ヴァンガードzeroは無事にプレイできました。今現在は『かげろう』を使って遊んでいます。
「意外だね……湊さんもヴァンガードをやってるなんて」
「と言っても、まだ始めたばかりよ?」
友希那はバンドのことで有名であることを知っていた為、結衣は彼女の意外な一面を知ったと感じていた。
しかしながら、これも新曲作りのヒントを得る為がきっかけだと知った時はらしいなとも思えた。
また、その時は貴之に教わったことも聞き、それなら改めて説明する必要がない事を把握する。
「あなたが渡してくれたカードのことは覚えてるかしら?それを使ってデッキを組み替えてみたの……」
友希那の問いに貴之は肯定する。チームメンバーがまだ彼女と紗夜の二人だけだった時に、「役に立つから」と『シャドウパラディン』のカードを複数渡していたのだ。
単に『かげろう』を使っている貴之に取っては不要……と言うのでは無く、『シャドウパラディン』を使う友希那が持っている方がいいと言う判断によるものになる。
「なら、組み替えたデッキの初ファイトも兼ねて、一回やってみようか」
貴之の声に友希那は頷く。
組み替えたばかりのこちらに合わせてくれそうな雰囲気があるので少々申し訳なく思うが、その上で自分の目的を完遂できるだろうと言う信頼もあった。
「「スタンドアップ!」」
「ザ!」
「「ヴァンガード!」」
貴之が『ライド』したのは『アンドゥー』。友希那が『ライド』したのは『フルバウ』だった。
「湊さんは『シャドウパラディン』を使うんだ……」
「貴之君が選ぶのを手伝ってくれていたなら、本人も納得の上でしょうね」
貴之は相手の意志を尊重しながら『クラン』選びを手伝うので大抵の人は納得するし、友希那もその中に当てはまる。
以前とは違って先攻が欲しいを聞いてみたところ、友希那が頷いたので彼女の先攻から始まる。
「『ブラスター・ジャベリン』に『ライド』!一枚ドローして『ブラスター・ダガー』を『コール』!」
後列中央に黒い鎧を纏い、その鎧と同じ色をした短剣を持つ戦士『ブラスター・ダガー』が『コール』される。
貴之が渡したユニットたちの内の一つは『ブラスター・ダガー』で、友希那は早速それらを使用していると意思表示をしてくれた。
「『ガイアース』に『ライド』!一枚ドローして『ヌーベルロマン・ドラゴン』を『コール』!」
後列中央に四つの足を持った赤き龍の『ヌーベルロマン・ドラゴン』が『コール』された。
友希那は始めて見る関係上この後知ることになるのだが、これは『ヌーベルバーグ』をサポートするユニットの一つである。
「登場時、手札の『ドラゴニック・ヌーベルバーグ』を一枚公開して山札に戻すことでスキル発動!山札から『ドラゴニック・オーバーロード』を一枚まで探して公開し、手札に加えることができる!」
「もしかしてだけど……今山札に戻したユニットが……」
友希那の疑問には頷く形で肯定を返す。一真と相手するまでは手の内を公開するようなことは避けたいが、最悪の場合は発動せざるを得ないことも考えておく。
その場合は別の決め手になるユニットを用意する等何らかの手段が必要であることは理解しており、貴之はそれを考えながらファイトを継続する。
「じゃあ攻撃だ……『ヌーベルロマン』の『ブースト』、『ガイアース』でヴァンガードにアタック!」
「ノーガード」
何度も聞いた貴之の教えを思い返しながら、後々『カウンターブラスト』を使いたいと考えてノーガードを選択する。
この時の『ドライブチェック』で貴之は
友希那の『ダメージチェック』はノートリガーで、大きな変化が起こらないで1ダメージを貰った。
ここで貴之のターンが終わり、友希那にターンが回ってくる。
「『ライド』、『ブラスター・ダーク』!スキルでリアガード一体を退却させて貰うわ」
「となると『ヌーベルロマン』か……すまねぇな」
