先導者と歌姫 -高みを目指して-   作:ブリガンディ

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久しぶりに10000文字超えました。
今回は予告通り貴之と真司によるファイトです。最後にちょこっとだけRoseliaのパートが入ります。

また、リサに弟がいると判明したので、こちらは機会がある時に拾っていきたいと思います。恐らくヴァンガードは趣味程度の一般人枠になるかと思います。


イメージ44 対峙する巨竜

「『ライド』!『リザードランナー アンドゥー』!」

 

「『ライド』!『スパークキッド・ドラグーン』!」

 

貴之はいつも通り『アンドゥー』、真司は小さき翼竜に乗った小人の『スパークキッド』になる。

 

「なるほど……あいつは『なるかみ』を使うのか」

 

真司が使う『クラン』は『ドラゴンエンパイア』に属する『かげろう』と近しい航空部隊の『なるかみ』である。

所属するユニットの差異点としては『オーバロード』などの『フレイムドラゴン』の多かった『かげろう』に対し、『なるかみ』は『サンダードラゴン』が多い所だろう。

ファイト上では相手の前列の数が影響するスキルを持っていたり、『バインド』と言う退却とはまた違った方法による除去手段を持つ、少々変則的な攻撃寄りの『クラン』と言える。

しかしながら、『かげろう』に近しい部分もある影響か、他の攻撃寄り『クラン』と比べると比較的丸めな性質であった。

 

「そう言えばさ、彼が『なるかみ』を選んだ理由はどうして?」

 

「最初に貴之君が使っている『クラン』を聞いて、それに近いものの中から選んだんだって」

 

――と言うことは背景かな?裕子の答えを聞いた玲奈は推測を立てる。ちなみにヴァンガードを知る同い年の女子と話せる嬉しさもあり、玲奈の目が普段より輝きを増していたのを記しておく。

尚、俊哉は既にファイトの番が回ってきているので下に降りている。その為ここにいるのは彼ら三人を省いた六人である。

台に視線を戻すと、二人のファイトは真司の先攻で始まろうとしていた。

 

「『レッドリバー・ドラグーン』に『ライド』!スキルで一枚ドロー……」

 

真司が『ライド』したのは橙色をした軽装の鎧に突撃槍を持つ竜の背中に乗った騎兵『レッドリバー』だった。

先攻で最初のターンである為、これ以上は特に何もせずターンを渡す。

 

「『バー』に『ライド』!一枚ドローして、そのままヴァンガードにアタック!」

 

「なら、ノーガードだ」

 

『レッドリバー』はパワーが9000ある為、トリガー次第では攻撃が届かないので『ガード』をする必要を感じなかった。

仮にリアガードを置かれていても、次のターンに『バインド』してしまえばいいのでどの道そのまま受けるつもりであった。

 

「多分、スキルを嫌ったな……」

 

「ただ、その分この後は確実にパワーの上がった攻撃を貰うことになる……」

 

口にした大介と弘人はもちろん、他の全員もそのことは理解している。

リアガードを呼べば『バインド』される。しかしながら、呼ばない場合は攻撃が通りづらい。非常に嫌な二択であった。

真司の選んだこの択は貴之の教えが効いているものの一つで、『レッドリバー』のようなユニットの扱いに迷っていた時に得たアドバイスを的確に反映させた行動である。

 

「相変わらず順応が速いやつだ……『ドライブチェック』」

 

称賛を送りながら行った『ドライブチェック』の結果は(ヒール)トリガーで、パワーを『バー』に与えることで攻撃が届くようになる。

これによって攻撃が届いたのは良いものの、四回しか使えない(ヒール)トリガーを使うことになってしまったのはかなり痛いところだった。

――相変わらずやってくれるな……。貴之のイメージ力に舌を巻きながら行った『ダメージチェック』はノートリガーで、大きな変化もなくダメージが1になる。

 

「貴之が避けたから、このターンで見ることはないね……」

 

「ただ、ここから一気に攻められるのは決まったな」

 

