イベントシナリオのエンディング部分になります。
「……ん」
携帯電話が鳴らすアラーム音に反応して友希那は目を覚ます。
普段であればここまで早くは起きないのだが、今回はメインステージがある為、早く起きる必要があった。
「(お父さんが私の為に用意してくれたのだから、持って行かない理由なんて無いわね)」
着替えの際に先日渡してくれたアクセサリーを置いてあることに気づき、忘れずに身に着ける。
朝食を取った後はリサと共にメインステージの会場へ向かう為、リビングに向かう際に荷物は予め持って行ってしまう。
「おはよう」
「ああ。おはよう友希那」
「ご飯出来てるから、食べちゃってね」
自分がやってくれば、両親が暖かく迎え入れてくれる。その良さを改めて気づけたのは、自分が変わっている大きな証だろうと友希那は考える。
――あの頃のままだったら……どうなっていたのかしら?一瞬不安になったので考えるが、既に自分はそうならない道を選んだ以上結論は出さず隅に置いた。
そのまま今日はお互いにどうするのかを確認しながら朝食を取り、友希那は一足早く家を出ることになる。
「それじゃあ、先に行くわね」
「ああ。また後で顔を出すよ」
なお、友治は貴之らと打ち合わせて連番で席を取っているらしいので、一人見つければ全員が並んでいるそうだ。
見つけられればいいなと思いながら外に出れば、自宅の前でリサが待っていた。
「おはよ~♪体の調子はどう?」
「問題無いわ。リサも大丈夫?」
「もちろん!今日の為に手のケアとかも早くやってたしね」
互いに問題なさそうなのが確認できたので、そのまま駅へと歩いて行く。
ちなみにこの後、更に三人とも駅前での合流を行う為、そこからは五人で移動することになる。
というのも、昨日の練習を終えた後にリサができそうかを確認し、大丈夫だったのであこがそれをやろうと言い出し、全員でそれに乗っかった結果であった。
「何気にこう言う機会って無かったよね?」
「帰りが同じ……と言うのはあったけれど、行きからみんな揃って……と言うのは無かったわね」
みんなで一緒に行くのもいいかもしれない、と言う考えから全員が賛成しており、特に会話が無くても何かいい空気になりそうだとは思っていた。
二人が駅前に来ると先に来ていた三人が談笑をしている姿が見えたので、そちらに足を進める。
「お待たせ~♪アタシたちで揃ったかな?」
「はい。お二人とも、体の方は大丈夫ですね?」
紗夜の問いには頷く事で返す。体調に問題がある人はいない為、後は自分の持てる力の全てを発揮するだけとなった。
今回は曲が曲なので、体調不良で良い演奏ができませんでしたと言うのはできないし、実際にそうだったら笑えない話しである。
「あっ、そろそろ切符を買った方がよさそうです」
「ホントだ……後七分で電車来るっ!」
五人が買うこととホームまでの距離を考えれば結構ギリギリな時間である為、一度話しを切り上げて、電車に乗るべく行動を始める。
無事に電車に乗った後は会話こそ少なかったものの、同じ目標を持っている人と一緒に向かうと言う心強さは、彼女らから不安と言う暗雲を払いのけた。
* * *
「さてと、最寄り駅だね」
「この駅を東口から出てすぐのところにあると……結構近いんですね」
友希那たちから一時間近く遅れて、貴之らは会場の最寄り駅に到着する。
ちなみに友治にあった際、俊哉と玲奈は普通に挨拶するで済んだのだが、竜馬は一緒に来る人が友治だと知って大分驚いていた。バンドに関してそれなりに知識があった故の驚きである。
相変わらずこういう時に玲奈が女子一人なので、友治は大丈夫なのかと一度問うている。
「大丈夫ですよ。というか、女子だけの空間にいる方が違和感感じ始めてて……」
玲奈が大丈夫ならばいいのだが、それはそれで大丈夫なのだろうか?と友治のみならず全員が疑問に思った。
ちなみに玲奈がこうなる一旦を築き上げた貴之と俊哉に至っては、そんな様子の彼女を見て「もし、女子らしくないとかいう理由で避けられたら本当にごめんなさい……」と割と深刻そうな様子で謝っていた。
こうして謝る二人がいてくれたのが理由で今の自分がある為、玲奈は別段恨んでいる訳ではない。寧ろ感謝している。
ただそれでも、確かにそう言った空間に慣れていった方がいいとは思っているので、今度リサに頼もうかとは考えていた。
やはりと言うか人の数は非常に多く、この流れに付いて行けば確実に辿り着けるのを確信させてくれる程であった。
案の定その流れに乗っかって進んで行けば会場まで足を運ばせており、入場に関する案内のアナウンスが聞こえてきている。