『ブラスター・ダーク』の退却スキルは受ける側……今回で言えば貴之が選ぶことになるのだが、リアガードには『ヌーベルロマン』しか存在しなかった。
この後『メインフェイズ』で後列左側に二体目の『ブラスター・ダガー』が、前列左側に黒い鎧を纏い、同じ色をしたレイピアを持つ女騎士の『ブラスター・レイピア』が『コール』される。
――今ならこれが使えるわね……。貴之の場にリアガードがいないことに気づいた友希那は、『ブラスター・ダーク』が持つもう一つのスキルの発動を決める。
「相手リアガードが一体もいない時、手札を一枚捨てることで『ブラスター・ダーク』のスキル発動。このターンの間『ブラスター・ダーク』のドライブを+1にするわ」
それでいいと言いたげに貴之の口元が緩む。このスキルは『ブラスター・ダーク』の強みの一つだった。
「グレード2だけど、『ツインドライブ』ができる……これは大きいね」
「ドライブで何が出るかなぁ……?」
自分側のリアガードが影響する代わりに確実な効果を得られる『ブラスター・ブレード』に対し、確実な効果とは言い難いが自分側のリアガードは気にしなくていい『ブラスター・ダーク』と言ったところだろう。
場合によっては、次のターンも合わせてヴァンガードだけで6ダメージ稼いで勝利……もあり得るが、何もトリガーを引けない可能性も考慮されるので博打性が強めと言った印象がある。
「私も攻撃させて貰うわね。『ブラスター・ダガー』で『ブースト』、『ブラスター・ダーク』でヴァンガードにアタック!」
「ノーガード。『ツインドライブ』をしな」
「ええ。『ツインドライブ』……ファーストチェック」
まず一枚目の『ドライブチェック』は
この時のパワーを『ブラスター・レイピア』に回してから、二枚目の『トリガーチェック』を行う。
この時の結果は
「パワーは『ブラスター・レイピア』、
「いいイメージだな……『ダメージチェック』」
イメージで『ブラスター・ダーク』となった友希那の剣による斬撃と突きを貰った貴之は、彼女を素直に称賛してからダメージチェックに入る。
一枚目はノートリガー。二枚目は
『ブースト』をしたアタック、または自身のアタックがヴァンガードにヒットした場合は『ブラスター・ダガー』のスキルが発動できるのだが、今回は対象にできる相手がいないので発動はできない。
「次……『ブラスター・ダガー』の『ブースト』、『ブラスター・レイピア』でヴァンガードにアタック!『ブラスター・レイピア』がヴァンガードにアタックした時、『ブラスター』と名の付くユニットが三枚以上ならこのバトル中はパワープラス5000!」
「そいつもノーガードだな」
パワーの上がり方に大きく差が付いていること、更にスキルによる増加値もあって防ぐのが割に合わなかった。
ただし、今回の『ダメージチェック』は
「あの子……思ったよりもやるわね」
「うん。始めたばかりだなんて、とても思えない」
「飲み込みが速いのかな……?」
色んなファイターを見てきた秋山姉妹からしても、友希那は初心者の中でも上手いと評することができた。
そんな評価が耳に入って来た友希那は、少しだけ嬉しくなる。
「貴之が教えてくれたから……おかげですぐできるようになったわ」
「照れること言ってくれるぜ……でもまあ、みんなそう言ってくれるから大丈夫なんだろうな」
他ならぬ友希那に言われたことから、いつもより嬉しさが増していた。
それによって口元の緩んだ状態で貴之はターンを始める。
「『ライド』!『バーサーク・ドラゴン』!スキルで『ブラスター・レイピア』を退却させて一枚ドロー……。『ラオピア』と『バー』を『コール』して、『バー』のスキルで『ブラスター・ダガー』を退却!さらに『ヌーベルクリティック・ドラゴン』を『コール』!」
「これは退却合戦になるのかな……?」
『ヌーベルロマン』が退却させられたお返しとばかりに二体のユニットが退却させられるのを見て、瑠美はそう考えた。
