Roseliaシナリオ12話です。ラストでほんのちょっとだけ13話にも触れた感じですね。
アンケートのご協力ありがとうございます。
一番多かったのが『作者にお任せ』だったこと、細かいと簡潔は半々だったこと、長い短いでは長いが多かったこと。
この三点から重要だと感じた場面では細かく、それ以外の部分は簡潔に貴之が『ヌーベルバーグ』に慣れていくシーンを描いて行こうと思います。
「(今日も放課後は大丈夫か……)」
『ヌーベルバーグ』を使用した翌日の放課後。携帯に結衣からCordによるチャットが送られているのを貴之は確認した。
――なら、今日も頼もうかな?『レーヴ』は気軽に練習できる場所である為、笑みを浮かべながら『今日も頼むと』返信しておく。
今日は玲奈がバイト、大介は家の中で用事、俊哉は竜馬と別の趣味のことで盛り上がるべく商店街をぶらり歩きすることになっているので、今日は貴之一人での行動となる。
「貴之は向こう側だったな?」
「ああ。今日はここでお別れだな」
途中までは道が同じだったので、別れ道までは俊哉と共に歩いていた。
『レーヴ』は性質上ファイト重視の人には合わず、じっくり対策を立てたい人に向いている。その為、貴之のように『ヌーベルバーグ』をコッソリ練習したりする場合はこの上ないほどファイト向きにもなる。
また、結衣が復帰を考慮したことにより、近い内に『レーヴ』もある意味ではファイト向きに変わるかもしれない。
俊哉と軽い別れの挨拶を済ませてすぐ、貴之は店のドアを開けた。
「あら、貴之君の方が早かったみたいね」
「結衣は下校中ですか?」
自分が来店した際の反応を見て予想を付けた貴之が聞いてみると、瑞希からは肯定が帰って来た。
――
空いてる台の一つに移動し、ファーストヴァンガードを置いてデッキをシャッフルしていると、出入口のドアの開かれる音が聞こえる。
「ただいま~」
「二人ともお帰りなさい。貴之君は準備できてるわよ」
「もう?後江はこっちから近いね……」
貴之が振り向いて準備ができているというジェスチャーを示せば、笑顔で頷いた結衣が準備を始める。
結衣も瑠美も、平日は酷い汗を掻かない限りは制服のまま店を手伝うようにしている。ちなみに休日は私服である。
「二人とも羽丘に入ったんだな……」
「うん。『
また、結衣と瑠美は二人とも羽丘に編入しており、結衣は高等部の二年。瑠美は中等部の三年生である。
花女に行った場合は紗夜が先に知るので、何か連絡の一つでも飛んでいただろう。故に後で連絡送ろうかと貴之は考えた。
「じゃあ、今日もよろしく頼むぜ?」
「うん。よろしくね」
結衣もファイターとして活動してた頃の熱を着実に取り戻して来ており、ファイトしている際に笑っていることが増えていた。
また、『PSYクオリア』に関しても
一真より制限を強めた結衣だが、彼女自身が久しぶりの身として頼りすぎると後で痛い目を見ると感じた故だった。
結衣の仲間たちもそれを尊重し、大丈夫になったらまた話したいと言っていたようだ。
「「スタンドアップ!」」
互いに頷きあって「ファイトに移ろう」と意思表示してから、開始の宣言を始める。
「ザ!」
やはり、ファイトは楽しくやってこそだ。結衣が改めてそう思っているのが感じ取れて、貴之も自然と笑みが零れる。
「「ヴァンガード!」」
こうして今日も結衣が復帰に向けて、貴之が『ヌーベルバーグ』を使いこなす為のファイトが始まった。
* * *
「湊さん、これもう見た?」
放課後の教室で、友希那はクラスメイトに一つの電子画面を見せられる。
それはこの前自分たちがファーストライブを行った時のものだった。
「ああ……テスト期間直前に行ったライブの時のものね?内容は『
「結構時間かかったのかな?今までは一時的とかソロとか……そう言うのばっかりだったよね?」