「すいません。ここ八人連番です」
「はい。それぞれのチケットを確認させていただきますね」
八人でそれぞれのチケットを渡し、全員分の確認が取れたので案内に従って先に進んでいく。
「それにしても、八人全てをできるとは思わなかったね……」
「実際にやった俺も驚いてる……許されたのは奇跡だと思うよ」
聞いた時に不安に思った一真と、実際に連番の申し込みをしていた俊哉の本音であった。
ちなみにこう言った場所に関して一真と弘人が初めてである為、この辺りに関しては竜馬と俊哉でサポートしていく形になる。
というのも、友治は目上の人なので本人が言わない限りそう言ったことを任せるのは失礼だし、その他の人たちもまだ慣れていない人等になる為、消去法でこの二人に収まった。
「なるほど……コンテストの時もそうだけど、今回も採点があるのか」
「今回は俺から許可を取った曲だから、その辺りで不利が付くだろうけど……それでどこまでやれるかだね」
貴之自身が採点に関することに余り知識が無いので、友治が説明する。
原則的には自分たちの曲でやる必要があるのだが、今回は新しい試みとしてカバー曲の採用が許可されており、その代わり採点が少々厳しめになるそうだ。
最優秀を取るのは非常に厳しい状況ではあるが、今回彼女らに取って大切なことは違うため、そこで挫けることはないと思いたい。
一応差し入れがいるかどうかを聞いてみたところ、友希那たちからは自前で用意するから大丈夫という、旨が帰ってきたので今回はそのまま指定された席に移動する。
「一チーム一曲ずつで……そこから採点されて結果が出るんだよね?」
「ああ。そこから成績と業界側の人が気に入ればそこでスカウトの声が掛かったりもする」
ちなみに並びは左から順に弘人、竜馬、一真、玲奈、大介、俊哉、貴之、友治となっている。
友治と交流が長いのは貴之なので、自然と彼が隣になった形である。
また、この時玲奈と竜馬が話していた内容で、友治はバンド時代のことと現在のことで一つ気が付いた。
「(そう言えば、スカウトが来た時はみんなで喜んでいたっけか……)」
――あいつら、今はどうしているんだろうな?話しが聞こえた友治は、以前組んでいたバンドメンバーのことを思い返した。
共にバンドをしていた時は交流も多かったのだが、売るための音楽をする日々に耐えられずに折れた罪悪感から、友治から積極的に連絡を取ろうとは思えず、バンドメンバーもそんな友治の様子を察して連絡を遠慮していた。
そんなことも全く連絡が取れていない日々が続いてしまっており、結果として疎遠のような状況ができてしまっている。
これからどうなるかは分からないが、せめて自分たちのような終わり方はせず、メンバー全員が後腐れしないような道をたどって欲しいと友治は祈った。
「(確か友希那たちの番は……)」
時間が空いてしまっているので、貴之は一度順番の確認を始める。
* * *
「さてと……準備はいいわね?」
メインステージによりチームごとの演奏が始まって、少しずつ自分たちの番が迫ってくる。
ステージ衣装を身に纏い、友治から渡されたアクセサリーを忘れずに付けた友希那の問いに全員が頷く。
今回は選曲の都合もあり、賞を取りに行くのは難しいが、それは解りきっているので深く引きずりはしない。
「全員体の方は問題無し……ですね」
「いつでも動けますよ~っ!」
「せっかく演奏させて貰えますから、大丈夫にしてきました」
「アタシも大丈夫♪後は演るだけだね」
コンテストの時に会話の反応が悪くなる程だったリサも普通にしているので、一安心だった。
ならば後は演奏するだけ……と言うところで、全員が一つのことに気が付く。
「思い出したのだけど、これの結果次第では暫くの間自発的にライブ等を重ねないとフリーになりがちね……」
「私たちも、貴之君のように何かやるべきことを見つける必要がある……と言うことですね」
このメインステージが終わると学生の試練である学期末試験と、夢の時間とも言える夏休みが待っている為、暫しの間時間が空いてしまうことになる。
当然、試験を乗り越えることは大前提だが、確かにこのまま特に目指す指標も無しに練習を重ねるのは良くない気がしていた。
「ああ~……みんなが大丈夫ならだけど、どこかで合宿とかどうかな?夏休みなら時間取れるし」
「確かに……遠くで練習するのも、何かありそうですね」
全員が家から許可を貰い、どこかで予約を取って使わせてもらえれば十分に実現可能で、収穫も得やすいその提案はありがたかった。