このターンで『バインド』を見ることはないが、場のユニットがヴァンガード(憑依した自分)しかいないのでもう片方は確実にやって来る。

故にここでの結果がこの後に響いて来る確率は極めて高い。

 

「『ライド』!『イクセスストリーク・ドラゴン』!『レッドリバー』と『サンダーストーム・ドラグーン』、さらに『レッグレスネス・ドラゴン』を『コール』!」

 

赤い体を持った電撃を操る翼竜の『イクセスストリーク』に『ライド』した後、前列右側に赤い鎧と突撃槍を装備し、翼竜に乗った戦士の『サンダーストーム』、後列左側に『レッドリバー』、そして前列左側には青い体に赤い瞳を持つ翼竜の『レッグレスネス』を『コール』する。

この中で『バインド』を使える場所にいたのは『レッグレスネス』だが、今回は対象となる相手がいないので使用はできない。

 

「じゃあこっちも攻撃に入ろう……『イクセスストリーク』でヴァンガードにアタック!」

 

「ノーガード。さあ来い!」

 

互いのパワーが8000なので、この攻撃は通ることになる。

この時の『ドライブチェック』は(クリティカル)トリガーで、パワーは『サンダーストーム』に、(クリティカル)はヴァンガードに回される。

イメージ内で『イクセスストリーク』となった真司の電撃を受け、その後行った『ダメージチェック』は二枚ともノートリガーだった。

これによってどれか防がないと一気に4ダメージとなることが決まったので、貴之はどこか一つは流石に防ごうと考える。

 

「次は『サンダーストーム』でヴァンガードにアタック!『サンダーストーム』は相手前列のリアガードが一体以下ならパワープラス5000!」

 

「『ゲンジョウ』で『ガード』!」

 

『ゲンジョウ』ならばどちらで防いでも同じなので、先に防いでしまうことを選んだ。『サンダーストーム』のパワーが合計で24000だったので、こちらは合計28000のパワーで対抗したのだ。

 

「最後は『レッドリバー』で『ブースト』、『レッグレスネス』でヴァンガードにアタック!『レッグレスネス』は相手前列のリアガードが一体以下なら、スキルでパワープラス3000!」

 

「ノーガード、『ダメージチェック』……」

 

イメージ内で『レッグレスネス』の両手に集めた電撃を受けた後『ダメージチェック』を行い、その結果はノートリガーだった。

攻撃が終わったので真司はこのままターンを終えて、貴之に番を回す。

 

「流石に全国で貴之とファイトしようって言っただけはあるな……」

 

「油断してたわけじゃないけど、僕以上に伸びが早い……気を付けないとね」

 

竜馬の称賛に頷く一真は真司への警戒度を上げる。その言葉に意外だと思う人は少ない。

確かに一真は全国大会の優勝を掴み取れた身ではあるが、この大会までたどり着くのに掛かった時間は真司の方が短いのだ。これで警戒するなという方が無茶だろう。

さらにこの二人は貴之から教えを受けている人たちなので、そこを知っている人は貴之の動向を伺うことも増やす。

 

「『バーサーク・ドラゴン』に『ライド』!『サンダーストーム』を退却させて一枚ドロー……。『アーマード・ナイト』と『ラーム』、さらに『エルモ』を『コール』!」

 

『アーマード・ナイト』は前列左側、『ラーム』は前列右側。そして『エルモ』は後列中央に『コール』される。

この時『サンダーストーム』を狙ったのはこのユニットが『バインド』のスキルを持たないこと、後ろにリアガードがいないので手数を減らせる可能性が見えていたことにある。

真司もこの狙いは理解していたのであまり気にしていない。気掛かりなのは手札が残り四枚である為、次のターン次第で一気に苦しくなることだろう。

ただし貴之も残りの手札が四枚しか無い為、今回は互いに短期決着狙いだったことが伺えた。

 

「こっちは……『アーマード・ナイト』でヴァンガードにアタック!」

 

「ノーガード、『ダメージチェック』……」

 