クラスメイトの問いに頷くことで肯定を返しながら、その記事を改めて確認してみる。
今まで色んな所と組んではすぐに別れる等が多かったので、今度こそはそうならないようにしたいと心からそう思っている。
幸いにも今のチームは殆どのメンバーが互いに見合った技量があり、近しい人たちと関わりや共通の話題を持っているお陰で今までのどのチームよりも居心地が良く、思い入れがあることは自覚していた。
――けど、私のことを知ったらどう思うかしら?不安を感じていたのは気になった箇所が見つかったことによって遮られる。
「……どうしたの?」
「今のチームメンバーのリサ……ベースをやっている子なんだけど……」
「ん……?ああ、なるほど……」
彼女は友希那の言わんとしていることを理解し、それを肯定する。
「(今頃リサも……友達に言われているでしょうね)」
言われた後にそのことで抱え込む
* * *
「湊さんだけ来れませんでしたね……」
「予定があったとは言え、五人が揃わなかったのはちょっと寂しいですね」
羽丘でRoseliaの話しがあってから数十分後。友希那を省いたRoseliaの四人は羽沢珈琲店で練習の一休みとして、一度お茶会をしようという話しが出ていた。提案者はあこである。少し遅めの時間から始めることにしていたため、全員が着替えてから来ている。
リサはこう言ったことを好む傾向があり、燐子もそれなりの人数で話す機会を得られるからと参加。紗夜もチームの距離感を縮められるならいいだろうと考えて参加を決めた。
友希那だけは『予定が入ってしまっている』と断っていたが、リサは何をしているかに予想が付いていた。
「……そういえばさ、三人とも。雑誌見て……どう思った?」
「あっ、えっと……えーっと」
リサに問われて、あこは何かそれっぽい感想を探そうとする。
今回のお茶会は雑誌掲示を記念したものになっているため、この話題を避けて通ることはできないだろう。
「あ!みんな写真の写りかたカッコ良かった!友希那さんは『歌姫』って称号あるのも凄いと思った!」
「素敵な呼び方だよね……『歌姫』って」
「あれだけの歌唱力を持った湊さんには、実にぴったりな呼び方ですね」
「ちょっ……」
あこの言い出しに乗っかって二人も触れないようにと逸らす方向を取る。
紗夜が逸らそうと思えたのは自分と日菜の関係性が関わっていて、自分が思いっきり突き付け過ぎたことを反省してのものになる。
――一先ず無難に行けるだろうか?三人はそう思っていたものの、その思惑はすぐに打ち砕かれる。
「ねえもう、何かそうやって誤魔化されると余計凹むからさぁ~……はっきり言っていいよ、三人とも!」
リサ自身が確認したいことだったらしいので、あこは「じゃあ……言うけど……」と前置きを作る。
「リサ姉だけ、ギャルっぽくて浮いてる……」
「……うぅっ!やっぱり友達が言ってた通りかぁ~……」
リサだけ明らかに場違いの強い容姿をしていることが仇となっていた。
これをクラスの友人にも言われたリサは、ここでも言われたことで嫌でも自覚することになって頭を抱えて落ち込んだ様子を見せる。
「ああ……!で、でもでも……ほらっ!紗夜さんも演奏はあんななのにちょっと地味だし……なっ、なんて言うかさ……!」
「わ、私は地味……ですか」
「ご、ごめんなさ~いっ!悪気があったわけじゃないんですよぉ~っ!」
「あ、あこちゃん……一回落ち着こう?」
リサをフォローするつもりが、例えに上げた本人に二次災害が起きてしまいあこは慌てて弁明する。素でやっている人は言葉の一個一個が人に刺さりやすいらしく、それが見事に現れた形だった。
あこを窘めながら、燐子は彼女の言わんとしたことに気がついて代わりに話すことにする。
「あこちゃんが言いたいのは、統一感が無い……ってことなんです」
「あぁ……統一感かぁ~。Roseliaに何か足りないと思ってたんだよねぇ~」
