「~♪」
「(なるほど……音が変わるのも、悪くないわね。宇田川さんも白金さんも、いい機材のチョイスね)」
「(うんうん……♪このハイハット、思った通りかも!ジャーンって響くのがいい感じっ!)」
「(あっ……!このシンセサイザーの音、結構好きだな。みんなはどうだろう?)」
早速機材を変えた状態で全員で音を合わせて見ると、選んだ個人として良いと思える音で、他の人が選んだものも良いと言えるものであった。
気になった燐子が演奏しながらちらりと周りを見て見れば、その音を好んでいるような様子で全員が演奏を続けている。それに安堵しながら、燐子は自分たちの演奏に戻っていく。
「(すげぇな……元々の技術力がとんでもないのは知っているけど、使う機材を変えてすぐに素人目で見たら普段と遜色無い音を出してる……)」
当然、間近で最早特等席も同然の場所で見ている貴之はその音に魅了される。
この独自に関しては新しい『イマジナリーギフト』と中身を変えたばかりのデッキの二つを一度に確かめ、本来の力を発揮してファイトしたお前が言うなと言われそうなものではあるが、これはお互いがお互いであろう。
と言うのも、Roseliaの五人が貴之程即応性の高いファイトをできないように、貴之もいきなり彼女らの技術で何らかを演奏しろと言われてもできないのである。
「その様子だと……三人とも借りた機材には問題なさそうね?」
友希那の確認には全員が頷く。燐子が気にした時に、友希那も彼女らが変えた音を好んでいることを演奏から感じ取ったのである。
もし音が合わないのであれば、せっかく使ったのに元に戻すと言う少々悲しいことになるので、そうならずに一安心だった。
「では、もう少し音を合わせることを意識して、もう一度やってみましょう」
『はい!』
みんなで示し合わせて、より良い音を目指す。その光景を見た貴之は、あることを考えた。
それは全国大会の決勝で自身に起きた現象のことであった。
「(この四人のやっているような形が……『アレ』を発現させたのか?)」
その現象が発現する直前から、貴之は『オーバーロード』との距離がより近くなったように感じるので、あり得るかも知れないと考えていた。
断言しないのはあくまでも憶測に過ぎないからである。これ以外にも、秋山姉妹が資料を使って探し出してくれているので、その結果待ちな所も大きい。
考えを軽く纏めた後は学ぶ為にも友希那たちの音楽を聴き、練習風景を見ることに集中する。
「……ふぅ。借りてきた機材はいい感じね」
そうして一時間経過したところで、友希那の下した評価に三人で安堵する。
音が問題無いことを確認したところで、次は個人の改善点に移る。
「紗夜は全体的に悪くないわね。強弱をつけるともっと良くなると思うわ」
「はい。ではそのように」
「あこは前より配分を意識した演奏が見えているから、この調子でより良い配分ができるようにして欲しい所ね」
「わかりましたっ!」
「燐子はこのまま、あこに合わせるようにしてくれると助かるわ」
「はい」
個人に対してそれぞれ言い終わった後、全体の纏まりは悪く無いのでこの調子で続けて行こうと投げかける。
リサがいないのでどうなるかと思ったが、出だしはまずまずと言えるだろう。
「それにしても、今の紗夜さんのギター演奏は……こう……漆黒の闇より生まれし炎の
「うん、そうだね」
「え、えっと……?」
「何て返せばいいのかしら……?」
あこの言い回しに良い反応ができたのは燐子のみで、普段ならこの手合いに反応する機会の少ない友希那と紗夜が戸惑うことになる。
こうなった理由に貴之はある程度予想が付いた。Roseliaのメンバーであり、最もコミュニケーション能力の高いリサが不在なことが起因していた。
リサはそれと無く乗っていたことは予想は着くが、恐らく今の自分程真面目に返すという考えははしていないだろうと貴之は予想できた。
「何らかの形で、
「あぅ……ダメだった」
「ど、ドンマイ……あこちゃん」
「今度、どこかで教えて貰うべき……なのかしら?」
今後のことを考えると、そんな機会があってもいいと思えたのは紗夜もそうだった。
やり過ぎは咎めなければならない面は出てくるが、かと言って窮屈すぎるのは酷だろう。
そう考えると、ある程度吐き出せるタイミングを作ってやるのも大事だと思えた。
「今は練習中だから、この話しは一旦ここまでにしましょう」
「っと……そうでしたね」
あこに対して気を配るのを考えるのは良いが、それはそれである。
絶対的にダメと言うわけでは無い事を把握してから、再び一度音を合わせる。
「あこ、一つ思いついたのだけれど……Bパートのこの部分、このやり方で一回音を出してもらってもいい?」