イメージ内で『アーマード・ナイト』の剣による斬撃を貰い、『ダメージチェック』を行う。

その結果はノートリガーで、真司のダメージが2になる。

 

「次は『エルモ』で『ブースト』、『バーサーク・ドラゴン』でヴァンガードにアタック!」

 

「そうだな……ここはノーガードで行こう」

 

数瞬迷ったが、様子見を兼ねてノーガードにする。まだダメージが2なので、ある程度の猶予があることも一助している。

この時貴之が『ドライブチェック』で(クリティカル)トリガーを引き当て、パワーは攻撃していない『ラーム』、(クリティカル)はヴァンガードに回される。

イメージ内で『バーサーク・ドラゴン』となった貴之の双頭から炎を焚き付けられた後、『ダメージチェック』を行う。

この結果は一枚目が(クリティカル)トリガー。二枚目が(ドロー)トリガーとなる。

 

「最後は『ガイアース』の『ブースト』、『ラーム』でヴァンガードにアタック!」

 

「これ以上は避けたいな……!『イエロージェム・カーバンクル』で『ガード』!」

 

『ラーム』の攻撃は『イクセスストリーク』となった真司の前に現れた、黄色い宝石を身に着けてるカーバンクルの『イエロージェム』が防いでくれた。

トリガー二枚を引いたのに『ガード』をすることになった理由としては、『イクセスストリーク』が原因だった。

 

「パワーが8000しかないのが響いたんだね……」

 

「せっかく二枚引いたのに、相手もトリガーを引いてることでパワーが同じになっちまったからな……」

 

真司は先程のターン、スキルによるパワー上昇を優先して『レッグレスネス』たちをリアガードに起き、そのターン効果を得られない『イクセスストリーク』をヴァンガードに置いた結果がここに来て仇となった。

それ故にパワーが同数値になって『ガード』が必要となったのだ。ここは攻めを選んだゆえの結果である為、真司は素直に受け止める。

貴之のターンが終わり、再び真司へとターンが回る。ここまでは殆ど互角と言っていいだろう。

 

「(あの二人……本当に楽しそう)」

 

久しぶりに会えて、ヴァンガードファイトができて、さらにそれが約束の舞台でできる……。それら全てが揃った状態の二人を見た裕子が笑みを浮かべる。

それと同時に、二人の戦い方からして残りがそこまで長くないことも悟り、少々寂しさも感じた。

 

「僕のターン、『スタンド』アンド『ドロー』……。お前と戦うなら、やっぱりコイツで行きたいところだな」

 

「……なるほど。アイツか……そう言うことなら受けて立つぜ?」

 

真司の呟きに察しを付けた貴之はその先を促す。

これが決着をつけに行くつもりであることは承知の上であり、貴之はそれを乗り越えるつもりでいた。

 

「行くぞ……!『ライド』!『グレートコンポウジャー・ドラゴン』!」

 

真司は赤と銀が目を引く体に、それとは対比的な青と銀の二色で形成される翼を持った巨竜『グレートコンポウジャー』になる。

『なるかみ』が持っている『イマジナリーギフト』は『アクセル』で、ここが背景的に近しい『かげろう』とは決定的な差異点であった。

更に『メインフェイズ』で、後列右側には黄色と碧の体を持つ竜の『デモリッション・ドラゴン』。後列中央には赤い体を持った二足歩行する竜兵の『リザードソルジャー・リキ』。前列左側と『アクセルサークル』には再び『レッグレスネス』が『コール』される。

 

「『レッグレスネス』の登場時、『カウンターブラスト』することでスキル発動!相手前列にいるリアガードを『バインド』!」

 

スキルは一体の『レッグレスネス』に付き一回の為、真司は二体出して二回分の『バインド』を行う。

イメージ内では『バインド』を受けた『アーマード・ナイト』と『ラーム』の足元に黒い空間が現れ、二体はそこに飲み込まれて行った。

この『バインド』されたユニットは普段退却したユニットが置かれる『ドロップゾーン』ではなく、『バインドゾーン』と言う専用の場所に置かれることとなる。

なお、『バインドゾーン』とファイトから除外したカードは位置を明白に定義されていないので、混合しないように気を付けたいところである。貴之らの間では『バインドゾーン』がデッキの右隣、除外されたカードが『ドロップゾーン』の右隣と言ったような分け方を主流としている。

