先導者と歌姫 -高みを目指して-   作:ブリガンディ

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ようやくの貴之と友希那の二人によるデート回です。

この話で本章が完結します。

後、ラウクレ一日目凄い楽しく、盛り上がりました。現地で見れて大満足です。


イメージ50 繋がった想い

「……よし、これで大丈夫かな?」

 

「リサ、手伝ってくれてありがとう」

 

全国大会とコンテストのあった日から二日後。湊家でリサに手伝ってもらいながら、友希那は貴之と二人きりで出掛ける為の準備をしていた。

簡単な香水を使ったり、大切な人と出掛けると言うことで服装に気を遣ったりと……準備をしていたら程よい時間になっている。

今回は袖が短い白のワンピースに麦わら帽子を被った格好をしており、夏になったことに合わせたものを選んだ結果となっている。

ちなみに、この出掛けがこんなに早くできるようになったのは、丁度全国大会とコンテストが三連休の一日目であったこと、この連休はしっかり休むべく練習を無しにしていたことが起因する。

 

「(そのまま伝えてももよかったけれど……貴之もこうしたいと言っていたし、これでよかったと思うわ)」

 

祝勝会を終えた後、リサと共に家の前に来たところで後からやって来た貴之と合流し、その後貴之と友希那は二人で再会した日のように公園で話しをした。

その際に友希那から「そのまま伝えてもいいけど、やはり雰囲気等を大事にしたい」との旨を伝えたら、貴之がそれに同意してくれたのだ。それによって今日二人して出掛ける約束をこぎつけるに至る。

また、その際に言っていた貴之の言葉はどうしても友希那に意識させるものだった。

 

「(『伝えたいことは同じかも知れない』……ね。そう言われたら期待してしまうじゃない)」

 

照れた笑みと共にそんなことを言われたのだから、その時友希那の顔は少しの間真っ赤だった。

ただ、それが自分の期待通りであって欲しいと願ってしまうのは、長年待ち続けていたこともあるだろう。

 

「駅前で合流だったよね?それならアタシにできることはここまで……頑張れ~、友希那!」

 

「ええ。行ってくるわね」

 

――とは言うけれどこの準備、私よりもリサの方が楽しんでいた気がするのは気のせいかしら?そんな疑問を隅に追いやりながら友希那は底とヒールの低めなミュールを履いて外に出た。

早速合流場所に歩いて行く友希那は、今の自分が抱いている楽しみだと言う感情にどことなく懐かしさを感じる。

思い返してみれば、それは自分が暴走に近しいことを始めるまではこう言った未来を思い描いていたからだと言う結論にたどり着く。

 

「(不思議ね……体や歌の技術は進んでいるのに、心の持ち方は昔に戻ったみたいだわ)」

 

勿論それを悪いとは思わない。今までの自らを蔑ろにしてしまった時期を考えれば、寧ろ戻った方が正解すらあり得る。

そう言った意味でも、自分をこちらに引き戻す切っ掛けをずっと残してくれた貴之に気持ちを伝えたいと思った。

必ずしもそれが届くとは限らないし、断られたらどうしようかと言う不安もあるが、今は考えないでいようと頭の隅に移した。

 

「(ようやくなのだから、まずは楽しまなければね……)」

 

自分が考えすぎて空気を悪化させるわけにはいかないし、やはりこの日は大事にしたい。

方針を決めて少しだけ歩を早めた友希那の足取りは、とても軽いものだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「(遂にこの日が来るなんてな……)」

 

待ち合わせ場所の駅前で友希那を待つ貴之は、感慨深い想いに浸っていた。

何度やっても届かず、その度に試行錯誤しながら……されど『オーバーロード』を外すことは無く絶対の意志を貫き通して、遂に辿り着いた道である。

そうして夢見た友希那と二人きりでどこかに出掛ける時間が得られたのだから、普段は頑丈メンタルで問題無い先導者も少々浮ついた気分になる。

 

「(俊哉に手伝ってもらいながら新調したりもしたから、問題はないだろうな……)」

 

貴之は新しく買った赤の薄いジャケットに黒のジーンズと同色を基調にしたスニーカー、白のインナーシャツであまり飾り過ぎないような服装にして来た。

こうなった経緯は、友希那が着替えとかに気を遣うだろうから、貴之も普段から着ている服装では合わないだろうと服を見に行ったところ、俊哉から「貴之は無理せずスタンダードで行った方がいいな。それこそヴァンガードで言う『かげろう』だ」とのことだった。