『バー』は後列中央に『コール』された為、この時退却させられた『ブラスター・ダガー』は後列中央のものになる。
また、『ラオピア』は後列左側に、深紅の体を持った翼竜の『ヌーベルクリティック』は前列左側に『コール』された。
「よし……『バー』の『ブースト』、『バーサーク・ドラゴン』でヴァンガードにアタック!」
「……ノーガード」
『バー』がスキルの影響でパワーが増えていること、次のターンで『カウンターブラスト』を使いたいと考えた為のノーガードになる。
貴之の『ドライブチェック』が
「もう一回……『ラオピア』の『ブースト』、『ヌーベルクリティック』でヴァンガードにアタック!」
「それもノーガードね。『ダメージチェック』……」
トリガー効果が回されてしまっているので、これも防ぐのは割に合わないと感じていた。
しかしながら『ダメージチェック』では
「攻撃がヴァンガードにヒットした時、『ヌーベルクリティック』のスキル発動!山札から一枚、『ヌーベルバーグ』を手札に加えることができる!」
「と言うことは……そのユニットを出すための補助ユニットなのね?」
友希那の問いに肯定しながら、『ヌーベルロマン』もそうであることを告げる。
最初は首を傾げる友希那だが、『ライド』を迅速に行えるようにと考えれば納得できた。
「この後二ターン『ツインドライブ』を耐えてようやくかぁ……」
「今回は後攻だから、ここからが大事だね」
先攻であるならグレード3のユニットによる『ツインドライブ』は一回だけ耐えればいいのだが、今回は二回耐える必要がある。
故に結衣たちも緊張した趣で見守るのだった。
「『ライド』!『ザ・ダーク・ディクテイター』!」
『フォース』はヴァンガードに設置され、『ディクテイター』のスキルによって『ブラスター・ダーク』が『コール』される。この時『ブラスター・ダーク』が呼ばれたのは前列右側になる。
この時それぞれのスキル効果によって、『クリティック』と『ラオピア』が退却させられることになる。
「さらに、『ブラスター・ジャベリン』と『漆黒の乙女 マーハ』を『コール』!」
前列左側に黒と青紫の二色を基調とした戦闘服を着る青髪の少女『マーハ』を、『ブラスター・ジャベリン』は後列右側に『コール』される。
今回呼ばれた二体のユニットは『カウンターブラスト』を使えないことにより、スキルの発動が叶わなかった。
「このまま攻撃……『ブラスター・ダガー』の『ブースト』、『マーハ』でヴァンガードにアタック!」
「悪いな『バー』……ノーガード。『ダメージチェック』……」
自分がこの行動をしたらどうなるかを理解しているため、貴之は先に一言詫びて『ダメージチェック』に入る。
今回の結果はノートリガーで、貴之のダメージは2になる。
「『ブラスター・ダガー』自身、または『ブースト』したアタックがヴァンガードにヒットした時、このユニットを『ソウル』に置くことでスキル発動!相手にリアガードを一体させて貰うわ」
リアガードには『バー』しかいない為、自然と退却対象になる。その為貴之は詫びていたのだ。
イメージ内では去り際の『ブラスター・ダガー』が投擲した短剣が『バー』に刺さり、それが爆発を起こすといったものだった。
「次は『ディクテイター』でヴァンガードにアタック!」
「まだ倒れないしな……ここはノーガードだ」
先程の
友希那の『ツインドライブ』は一枚目がノートリガー。二枚目は
貴之の『ダメージチェック』は一枚目が
「最後は『ブラスター・ジャベリン』の『ブースト』、『ブラスター・ダーク』でヴァンガードにアタック!」
「そいつは防ごうか……頼むぞ『ゲンジョウ』!」
パワー33000まで上がっていた攻撃は、パワー40000で防ぎきる。
流石に何も無く4ダメージを取れると思っていなかったので、友希那はそこまで動じないままターンを終える。