「なるほど……ちょっとやってみますね」
気になった場所があったので、一度あこに個別で音を出してもらう。
先程やって貰った音と今出してもらった音を比較して、全員でどっちが良いかを決めたところ、今出した音になった。
「私はAパートで感じたことがあるので、一度音を出しますね」
「ええ。お願いするわ」
次は紗夜が自発的に音を出してくれ、こちらも先程までの音と今の音を比較する。
その結果今の方がいいと言う判断になり、こちらも採用されることになった。
「燐子は何か思いついたかしら?」
「私はサビの方で思いついたんですけど、ちょっと合わない気がして……一回やってみます」
聴かねば分からないので一度その音を出して貰う。
本人の言った通り妙に合わないと感じ、残念ながら不採用となった。
「では、出す音を再確認できたところでもう一度行くわよ」
変えた音に合わせて、四人でもう一度通しを行う。本来ならばリサのパートであるベースの音と意見も交えて行っていきたいところだったが、ないものねだりなので今は隅に置いておく。
通しで行って悪く無いと言う結果になり、そのまま全員でそのまま一時間継続して練習をしていく。
……と、ここまで聞けば問題無いように思えるが、合計で二時間経った今、人としての性に当たることとなる。
「(痛っ……肩への負担が溜まり過ぎているわね)」
「(ペース配分しっかりしてたけど、腕が重くてキツイよぉ……)」
常時体を使う紗夜とあこは顕著で、平時と比べて所々動きの遅れが見えだしていた。
この二人で目立つのは体力等になってくるが、他の部分でも影響は出ている。
「(あっ……違う音出しちゃった……)」
「(所々遅れと違う音……)」
他に分かりやすい面としては集中力で、流石に二時間も連続してやっていれば燐子の強みである音の安定感が薄れ出して来た。
それによる変化は友希那も感じ取っており、一通り通しが終わった際に三人が揃ってため息をつくのも聞こえる。
「えっと……みんな、大丈夫かしら?」
「「「あっ……」」」
明らかに調子が悪そうだと感じた友希那が三人を気遣う。
すると三人は気づかれていたことを悟り、もう少ししっかりしないとと思っていた思考がそこで止まる。
最初からずっと静観していた貴之は一度時間を確認し、こうなった原因を考える。
「(流石に二時間経っているなら一度休憩を入れた方がいいとは思うが……こういう所もリサがバッチリ管理してたんだろうな)」
となればこのまま継続すると友希那も限界が来て、流石に誰かが気づくだろうが、それでは遅いだろう。
一旦休むべきだし流石に動こう。貴之はそう決意した。
「ああ……いきなりで悪いんだが、一度休憩にしねぇか?もう二時間も休まずやってるだろ?」
『えっ?あっ……』
──やっぱり時計見てなかったか……。貴之の予想が的中したのが証明された瞬間である。
ずっと練習を続けていたらそれはそうなると納得して、四人はその提案を受け入れた。
「(情けないところを見せてしまったわ……)」
先程までは平気だったものの、貴之がいることを思い出した友希那は内心で落ち込む。
ライブでしかいいところを見せられていなかったので、練習でも……と行きたかったのだが、上手く行かずであった。
「あの……良かったら、みんなで外のカフェに行きませんか?のども渇きましたし、集中力も切れているので甘いものでもどうかなと思って……」
「あっ!りんりんナイスアイデア~!友希那さんたちもどうですか?」
「出てすぐのところだったわね?私もそれがいいと思っていたわ」
燐子の提案にあこ、友希那と順番に賛成者が現れる。
紗夜もこれに賛成したことで行くことが決まり、鍵を閉めて大丈夫な状態にしてから五人でカフェに向かう。
ちなみに、紗夜が例え反対したとしても貴之は「全員に合わせる」の一点張りで通すつもりでいた為、どの道行くことは確定していた。
* * *
「いらっしゃいませ~!」
カウンターの近くまで来ると、肩に掛かるくらいの黒い髪と赤銅の瞳を持つ、小百合より少しだけ年上だろうと思わせる女性……
一先ず何を頼むか決めるべく、メニューを確認することにする。特に今まで技術一辺倒でこちらを気にしてくれる相手がいなかった紗夜と、そもそもこちらへ来る機会が殆ど無い貴之は尚更である。
「あっ、今日のおすすめパイナップルジュースだって!」
「今日は何にしようかな……?」
普段来ることの多いあこと燐子は、今日のオススメとされているものを鑑定に入れながら考える。
これに関しては時々来ることのあった友希那も同様で、実質的に即席チームのボーカルをやっていたことが生きていた。
「ちなみにここのソフトクリーム、コクがあっておいしいのよ?」
