話数としては3~5話分を抜粋してやっていく予定です。
まず初めにプロローグ部分を書いていきます。
サブタイトルのイフ○○はヴァンガードifのサブタイトルまんまです。
これも一応番外編と言う扱いにしておきますが、別章の方がいいと言う方がいれば別章として分けておきます。
ガルパピコはまりなさんのモデリングがあれなのにツッコミなしってマジですか……?(汗)あそこはギャグ補正なんでしょうかね?モデリングのXYZ軸を弄るバー見えてんのに……。
ヴァンガードifはまさかの『じゃまー』が三人もいる事にビックリしたのはそうですし、遂に新シリーズで動くマジェスティが出て嬉しかったのもありますが……ネタの方向が吹っ切れてますね……(笑)。神崎がかましたゆるキャラ──ゴニャイオンの元ネタを知っている私と同年代の人は、ほぼスパロボ経験者で確定です。
「あっという間だったな……」
「あなたの転校が決まって、そこから半年……とても短く感じたわ」
住宅地で黒い癖っ毛の髪を持つ少年と、水色の髪を持った少女は今までのことを思い出していた。少年の方の父親の仕事ので、今回は少年の方がここを離れなければならなくなったのである。
この二人は同年代の幼馴染みであり、家も向かい合っていたことから家族ぐるみでの付き合いもあった。
二人の共通点としては
悩みとは自分が妹にとって、胸を張って誇れる兄または姉であるのか?と言うものであり、これを二人で解消したことがある。
「でも、あなたの場合はそうでもない気はするけどね……」
「真面目なそっちの方が問題無かった気がするけどな……。俺なんて、ヴァンガードで遊んでたんだし」
少女は妹との能力差。少年は私生活と言う悩みを持っていたが、結局妹からは双方の形で好まれていた。
夢中で好きなことをやって笑っている少年の姿が、何事も真剣に取り組むだけでなく周りの気遣いができる少女の姿が、それぞれ好まれていることが判明し、二人して安心したことは記憶に新しい。
また、これによって少女の方は自身の中に潜んでいた物が洗い流されており、「何があっても自分は自分である」と言う考えを確立させた。
なお、ヴァンガードとは近年リリースが始まった、今最も遊ばれているカードゲームである。
「いけない……私が決めたこと、まだ伝えていなかったわ」
「ん?何か見つかったのか?」
少女は友人たちとヴァンガードを遊び、とても楽しそうに笑っている少年の姿を見て心を惹かれている。
過程としては思い切ってやりたいことを見つけたと、そう言って見せて貰ったのがヴァンガードであり、それまでは少し大人しめで心優しい普通の少年だった彼が喜んでいたので気になった。
そして、彼が自分の部屋で友人と遊んでいる所を目撃し、その時に心から笑っている姿を見たのが少女の恋の始まりであった。
また、それを気にヴァンガードの話しを時々聞かせて貰い、そこから自分もそこまで夢中になってできるものを探す決意をした。
なお、少年の方は少女が話しを聞きたいと言ってくれた時に彼女の方ことが気になり、共に悩みを解決した時に心を惹かれている。彼女のおかげで更に自身が持てたのが大きい。
「私、ギターをやってみることにしたの」
「ギターか……バンドとかするのか?」
少年の問いに少女は頷く。父の誘いに乗ってとあるバンドのライブを見に行かせてもらったのだが、その時のギターを弾いていた人を見て自分もやってみたいと思ったのだ。
また、ギターを始めるに当たって、少女は少年に一つの頼みがあった。
「もし帰って来たら、私のギター……聞いてくれる?」
「もちろん。なら俺も、もっと強くなって帰ってくるよ」
少年もまた、ヴァンガードで全国大会の
ただそれでも楽しさを一切捨てない姿は関心を抱き、少女もギターをする時はそうでありたいと思った。