確かに変なことして引かれたりするよりも、こうした格好で些細な変化に気づいてもらった方が良いだろう。

 

「(さて……そろそろ来る頃かな?)」

 

「貴之」

 

時計で時間を確認すれば昼の10時。丁度良い時間だと思っていたところで聞きなれた声が自分を呼ぶ。

振り返ってみると、そこにはいつもと違う格好をして来た友希那がいた。

 

「待ったかしら?」

 

「いや、今来たところだ」

 

定番のやり取りではあるが、これができただけでも二人はもう嬉しかった。

何しろ長い時間離れていた影響で全くできなかったからだ。戻って来てからもそれぞれ大会とコンテストが被り、時間が取れなかったことも原因の一つである。

やり取りができて終わり……と言う訳では無いので、友希那は早速話しを振ってみる。

 

「この服装……変じゃないかしら?今日の為に用意したのだけど……」

 

「……そうだな」

 

やはり手伝って貰いながら選んだ今日の服装がどう見えるかは非常に気になる。

聞かれた貴之は全体をしっかりと、舐めまわすような見方をしないように見ていく。

普段と違った格好と言うだけでも心臓の鼓動が高鳴っている最中、落ち着いて見た所感を伝える。

 

「普段の友希那は薔薇の花が似合うけど……今日のその格好は向日葵(ひまわり)蒲公英(たんぽぽ)が似合いそうだな。普段のもいいけど、こっちも似合ってるな」

 

「そ、そう?良かった……」

 

褒められたことで友希那はホッと胸をなでおろす。思い切って決めて来た格好が合わないと言われたら間違い無く折れていただろう。

そう一安心したところで友希那も貴之の格好を注視して見ると、彼がその視線に気づいた。

 

「俺はあまり変えすぎないようにしてみたんだ。あまり派手なのにすると違和感出ちまってさ……」

 

「なるほどね……。確かに、貴之はこのままが一番いいわね」

 

友希那も話しを聞いて想像してみたところ、少し違和感を持ってしまったのでこの判断は正解だった。

それを聞いた貴之も、無理に変えないでよかったと安心する。

 

「さて……そろそろ電車が来る時間だったわね」

 

「丁度いい時間だな……ホームに移動して電車を待とう」

 

先程の話しをする時間も考え、少しだけ余裕のある時間に来るようにしており、その話しをしたら丁度良い時間になっていた。

その為早速電車に乗る為の切符を買うべく移動するのだが、その前に友希那が貴之に声を掛ける。

 

「どうした?」

 

「その……せっかくこうして二人で出掛けるのだから……。手、繋いでもいいかしら?」

 

少々歯切れが悪く、更に頬を朱色に染めた友希那がおずおずと右手を差し出すものだから、貴之の心臓が早鐘を打つ。

とは言え貴之もその方がいいと思っていたし、言い出すタイミングに迷っていたので渡りに船であった。

 

「ああ。二人きりで出掛ける貴重な時間だからな……そうしよう」

 

優しい笑みで頷いてから、貴之は左手で友希那の右手を優しく握る。この時友希那は嬉しさと恥ずかしさを感じて頬を朱色に染め、照れた笑みを浮かべる。

大丈夫なことを確認してから二人は切符を買い、丁度やって来た電車に乗って目的地へと移動を始めた。

 

「お……」

 

「どうかしたの?」

 

電車に乗って、二人ともドアの近くに寄り添っていた為に貴之は鼻に入ってくる香りに気付く。

その香りは、貴之の声に反応した友希那から発生していた。

 

「友希那……香水使ってる?」

 

「え?あ……気づいてくれたの?」

 

いきなりのことで驚いたが、気づいてもらえて嬉しかった。

今回香水は使い過ぎると後が大変だということで少なめにしているのでそのことを聞いてみると、貴之の反応はかなり良かった。

 

「俺としてもこれくらいが丁度いいと思うな。寄ったらほんのりくらいが好きなのかもな……」

 

「なら……次からもこれくらいでよさそうね」

 

無理に合わせなくてもいいのに、と貴之は思わないことも無いが、彼女が決めたのならそれでいいだろうと思った。

実際、友希那は貴之がどう見るかを一番意識していたので、貴之がそう言うならそうしたいと思っていたので何も問題無い。

目的地に着くまでは少しの間時間がある為、二人は電車内で周りの迷惑にならぬよう些細な会話を楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「実はこの喫茶店、最近できたばかりの場所だから行ける時に行ってみたかったの」

 

「なるほどな……」

 