 

「これはちょっとやべぇな……」

 

スキルでリアガードを『バインド』された貴之が少し焦る。

ただしこれはユニットが『バインドゾーン』に置かれたことではなく、この後待ち構える『グレートコンポウジャー』のスキルと自身の残り手札が理由だった。

 

「『バトルフェイズ』開始時、『グレートコンポウジャー』のスキル発動!ユニットのいない相手前列の『リアガードサークル』一つに付き、このユニットはパワープラス3000!」

 

このスキルこそが、貴之が少し焦った理由である。

『グレートコンポウジャー』のスキルは相手のターンでも適応される為、これが相手へ前列にユニットを出す行為を強要させやすい。

そうして出てきたユニットを『バインド』、または前後強制交代を行うことでこちらに有利な状況を作っていくのだ。

ちなみに今回は『リキ』のスキルを発動していないが、『リキ』は『ソウルブラスト』することで相手リアガードの前後を入れ替えさせることのできるスキルを保有している。

 

「さらに自分のターンだから、パワーのプラスが3000から5000に変わる……。今回は後攻だからあまり変化しないが、『アクセルサークル』を持たない『クラン』なのが救いだね」

 

「『アクセルサークル』は新しい『リアガードサークル』を増やすもんね。そうなったら三体分かぁ……」

 

玲奈の確認する呟きを裕子が拾う。『グレートコンポウジャー』はこのスキルがあることから、どちらかと言えば攻撃寄りな傾向のある『なるかみ』の中でも、比較的防御的と言えるだろう。

パワーの上昇が、攻撃を通しにくくすることもその評価に一躍買っている。

 

「さあ、勝負だ……!」

 

「乗ったぜ……。全部ぶつけて来い!」

 

真司の手札がゼロになったのでこのターンで決めれば真司が勝ち、耐えきれば貴之が勝つ。そんな状況になっていた。

本当なら危ない状況ではあるが、両者が揃って笑みを見せあった。

 

「『リキ』で『ブースト』、『グレートコンポウジャー』でヴァンガードにアタック!」

 

「『バリィ』で『完全ガード』だ!」

 

(クリティカル)を二枚引かれてしまったら終わりなので、こちらを選択する。

そして重要な真司のトリガーは(フロント)(クリティカル)が一枚ずつと言う結果になり、(クリティカル)は全て『アクセルサークル』の『レッグレスネス』に回された。

これによって残り手札が二枚しかない貴之はトリガーが引けない場合、(クリティカル)を得ていないどちらか一つしか防げないと言う事態に陥ってしまった。

 

「次は『レッドリバー』で『ブースト』、左の『レッグレスネス』でヴァンガードにアタック!」

 

「ノーガード、『ダメージチェック』……」

 

イメージ内で『レッグレスネス』の電撃を浴びながら『ダメージチェック』を行うと、その結果はノートリガーだった。

これによって貴之のダメージが4となる。

 

「『デモリッション』で『ブースト』、右の『レッグレスネス』でヴァンガードにアタック!『デモリッション』は相手前列のリアガードがいないならパワープラス3000!」

 

「それもノーガード!」

 

相手がチャンスをくれたので、逃さずトリガー狙いを図った。ここしかないと言う考えによるものである。

イメージ内で再び『レッグレスネス』の電撃を受け、『ダメージチェック』を行う。

その賭けに打ち勝ったことを現すように、貴之は(ドロー)トリガーを引き当てた。パワーをヴァンガードにあてがうことで、次の攻撃を防ぐ目処が立った。

 

「こうなっても行くしかない……!『アクセルサークル』の『レッグレスネス』でヴァンガードにアタック!」

 

「頼んだぜ……!『ラクシャ』、『ゲンジョウ』!」

 