「そうなのですか?では私は……このいちごのソフトクリームをいただきましょうか」
そんなこともあって、友希那はリサから聞いた話しだけではなく、実際にそれを知っていた。
行ったことのある人が言うのならばと、紗夜はその中から一つを選ぶ。メニューを見ながらどうするべきかで長時間考えそうだったので、今回は友希那の告げ口に従った。
あこは紗夜が選んだものもアリだと思い、自分が頼もうとしたものと二つでもう一度考え直す。
「うーん……悩むけど、あこはこっちのゴマソフトにしよーっと!三人はどうしますか?」
「私は、ホットコーヒーと抹茶ソフトにするわ」
「私はホットミルクがあればいいけど……なかったら紫いもソフトにしようかな」
「そうだな……俺はチョコソフトにしよう」
ホットミルクに関しては本来時期の違うメニューなので、可能かどうかは頼むときにまりなに訊くこととなった。
話しの誘導を率先してやっていたあこがそのまま注文しに行ったので、待っている間少し話し合う。
「みなさんは普段どのくらい来るのですか?」
「私は時々ね……組んでいた人たちが行きたいと言ったら行くくらいだったわ。ここのカフェはスナック系も充実しているからいいわ」
──ドーナツとか、カリカリポテトとかがおいしいの。友希那が上げた二つの内、紗夜は後者に食いつく。
実のところ、紗夜はかなりのポテト好きであり、今度頼んでみようかと検討する。
そしてその反応した紗夜の目を見た貴之は、友希那が甘いもの好きであるのを知っている為、今度裕子に甘いものの作り方を聞こうかと考えた。
「私はあこちゃんと良く来てます。練習の後、一息つくのにぴったりですから……」
「なるほど……また今度来てみます」
思ったよりメンバーの来る頻度が高いことを知った紗夜は、一人で立ち寄って見てもいいと思った。
こう言った考えができるのも、一人で追い求める強さやその限界がどんなものかを知ったからだろう。
「お察しされてるとは思うが、俺は今日が始めてだ……」
「貴之君はそうだよね……元々進んでる分野も違うから」
「ところで、練習の時はほったらかしも同然のまま進んでしまったけれど……大丈夫かしら?」
会話に入るタイミングを逃すといるだけの空気になりかねないので、大丈夫そうな時は入っていく。
友希那から話しを振られたので、貴之は静観している際に取っていたメモを取り出す。
「この辺りなんだけどさ……」
「ああ。そこは……」
友希那に教えて貰うことで、分からない箇所は解決する。
会話へは問題なく入れると貴之が確認したところで、あこが戻ってきた。
「りんりん、今の時期にホットミルクはメニューにないみたいなんだけど……特別にやってくれるって!どうする?」
「本当?じゃあ、せっかくだから、ホットミルクと紫いもソフト……どっちもお願いしようかな」
ホットミルクは可能ならの選択しであったが、両方選ぶことにする。
それを聞いたあこが頼みに行き、五分後に頼んでいたものが来た。
「お待たせしました~!ソフトクリームは溶けやすいから、早く食べてね♪」
「はーいっ!」
注文の品が届いたので、それぞれに頼んだものを手渡す。
「じゃあ、頼んだものが揃ったところで……」
全員でいただきますと声を掛けてから、頼んだもので舌鼓を打ち始める。
ソフトクリームを一口した後にコーヒーを飲もうとして、友希那が一つのことに気づいた。
「砂糖が無いわね……」
「あっ、あった方が良かったですか?」
「それくらいなら俺が行ってくるよ……俺殆ど何もしてねぇし」
楽器の手入れ等になってしまえばどうしようもない貴之だが、こういうことになれば普通に動ける。
それ以外にも、年下をいつまでも動かせっぱなしと言うのに気が引けた事が大きい。
こういうのは男が……と言う考えを別段持っているわけではない貴之だが、今回は練習の疲れを回復させる彼女と、ただ一緒に来た自分を計りに掛けた結果である。
「砂糖、これくらいあれば足りるか?」
「ええ。ありがとう」
友希那は砂糖の入った袋を受け取るや否、順次コーヒーの中に入れてかき混ぜていく。
ソフトクリームの味の良さに満足していた紗夜が、その光景を偶然ちらりと見る。
「あの……貴之君、湊さんは普段からあんなに砂糖を使うのですか?」
「ん……?ああ。友希那は甘党だからな……結構使うんだ。ってか、どうした急に?」
流石に本人に聞こえるようにする気にはなれないので、近くにいた貴之へ耳打ちで聞いてみると、彼は然程気にしてない様子だった。
しかしながらそう言う話しを自分に振られるとは思っていなかったので、貴之は思わず問うた訳を聞いてしまう。
「その……大丈夫なのですか?えっと……今後二人でお出掛けになる時とか、あるでしょうし」