ならば今度、どこかを探してみよう。リサの提案を聞いた友希那と紗夜が真っ先に考えた。
「場所次第では夏休みらしいこともできるし……一石二鳥っ!」
「あ、あくまでも合宿がメインですからね……?」
とは言えそれが悪いわけでは無いので、あこの考え方を強く咎めようとはしない。
実際、忘れないで欲しい旨を伝える紗夜ですら、その提案は魅力的に思えている。
「何がともあれ、まずは今回の曲を演り切りましょう。どんな結果であろうとも、私たちの最高の演奏を見せに行くわよ」
友希那の一言に頷いたタイミングで自分たちの番がやってきたので、ステージ裏にいた役員の呼び出しに応えて表に移動する。
* * *
「貴之、今日もあの見方してるのか?」
「ああ……俺にはこっちの方が性に合うみてぇだ」
時間はほんの少し遡り、Roseliaから一つ前のチームが終わったところになる。
俊哉に問われた通り、貴之は技術で見ることはせず、努力の形を見ることにしていた。
これならば友希那たちがどれだけ頑張って来たかが分かりやすいのもあり、貴之が尚更こちらを選ぶ理由として強まる。
ただ、彼女らが少しずつヴァンガードの知識を蓄えて来ているように、そろそろこちらも技術の面を学んだ方がいいかもしれないと感じていた。
その為、貴之もより深く相手の分野に入り込むべく、時間を見つけて学ぼうかと考えている。
《次はRoseliaです》
来た――!アナウンスを聞いた友治とヴァンガードファイター七人がステージを注視する。
彼女らが入ってくると、待っていたと言わんばかりに歓声の声が聞こえた。
「Roseliaです。本日は来てくれてありがとうございます」
全員が所定の位置に着いたのを確認してから、友希那がチームの代表としてマイクを使って挨拶をする。
そのまま一言入れて演奏をする前に周りを目で見渡し、友治と貴之がいるのを確認できた。
予定通りの言葉を投げて演奏に入ろうかと思ったが、一瞬だけ笑みを浮かべて言葉を変えることを決めた。
「今回私たちが演奏するのは……今日ここに聴きに来てくれている人が作ったものの、歌えぬまま終わってしまった無念のある曲です」
友希那の言葉で友治と七人は、彼女がこちらに気づいたことを理解する。
また、この時Roseliaが自分たちの曲では無くカバー曲を選んだことを会場の人が気づき、彼女らが賞を取りに来たわけでは無いと悟った。
そうまでして歌いたい理由がある――。そう感じ取れた為、友希那が続ける言葉を聞くべく耳を傾ける。
「その歌えなかった曲に……私たちで命を吹込み、この場でその無念を終わらせたいと思います……!聴いてください、『Louder』!」
友治から許可を得て演奏することを決めた曲の名は『Louder』。友希那が言い終わると同時に演奏が始まり、一瞬にして会場の空気を飲み込んでいく。
最初は自分たちの曲で挑まなくて良いのかと不安に思っていた人たちも、いつの間にかそんなことは関係なくなっていた。
また、初めてライブを観に来た一真と弘人も「これは凄い」と感じ取れる程で、その引き込み具合が伺える。
「(この感覚は……初めてみんなと音を合わせた時と同じもの……。けれど、一体感はそれを上回っている……)」
「(友希那凄い……!ほぼ最初から、友希那の歌声にベースが引っ張られてる……!)」
再び味わうことのできた感覚に気づき、引っ張られていてもその流れに身を任せる。
その結果初めてのメインステージと言うプレッシャーの掛かりやすい場所でも、自然体の状態で演奏ができた。
この曲は友治が純粋に音楽を楽しんでいた時期に作っていた為、その曲調からは「いつかは望んだ場所へ辿り着く」と言う意志を感じさせてくれるものだった。
それを歌いたいが歌ってもいいのかで悩んでから結論を出した友希那が歌うことで、「未熟なりに進んでいき、最後は自分の音を完成させる」と言う気持ちが伝わってくるものになる。
「(うわぁ凄い……!いつも以上に上手く叩けている気がする……!あこだけじゃない、みんなも……)」
「(ずっとそう思っていることだけど……こうしてみんなと音を重ねるのが楽しい。ずっと音を重ねていたい……そう思うくらいに)」
今の彼女たちは完全に流れに乗っかっていた。
乗っかるままに音を奏でて行き、会場を湧き上がらせていく。
友治とファイターの七人の内、比較的冷静さを保っていたのは友治くらいであり、貴之も大分飲み込まれている。
実際のところ、彼女らから感じ取れる努力の痕跡が奔流のように見えていたので、もっと見せてくれと思っていたのだ。