『レッグレスネス』のパワーは52000まで到達していたが、トリガー効果込みでパワー55000まで引き上げることで防いで見せた。

残った手札が二枚で防ぎ切られた真司は悔しい想いもあるが、それでこそ自分をこの世界に引き込んでくれた貴之(先導者)だという信頼も強い。

――例えこの状況でも、諦めるつもりはない……!ターンを渡した真司は貴之の動向を伺う。

 

「俺のターン、『スタンド』アンド『ドロー』……」

 

貴之はたった今山札から引いたカードを見て、笑みを浮かべる。今回は『ヌーベルバーグ』が切り札となっているものの、やはり分身は変わらない。

何しろこのユニットがいたからこそ、自分は様々な出会いや大事なものを得られたのだから――。窮地であったとしても来てくれる存在のおかげで、貴之は己の中にあった違和感を取り払えた。

例え勝ち方の流れを組み上げたとしても、『かげろう』を使う時はそれがいなければ間違いなく自分のファイトは成立しない。それほど彼にとっては根幹を成す存在である。

ちなみに違和感の生じた時期としては、今日電車で移動している最中からこのファイトの間と言うかなり短い時間ではあるが、取り払えなかったら大変なことになっていたのは想像に難くない。

 

「やっぱり、お前で戦わないと始まらないよな……相棒!」

 

「それが来るか……!いいだろう、僕も全力で受けて立つ!」

 

貴之が自然さを増したニヤリとした笑みを見せながら、真司は眼鏡のずれを直しながらそれぞれの対象に向けて言い放つ。

真司の声を聞いた貴之がそのカードを手にとって『バーサーク・ドラゴン』の上に重ねる。

 

「ライド・ザ・ヴァンガード!『ドラゴニック・オーバーロード』!」

 

貴之のヴァンガードファイターとしての道にこのユニットあり。そう言える程に長い付き合いを誇るユニットである。

周りの見ていた人たちからも「出たぞ、貴之の『オーバロード』だ!」という興奮の声や、「またあの組み合わせが見れるとはな……」と感慨深げにしている声が聞こえた。

やはり貴之(この男)にはコレ。それに近しい反応は一真たちも同じであった。一人それと同時に懐かしさを感じるのは裕子だった。

 

「懐かしいなぁ……」

 

「懐かしい?」

 

「うん。私が始めてヴァンガードを見せてもらった時も、あの二体が向かい合ってたから……」

 

気になった玲奈が聞いて見ると、なるほどと納得できた。

裕子がヴァンガードに触れたのは真司より僅かに遅れてであり、それまでは貴之から話しを聞いているだけだったのだ。

また、始めて自分でやる前に二人がファイトしている姿を見せてもらっていて、その時も真司の先攻、貴之が後攻であり、貴之の三ターン目で同じユニットで向かい合っていた。

その為裕子に取って、この光景は自身がヴァンガードを始めた象徴の光景とも言えた。

 

「(流石貴之だ……これだけやっても、まだあいつは僕の上にいる……!)」

 

「(この短時間でここまで伸びるとはな……教えた身としては嬉しいぜ真司!)」

 

真司は貴之がどこまでも先を進むその姿を、貴之はすごい勢いで追いついて来ようとする真司をみて称賛する。

互いが自分のIF(もしも)と言った感じの近い二人は、恐らく自分が相手ならそうしていただろう評価を下していた。

 

「『イマジナリーギフト』、『フォース』!ヴァンガードのパワーをプラス10000!さらに『アーマード・ナイト』と『ラーム』を『コール』して、『オーバロード』は『ソウルブラスト』!」

 

『アーマード・ナイト』は前列左側、『ラーム』が前列右側に『コール』された。

前列のリアガードが全て埋まったことにより、『グレートコンポウジャー』のパワーが上がることは無くなった。

 

「さて……名残惜しいけど決着付けようぜ」

 

「勿論そのつもりだ……来い!」

 

真司の返しを聞いた貴之が「なら遠慮なく」と声を発してからカードに手を掛ける。

 