「多分何が来るかは読めてると思うが……」
「最初のターンを見てしまえばね」
貴之のターンが始まり、『スタンド』アンド『ドロー』をしたところで二人して苦笑する。
『ヌーベルロマン』のスキルを使っている為、何が来るかは丸わかりであった。
しかしながら、例えそうであったとしても貴之が動きを変えるつもりはない。バレているのは承知の上で呼べるほどそのユニットを信頼しているからだ。
「じゃあ行くぜ……ライド・ザ・ヴァンガード!『ドラゴニック・オーバーロード』!」
「(相変わらずの存在感……流石は貴之の分身ね)」
何度も見てきた『オーバーロード』に『ライド』する貴之だが、実際に対峙するとよりその存在を意識する。
『フォース』はヴァンガードに設置され、『メインフェイズ』で後列中央に『ラオピア』、前列右側に『ラーム』、そして後列右側に『ガイアース』が『コール』され、『オーバーロード』も『ソウルブラスト』を行う。
「攻撃と行くか……『オーバーロード』で『ブラスター・ダーク』にアタック!」
「っ……ここはノーガードにするわ」
この後の連続攻撃に備えて防ぐことも考えたが、相手の『トリガーチェック』次第でいたずらに手札の消費をすることになると考え、『ブラスター・ダーク』に心の中で詫びる。
イメージ内で『オーバーロード』の放つ業火によって『ブラスター・ダーク』が焼かれ、その際に行われた『ツインドライブ』の一枚目が
ここで貴之はいつものように『カウンターブラスト』で『オーバーロード』を『スタンド』させ、攻撃回数を稼ぐ。
「次は『ラオピア』の『ブースト』、『オーバーロード』でヴァンガードにアタック!」
「流石にそれは受けられないわね……『暗黒の盾 マクリール』で『完全ガード』!」
『ブースト』込みで56000までパワーが上がっていて、トリガー次第では決着となりかねない為、防ぐ行動に出る。
イメージ内で『オーバーロード』となった貴之の剣技を、ほぼ全身を覆う黒い鎧と、同じ色をした巨大な盾を両腕に一枚ずつ持った戦士の『マクリール』が真っ向から防ぎきって見せた。
『ドライブチェック』の結果はノートリガーで、この後の攻撃は大きな変化が起こらないことになる。
「最後……『ガイアース』の『ブースト』、『ラーム』でヴァンガードにアタック!」
「ノーガード。『ダメージチェック』……」
一番防ぎたい攻撃は防いだので、友希那は手札温存を選択する。
この時の『ダメージチェック』はノートリガーで、互いのダメージが4になったところで貴之のターンが終わる。
ここまでは普段通り何事もなくファイトをしていたが、次のターンからその流れが変わることになる。
「(これを使ってみましょう……)」
現段階のデッキなら、切り札として見れるユニットを手にとって友希那は決心する。
そしてこのユニットは『味方を犠牲にする』ことで力を発揮しやすい傾向にある、『シャドウパラディン』の代表格の一体とも言える存在だった。
「『ライド』!『ファントム・ブラスター・ドラゴン』!」
『ディクテイター』となっていた友希那を、漆黒の霧が竜巻となって包み込む。
竜巻が消えるとそこには所々碧い線のある黒い躰に、それと同じ色合いをした片手で振るう為の剣を柄同士で連結させたような槍を持った巨竜『ファントム・ブラスター・ドラゴン』となっていた。
『ファントム・ブラスター』に『ライド』することで獲得した『フォース』は、再びヴァンガードに設置される。
「『カウンターブラスト』と、リアガードを三枚退却させることで『ファントム・ブラスター・ドラゴン』のスキルを発動……」
このスキルを発動したことにより、イメージ内で『ファントム・ブラスター』となった友希那は突如として自分のリアガードたちのいる方へ体の向きを変える。
先程言っていた流れが変わると言うのは、次の行動が示していた。