そうして話していると、そろそろ時間が来てしまったのか、少年の母親が彼を呼んだ。
「あっ、そうだ……俺が戻ってくる意思表示としてこれを預かってほしいんだ」
「……ええ。大切にするから、必ず受け取りに来てね」
少年は少女にヴァンガードのカードの一枚を渡す。それを覚えておけば少年は戻ろうとする気持ちを忘れないと思えるからだ。
少女も、彼が自分を信じてくれているのを感じて温かさを感じ、頼みに応じた。
互いに頼みを済ませたところで、今度こそ別れの時間となる。
「じゃあまた会おうぜ■■……今度会えたらギターを聞かせてくれ」
「ええ■■も、ヴァンガードを頑張って」
また会うことを約束し、二人は暫しの別れをした。
これが今世の別れでは無い。また会えるかも知れない以上信じて進み続けるだけである。
少女は少年の姿を見送りながら、少年は前を向きながら、決意を固めるのであった。
* * *
「お母さん、次の駅だよね?」
「ええ。朝早くから疲れたでしょう?」
二人が別れてから五年後──。黒い髪をおろしている女性と、肩から少し下まで伸ばしてポニーテールにしている少女、そして二人の隣で寝ている黒い癖っ毛を持つ少年の三人は電車に揺られていた。
この三人は家族であり女性が母、少女が妹、少年は兄である。父は今回、単身赴任で別の場所へ行くためここにはいない。
その際に再び家を開けることとなり、その際に父親側の計らいでこの三人は以前引っ越しした時と同じ家に出戻りすることになった。
と言うのも、少年は元よりこちらへ戻ることを選び、少女も戻ることを決めたので、女性が同伴する形になったのである。
「それじゃあ
「うん。兄さん起きて。次の駅で降りるよ」
「ん……んん?」
母に促された少女──。
起こされた貴之は一度大仰な欠伸をしてから目を擦り、眠気を取り払ってから自分の妹に礼を言う。
なお、母の名は遠導
貴之だけだった場合は彼も一人暮らしの練習となるので、あまり問題にはならないが、今回は無視できないのでこうなった。
「あっちが商店街だったっけ……何か変わってるのか?」
「五年もしたら変わっているんじゃないかな?後で買い物の際に回ってみるのもいいね」
「その前に、まずは家で荷物の整理をするわよ?」
駅に降りてすぐ、見覚えのあるものが見えたが、明未の促しに頷いて一先ず家に向かうことになる。
「(そう言えば、あいつは元気にしてるかな?)」
歩きながら、貴之は意中の相手のことを考えていた。
自身の後を追って別の道を進み始めた彼女に、戻ってきたらギターを聴いてほしいと頼まれているので、どうなったかが気になっている。自分の進もうと選んだ道の話しを聞いてくる姿勢に興味を惹かれたのが、意識の始まりである。
自分たちには妹がいて、互いに妹絡みで悩んでいた所を共に解決したことで、好きになっていた。
また、それ以外にも別れ際に自分が打ち込んでいるヴァンガードのカードを一枚預けているので、まだ保管してくれているかも気掛かりであった。
「(まあ、それは後で探しに行ってもいいだろ。戻って来たんだからな……)」
自身の蒼い瞳に映る晴れ渡る空を見ながら、貴之は笑みを浮かべていた。
* * *
「さて、やっていくわよ」
家に辿り着くと早速、明未の主導の元荷卸しが始まった。
重めな物は貴之が中心に、細かいものは他の二人が中心にやっていく形となる。
「……あら?これ思ったより重いのね」
「じゃあ、それは俺がやるよ」
「お母さん、これはどうしよう?」
「それはこの棚の二段目に置きましょう」
分担がしっかりしているおかげで事は順調に進んでおり、昼過ぎには食器の方の整理くらいになっていた。
食器の方に関してはまだ新聞紙に包んだ状態のまま取り出しただけなので、これから一度包んでいた新聞紙を取り外し、それらを再び整理すると言う作業が残っている。