「確かに……私たちは技術を最優先という方針で集まったチームですから、統一感は不足していますね」
性格を筆頭に、Roseliaのメンバーは様々な要素がバラけており、そこが統一感を損なわせていた。
――あっ、統一感って言ったら……リサはそのことに関して一つ思い出したことがある。
「燐子と友希那って、結構服の趣味似てない?二人ともモノトーンコーデだし……」
友希那と燐子は白と黒の二色を中心とした服装を好んでいることが共通していた。
それを言われて確かに……と三人は思った。
「あぁ~あこのこれは、ある意味では一緒かな……?」
「ん?あこのその格好は……」
モノトーン……とは言い難いものであり、ある意味ではという言葉が何を意図するか分からず引っ掛かる。
「実はあこのこの服、りんりんに作って貰ったんだ……」
――だから、りんりんが手に取ったと言う意味では一緒と言うか……。あこの話しを聞いたリサは「えっ!?」と驚きの声を上げる。
「それって凄いじゃん!全然手作りなんて思わなかったし……」
「ま、前まで家にいることが多かったので……その時に時々作ったりしてたんです」
絶賛されたことで照れる燐子だが、当時は引っ込み思案で変わる前だったので変われたことを改めて実感する。
この話しが出たことで、あこは「あっ、閃いちゃったかも」と声を上げる。
「Roseliaのライブ衣装……作ってみちゃうのはどうだろ?」
その提案にはなるほど……と全員が思った。確かに問題だった統一感の改善にも繋がるだろう。
故に反対意見が出ないまま全員が賛成となり、後は友希那に聞いて見ようとなった。
「大丈夫だった場合はサイズを測らないといけないので、場所があればいいんですけど……」
「次に全員で練習をする時、休憩時間中にしてしまうのがいいかもしれませんね」
ライブハウスの一室であれば周りをそこまで気にする必要は無いし、確実にできる。
確かに誰かの家に集まろうとして部屋の広さが足りない等の事態は避けられるので、良い提案だった。
流石にテスト期間の時とは訳が違うので、遠導家は除外となる。いくら何でも貴之の精神衛生面に悪い。
「じゃあ、アタシから友希那に伝えとくね♪」
サイズを測る場所等があっさり決まったことで、その後は雑談をしたのち家で自主練習という話になって、一回目のお茶会は解散となった。
彼女が帰ってくるタイミングで伝えればいいので、リサも一度家に戻って練習をすることにした。
* * *
「俺のターン、『スタンド』アンド『ドロー』……」
互いの三ターンが終了し、貴之の四ターン目が始まる。現在は貴之のダメージが5、結衣のダメージが4になる。
互いに残りの手札が三枚しか無いので、恐らくこのターンで勝負が決まるだろう。
ちなみに結衣は今回、貴之に頼まれていることから『PSYクオリア』を使用してファイトを行っている。
「貴之さん!もう準備できてますからね!」
「そうかい……なら遠慮なく、ライド・ザ・ヴァンガード!『ドラゴニック・ヌーベルバーグ』!」
店の端に椅子を用意してくれているのを見て、心の中で感謝しつつ『ヌーベルバーグ』に『ライド』する。
『フォース』をヴァンガードに設置するまではいいものの、ここで再び負担の痛みに襲われることになる。
「ぐぁ……!あぁぁああ……!」
「た、貴之……!」
頭を抑えた貴之を見た結衣が駆け寄ろうとしたので、「大丈夫だ」と手振りも使って答える。
逃げないという意志を汲み取ってもらえたのか、前回のように負担が軽くなり、一時的にファイトに戻れるようになる。
『メインフェイズ』で『ソウルブラスト』を発動し、結衣のリアガードを全て退却させる。
「行くぜ……『ガイアース』の『ブースト』、『ヌーベルバーグ』でヴァンガードにアタック!この時、『カウンターブラスト』をして『ガイアース』のスキル発動!」