「……!?」
その『ファントム・ブラスター』となった友希那は、自身の持っている槍でリアガードの三体に
攻撃を受けたリアガードの三体は、先導者による突然の攻撃を受けて混乱と恐怖、そして絶望が混ざり込んだ顔を見せながら黒い霧となる。
霧は『ファントム・ブラスター』の槍の刃に集まっていき、これを見た友希那は動揺することになる。
「……大丈夫か?」
「え、ええ……大丈夫よ」
何があったかに察しが付いてる貴之は友希那に一声掛け、安否確認を行う。
幸いにも友希那は即時に返事ができる為、問題は無かった。
今回のは仲間を犠牲にするスキルを始めて使った際に、仲間想いの人や勝利の為に味方を傷つける行為を嫌う人が陥る可能性がある心理的なショックである。
「その手合いのスキルを使ったとしても、ファイター次第ではユニットたちが後を託すような姿勢を見せることがある……」
――もし今後も使っていくのなら、ユニットが自分にそうできるような関係を目指して行こう。貴之が掛けてくれた言葉に、友希那は頷く。
「久しぶりに見たわね……あの様子」
「ああいった手合いのスキルを使うのは始めてだったんだ……」
「(湊さんはきっと、優しい人なんだね……)」
ちなみに秋山姉妹の場合、この心理的ショックを経験したことがあるのは結衣だった。
瑠美は深く考えすぎないようにして、瑞希は相手にそのユニットや『クラン』の傾向を紹介することを優先する形で回避に成功している為、経験したことは無い。
また、貴之も始めて『ファントム・ブラスター』を軸とした『シャドウパラディン』のデッキを使った際に経験している。
結衣が表する通り友希那の優しさもそうだが、今回はそのスキルによって退却させられたユニットの表情を見て思ったことがあったことが大きい。
「(私がもし……あの話しを受け入れていたら……)」
――みんながあんな表情をしていたのかもしれない。それが友希那の動揺を起こしやすくしていた。
しかしながらこれ以上考えているとファイトを継続でき無さそうなので、一度その考えを置いておくことにする。
「これによって相手はリアガードを三体選んで退却させて貰い、『ファントム・ブラスター・ドラゴン』のパワーはプラス15000。
「また俺一人に戻るか……」
スキルによる効力の読み上げが合図となり、ファイトに戻る。
貴之のリアガードは三体しかいない為、必然的にそれらを退却させることとなる。
「相手のダメージが4以下でリアガードがいない時、グレード3を『ソウルブラスト』することでもう一つのスキルを発動!相手ヴァンガードに1ダメージを与えるわ!」
「そう来るなら仕方ない。『ダメージチェック』……」
――何かを抱えている感じだったな……後で聞けるのか?考えながら貴之は『ダメージチェック』を行う。
結果はノートリガーで、あと一回攻撃を受けたら終わりと言う状況になった。
攻撃へ入る前に、友希那は前列右側に『ブラスター・ダーク』を『コール』する。
「これは通らないでしょうけど……『ファントム・ブラスター・ドラゴン』でヴァンガードにアタック!」
「貰うわけにはいかないからな……『バリィ』で『完全ガード』!」
ダメージが5、『トリガーチェック』も控えている状況でパワー48000の攻撃を受けるつもりなど無い。
攻撃を宣言した友希那もこれは防がれると思っていたので、特に慌てることは無く『ツインドライブ』を始める。
その結果は一枚目がノートリガー。二枚目は
「この状況で『完全ガード』は『ヌーベルバーグ』の攻撃を一回だけ防げるから大きいね……」
「さて……どうするのかしら?」
一応、『ヌーベルバーグ』を使用すると決めた後も貴之のデッキには『ウォーターフォウル』が入っている。
この為引き当てたならそちらで決めてしまうのも一つの手になっているが、それでは今回の『ヌーベルバーグ』に慣れると言う目的から外れることになる。