「まずは『ガイアース』の『ブースト』、『ラーム』で右の『レッグレスネス』にアタック!」

 

「今防ぐわけにはいかない……ノーガード!」

 

貴之は『オーバロード』の攻撃を通すべく、先に真司の前列リアガードを全滅させる作戦を選んだ。相手の手札が二枚しかないことを突いていく戦いである。

防げはするものの、ここで止めた場合は『オーバロード』を止められないので真司にはノーガードしか選択肢が残されていなかった。

ノーガードを選んだことで、イメージ内で『ラーム』の盾を使った殴打を受けた『レッグレスネス』が退却する。

 

「次は『アーマード・ナイト』で左の『レッグレスネス』にアタック!」

 

「これもノーガード……!」

 

『インターセプト』しても『レッグレスネス』が一体退却するのは変わらないので、これも防がない。

イメージ内で『アーマード・ナイト』の剣による斬撃を受けた後『レッグレスネス』が退却する。

 

「これを止めさせる気はねぇからな……『エルモ』の『ブースト』、『オーバロード』で『アクセルサークル』の『レッグレスネス』にアタック!」

 

「仕方ない……ノーガードだ!」

 

『ブースト』をされなければパワー33000のアタックは防げる状態だったのだが、こちらの許容範囲を超えたパワーで攻撃されればそれは叶わない。

トリガーが引かれなければ防げるし、(クリティカル)トリガーが来なければ負けることは無くなる状況だったが、この時の『ツインドライブ』で真司は久しく見なかった貴之のここ一番における勝負強さを再確認することになる。

一枚目は(クリティカル)トリガーで、効果を全てヴァンガードに回される。これによってこちらは(ヒール)トリガーが二枚目に来ることに賭けるしか無くなる。

 

「セカンドチェック……。ゲット、(クリティカル)トリガー!効果は全てヴァンガードに!さらに攻撃がヒットした時、『カウンターブラスト』と手札を二枚捨てて『オーバロード』のスキル発動!」

 

「次の攻撃が勝負を分けるな……」

 

真司が必要枚数分の(ヒール)トリガーを的確な場所で引けるかどうか。このファイトの行方はそれに委ねられた。

既に『ガード』の選択肢を殺され、三回全て、或いは二枚目以降の二枚を必ず引き当てなければならない状況だが、それでも真司が諦める様子は見えない。

 

「この姿勢はお前がずっと見せてくれたものだからな……ここで引くつもりは無いさ」

 

「お前にヴァンガードを教えて本当に良かったよ……なら、最後までやりきろうか!」

 

降参(リザイン)する気がないことは寧ろ喜ばしい事だった。それは自分の教えをしっかりと覚えてくれている証だからだ。

この二人のファイトを見ていた人たちは最後まで見届けると言う考えが一致していた。

 

「『ドラゴニック・オーバーロード』でヴァンガードにアタック!」

 

「防げない以上、受けて立つ!」

 

真司の宣言が終わって『ドライブチェック』を行うと、再び(クリティカル)トリガーを引き当て、効果を全てヴァンガードに宛がう。

これによってイメージ内で『グレートコンポウジャー』となった真司は、『オーバロード』となった貴之の剣による重々しい斬撃を四回貰うことになった。

 

「ま、まだだ……『ダメージチェック』……!」

 

一枚目の『ダメージチェック』はノートリガーだったが、二枚目で(ヒール)トリガーを引き当てる。間違いなく真司の諦めない姿勢が掴んだものだろう。

続く三枚目の『ダメージチェック』でも(ヒール)トリガーを引き当てて見せ、会場を驚かせる。

 

「ここまでは順調……さあ、どうなる?」

 

「次の一枚が全てを決めるね……」

 

泣いても笑っても、このファイトは次の『ダメージチェック』が勝敗を分けることは誰が見ても明らかだった。

両者とも手札が残り三枚以下になっているので、次のターンはほぼ攻撃を防げないと言っても、過言ではないだろう。

 

