オリジナル要素多めで本来の要素が少なめになったのは、本小説による変更点の反動が来ています……(汗)。
「と言うことで、無事に許可は貰えたわ。これがパートごとのスコアね」
「ホント?良かったね」
友治と話し合いをした翌日。早速練習を始める前に皆に聴いてもらった曲のスコアを渡す。
反応したリサもそうだが、結果を聞いた全員が安堵する。
ちなみに今日ここへ来る前に俊哉が貴之へ、リサが友希那へとCordにて『ゆうべはおたのしみでしたね』と言うチャットを送っていたのだが、これに気づくのは起きた直後であった。
その結果意味を理解していた貴之は顔を真っ赤にして俊哉に弁明のチャットを打ち、意味を理解できなかった友希那はリサによく分からないと言う旨を合流した際に告げている。
「どんな感じなんだろう?」
「簡単じゃないとは思うけど……」
あの完成度なのだから、間違い無く難しいものが来る。そう確信しながら、全員でスコアを確認し始める。
確認していくのはいいのだが、一同が共通のタイミングで絶句することになる。
『(よ、予想以上に難しい……!)』
自分たちが「このくらい難しいものだろうか?」と思いながら確認していたら、それが見事に外れていた。
既に時間は限られている中でこの曲をできるようにする以上、いつも以上にハードな練習になるのは目に見えている。
「こ、これを三週間も無い状態で……」
「確かに難しいですが、できるようにすれば更に上を目指せるでしょうね」
あこの不安になる声も、紗夜の成功した場合の声も、どちらも分かる。
確かに暫くの間は更に厳しい練習を重ねることになるのは確実だが、それでも演奏できるようになれば自分たちがいる位置のその先が見えるのだ。
また、こうして今回は許可を貰っての事なのだから、できるようにする以外道は残されていないも同然だった。
「降りるなら今の内……と言いたいところだけれど、それは無さそうね?」
友希那の確認に全員が首を縦に振る。自分たちがやりたいと言い出したのだから、降りる理由などどこにも無かった。
「なら、早速始めましょう」
「ええ。湊さんのお父様が許してくれた以上、最高の状態で演奏できるようにする必要がありますから」
演奏させて貰えるのだから、最高の形で演奏する。それは許して貰えた恩義を返すことに当たる。
だからこそ友希那は開始促すし、紗夜も言い聞かせるように続ける。
「じゃ、その為にもまずはスコアを覚えないとねぇ~」
「今回の曲……今までよりも難しいですから……」
その最高の形で演奏する為にも、まずはどうやって演奏をすれば良いのかを知る必要がある。
故にまずは楽器を弾きながら、叩きながらでも構わないので、それを覚えることから始める。
「でも、できるようになったら絶対に嬉しいし、楽しいと思うっ!」
目標を立ててそれの達成を目指す際に、達成できたらどうだろうかと言うのを想像するのは悪い事ではない。実際にそれで目標に向けての活力になるのなら寧ろ良い事にもなる。
こうして五人で意思疎通ができたところで、早速練習を始めるのだった。
* * *
「お前はどうしてあんなの送って来やがった……」
「悪い悪い。出来心でな……」
「わざわざ相方に頼んでそれぞれに送るってのは中々用意周到だな」
『(何が何だかさっぱり……)』
友希那たちが練習を始めた直後、ファクトリーにて今日の朝にあった事の顛末を話していた。
この中で俊哉の意図をあっさりと理解できたのは竜馬ただ一人で、それ以外は首を傾げる。
ちなみにこれをやるにあたってリサに教えた際は、『な、何その含みのある言い方……』と聞いた直後は顔を赤くしていたが、落ち着いた後はノリノリでそれを承諾していた。
俊哉が行ったこの振りはかなり昔のゲームであり、貴之は見せてもらっていなければ、竜馬はそれを遊んでいなければ気づけなかったので、踏み込もうと思わなければいずれ忘れ去られそうなものである。