どちらを選ぶのか、はたまた『ヌーベルバーグ』を使用した手段しか選べないのか。それは貴之のターンになるまでは分からない。
「『ブラスター・ダーク』でヴァンガードにアタック!」
「頼んだ、『ヌーベルロマン・ドラゴン』!」
パワー20000となっていた『ブラスター・ダーク』の攻撃は、合計パワー23000で防ぎきる。
ここで友希那のターンは終了し、貴之のターンが……『ヌーベルバーグ』を使用する時間が始まった。
「俺のターン、『スタンド』アンド『ドロー』……」
「湊さん……貴之のこと、止めないであげて」
元より手伝うつもりで来ていたものの、結衣が念押しするように言ってきたので友希那は戸惑いながらも頷く。
――きっと心配させることになる。それが分かっている貴之は心の中で彼女に詫びる。
「ライド・ザ・ヴァンガード!『ドラゴニック・ヌーベルバーグ』!」
「(秋山さんがああ言ったのは、前に教えてくれたことが……?)」
貴之が『ライドフェイズ』を行っている最中、友希那は一つの可能性に辿り着く。
そしてそれは、ものの見事に的中することとなる。
「ぐぅ……!あぁあ……っ!」
「た、貴之……!?」
貴之が片手で頭を抑えながら苦悶の声を上げたのだから、友希那が心配するのは無理もない。
これ以上は心配させまいと、貴之も「大丈夫」だと返してファイトに意識を回す。
――もうしばらく時間はかかりそうだな……。自分の現状に少々気が遠くなりながらもやめようとは思わない。
「やるって決めたなら、最後まで立ち向かうだけだ……『イマジナリーギフト』、『フォース』!こいつは前列右側のリアガードサークルに設置する!」
ただそう言っているだけではない。少なくとも全国大会が終わるまで、貴之はグレード4に『ライド』した際に襲い掛かる負担へ立ち向かう決意を固めていた。
その志のままファイトを続行し、『フォース』の置かれた前列右側に『オーバーロード』を『コール』してから、『ヌーベルバーグ』の『ソウルブラスト』を発動する。
リアガードにいる『ブラスター・ダーク』によって防がれたら不味いと言うのもあるが、一番は
「まだ長持ちできねぇから、早いところやらせて貰うぜ……『ドラゴニック・ヌーベルバーグ』でヴァンガードにアタック!」
「この状況で貰いたくは無いわね……『マクリール』で『完全ガード』!」
そして貴之の『ドライブチェック』は案の定
「頼んだぜ……『
「手札が足りない……ノーガードね」
――その気持ちと勇気……少しだけ欲しいと思うのは我が儘なのかしら?イメージ内で『オーバーロード』がこちらに迫ってきている最中で、『ファントム・ブラスター』になった友希那は『ヌーベルバーグ』となっている貴之へと、無意識に空いている左手を伸ばしていた。
無防備極まりない状態で『オーバーロード』の攻撃を受け、『ダメージチェック』を行うことになる。
一枚目はノートリガー、二枚目は
「ふぅ……ありがとうございました」
「ありがとうございました」
友希那に心配させまいと、貴之は意地を張って笑みを浮かべる。
終わりの挨拶が来たので友希那もそれを返すものの、やはり貴之が大丈夫かどうかが気になって仕方がない。
「その……何ともないの?」
「何ともない……と言いたかったが、割と一杯一杯だ」
ここに秋山姉妹がいなかったら無理にでも取り繕って倒れる時間が増えていた可能性は高し、そうすれば余計に怒られただろう。
自分に制止の余地を与えてくれた三人に内心で感謝しつつ、貴之は正直に吐露することを選ぶ。
挨拶をした時にあった大丈夫そうな笑みは、早くも疲れを感じさせる笑みに変わっていたのだ。
「でも、最初の時と比べて大分マシになって来たわね?」
「そうだね~。最初の時なんかファイトが終わった後に……」
「る、瑠美……!その先はダメ!」
友希那の持っている情に察しが付いている結衣は慌てて瑠美を制止する。