「……!ノーガード」
前回と比べて手札を確保できなかったことが仇となり、結衣は防げるだけの『ガーディアン』を用意できなかった。
その後の『ドライブチェック』で貴之は
結衣も『ダメージチェック』の二枚目で
「あ……ありがとう……ございました……」
「ありがとうございました……って、大丈夫?」
前回は意地で笑みを浮かべながらだったが、今回はそれをしなかったことで台に両手を付きながらの挨拶となってしまった。
故に結衣もすぐに駆け寄って安否を確認してくれたので、貴之は「椅子に座るまでは意識を保てそう」と返す。
「肩、貸すね」
「わ、悪い……ちょっと頼むぜ」
しかしながら移動しようにもまともに歩けそうに無いので、結衣の進言に大人しく甘えることとする。
本人の見立て通り椅子に座るまではしっかりと意識を保っており、支えてもらいながらとは言え動けるようになったのは一歩前進と言えるだろう。
「すいません瑞希さん……ちょっと……時間……貰います……」
「ええ。今は誰もいないから、ゆっくり休んで」
流石に限界が来ていたので、せめてものの意地で瑞希に一言詫びを入れる。
そして貴之は彼女の返答を聞けぬまま気を失ってしまい、そこから1時間20分程寝ていることになった。
* * *
「――♪」
時間は貴之が気を失っている間になる。友希那はライブハウスの一室で自主練習をしていた。今日は時間が迫っているのでこれ以上続けることはできず、今歌っているのが最後になる。
本当ならば彼女もお茶会に参加しても良かったのだが、そんな気分にはなれなかった為、一人練習することを選んだ。
一曲を歌い終わった友希那は肩の力を抜いて、一息ついた。
「(少しは……お父さんのバンドに近づけたのかしら……?)」
自分がバンドを……引いては歌をやりたいと思ったきっかけは父親にあり、憧れであったが故にその人を意識する。
この他にも、前まで父親の無念を晴らしたいと言う独り歩きも同然な時代の名残りもあり、チームができて少しづつ変わり始めた今でも残ってしまっているのだ。
最近までは周りの人たちと一緒にいたから意識しないでいた時間が多かったものの、今は一人。その為意識するだけの余裕ができてしまったとも言えるだろう。
「こんなことを知ったら……皆は怒るのかしら?それとも……」
その先は怖くて言葉にできなかった。自分にそんな時期があり、大分薄れた今でも僅かに残っているのだ。
チームメンバーはコンテストを目指してひたむきに頑張っているのに、自分だけこの有様であることが気にする要因となっている。
――いつかは話さなければいけない。しかしその話す時がとても怖い……。この情を抱いていたことも、お茶会を遠慮することに拍車を掛けていた。
「(せめて、何時でも話せるくらいにはしておきたいわね……)」
そう思いながらもどうすればいいかわからないまま荷物を纏め終え、自分の使っているスタジオが開いたことを受付の女性に伝える。
「お疲れ友希那ちゃん。今日は個人練かな?」
――最近特に頑張ってるね。と柔らかな声で労いの言葉を掛けてくれる。一人でいる時は時折こうして話すことはあるのだが、色々考えていた今は気を紛らわせるからいつも以上にありがたかった。
「Roseliaの方はどう?」
「まだまだ理想のレベルには程遠いですが……
友希那の持つ理想の高さを知っていたとは言え、彼女から意外な言葉が出てきたので思わず目を丸くする。
「そっか……自分に合うチームを見つけられたんだね。ずっとやりたかったバンドだし……」
――その分嬉しさも増すよね。と言いかけたところでスーツ姿の男性が目に留まった。
彼女の目線に気づいた友希那がそちらを振り向いたことで、男性は友希那に時間をもらえるかを問う。
「失礼ですが、どなたでしょうか?」
