲイザー』はリアガードにいる都合上スキルを発動できないので、今回は特に攻撃順番を考える必要はない。

 

「ここしかない……!『テオ』の『ブースト』、『メイルストローム』でヴァンガードにアタック!」

 

「頼む、『ふろうがる』!」

 

現在、『メイルストローム』のパワーは26000。『アルフレッド・アーリー』のパワーは38000なので、トリガー二枚で貫通を狙える状況だった。

『ツインドライブ』で一枚目のカードをめくると、それは(フロント)トリガーだった。

 

「ここで(フロント)トリガーか。もう一枚あるともっと楽になるな……(クリティカル)ならダメージが増えるらそれもありだ」

 

「でも……もう三枚出ちゃってるよ?後一枚引けるかな……?」

 

リサから(フロント)トリガーの引き当てた数を教えてもらい、貴之は結構難しい状況だと言うことを覚えた。

しかしながら、ここで(フロント)トリガーを引き当てられたのなら、『ガード』を貫通できるだけでなく、残った攻撃が通しやすくなると言う利点尽くしだった。

仮に(フロント)トリガーでなくとも、(クリティカル)トリガーならダメージが足りて決着を付けられる可能性が跳ね上がる。

とにかく、現状ではそれほどトリガーを引き当てられるかが重要だった。

 

「(ただ、問題は一真がどうするかだ……)」

 

――使わないまま己の力不足として去るのか、或いは……。こちらからは何も言うことができないので、見守るしかなかった。

 

「セカンドチェック……!」

 

このファイト中最も重要となるだろう二枚目のトリガーチェックで、弘人は(クリティカル)トリガーを引き当てて見せた。

それを見ていた全員が、弘人の引き当てたイメージの軌跡や、一真が敗退するかもしれないという事態に驚くこととなる。

 

「効果は全てヴァンガードに!」

 

「……!」

 

――このままでは負ける……!状況を再理解した一真は焦りに駆られ、無意識のうちにユニット(仲間)たちに助けを求めた。

それと同時に一真の変化に気づいた貴之は、彼の目を注視しようとする。

 

「(弘人が引っ張り出したか……)」

 

一真の目を見てみると、エメラルドグリーンの瞳の内側に何か渦巻いたものが見える状態だった。

この状態が、一真の持っている能力が発動した状態であり、こうなるとイメージがダイレクトに反映されやすくなったり、時にユニットの声を聞くことができるようになったりと、ファイトするにあたって非常に有利な要素を獲得できるのだ。

また、それらの恩恵があまりにも強力だったことこそ、一真がこの能力の使用を躊躇う原因にも繋がっている。

――お待たせしました。攻撃を受けた直後に早速、自分の救助に来たユニットの声が聞こえ、それに従って『ダメージチェック』を行うと一枚目はノートリガー、二枚目は(ヒール)トリガーを引き当て、これでダメージが4に収まる。

、弘人は焦ることとなる。

 

「(使うことになってしまったか……。こうなっては仕方がない)」

 

本当ならば使わずに終わりたいところだったが、この大会中のどこかで使う可能性は十分にあり得たので、潔く割り切る。

使ってしまったことに悔いている状態を察した貴之は事情を理解しているからこそ神妙な表情になる。

この時幸いなのは、貴之の表情は「弘人が苦しくなったことに対してのもの」と思われていることであった。もし一真絡みのことで気づかれていたら対応に困っているところだった。

 

「『ビビアナ』の『ブースト』、『ラザロス』でヴァンガードにアタック!」

 

「ここは受けるべきか……『ダメージチェック』……」

 

『ビビアナ』のスキルでユニットのパワーを上げられてしまうのことと、『メイルストローム』を『スタンド』痛いところだが、もう一枚トリガー効果を得られればと思っていたのでノーガードを選択する。

その結果は(ヒール)トリガーで、これを引き当てるまで互いのダメージが4なので回復が可能だった。

また、この状況でリアガードに攻撃が飛んでくる可能性はほぼないので、パワーはヴァンガードに回された。

 