どうして結衣が慌てたのかが分からないので頭に疑問符が浮かぶものの、止めとくべきだと考えた瑠美は頷いた。
今回は貴之が疲労しているからよかったものの、もし大丈夫な状態であったら表情が変わって友希那にバレていただろう。
「準備できてるから……貴之君はゆっくり休んで?」
「そうさせてもらいます……。悪い友希那、ちょっと休むわ」
グレード4を使用した負担なのだろうか?そう思いながら「また後でね」と貴之に言葉を返す。
その声を聞いて安心した貴之は普段より少々遅くとも
リラックスしたように静かな寝息を立てる貴之を見て、友希那は心臓の鼓動が早まるのを感じる。
「(きっと、また頼ってしまうことになるけど……)」
――あなたなら……聞いてくれるかしら?貴之が大丈夫であれば話してみようと、友希那は決めるのだった。
* * *
「……ん……んん?」
「貴之……!目を覚ましたのね」
貴之が目を覚ますと、目の前には友希那の顔があった。
不安だったような表情をしているのが見て取れたので、「心配かけたな」と貴之は一言詫びる。
「どれくらい寝てました?」
「50分よ……大分短縮されたわね」
自分でも予想以上に短いと貴之は感じていた。体が寝たり倒れたりしないようにと意識しているのか、負担に慣れ始めたことによって耐性が増したのか。はたまた
――この調子なら、全国大会までには間に合うな……。以前よりかなり早く復帰できたことに貴之は安堵して立ち上がり、己の状態を確認してみる。
「(信じられねぇ……ホントに『ヌーベルバーグ』を使った後なのか?)」
復帰後の状態としては、何も問題が無かった。これに対して、貴之が立てられる推測は先日のようなことを避ける為だろうと言うものだった。
一先ずこれなら姉に勘繰られる確率は減る為、練習がやりやすくなるだろう。それが分かっただけでも朗報である。
何も問題無いと告げたことで四人には驚かれるものの、最後は大丈夫なら何よりと言う安堵が勝ったようだ。
「それじゃあ、私たちはそろそろ……」
「ええ。できればまた来てね」
「友希那、明日また学校でね」
友希那と秋山姉妹のそれぞれに対する呼び方のスタンスだが、貴之の場合と殆ど変わらないものになった。
最後に挨拶を済ませ、帰路に着いて暫くすると友希那の表情が曇りだす。
「何というかその……ちゃんと言っておけば良かったな」
「あっ、いえ……それは大丈夫なの。ただ……」
「……何かあったのか?」
その表情が披露で寝ていた自分のせいだと思っていた貴之は詫びるものの、本当の理由は別にあった。
自分の悩みを伝えてしまっていいのかどうかに迷って友希那の表情は曇り、口を止めている。
「悩みがあるなら……俺でよければ聞くよ」
「貴之……」
いざ話そうと思って迷っていたところに大丈夫と言われれば、その言葉に甘えたくなる。
友希那が貴之なら大丈夫かもしれないと考えていた理由として、バンドのメンバーではなく、身近にいる人であることが大きい。
リサはバンドメンバーである為とても話しづらい。知り合いにいるヴァンガードファイターはそこまで近くない人が半数以上で、近いと言える中でも特にそうだと言えるのは幼馴染みの貴之だった。
「実はこの前……音楽業界にいる人から、スカウトが来たの……」
数瞬考えた後、友希那は貴之に話す決心をした。
そのスカウトの対象は自分一人であり、他のメンバーは用意されていること。一度はあしらったものの電話が来て、数日後にまた話すことが決まっていてそれまでに答えを出さねばならない状況にあることを伝えた。
確かにそれは大きな悩みであることを理解すると同時に、一つの推測が生まれる。
「と言うことは今日、『ファントムブラスター・ドラゴン』を使った時に……」
「ええ……私がその話しを受け入れたら、みんながあのような表情をして……周りには誰もいなくなるような気がしたの……」