「次で最後の『ダメージチェック』だな……」

 

「僕かお前か、どっちのイメージが上かの勝負になるな。行くぞ……!」

 

真司は臆する事なく最後の『ダメージチェック』を行う。

その時に引き当てたユニットは『グレートコンポウジャー・ドラゴン』……。つまりはノートリガーだった。

 

「あと一歩までは行けたが……。僕の負けだな」

 

「でも、お前の伸びも凄いよ……。俺より短期間だってのに、ここまで上達して見せてさ」

 

貴之の言った通り、真司は上達速度が速く、今回ここで戦ったことで彼自身も改めてそれを実感する。

しかしながら、それだけでは満足しきれない自分がいるのもまた事実だった。

 

「次ここで戦う時は勝つ……。僕の新しい挑戦だ」

 

「簡単に負けるつもりはないが……そう言うことなら受けて立つぜ」

 

再戦を誓った後、二人は挨拶を済ませると同時に固い握手を交わした。

ファイトが終わったことを進行が分かるようにして席に戻る最中、丁度初戦の勝利を収めた俊哉と合流したのでそのまま三人で席に戻っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁ~!衣装すごっ!」

 

貴之らが一回目のファイトを終えたのとほぼ同時刻。燐子に頼まれてあこが衣装に着替え終わったのでそれをみんなで見ていた。

その衣装は黒い薔薇をイメージしたドレス風のものであり、少々ゴスロリのような趣向のデザインになっているのは燐子の趣味が出ている部分である。

 

「この衣装……本当に着ることができてよかったよぉ~……」

 

「……本当に心配させてしまったわね」

 

自分が決断しなければ、この衣装が日の目を見ることは無かったかもしれない。それを思い出した友希那は改めてもう少し人に頼ることを覚えようと思った。

また、各人に渡されていく衣装を見て、紗夜は一つのポイントに気が付いた。

 

「一人一人にサブコンセプトがあって、デザインが少々異なるのね……白金さん、アートワークの才能がありそうだわ」

 

「あ……ありがとうございます。そこに気づいてもらえて嬉しいです」

 

まず、胸元にあるリボンの色がそれぞれ違っていて、友希那は紫、紗夜は水、リサは橙、あこは桃、燐子は白を採用されている。

次にドレスの丈だが、友希那と紗夜、リサの三人は片側が短く、そちら側は膝が見そうや見えるくらいまでになっている。あこの場合はドラムで足を多く使うことを考慮してか短めに、燐子の場合は反対に両側とも長く、足元から少し上までが見えるように作られていた。

この他にも、紗夜とあこの場合は肩が隠れ、残りの三人は見える等……細部に所々違いが見て取れた。

 

「さて……これで全員着替えたみたいね」

 

一番最後に受け取った友希那が着替え終わり、衣装に着替えた全員を見る。

友希那と顔を合わせる四人は全員同じで、今回の演奏を全力でやりきろうと言う目をしている。これは勿論友希那も同じであった。

――全員で一つになる……。これ程いいものなのね。それを感じ取れた友希那は嬉しさを表す笑みを零す。

 

「さて、そろそろ準備を始めましょう」

 

友希那の一声を皮切りに、自分たちの必要な楽器等を手に取って本番に備えた準備を始める。

彼女たちの戦いの時もまた、刻一刻と迫ってきているのであった。




真司が使うデッキはトライアルデッキ『石田ナオキ』をブースターパック『宮地学園CF部』に出てくるカードで編集した『なるかみ』のデッキです。
彼のデッキ選定は結構迷いました。候補が三つ程あったのが理由ですね。

Roseliaシナリオは少しの間は今回のようにファイト展開の間に挟んでいく形を取っていきます。そうしないとバンドリの二次創作なのにバンドリキャラの出番ゼロの回が出てくると言う、書いてる上で引っ掛かるかもしれない状況に陥ってしまうので……。何卒ご理解の程よろしくお願いいたします。

次回は玲奈と竜馬の組み合わせでファイト展開を書くことになると思います。
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