「流石にお腹空いてきたね……」
「一度お昼にしましょうか……と言っても、今は食材が無いから何か買って来る必要があるけど」
「そうだな……あっ、近くにコンビニあるな……俺行ってこようか?」
それならと貴之にお願いし、お金は後払いと言うことで買ってくることを頼んだ。
一先ず買いに行くべく玄関の外に出た貴之は、向かい側の家にある名字の札が目に入る。
「(
この名字は、自分たちがここを離れる前に家族ぐるみで付き合いがあった人たちと同じものである。
自分が離れた間にいなくなった可能性は低そうであり、そう考えると安心できた。
「後で、挨拶はしに行かねぇとな」
「挨拶ってどこに?」
貴之が呟いた声を拾った、高めな少女の声が聞こえたのでそちらに振り向く。
そこにはショートヘアーにした水色の髪と、若葉色の瞳を持つ見たところ活発そうな雰囲気のある少女がそこにいた。
「こっちの家の人?」
「うん。そっちは、そこの家に来た人だよね?」
少女の問いに肯定し、貴之は自分が引っ越してきたことを認める。
また、彼女に名を問われたので自ら名乗ることを決めた。
「俺は貴之……遠導貴之だ。これからよろしく」
「貴之……って、えぇっ!?タカ君なの!?」
その呼び方はとても久しぶりだと貴之は感じた。
また、この呼び方で目の前の少女が双子のどちらかを気づき、確認の為に聞いてみる。
「覚えてるのか……んで、その呼び方ってことは、君は
「うん♪あたしは氷川日菜!久しぶりだね♪」
目の前の少女、氷川日菜はウインクと共に喜びを表した。
* * *
「助かったよ日菜。おかげで早く戻って来れた」
「なんか見覚えあるなぁ~……って思ったらタカ君だったし、後から聞いたら小百合ちゃんも明未さんもいっしょだしでビックリだよ……。そう言えば、
「旦那は今回単身赴任よ。いろんな人に頼られるから、あまり休めないのを嘆いていたわね……」
日菜と再会してからおよそ30分後。家に戻って昼食を取りながら、遠導家三人と日菜は話し合っていた。なお、日菜は昼を取った後なので飲み物だけ買ってきている。
孝一とは遠導家の父親の名であり、今回も彼の仕事が関係している。
「日菜さん、またよろしくお願いしますね」
「うん♪小百合ちゃんもよろしくねっ!」
こうしてまた久しぶりに会えたのは嬉しいことで、妹同士での絡みが多かった小百合と日菜は喜び合った。
遠導家と氷川家の子供たちは小百合と日菜、貴之ともう一人の少女と言う組み合わせが多く、これはその一環によるものである。
「タカ君はどこ辺りまで……は、まだいいや。おねーちゃんと一緒の時に聞かせてもらおう」
「先に聞いたら拗ねちゃうかも……ってことですか?」
「まあ……そこまで言うなら、後でにしようか」
気を遣ったのなら、それでもいいやと貴之は許容することにした。
恐らくは、その少女と自分に存分話し合ってほしいのだろう。そうして日菜が他人に気を遣えるようになったのも、自分と少女が別れた後だと思える。
試しに聞いてみたら実際にそうだったらしく、どうやら自分と姉を中心に違いの理解と、その姉を見て気を遣い方を覚えたそうだ。
その結果、違うことの良さも理解できたようで、また新しい楽しさを見つけられたようで、話しを聞いて一安心である。
また、ヴァンガードで上を目指す貴之、ギターの腕前を夢中に磨いている姉の二人を見て、自分も何かそういうものを見つけられたらいいなと考えている。
「うーん……私も何か探した方がいいのかな?そういうの」
「そうね……無理に……とは言わないけど、そう言うのがあるとこの先が楽しくなるわよ」
明未自身はあまりそう言うものを見つけられなかったので、親としてはお勧めしたいところであった。
その気持ちが理解できた小百合も素直に頷き、ちょっとずつ探してみることにする。