目の前の人に覚えが無い。その為友希那は一度確認を取る。
すると彼は友希那に名刺を渡して来た。そこから彼が音楽業界の事務所に所属している人であることが判明する。
「率直に伝えますが……友希那さん、うちの事務所に所属しませんか?」
「事務所には興味ありません」
――私は自分の音楽で認められたいから……。そう言って立ち去ろうとしたところに、「待ってください!あなたは本物だ……!」と必死さある声に足を止められる。
言わせてから無言で立ち去ろうと考えたが、それは次の一言で封じられてしまう。
「私……いえ、私達なら……あなたの夢を叶えられる!一緒に、『FUTURE WORLD FES.』に出ましょう!」
「……!?」
まず一番に目指している内容が上げられたことで、流石に友希那も驚いた様子のまま反射的に振り向いた。
こうなってしまっては仕方がないので、話しだけは聞くことにして男性に続きを促す。
彼が言うには自分の二度目のライブの時に一度断られているが、諦めきれなくて調べたとのことだった。
ここまでは、「一方的に突き飛ばしていた時期かしら?」と思いながらまだ聞いていられた。問題はこの先である。
「バンドにこだわっていることも知っています。だから……」
――あなたの為のメンバーも
受付の彼女も「メジャーデビューができるのでは……」と言っているが、これを受け入れることは友希那にとって今までの根底を揺るがす程の大問題となる。
「(これを呑んだ場合はお父さんの夢だったフェスに、バンドで出られる……。でも、そんなことをしたら
――私はバンドを続けられても、
バンドとは自分一人だけでやるものでは無い。それを改めて実感した今だからこそ、彼の発言は許せないものがあった。
「どんなものかと思えば、時間の無駄だったようね……帰るわ」
どうにか呆れ返った様子を取り繕ってから回れ右をし、男性の反応を待たないままライブハウスを後にする。
ライブハウスを出て帰路に着いた際、友希那は今までのライブや歌に関する様々な記憶が脳裏に蘇っては流れていった。
父のバンドを見た時の感動。始めたばかりで試行錯誤していた時の楽しさと難しさ。全く別の分野とは言え貴之が同じく夢中になれるものを見つけ、それぞれの良さや楽しさを話している時の嬉しさ。父親の音楽を否定された時の悲しみや怒り。
そして……その焦がれる想いに任せたまま他人を傷つけた後悔と、Roseliaのメンバーでしか味わえない充実感や失ったものを取り戻していく懐かしさも――。全てがごちゃ混ぜになって、友希那を大いに悩ませる。
「(目を背け続けて来た罰だとでも言うの……?)」
――やめて、これ以上混乱させないで……!得体の知れない恐怖を感じて足を速める友希那は、知らぬ内に涙を流していた。
* * *
自宅の近くまで帰ってくる頃には、流石に涙は乾いていた友希那だが、得体の知れない不安は残ったままだった。
頭の整理が着かないので早い内に体を休めたいと思っていたが、家の前にリサがいたことに気づいて平静を保つことに務める。
「私を待っていたの?」
「うん。そろそろ戻って来るかなと思ってさ~」
恐らくは練習した後なのだろう。右手をチラ見で確認したところ、まだケアをしてない右手が見えていた。
どうやら今回のお茶会で一つの提案が出たらしく、それを話したいらしい。
「Roseliaで使う、ライブ用の衣装が欲しいって話しになったんだけど……大丈夫かな?」
――友希那さえ大丈夫なら、後は伝えるだけだからね?そう言われた友希那は判断する前に一応話しを聞いてみる。
事の発端は統一感が足りないと言う話しが上がったことから始まり、ここで友希那と燐子の服装の趣味が近いと言う話しが上がる。その後あこの今日着ていた服が燐子の手作りだと判明し、そこから衣装を作ろうと言う話になったようだ。ちなみに紗夜もほぼ即決に近い賛成だったらしい。