「しかし……あれだけ練習したと言うのに、もう『ヌーベルバーグ』の使用を辞めてしまうのかい?」
「ああ、そのことか。大会終わって、インタビュー受けた時に思ったんだが……俺のせいで『グレード4が必須』って認識が生まれちまったらってなったらちょっとな……」
一真の問いには普段以上に真面目な回答を下す。
実際のところ『ヌーベルバーグ』を秘策として用意したのが影響して、そのことをかなり問われてしまっている。
元々次はこうしたいと決めていた貴之は『グレート』などを採用し、自分本来の戦いに合わせたデッキを組んだが、その後発行された雑誌におけるインタビューの部分を見た時に『これは不味い』と感じ、『ヌーベルバーグ』に詫びを入れてまでデッキから外すのを急いだのだ。
「だから……俺は責任を持って教えて行かなきゃいけないんだ。大会を勝ち進むのに、グレード4が必須だなんて
「なるほどな……そうなったらすぐに外したくもなるな」
「あくまでも特定の相手に勝つための秘策であって、本来は違うからね……」
貴之がどういった目的で『ヌーベルバーグ』を入れたかの話しを一足早く聞いてた為、大介と弘人が他の人たちよりも早くに納得をする。
後江の人たちにも改めて本来はそうじゃないと言うことは雑誌が出た日に伝えてあり、『じゃあ次は本来のやり方で証明だな』と応援の言葉を貰っている。
その時貴之は改めて、自分は周りの人物に恵まれていることを実感するのだった。
「貴之の意気込みが十分に伝わったところでだけど……時間も来てるし、始めよっか?」
「ああ。そろそろだったな……」
次の全国大会に向けた方針もそうだが、時間に余裕のある貴之は暫くの間後進に教える等の寄り道をしながら進んでいくことにした。
店内で多くのファイターたちに教えながらファイトをしたり、ファイトの流れを教えることを提案したのは貴之で、ファクトリー側としてもそう言ったことはどこかでやりたいと考えていたのが今回の講習会を実現させた。
また、講習会の評価が良かった場合、貴之らの時間が合えば不定期で少しの間やっていきたいという事になっている。
「それじゃあみんなお待たせ、これより『第一回 ヴァンガード講習会』を始めて行くよ~!」
これはあくまでも店側の開催である為、こう言った司会等は美穂が行っていく。実践するときに始めて貴之らが呼ばれるのだ。
早速ファイトの流れをやりながら覚えていくと言うことで、今日初めてヴァンガードに触れて見る人が一人前に出てきたので、貴之が相手になる。
この時今後もお約束となるであろう「完封とかはしないから安心してね」と、安心させる一言を入れる。
「それじゃあこれから始めるんだが……まずはイメージしようか」
友希那が先へ進む方向で次の場所への第一歩を踏み出す中、貴之は新しく始める方向で次の場所への第一歩を踏み出した。
* * *
「き、今日はここまでね……」
片付けを始めなければならない時間になるまで練習をした直後、五人とも予想以上の難しさに音を上げた。
パートの都合上仕方ないのだが、あこは特に顕著に出ており、終わるや否、もうその場でへたり込んでしまっている程である。
「あこちゃん……大丈夫?」
「うあぁ~、また体力強化だぁ~……」
せっかくあれだけ頑張ったのにと言わんばかりの声を聞き、気に掛けた燐子は同情するしかなかった。
また、燐子が加入するよりも前に頼んでいた友希那もこの状況のあこに対してまた頼まなければならなくなり、若干躊躇いが生じる。
ただし、この曲を演奏するに当たって必要な事でもあるので、友希那はしっかりと頼み込み、あこも力なく返事する。流石に全員が予想以上に疲労している為、今回ばかりはその辛そうな声で返事するのもやむなしだろう。
「これは……久しぶりに帰った後も思い切った練習が必要ですね」