「そう言えば、この後はどうするんですか?手伝えそうなら手伝いますよ」
「本当?それならこの後食材の買い出しに行くから、日菜ちゃんも手伝ってくれると嬉しいな」
この近くだと商店街に行くこととなり、おいそれと車が出せないのでどうしても徒歩になる。
その際に人手が足りなくなる可能性が懸念されたので、手伝ってもらうことにした。
「あっ、そうだ。おねーちゃんに連絡入れておかなきゃ……タカ君、おねーちゃんが練習終わったら会いたいでしょ?」
「そりゃもちろん。頼めるか?」
日菜が自分の姉に連絡を入れてから、四人で買い出しに向かうことになった。
* * *
「(もう五年も経つのよね……時間の流れは速いわね)」
とあるライブハウスの練習スタジオにて、肩より下まで伸ばした水色の髪と、若葉色の瞳を持った
あの日以来ギターを始めて練習を重ね、二年前から様々なチームのサポートギターとしてバンドに参加させて貰うようになっている。練習のみならず、ライブでも今回はここが上手く行った、逆にここはダメだったをしっかりと把握して更に練習を重ねていき今に至る。
自分がどこまで上手くなったかを正確には把握し切れていないが、年の近い人たちから自分の名を知っていると言う声を聞くようになったので、ライブを重ねて上達した結果は少なからずあることは理解しているが、改めて自覚するのはあの少年に評価を貰ってからなのだろうとも思っていた。
「
「ありがとうございます。ですが、これで満足するつもりはありません」
──私は、もっと上に行きたいので。今のチームメイトに声を掛けられた少女──氷川紗夜は素直に世辞を受け取りつつも、自分の意志を確かに示した。
今のチームとは次のライブまでを期間として組んでおり、紗夜がその気になれば継続、ならなければそこまでと言う形になっている。
この方針は紗夜がいつしか上に──それも『FUTURE WORLD FES.』……縮めてFWFと呼ばれるプロですら参加が厳しいとされる場所を目指している故に、そこは妥協しては行けないという所から来ている。
ただそれでもギターをやる上での楽しさは
また、相手の方針を決して否定しないことも同じであり、もしあの時気づいてもらえなければここまで晴れやかな日々は送れていないだろうと断言できた。
「あはは……紗夜、結構前からそう言ってるもんね」
「ええ。こうして周りの人から声を掛けられる様になっただけでも、近づけているとは思うのですが……」
目指そうと思ったのはライブ中継を見た時からであり、ギターを始めたばかりの紗夜は大きく引き込まれたのである。
まだまだなのかも知れない、と思いながら、紗夜は手帳の中に挟んでいる一枚のカードを取り出す。
今紗夜に声を掛けたチームメイト少女は、そのカードに見覚えがあったらしく紗夜に問いかける。
「それ……ヴァンガードのカードだよね?もしかしてヴァンガードファイター?」
「いえ、私は違いますよ。これは昔、私の大切な人から渡された……大事な預かりものです」
持っているカードがそれ一枚しかないので、そもそも紗夜はあの世界の舞台に上がる資格を得ていないのだ。
預かっているユニットは彼が愛用していたものとは違うが、これは自分に応援の意味合いを込めて預けてくれたのだと考えている。
別れて少しした時に、彼との関わりがあったおかげで友好関係を持っていた男子に話しを聞かせて貰ったところ、このユニットは一気に有利な状況まで持っていくのと、どんなに不利でも対等に張り合えるレベルまで巻き返しを得意としているらしく、紗夜はこれを『最初が上手く行かなくても、諦めなければ実を結ぶ』、『継続していけば必ず応えてくれる』と言うメッセージのように思えた。
結局預かったままファイトは一回もしていない紗夜だが、もし始めるのならこのユニットを使ってみたいと思うくらいには存在を気に入っていた。