「なるほどな……」
紗夜が後々友希那がショックを受けないように、それと無く気にしているのだろうと伺えた。
それに関しては心配要らない理由があるので、そこだけは話しておこうと思った。
「実を言うとな……友希那が食い過ぎたら走ってる姿見たことあるから、心配はしてねぇんだ。それに……」
「それに?」
何か含むような言い方が来たので、紗夜は思わず問い返す。
「好きな甘いもの食って頬落としてる友希那も、自分の体系崩さぬように頑張る友希那も見れるから、俺としては何も問題は無い……!」
「そ、それは大丈夫なのですか……?」
──何というか、欲望が剝き出しなような……?その言葉は告げる前に嫌な気配に当てられて告げなくなる。
「紗夜、あなた……そう言うわけでは無いのよね?」
「お、落ち着いてください湊さん……私はそんなつもりで話していたわけではありません」
友希那が不安げな目を向けて来ていたので、慌てて弁明する。これには自分も問題だと感じて貴之も詫び、後で何を話していたかを教えることで許しを得た。
「び、びっくりしたぁ……」
「貴之君、Roselia内で修羅場を作らないでね?」
「作らねぇよ。頼むから身も蓋も無いこと言わないくれ……」
実際に作ったら最早土下座どころではないだろう。想像したら身が震えた。
その後はあこと燐子が互いに注文したソフトクリームを一口ずつもらっいあったり、この前ヴァンガードで新しい『イマジナリーギフト』が出て、その初日で貴之が変更したばかりのデッキで
友希那は会話にはしっかり混ざっているが、どうしても考えてしまうことが一つだけあった。
「(リサ……あなたもこの場にいたら良かったのに)」
確かに貴之といられるのはそれだけでも幸福ではあるが、Roseliaのリーダーとしても、一友人としても寂しさを覚える。
思えば今回は貴之が休憩を催促した場面も、普段はリサがやってくれていたことを考えると、早く戻って来てくれないかと思ってしまう。
注文したものを全員が平らげ、少しだけ会話を続けた後、再び練習に戻った。
「(Roseliaにとっての先導者は友希那で間違いない。ライブで演奏してる時、練習で全員をまとめ上げたり……その姿が証明してくれてる。けど、もしかしたら……)」
もう少し見ていれば、何か分かるかもな──。自分の気になったことを確かめるべく、貴之はこの後の練習では彼女らのことを多方面で注視していくことを決める。
* * *
「(みんな普通にやってるのかな……?貴之に聞いてみたいけど、連絡するタイミング無さそうだなぁ~……)」
貴之らが休憩をしている最中、リサはバイト先のコンビニで作業をしていた。
時間が空いたなら何か一言だけCordに送ろうと思っていたのだが、そんな余裕は品出しの量と予想以上の来客の前に潰されている。
一回でも連絡が出来れば少しは気が楽だったのだが、できない今は不安で仕方が無かった。
「(アタシなんかいなくても平気なのかな……?)」
──もしそうだったら嫌だな……。表情こそ表には出さないものの、実際にそう言われたらショックで寝込む自信すらあった。
何かと気を回してくれる彼女らだから実際に面と向かって言うことは無いと思うが、もしそうなった時のことは考えたくない。
「すみませ~ん。レジお願いしま~す」
「あっ……は~い」
考え事をしている内に、玲奈の声が聞こえたので反応する。
人が多いと片方が品出しに専念するように役割分担していても、途中でレジに戻らなければならなくなるのだ。
「(とにかく、今はこっちに集中集中……考えるのは後にしよう)」
気を取り直しながらレジに辿り着き、リサもレジ打ちを始めるのだった。
イベントシナリオの2話~3話が終わりました。変更点としては……
・貴之の提案で友希那も声を出しづらくなるより前に休憩を入れる
・友希那はカフェに来る頻度が増えている
・上記の理由が起因して、友希那が紗夜に教える情報はリサから聞いただけでなく、実際に知った情報になる
・バイト中におけるリサの独自を追加
こんなところでしょうか。このイベントシナリオは次回で完結すると思います。
完結した後はガルパメインストーリーを……と行きたいのですが、その前に本小説独自のサブイベント的なものを2、3話程やってからにしようと思っています。
Roseliaメンバーの初ファイトで、印象に残っている、または面白かったものは誰の初ファイトですか?
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友希那(イメージ3)
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