「今のトリガー……相当大きくないですか?」

 

「ああ……今の(ヒール)トリガー、弘人に取っては相当の痛手だ」

 

現に(ヒール)トリガーを引き当てた弘人は苦い顔を見せていた。

ただ回復されたこともそうだが、相手ヴァンガードのパワーが上がったと言うことは、この後の攻撃が通りづらくなることも意味していた。

しかしながら、まだチャンスはあるので気を取り直して『ビビアナ』のスキルで『メイルストローム』のパワーを上げる。

この選択は少しでも攻撃をヒットさせやすくする為だった。

 

 

「後二回ある……!『テオ』のスキルは『メイルストローム』に与え、『メイルストローム』をスキルで『スタンド』!そのままもう一度ヴァンガードにアタック!」

 

「『エポナ』で『ガード』!お前にも頼むぞ、『ギャラティン』!」

 

「ま……まだ『ツインドライブ』があるのに最低限の数値でですか!?」

 

パワー54000まで上がっている『メイルストローム』の攻撃を、合計パワー58000という最低限の数値で防ぐことを狙う。

当然、自分のダメージが4とは言え『ツインドライブ』が待っているにもかかわらずこの選択をしたので、声を上げた紗夜のみならず、殆どの人が彼の正気を疑った。

 

「(トリガーが来ないことを聞いたんだな……)」

 

「そう……使ってしまったのね……」

 

貴之は一真の身に何が起きているかを理解しているので、そこまでは動じない。それ以上にどうやって自分のイメージで突破するかを考えだしていた。

また、貴之らとは別の場所で見ていた瑞希は、先程使いたくないと告げていた彼が使ってしまったことに気づき、表情に影を落とす。

そして、弘人の『ツインドライブ』は一真が声に従って正解だったことを表すかの如く、二枚ともノートリガーだった。

これによってダメージが入らなくなったこともそうだが、もう一つ問題が起きた。

 

「貴之、『タイダル・アサルト』のパワーは29000だったな?」

 

「ああ。だから弘人は、このターンで決めることができなくなった……」

 

先程引き当てられた(ヒール)トリガーが決めてとなり、『タイダル・アサルト』の攻撃は『アルフレッド・アーリー』に届かなくなった。

仕方がないので、『タイダル・アサルト』の攻撃は『ブラスター・ブレード』を対象とし、それを受けた一真はノーガードにした。

やはり戦術の為にリアガードを守らず退却させてしまうのは罪悪感が沸くもので、一真は退却していく『ブラスター・ブレード』に詫びた。

これで弘人にこのターンでできることは無くなり、一真へとターンを回すことになった。

 

「ここは……『アルフレッド』があるなら『アルフレッド』か?」

 

「でも、『ブラスター・ブレード』は……場にいないよね?何か呼び出せる手段があるの?」

 

「あるぜ。『アルフレッド』のスキルが関係してるんだ」

 

スキルの内容はまだ聞いていないが、貴之が理由を説明してくれたことで何故『アルフレッド』を挙げたのかを燐子は理解した。

『ブラスター・ブレード』はスキルで様々な場所から『コール』ができるので、酷い時は過労と揶揄されるくらいの勢いで場に出てくることがある。

 

「『アルフレッド』に『ライド』!『フォース』はヴァンガードに与える!」

 

一真は予想通り『アルフレッド』に『ライド』する。

『ライド』するところからもそうだが、一真はこのターン、自身の見たイメージを忠実に再現する動きを意識する。

 

「『カウンターブラスト』して『アルフレッド』のスキル発動!山札から一枚『ブラスター・ブレード』を探してそれを『コール』し、そのターンの間パワーをプラス5000!我が呼びかけに答えよ!『ロイヤルパラディン』の光の剣!」

 

「あっ、これで『アルフレッド』のスキルでパワーを上げられるんだ……」

 

「そして、その上がったパワーで弘人に圧を掛けて行くんだ……」

 