そこから紗夜にカードを預けた人はどんな感じだったかを聞かれたので、答えようとしたところに誰かの携帯がメッセージを受け取った音を出す。
「……あっ、私のみたいですね」
紗夜の携帯には日菜が通話とチャットが可能な無料アプリのCordでチャットを送ってきており、内容は『今日練習が終わったら予定ある?特に無いなら、会わせたい人がいるんだけど……』と言うものだった。
特に予定は入れていないので、その旨を返信しておく。共に悩みを解決できたおかげで紗夜は能力差で思い詰めることはしないで済み、こうして普通に姉妹として接することができている。日菜の寄ってくる距離感を考えると、仲のいい方だと思える。
「もしかしたら、そのカード預けてくれた人だったりするんじゃない?」
「それだったら嬉しいですが、そんな都合よく来るとは……」
──思えませんね。と返そうとしたところで日菜から返信がやってきて、内容は『タカ君帰って来たんだよっ!小百合ちゃんと明未さんも一緒!』とあった。
日菜がその呼び方をするのが誰か、紗夜は一時も忘れてはいなかった。嬉しさもあって頬が微かに赤くなり、目元も潤んだように感じる。
「ど、どうしたの!?」
「いえ、本当にその人が帰って来たみたいです」
日菜がタカ君と呼ぶその人物──遠導貴之は紗夜の初恋の相手であり、このカードを預けた本人であった。
意識し始めたのは彼がヴァンガードを始めたことを告げた時の、全てが明るく見えているかのような輝きを持った目を見せたこと。
そこからヴァンガードで友人関係が増えていき、彼の家で皆して遊ぶことも度々あった。基本はカードショップであり、少人数の時に誰かの家……と言うのが定番であった。
ヴァンガードをやっている時の、心から楽しそうに笑っている姿で完全に心を惹かれ、紗夜も少し話しを聞かせて貰ってから自分もそうなれる場所を探した結果、ギターに辿り着いたのである。
「すみません。今日は終わったら……」
「うん。行っておいで」
「あっ、その代わり今度話しを聞かせてね?」
本当ならライブも近いので話し合いたいかも知れないとは思うが、ここで許してくれたのは有り難い話だった。
貴之のことが気になったのだろう。頼んでくる人がいたのでそれくらいはいいだろうと考えて──。
「分かりました。では、次会った時に」
紗夜はそれを快諾し、その時を楽しみにしながら一度練習に戻るのであった。
* * *
「他の友達はどうする?」
「そうだな……明日、残った整理さえ終えちまえばいいから、それが終わり次第顔合わせしに行こうか」
時間は進んでもうじき夕方になろうかと言う頃合い。日菜に問われた貴之は明日の予定を答える。
日菜が手伝ってくれたおかげで荷解きは終わり、残りはその時に開けたダンボール等の処理だけになっていた。
現在は日菜の姉であり、初恋の相手である紗夜を迎えるべく家の前で待機して話し合っている。小百合と明未はこっちを無理矢理言いくるめ、二人して夕飯の為の準備を始めていた。
「(日菜があんなタイミングで連絡を入れるから、間違っていないと思うけど……)」
練習が終わった紗夜は、日菜の連絡時折を見ながら家の方まで足を運んでいく。
違ったらどうしようと言う不安半分と、ようやく会えると言う嬉しさ半分を胸に進んで行くと、自分たちの家とその向かい側の家の間──どちらかと言えば後者の家の前に日菜と件の少年がいた。
いきなり話しかけることも難なので、まずは日菜に確認を取ろうと考えた。
「あっ、おねーちゃんお帰りっ!」
「日菜、その人は……」
それよりも早く日菜が声を掛けてきたので、自然と問いかけることができた。
彼女も連絡した建て前問われた理由は理解しており、「やっぱそうだよねー♪」と楽しげに肯定を示した。
「じゃあ、久しぶりにご対面だね♪」