今回は友希那が行きたい場所があるとのことだったので、その近くを回ることにしていた。

昼時にしては少し早いのだが、昼時丁度につくようにした場合、店の新しさもあって相当の人が並んでしまう。その為こうして早めに来ているのだ。

幸いにも並んでいる人はそこまで多くなく、昼時の少し前には中に入れるだろう。

ちなみに昼食を取るにしてもしっかりとした料理があるので思いの外問題はないと言う、かなりいい場所であることが人の集まる理由であった。

 

「これ……昼に並んでたらどれくらいになってたんだろうな?」

 

「そうね……場合によっては、夕方くらいになっていたかもしれないわね」

 

なので、今回は本当に運が良かったと友希那は安堵する。それと同時に、もう少ししっかりと計画を立てておこうと思った。

一方で、貴之は友希那が行きたい場所を知ってから決めることを前提で来ていたので、先程電車で場所を聞くや即座に何があるかを調べていた。

これも離れていた五年間で培ったものであり、外出の多かった貴之は近くに何があるかを意識するよう心掛けている。

 

「お待ちの二名様、どうぞ」

 

「丁度いい時間ね」

 

「ああ。入るか」

 

二人が呼ばれたのは正に昼時であり、最高のタイミングで入店が叶った。

席も丁度二人用の場所に案内され、心置きなくここでの時間を堪能することができるだろう。

 

「悩むわね……どうしようかしら?」

 

「始めて入る場所だしな……確かに悩む」

 

どんなものがあるのだろうか?そう考えながら二人でメニューを見て悩む。始めて来た場所であることも拍車を掛ける。

せっかくだからゆっくりと悩んで決めようと互いに思っていたのか、焦ったりする様子はなく、時折ページをめくる時に一声かけたり、メニューを見て感想を述べたりしながらこの悩んでいる時間を楽しむ。

他愛のない談笑ですら、二人きりで出掛けることが叶った二人にとっては十分に楽しいのだ。

 

「俺はこれで行こうかな……」

 

「私も決まったわ。そろそろ呼びましょう」

 

注文するものが決まり、テーブルにあるインターフォンを押す。

数分もしない内に店員の女性がやって来たので、それぞれの注文を伝える。

この時貴之はハンバーグ、友希那はパスタを頼み、二人とも飲み物はコーヒーを頼んだ。

 

「貴之は、こういうところは慣れているのね?」

 

「離れている間は結構外出する機会が多くてな……それでこう言う場所にもよく来てたんだ」

 

遠征時代の影響で外食等で緊張することは無い。

友希那もバンドを組んでいた人たちと出かける機会があった為、ある程度は平気である。

 

「お待たせしました」

 

そうして他愛のない談笑をしていると、注文の品がやって来た。

片方だけが来たなら待とうかとも考えていたが、幸いにも二人分同時に来たので全く問題なかった。

 

「丁度いいタイミングできたし、食べるか」

 

「ええ。でもその前に……」

 

友希那が前置きを作った理由は理解できたので、貴之もコーヒーの入ったカップを手に取る。

この前置きは、二人がこうすることのできたことに直結することである。

 

「全国大会とコンテスト……お疲れ様」

 

「ああ。お疲れ様」

 

これができるのも、二人が約束を果たしたからに他ならない。だからこそ、労いの言葉を送る。

小さな動作で簡単な乾杯を行った後、二人はそれぞれのペースで食べ始める。

せっかく来た場所なこともあり、最初は注文したものの味などの話しが入る。

また、ここに来たのが始めてだと言うこともあるからか、相手が食べているものの話しを聞くとどうしても気になってしまう。

 

「……こっちも食べてみるか?」

 

「えっ?い、いいの?」

 

そんな自分の目線に気づいたのか、貴之が提案してきた。

悩みを解決できる渡りに船なものであった為、友希那は思わず反応してしまう。

 

「ああ。その代わり、そっちのも一口欲しいかな」

 

「そ、そう言うことなら大丈夫よ。えっと……その、お願いしてもいいかしら?」

 

「……?どうした?」

 

貴之の提案を受け入れた後、遠回しに食べさせてもらうことを頼んでみる。

しかしながら自分の考えを知ってか知らずか、貴之はあまり良い反応をしなかった。

と言うのも、貴之は友希那が頬を朱色にしながらしおらしい素振りをしたことに意識が回ってしまい、何を頼まれたのかを即座に理解できなかったのが起因する。要するにそれだけ友希那に見とれていた証拠である。

 