また、『ブラスター・ブレード』が登場した時のスキルで『タイダル・アサルト』を退却させており、これでさらに攻撃が通りやすい状況となった。

弘人の手札は残り三枚なのだが、その内二枚が『シールドパワー』を持たない状態なので、防ぐことは不可能な状態となっていた。

 

「この戦いに終止符を打つ……!『うぃんがる』の『ブースト』、『アルフレッド』でヴァンガードにアタック!」

 

「受けるしかない……!ノーガード!」

 

「そうか……ならば『ツインドライブ』!」

 

『ツインドライブ』の一枚目はノートリガー。二枚目は(クリティカル)トリガーとなり、効果は全てヴァンガードに回された。

イメージ内で『アルフレッド』となった一真が『メイルストローム』となった弘人に斬撃を与える。

その後の『ダメージチェック』が二枚ともノートリガーだったので、これでこのファイトも決着となった。

決着が着いたので二人は「ありがとうございました」と挨拶をして、終わったことを進行に知らせる。

ちなみに、一真の目はファイトが終わると同時に元に戻っており、能力の発動が終了したことを意味していた。

 

「(使ってしまったか……。ここから先は嫌と言うのが難しいのかもしれないね……)」

 

進行に知らせている間、一真は自分の伸び具合を確認して、使用することも視野に入れるべきかもしれないと考える。

しかしながら、前々思っている通りこの能力は飛び抜けた優位性を誇っている為、それを何の躊躇いも無く使えるかと言われればそれも難しいところである。

この相反する二つの考えが、少しの間一真を悩ませることとなった。

 

『これより以後の試合に備えた会場の調整を行いますので、ファイターの皆さんは今のうちに休息を取って下さい』

 

昼食は別の部屋で取れる場所がある為、一度そこに移動することになる。

その為一旦この場所を離れた後にまた席を取ることになるのだが、既に帰っている人たちもいるので、場所を取るのは比較的楽になるのが幸いなところだった。

急がなくてもいいのが分かっているので、弘人を待ってから移動することが決まった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「……ゲット!(クリティカル)トリガー!効果は全てヴァンガードに!」

 

昼食等の休憩を済ませた後のファイトは、時間に余裕ができたので一ファイトずつ順番に行っていく形となった。

最初のファイトは貴之の番であり、結果は『オーバーロード』で攻撃した際の『ツインドライブ』で二枚一気に星《クリティカル》トリガーを引き当て、そのまま勝利を掴む結果になった。

会場内では貴之のファイトを間近で見るのが初めての人もいるので、「噂通り凄い」と言う関心を強めた声や、「相手も頑張った」と言う貴之の強さを知っている上で相手を見て評価する声もあった。

 

「さて、次は俺らか……」

 

「俺たちもあの二人みたいに思い切ってやろうぜ?」

 

竜馬の問いかけに、俊哉はそりゃもちろんと返す。

この二人はこの回で当たることが決まっていて、勝った方は貴之とお互いに勝ち続けた場合準決勝で当たることになっている。

二人がファイトするのが分かっていた段階で、貴之は「またあの対決が見れる……!」と喜んでいたが、この理由が分かったのはファイターたち全員と、友希那とリサの二人。グレーな反応を示したのが燐子とあこ。全く理解できなかったのは紗夜だった。

友希那とリサの二人が理解できた理由は、貴之と俊哉がその手合いの話しで盛り上がれる人だというのを知っているからだ。玲奈も全く持って同じ理由だった。

組み合わせが重要だと言うのは後で教えようと思いながら、全員で促して俊哉たちの準備が終わるのを待つのだった。




一真の能力はもうバレバレな感じはあります……(笑)。

この地方予選でのファイト展開は残り四回で、内二回が貴之のファイトするものになります。
それが終われば一度本編に戻ると言った形になります。もう少し時間が掛かってしまいますが、何卒よろしくお願いします。

次回は俊哉と竜馬のファイトとなります。

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