「ああ。ようやくこの時が来たって考えると感慨深いもんだな……」
声は五年間の時間があった以上変わってしまっているは仕方ないが、それでも昔と変わらない癖の付き方をした黒髪に、空のような蒼い瞳。強い意志と優しさを感じさせる雰囲気は変わっていないままだった。
自分が覚えているものと同じことが分かって胸の高鳴りを感じ、ずっと聞きたかったことを聞くことにする。
「貴之……でいいのよね?」
「ああ。俺は遠導貴之だ……そっちも紗夜で合ってるよな?」
「ええ。本当に久しぶりね……」
またこうして二人で笑いあえる日が来た──。紗夜だけでなく、貴之も嬉しくなって笑みを浮かべる。
「(後は二人がいつ踏み切るか、だね……♪けどその前に)」
──改めてお帰り、タカ君。二人の様子を見て日菜も満足そうに笑った。
「なんて言うか……紗夜、綺麗になったな。落ち着いた美人みたいな印象を受ける」
「そう?貴之も大人びたわね……。それでも昔の良さはそのままに見えるから、優しいお兄さんになったのかしら」
「本当か?でも、紗夜がそう言うなら間違いなさそうだな」
最初に話すことは二人の見た目から伝わる雰囲気。やはりどうしてもここは外せなかった。
お互い時間も経っているので、どう変わったかが気になっていたところ互いにいい変わり方をしていたようで一安心である。
「貴之、日菜ちゃん。晩御飯……って、あら。紗夜ちゃん?久しぶりね」
「紗夜さん、お久しぶりです」
「明未さんに小百合ちゃん……?お久しぶりです」
話したいことはまだまだあるが、それはいつでもできるので今はいいと割り切れる。
明未に誘われたので、紗夜も晩にお邪魔させて貰うことにした。
遠導貴之と氷川紗夜──先導者と秀才はここに、再会を果たすのであった。
* * *
「(何とかひと段落だな……後は明日、ファイトできたらいいんだがな)」
夕食も取り終えた夜。貴之は家に一番近い自販機がある所まで歩いてきていた。夜風に当たりたかったのと、帰って来た実感が強すぎて少しの間寝れなそうだったからである。
帰って来た初日から紗夜と顔を合わせられたのは非常に嬉しいことであり、また頑張ろうと気合いを入れ直すことができた。
とは言え、長時間何も飲まずにいられるわけでもないので、飲み物の一本は買っておく。
「帰って来たばかりで落ち着かないの?」
「……そんなところだな」
横から声を掛けてきた紗夜には肯定の意を返す。どうやらこちらの様子は分かっているようだ。
「そう言う紗夜は?」
「恥ずかしながら、私も落ち着かなくて……」
紗夜もそう言うのは貴之としては意外であった。彼女は基本的に落ち着きのある人物だったからである。
同年代の中でもかなり落ち着いている性格をしており、抑えが利かなくなる可能性が低いのだ。
喜怒哀楽も人並みにありながら、周りを見る視野も広い方である紗夜がそう言うのだから、とても貴重な一面である。
「何かいるか?」
「自分で出せるけど……そうね。今日はお言葉に甘えさせてもらうわね?」
久しぶりに会えた嬉しさも相俟って、とても素直に貴之の進言を受け入れられた。
一先ず缶コーヒーを貰い、近くのベンチに腰を下ろす。その後は簡単に乾杯してから互いに買った飲み物に一口つけた。
「こんなに早く戻ってくるなんて、思ってもみなかったわ……」
「それは俺もだよ。本当なら、大学に進学する時一人暮らしで……とかって考えてたらな」
本当に奇跡であったと言える。奇跡的な巡り合わせに助けられて貴之はここに戻って来れた形である。
今考えていた予定では最悪忘れられている可能性が高いので、これで良かっただろうと思った。
「私、嬉しかったの。雑誌にあなたの名前が乗っていて、強くなっているのが分かったことが……」
「雑誌ってことは……あのゲーム関連雑誌か。伝わっているなら無駄にはならなかったな……」