「その、そっちのを……貴之に食べさせて欲しいの……」

 

「なるほど……そう言うことなら」

 

頼んだ時の友希那は恥かしさで頭がどうにかなりそうだったが、気づいてもらえたのでひとまずはよしとする。

対する貴之も友希那の求めていることを理解したら即座に柔らかい笑みで頷き、友希那が食べやすいサイズに切ってそれをフォークに刺す。

 

「そ、それじゃあ友希那、あーん……だな」

 

「え、ええ……あ、あーん……」

 

まさか流れでこんなことができると思わず、貴之も嬉しさ以上に恥ずかしさが勝っていた。

口に運んでやる貴之もそれを貰う友希那も、互いに緊張とドキドキでどうにかなりそうな状況で無事に一切れによるやり取りを終える。

緊張と嬉しさ、恥ずかしさの三つで味わえているか不安になるが、友希那はよく噛むことに努めてしっかりと味わう。

 

「どうだ?」

 

「ええ。これも美味しいわね」

 

無事に食べることができたので、今度は友希那が貴之に渡す番となる。

こちらも大体貴之が渡してくれたのと同じ分量になるようパスタを絡めさせ、それを渡す。

 

「今度は私から……あーん……」

 

「ん。あーん……」

 

二度目だったこともあり、こちらは割とすんなりと行く。

先程と比べて余裕がある為か、貴之は嬉しさと共に貰ったものをよく味わう。

 

「これも美味いな……。いい場所だな」

 

「あなたに合っていて何よりだわ」

 

貴之の満足した笑みを見て、友希那は安堵の笑みをする。

その後は二人で楽しく談笑をしながら食べ進めて行き、二人がほぼ同じタイミングで食べきる。

食べ終わって少し腹を休ませた後、貴之が近くに映画館があることに気づき、そこで気になっていた映画がやっていることを話したので、友希那はその話しを呑む。

 

「そう言えば、一つ聞こうと思ってたことがあるんだけどさ……」

 

「……?どうしたの?」

 

会計を終えて移動を始めて少しした時に、貴之が思い出したように切り出す。

――もしかしたら……そうなのかしら?自分の予想が合っていればいいなと思いながら友希那は反応する。

 

「友希那が髪を伸ばしたのって……俺が見てみたいって言ったからか?」

 

「……!覚えてくれていたのね」

 

貴之がはっきりと覚えてくれていたので、友希那は頬を朱色に染めて笑みを浮かべる。

自分から聞こうと思っていたのだが、相手の方から確認してくれたのでそのまま乗っかることができたのも大きい。

 

「えっと……どうかしら?」

 

「ああ。改めて言わせてもらうと……」

 

――とても綺麗だよ、友希那。その言葉を聞いた友希那は嬉しさと恥ずかしさで顔を真っ赤にした。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「どうだった?」

 

「ええ。いいものが見れたわ」

 

友希那の満足した声を聞いて貴之は一安心する。

今回見た映画は少年と少女、二人の幼馴染みのことを描いた話しであり、それぞれが夢を抱き、将来の為に旅立つことまでが描かれている。

夢を抱くのは互いに小学生の終わり頃、それまでは二人で互いに夢へ向けた勉学に励み、時々二人して状況を話すという仲の良い姿が描かれる。

二人はその過程で恋心を抱いて行くのだが、二人ともそれは夢が叶った後、運良く逢えたらと言うことで夢を追うことを優先した。

夢が叶って別々の場所で過ごす中でもメールや電話でのやり取りは続いており、当人たちの恋は今後次第という形で終わる。

こうなったのもこの映画自体、夢を叶えると言うことが一番のテーマとして作られている為、恋に関してはおまけ要素なのだ。

しかしながら、雰囲気自体は悪くないので、状況次第ではそちらも成功しそうな終わり方が見えてはいた。

 

「一つだけ、思ったことがあるの」

 

「どうした?」

 

二人が再会できていないことで、友希那は改めて感じ取ったことがある。

切り出した自分の言葉に反応した貴之の声音は柔らかく、非常に話しやすさを引き出してくれた。

 

「私……貴之と再会できてなかったら、こうしていられなかったと思う」

 

「そっか……また会えたから、こういうこともできてるんだよな……」

 

彼らは会えていないからメールや電話しかできないが、自分たちはまた会えたからこそこうして出掛けることもできる。

貴之の場合はこれでいいのだが、友希那からすればもう一つ重要なことがある。

 

「それだけじゃないわ……。私は貴之と再会できなかったら、Roseliaでバンドを続けられなかったかも知れないから……」

 