「(大切なものと向き合う強さはつい先日に知ることができた……心の底から音楽を楽しいと思えて来ている)」
歌っている中、友希那は自分の中にある変化を実感してきていた。
思うだけでなく、本当にそう言えるようになったのなら更に先に進めるだろうことを確信する。
「(まだ足りない……私は
友希那はその渇望をそのまま歌に乗せる。
渇望を乗せるタイミングが丁度サビであった為、効果は非常に大きい。周りの熱が更に高まっている。
そうして集まった熱を逃すことなく、友希那は最後まで歌い切り、四人も演奏をこなす。
「(技術だけじゃない、一人一人の気持ちがしっかりと伝わってくる……)」
――友希那は、いいチームを持ったね。演奏を聴き終えた友治は満足げに頷く。
終わった後は挨拶をしてからステージを去っていき、この後も他のチームが演奏を行っていく。
全てのチームが演奏を終えた後の結果でRoseliaは賞こそ得ることは出来なかったものの、最も話題をかっさらって行ったチームとなった。
* * *
「お父さん、このアクセサリーをくれてありがとう。おかげでいい演奏ができたわ」
「そうか……それは何よりだ。俺としても今日はいい演奏だった」
発表も終わり、楽屋に戻って着替えて上がる状況になった。
何事もなければそのまま楽屋に入って着替えるのだったが、友希那はこちらにやって来る友治の姿に気づいたのでそちらに足を運んで話しをしていた。
ちなみに友治は、Roseliaの五人が当人たちにしか感じられないものを持っていたと推測を立てていたので聞いてみると、案の定それは当たっていた。
「あの曲をどこかで表に出せたら良かったとずっと後悔していたから、今日でようやく表に出ていって安心したよ」
――また一つ、バンド時代の思い残しが消えたよ。そう言う友治の表情は安堵のものだった。
それを見た友希那もまた、父の笑みを一つ増やせたと安心する。
「さて……そっちはチームのみんなと反省会とかもあるだろうし、貴之君たちと先に行かせてもらうよ。これからも、みんなと一緒に頑張れ」
「ええ。今日は来てくれてありがとう」
友治が見えなくなるまで見送ってから、友希那は今度こそ楽屋に入った。
思いの外話し込んでいたのか、全員がもう着替え終えて帰るだけになっていた。
「友希那さん、何をしてたんですか?」
「お父さんと話していたの。今日の演奏、いい演奏だったって満足していたわ」
あこに問われたので正直に答えると、全員が喜びの声を上げる。
「私たちの演奏で満足していただけたようで何よりです」
「練習した甲斐がありましたね……良かった」
紗夜と燐子が安堵の声を上げる。それは今回の目的を達成したも同義であるからだ。
「上手くいって良かったってことで……今日も行く?」
リサが行こうと確認している場所は電車で戻った先の近くにあるファミリーレストランであり、それに反対する者はいなかった。
「時間も時間だし、早いところ行きましょうか」
「それなら湊さん、急いで着替えてください」
「あっ……そう言えば友希那だけ着替えてないじゃん……」
「私が……?あっ……」
紗夜とリサの私的に気づいた友希那は顔を赤くして慌てて着替える。
そんな閉まらない空気を前に、皆して笑うのであった。
これでひとまず『思い繋ぐ、未完成な歌』が終了です。ちょっと駆け足気味になってしまったのはちょっと申し訳ないです。
変更点としては……
・『Louder』の披露はライブでは無く、メインステージにて
・上記の影響で最後に用意した曲では無く、一発勝負の曲として採用
・友治は書き置きでは無く、直接感想を伝えている
この辺りでしょうか。メインステージに出た影響が出てきていますね。
次回からはイベントシナリオの『Don't leave me,Lisa!!』をやっていきます。
Roseliaメンバーの初ファイトで、印象に残っている、または面白かったものは誰の初ファイトですか?
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友希那(イメージ3)
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紗夜(イメージ16)
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あこ(イメージ21)
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リサ(イメージ22)