「荒れる手のケア、忘れないようにしないと……」
最近は自宅にいる間は軽めな練習で終わらせることの多かった紗夜も、久しぶりに思い切った練習をする必要が出てきた。いきなり何事かと心配されるかもしれないが、隠す必要は無いので正直に話すつもりでいる。
リサも自分が過度に練習しすぎるとどうなるかを理解しているので、己に釘刺すように言う。
「今日って延長取れたっけ?」
「いえ、もう次の人たちが来るから無理ね」
「他の部屋も埋まってしまっていますね……」
――ダメか~。と、二人から回答を聞いたリサは落胆する。延長が取れるならこの場でもう少し練習をできたのだが、ダメならば仕方ないと割り切ることとなる。
実際のところ、できたとしてもあこが体力的に今日は危険なので、どの道個人練習にする方針である以上延長は選ばないだろう。
片付けが終わった後は戸締りを行い、鍵を返してライブハウスを出てすぐのところまで移動する。
「今日はここで解散になるけれど、この後練習する分には問題無いわ。ただし、後日に支障をきたすよりも前にしっかりと休みは取っておいて」
休めと言っても練習が足りないと感じて燻る人もいれば、練習しろと言われて後日のパフォーマンスに支障をきたす人もいる。
それならばどちらを選ぶも自由だが自己管理を忘れるな……と言う個人意志を尊重した言い方が最も良いと友希那は判断した。
事実、それに反論する人はおらず、全員の納得を取れたところで今日は解散となった。
* * *
「よし……これで人数分だな」
日は進んでメインステージの前日。差し入れとしてスポーツドリンクを人数分購入した貴之はライブハウスへと足を運び始めた。
思いつきで頼み込んで実現した講習会の評価は好評で、数人の時間が合えば第二回を開こうと言う話しが持ち上がっている。
ちなみに貴之がRoseliaの練習現場に行く理由としては、友治から「時間を忘れて練習する可能性があるから、何か手伝ってあげられないか」と頼まれたのが大きい。
断る理由も無いし、自分が比較的開いているし、友希那の力になってあげたいのもあって引き受けたが、事あるごとに自分が先に手伝い、友希那に後で手伝ってもらうパターンが出来上がりそうだと考え、貴之は歩いてる最中に苦笑する。
「(チケットは取ってあるから、久しぶりに友希那の歌が聴けるな……)」
予定が空いていることは非常に僥倖であった。なお、小百合もせっかくのメインステージを見に行きたかったのだが、生憎試験の時期と被ってしまっているが故に断念となった。
それに対しては試験終わった辺りで何をやるかは確認すると話しをしたので、小百合は納得して試験勉強に戻っている。単位を取れないと元も子もないと言うのは本人の談である。
また、こうして前日に彼女らの現場に来る貴之だが、今回は差し入れをしたら終わるまで待つか、そのまま帰るかの二択を想定している。
というのも、せっかく当日の楽しみにしている歌をここで聴くのは勿体無いと感じているのが最大の理由である。
「……あの部屋だったな」
ライブハウスに到着した貴之は友希那に教えて貰った部屋と間違い無いかを確認し、ドアの前まで移動する。
様子を確認すると丁度通しが終わったらしく、入るなら今の内がいいことを教えてくれていた。
その為貴之はノックをして向こうに開けてもらうのを待つ。以前のスカウトの時は行かなければならない可能性があったので例外である。
「あら、貴之?」
「友治さんに頼まれてな。ほら、差し入れ」
貴之が持っていたビニール袋を、友希那はお礼の一言を言って受け取る。
「この後はどうするの?」
「そのまま帰るか、そっちが終わるまで待っていようかで考えてたが……これなら待たせてもらおうかな」
「なら、もう少しだけ待っていて頂戴ね?」
友希那の問いかけに頷いて、貴之は部屋を後にする。幸いにもこのライブハウスのすぐ近くにはカフェがある為、時間つぶしには困らない。