友希那の目尻には涙が浮かんでいた。そうなった場合の未来を想像して怖かったのが大きい。

だからこそ、貴之と再会できた嬉しさも非常に大きくなる。

その気持ちを体でも伝えるべく、友希那はそっと貴之の胸へと体を預ける。

 

「だから……貴之とまた会えて、本当によかった……」

 

「俺も、友希那とまた会えてよかったよ……」

 

貴之は友希那の言葉に肯定の旨を返しながら、優しく抱き返してやる。

その行為が嬉しくて、友希那も更に体を寄せた。

 

「「(今日この後……ちゃんと伝えよう)」」

 

この行動で互いの想いが抑えられなくなった二人は、帰り出すことになった際に決意をするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「お互い楽しめたようで何よりだな……」

 

「ええ。出掛けられて良かったわ」

 

自分たちの家の最寄り駅で電車を降り、二人は帰りの道を歩く。

帰りの電車に乗った際、二人共々肩を寄せ合って眠りこけてしまい、危うく乗り過ごしそうになったのは内緒である。

電車を降りた後は互いに手を繋いだ状態であり、そのまま互いの家の前……には行かず、再会した時の夜と同じく近くの公園へと足を運んでいた。

二人共々伝えたいことを伝えたかった為、人目の付かない場所に移動したかったのがある。

 

「「その……伝えたかったことなんだけど」」

 

タイミングが被ってしまい、二人はそこで硬直する。

 

「えっと……レディーファースト、なのかしら?」

 

「どうなんだろうな……こういう大事な時は男が先とも言うけど……」

 

妙に切り出しづらい状況になって戸惑ったが、覚悟を決めた貴之が先に切り出すことにした。

 

「こういうのあんまり得意じゃないから、思い切って直接言わせてくれ……」

 

「え、ええ……」

 

貴之の決意した目を見た友希那は半ば反射的な返事になってしまった。

あまり長引かせると決意が揺らぎそうなので、貴之はすぐに続ける。

 

「俺、遠導貴之は……湊友希那のことが、一人の女の子として好きです」

 

「……!」

 

――もしよければ、俺と付き合ってください。貴之が綺麗に頭を下げながら右手を差し出す。

その言葉に驚き、嬉しかった友希那は頬を朱色にしながら口元を抑え、目尻から涙をこぼした。

数瞬の硬直から抜け出した友希那はすぐに駆け出し、その右手を両手で取る。

 

「……!」

 

「喜んで……。私、湊友希那も、遠導貴之のことが、一人の男子として好きです」

 

自分の手を包まれるような感触を感じた貴之が顔を上げ、友希那が笑みと共に告白を返すのを見る。

両想いであることを確認した二人は体を寄せ合った。当然、両者共に嬉しさの籠った笑みを浮かべていた。

 

「いつから、私のことが好きだったの?」

 

「俺はヴァンガードを始める前に、友希那の歌を聞いた時から……そっちは?」

 

「私は貴之がヴァンガードを始めた後に、私のことを理解しようとしてくれる姿勢を見た時から……」

 

好きになった時期を伝え合った時、二人は自分には目の前の人がいなければ今は無かったと再認識する。

こうして約束を果たし、伝えたいことも伝えた二人はこの先新しい場所に進むことになるが、途中で立ち止まっても最後は進んで行けると感じていた。

 

「またお互い、頑張っていきましょう……。まだまだ上を目指せるわ」

 

「ああ。それと、これからも末永くよろしくな」

 

「……!ええ。こちらこそよろしくお願いするわ」

 

互いに握手を交わした二人は幸せを噛みしめた満面の笑みをする。

気持ちを伝え、これからも互いにそれぞれで上を目指すことを決めてから、二人は手を繋いで家に戻っていくのだった。




一先ず二人の想いが重なったところで本章は完結です。予想より長くなっていました……(笑)。

次の章ではイマジナリーギフトⅡを追加したファイトを数本と、イベントシナリオの「思い繋ぐ、未完成な歌」と「Don't leave me,Lisa!!」……この三つをやっていこうと思います。
特に「思い繋ぐ、未完成な歌」は本章の結果を反映した展開をしていこうかと考えているところです。

今回の感想に関してはラウクレ二日目がある都合上、返信が遅れる可能性がありますので、遅くなってしまったらすいません。

最後に、ここまで読んでいただきありがとうございます。これからもまだ続いていくので、今後とも本章説をよろしくお願いいたします。
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