そうね……と顎に手を当てながら友希那は悩む素振りを見せる。先程のぐちゃぐちゃになってしまった思考もあって少しだけ間を置いたのだ。
同時に、せっかくその衣装を着るのならコンテストに間に合わせたいとも思っており、その場合はすぐに作りだした方がいいのは明白でもあった。
「私も大丈夫よ。ライブで動きに支障をきたないデザイン……それさえ守ってくれればね」
友希那の回答にリサは喜びの声を上げ、「後でみんなに伝えるね♪」と弾んだ声を出す。
その衣装は自分も着るので楽しみだと笑みを浮かべるものの、その表情はすぐに影を落とした。
「(何事もなく着ることはできるのかしら?私は今のこんな状態で袖を通すというのかしら……?)」
この先どうなるかが分からない友希那は不安でならなかった。
表情を誤魔化すことは難しく、後ろ向きの顔が覗いてしまう。
「……?友希那?」
「あっ、いえ……大丈夫よ。少し疲れているみたい」
「……そうなの?それなら早めに休んだ方がいいよ?」
何かあったとは思っても深く追及はしてこない。そんなリサの対応が、今はとてもありがたかった。
友希那はそれに甘えてそそくさと家の中に入っていく。
「(……何があったんだろ?)」
疲れているのは確かだが、あれは練習というよりも他のことで疲れていたような気がする。
どうやって聞こうか考えているところに、もう一つ足音が聞こえた。
「ん?リサか……何してたんだ?」
「衣装のことで、ちょっと友希那と話してたんだ~♪」
足音の主は貴之で、彼もどこか脱力していた様子をみせている。
「っていうか、貴之も大丈夫?なんか疲れてない?」
「連日ファイト漬けだからな……地方終わっても休んでねぇし」
実際の理由は違うが、全く休んでいないことは事実だった。
それを聞いたリサは焦りを感じる。友希那に続いて貴之もだったことが大きい。
幸いなのは、こちらは本当に体が疲れているだけで変に抱え込んでいないことだろう。
「流石にインターバル挟んだ方がいいんじゃない?と言うか、友希那とデートのセッティングでもしたら?」
「全国とコンテストが待っていなけりゃ考えたんだけどな……」
リサの提案は確かに魅力的ではあるが、それは落ち着いてからがいいだろうと考えている。
友希那は色々手伝ってもらったからこそ、空いてる時は手伝うと言ってくれていたのだが、流石に
――これは友希那の動き次第っぽいなぁ~……。貴之の諦め半分な目をみてリサはそう考えた。
「そろそろ俺も帰って休むわ……ちょっとヤバそうだ」
「う、うん……貴之もゆっくり休んでね」
リサは知らないが『ヌーベルバーグ』を使用した反動が響いてかなり疲労感が大きくなっているので、貴之としはさっさと休みに入りたい状態だった。
そんな様子に若干押されながらも、リサはどうにか気を遣った言葉を返す。
「(二人とも……何かあったのかな?)」
そんな事実を前に、リサは何があったか気になって仕方が無かった。
13話の変更点は後々に回すとして、今回は12話の変更点を書いていきます。
・最初にリサが浮いてる話しをするのはリサではなく友希那
・お茶会には紗夜も参加
・父親のバンドと自分たちを比べる際、Roseliaのメンバーがちらつく
・業界の人からの誘いはハッキリと否定的で、その後様々な記憶に悩まされる
こんなところでしょうか。
サブタイの『痛み』は貴之で、『恐怖』は友希那になります。これは当人が体験するものですね。
今回は重要な場面とは言い難い為、一度簡潔に書かせて貰いました。似たような状況であれば今回のように、重要な場面であれば普段のファイトのようになります。
次回はRoseliaシナリオ13話の続きになりますが、ここでも余裕があれば『ヌーベルバーグ』に慣れていく描写を混ぜ込み、その後14話に入る前に1、2回程入れられればと思います。