友希那の話しを聞いて合点が言った。元が優しい子であるから十分に可能性はあったものの、それ以外にも大きな理由があると感じていたからだ。
スカウトの話しが来てから悩み、抱え込んでいながらも平静さを保つことができたのは周りの人に余計な心配をさせたくないという一心によるものである。
吐き出してはいけない。伝えることができない。そんな状態に悩まされていたところにそれをできる人が現れたことで、ようやく一度吐き出すことを許される時間が訪れていた。
その安堵から歩みの速度が遅くなって途中で立ち止まり、それに合わせて貴之の歩みも止まる。
心配そうにする貴之から自分の名前を呼ばれた友希那は、目尻から涙がこぼれ落ちていた。
「……友希那!?」
「ダメなの……っ……そんな道を選ばないとしても……分からなくて……っ……もし選んでしまったらと思うと……それが怖くて……」
そのまま自分の胸に飛び込んできた友希那を慌てて抱き留めた貴之は、復帰が早かったことをこれ以上なくありがたいと思った。前回までだったら支えられる余裕は残っていなかっただろう。
確かにスカウトの話しはそう簡単に話すこともできないし、あり得たかもしれない可能性の中で最悪であろうものを見てしまえば、一学生に平静を保ち続けろと言うのは無理がある。
最後に選ぶのが彼女自身である為、自分がどう思っているかを伝えるのではなく、貴之はこういう時はどうするかと言う方向で選び方の道を指し示すことにした。
「いきなり矛盾してること言いやがったと思うかもしれねぇけど……時間が無いからこそ焦らないで、落ち着いて考えることが大切だ」
「時間が無いのに……落ち着いて……?」
「ああ。焦ったままだと考えを纏められないからな……」
貴之の教えを聞いた友希那は、今まで自分が気持ちの整理等をせず纏まらない思考で考えていたことに気付く。
そうして一度落ち着くことのできた友希那は、以前貴之が言ってくれた「自分がどうしたいかの指標は色んな所に転がっている」と言う言葉を思い出した。
同時にその指標を見逃しそうになっていたことに気づいた友希那は詫びるが、貴之は思い出してくれただけで十分だと言ってくれた。
――それから……と前置きをしながら、貴之が優しく抱きしめて来たので、友希那は素っ頓狂な声を上げる。
「教えてくれてありがとうな……。難しいところなのによく話してくれたよ」
「……お礼を言いたいのはこっちの方よ」
――ありがとう。最後まで聞いてくれて……。安堵によって涙が溢れ出して来た友希那は、そのまま貴之の胸に顔を埋める。
貴之はそれを突き放すことなど無く、抱きしめ直すことで大丈夫だと伝えてやる。
「(心配掛けてごめんなさい……。答えはしっかりと見つけてくるわ)」
「(道を指し示すことはやった……。俺はしっかりと答えを出すって信じてるからな)」
友希那の涙が止まり、落ち着くまでは暫く今の状態を維持することになる。
その間に心の中で友希那は誓い、貴之は信頼を送るのだった。
友希那のデッキはトライアルデッキ『雀ヶ森レン』をブースターパック『最強!チームAL4』で編集したものになります。
『ブラスター・ダーク』の使えなかったスキルの使用に成功し、『ファントムブラスター・ドラゴン』も出せたので一安心です。
今回のファイトをフルで行う理由になった友希那の迷いがあり、それが最後の会話に繋がりました。ちょっと強引かもしれませんが……(汗)。
ヴァンガードzeroを遊んだ感想として、スマホに合わせて簡易的になって遊びやすいのはいいところですね。
ただ、『完全ガード』が自動発動なのはちょっとキツかったなと思いました。「これどう見ても要らないじゃん」って状況で発動してしまうこともありましたので……。
次回に一回だけオリジナルの話しを挟んで、その後Roseliaシナリオ14話に入ることになると思います。