クラスの友人に見せて貰った時、紗夜は嬉しさのあまりに涙を流したのを覚えている。
それを機に全国大会の時期に合わせて雑誌を買うようにしていた。その為、貴之が強くなった道筋の断片を知れている。
なお、始めてその反応を見せた際は、友人たちがその反応を見て弄りにかかってきたのは記憶に新しい。
「なるほど……サポートをやるようになったのか」
「期間を決めてそこのチームでギターをやらせて貰って、合うと思ったらそこに継続で入らせてもらう……。その方針でやらせて貰っているけど、まだそのようなチームがいないのよね……」
「そこは気長にやっていくしかないだろうな……」
紗夜と同じ世代の人だと、どうしてもそう言った考えを持つ人は少なくなる。故に探すのに苦労するのである。
故にそこは仕方ないだろうと言うところは出てくる。その為今後頑張って探すのが現状だった。
「今度どこかで、お互いにどれだけ伸びたかを見せたいところね……」
「そうだな……見せるタイミングはそっちの都合に合わせてくれればいいぜ。俺と比べて期間限られてるだろうし」
貴之の進言はありがたいものだった。何しろライブはこの日にやるを決める必要があるのだ。
また、貴之は比較的時間の空いている身なので、大丈夫な時に声を掛けてもらうことにする。
「あっ、行けない忘れるところだったわ……これ、覚えているかしら?」
「そのユニット……ああ、俺があの時紗夜に預けたカードか」
返す時に紗夜が『ヴァンガードを始めるならこのユニットを使いたい』と言った辺り、預けていた内に興味を惹いていたらしい。
友人にも一度やってみるのはどうだ?と勧められることはあったし、紗夜もその提案を悪いとは思わないが、やるなら貴之に教わりたいのがあって触れるのを後回しにしていた。そのせいで友人たちに恋心を見透かされる羽目になったが、それはそれである。
十分に話し合ったと思った頃合いに風が強くなり、冷え込み始めたのに気づかされる。
「一度帰るか……これからもお互い頑張ろうぜ?」
「勿論。お互い、望む場所を目指して進んで行きましょう」
夜の道を談笑しながら帰る二人は、とても楽しそうだったと道行く人がみたら間違いなく答えるだろう。
五年前はヴァンガードが周りの友人より強い一人の少年だったが、全国で結果を残せるくらいまで上り詰めた遠導貴之。
同じく五年前は初心者だった身から、多くの人から呼び声が掛かるレベルに成長した氷川紗夜。
道は違えど共に歩むことを夜空で誓い合った二人は、その場所に向けて再び歩いていくのだった。
こちらのプロローグは綺麗に一話分です完結です。
本編は友希那の変化を描く為にライブをやっているなんて状態でしたが、この話しを公開して比べて見ると『時間軸的にちょっと無茶あるかも……』と思いましたが、アニメ3期で連日滅茶苦茶な数ライブするポピパを思い出して、バンドリ世界ならそんなこと無さそうだなとも思いました(笑)。
次回はRoseliaシナリオ1章の2~3話の変化になるかと思います。
転校~紗夜の初ファイトまでを描くのも良かったのですが、実は貴之の転校先と、紗夜の使うクランが一切変わらないので、ここは省略させて頂きます。
本編とこちらで混乱しないように、こちらの話しにおける本編との差異点を上げていきます。長くなるのでお気を付けください。
遠導家に関して
・遠導家両親は出生と結婚のタイミングが二年遅くなっていて、その時の引っ越し先が氷川家の向かい側になる
・小百合が現段階では中学3年生
・貴之が生まれるタイミングは変わらないので、貴之が兄、小百合が妹になる
・子供二人の選択に合わせ、母である明未が引っ越し先に同行
氷川姉妹に関して
・遠導兄妹との友好関係は極めて良好。