――まずは一旦みんなに渡して……。それからどうしようかを考えていた友希那だが、あこと燐子がまだ練習する素振りを見せていることに気づいた。
「あら?二人ともどうしたの?」
「あっ、あと一時間だけ残っているから練習していこうと思って……」
「私もあこちゃんと同じです」
聞いてみたら案の定予想通りの回答が帰ってきた。前日なので本来はもう休ませるべきかもしれないが、この様子だと難しいことが伺える。
現に三時間通しで練習を続けている為、リサもそこまでやるのかと言いたげに「あれだけやったのに、まだ練習する気なの!?」と声を上げている。
「私も残ります。あと少しだけ煮詰めたいので」
「えっ、紗夜も?休むのも練習の内なんだけどなぁ~……」
流れ的に全員残るのかな?なんとなくだが、リサはそれを確信した。
「そう言うリサは?」
「アタシも残るよ。後で変な練習するくらいなら、今練習した方がいいし。聞いてきた友希那は?」
現に自分も残る選択をしているので、恐らく友希那も残る選択を選ぶだろう。
「当然残るわ。ただその前に……」
――一旦水分補給だけはしましょう。そう言って貴之から受け取っていたビニール袋にあるペットボトルをそれぞれに渡していった。
その後あっという間に一時間が経過し、時間になった以上ここまでなので片付けをして上がることになった。
「思ったことがあるのですが……」
「何かしら?」
帰り際に、紗夜が友希那に気づいたことを話そうと振ってみる。
細かい部分では違うかもしれないが、大まかな部分では同じであった。
「お互いに……音楽に対して素直に向き合えるようになって来ましたね」
「人間関係にも……かしらね?」
前者はお互いがいいところまで、後者は紗夜の方がもう少し時間が掛かってしまうかもしれないが、以前よりは大分良くなってきている。
どうしてこんなところまで似てしまったのだろうか?互いに同じことを考えながら顔を見合わせ、困った笑みを浮かべた。
――また明日、みんなで最高の演奏を。同じ想いを口にして、今度こそ帰路に就くのだった。
* * *
「友希那、明日が本番だったね?」
「ええ。お父さんも来るのよね?」
帰宅して夕食を終え、後は風呂に入ったら寝ると言う状況になった際に、友治から明日の確認を貰う。
今回どうにかして時間とチケットを勝ち取った為、彼も友希那たちのライブを見に行くことにしている。
「私が今抱いている想いを乗せて、最高の形であの曲を届けるわ」
「ああ。今の友希那なら、上手く歌えるはずだ……」
友治の言葉に、友希那は自信を持って頷く。
明日を楽しみにして欲しいと告げて、そこから風呂に入ろうと思ったところで友治から「待ちなさい」と声を掛けられる。
「これを持って行きなさい」
手渡されたのはシルバーのアクセサリーであり、これがライブを行う際に必ず友治が身に着けていたものであることに気づいた。
「お守りだと思って身につけるといい。明日きっと……友希那の歌をより良いものにしてくれるはずだ」
「お父さん……」
――ありがとう。使わせてもらうわね。友希那は礼を言って、そのアクセサリーを自分の部屋の分かりやすい場所に置いてから、今度こそ風呂に入ることにする。
「(友希那……お前がこの先も、チームメンバーと歩いて行けることを祈っているからな)」
部屋に戻っていく友希那の姿を見た友治は、彼女の今後がより良いものになることを祈った。
イベントシナリオの5話がこれで終わりです。
変更点としては……
・残る宣言をする順番が微妙に変化(友希那とリサの順番が逆)
・友治は最初から友希那のライブを見に行くつもりでいる
この二点が主でしょう。予想よりも変更点が少ない結果となりました。
次回はそのままメインステージの話しになります。ここで2話分くらい使う可能性がありますが、お付き合い頂けると幸いです。