・貴之と紗夜が共通する悩みを抱いたことや、小百合と日菜が共通する喜びを持っていたことから、上側の子と下側の子と言う形で波長が合いやすかった。上下が別れても全く問題なし。
・貴之と悩みを解決したことで紗夜は自分の在り方に一つの答えを出しており、能力差故の嫌悪感は抱かなくなる。
・貴之と紗夜の悩みを知ったことから日菜も違うことの良さを理解している。
・学校に関しては『日菜と一緒が嫌』で別になったのではなく、『互いに行きたい場所が別だった』だけになっている。
貴之個人の変化
・紗夜に好意を抱いている。
・ヴァンガードを始めたのはテレビでの宣伝と、耕史とのファイトを重ねて。初恋は関係していない。
・兄になった影響で更に我慢強さを得ており、小百合との口喧嘩は更に数を減らし、両手が必要かどうか怪しい程度の数しかしておらず、内容も小さい頃だったせいか、小百合共々殆ど覚えていない。
・引っ越して暫くした後は異性を最初のうちは名字+さん付けで呼ぶようにしているが、『ある程度まで距離を縮める』、『今後も関わりを持つと確信する』、を満たした場合はその制約をあっさり解除する。
・紗夜と共に悩んで、それを解決したことからより相手の身になって悩みを聞くことができ、その影響で助けられた相手が増えている。
小百合個人の変化
・出生タイミングの変化から学年が変わり、話しへ絡みやすくなっている。
・子供組で最年長から一点、最年少になったため、幼少期に思いっきり甘えることができていた。
・引っ越し後は貴之の大会現場を見に行かせて貰うこともあり、兄の人間関係の豊富さも実際に見ている。
紗夜個人の変化
・貴之へ好意を抱いている。
・日菜への確執が消えたことで性格が大幅に軟化。一人での力は『強さ』ではなく、『その人のできる限界』と捉えている。
・↑に伴い他人との繋がりを否定せず、寧ろ肯定する考えになっている。
・性格の軟化から気難しい人物では無くなったこと、貴之の存在から友人関係が増加。
・もし、日菜がギターを始めると言う場合は簡単に負けるつもりはない、仮に抜かれても追いつくor追い抜き返すつもりでいる。
・バンドを組むときにこの期間までと初めから伝えていること、例えその期間だけの関係になってしまう可能性があってもぞんざいな接し方などはしない。その為組んだことのあるチームとは後腐れない関係ができており、予定さえ合えば組んだことのある人が今でも応援に来てくれたりもする。
・預かっていたのは『ブロンドエイゼル』。ヴァンガードに触れる際、改めて正式に譲られる。
日菜個人の変化
・双子だから同じに固執していない。
・紗夜と貴之の悩みを知り、自分の近くにそう言う人がいたら、寄り添って助けてあげたいと考えている。
・思い切ってやりたいものはあまり決まっていないが、紗夜と貴之がやっているもののどちらかになったら、その時はその時と割り切っている。
・気を遣うようになったのは小学時代の最後の方からであり、周りの子たちが『悪いものでも食ったか』と疑ってきた時は本気で拗ねたことがある。今はもう笑い話で許せる段階。
・すぐ身近に両片思いをしている二人がいるが、他の女子と貴之が仲良くしていても『どうせ姉に気持ちを伝えるから大丈夫だろう』と、リサと比べて必要以上に干渉しないスタンスを取る。
この様な形に変化しています。
こちらでも貴之の容姿は変わりませんが、小百合の容姿は変化しています。
こちらでは『
明未の方は『機動戦士ガンダム
ちなみに元ネタの人物は、貴之の容姿の元ネタとなった人物の母親と似ていると言うテレビ本編では公開出来ず、小説版やその他メディアで明かされた設定が存在しています。
以上が現段階で公開できる変化点のすべてになります。残りは次回やその次回で追々明かしていきます。
ここまで読んでくれた方は本当にありがとうございます。