先導者と歌姫 -高みを目指して-   作:ブリガンディ

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これで予定していたイベントシナリオが完結です。


ライド10 もう一人の先導者

「さて……リフレッシュは大丈夫そうね?」

 

借りている部屋に戻った後に友希那が問いかけると、全員から肯定が帰ってくる。

紗夜からは「肩の痛みが引いた」、燐子からは「みんなと話せて楽しかった」、あこからは「ソフトクリームが美味しかった」と声があったので、これなら問題無いと断言できた。

 

「もう一度音を通して、何か気になったところがあったらその都度合わせて行くけれど……ある程度時間も経過しているから、そこまで回数は多くないと思って」

 

それでも集中力が絶望的な状態になってから休憩し、後二から三回だけ……と言うことになるよりは全然マシだなと考えた。

強いて言えばそれに関しても自分たちの誰かが気づければ良かったとは思うが、繰り返さないようにしようと胸に留めておく。

合図を取ってから音を合わせて、終わった後に何か気になった部分はあるかを確認し、あった場合はその部分を変えて、何も無ければそのままもう一度音を合わせて行く。

 

「(俺から見ると何も問題なさそうだけど、この細かいところで何かあるんだろうな……)」

 

この辺りが素人目とその世界に深く入り込んでいる人の差だろう。

実際の話し、貴之がこうして考えている間にも友希那はまだ直せそうな部分があると考えていた。

そうして色々直して行き、最後の通しが始まった。

 

「(……ん?このコンセント系の配置とそこにあるのは……飲みかけのホットミルクか?)」

 

彼女らが演奏を行っている最中、貴之は偶然それらに()()()()()()()()()

今は下手に動くと集中力を削いでしまう気がして申し訳なく思ったので、大丈夫になってから動くことを決める。

しかしながら、このまま放置したら絶対にダメな予感がしたので、貴之は一瞬だけ冷や汗を流す羽目になった。

 

「流石にここまでね……」

 

「そう言えば、リサ姉から連絡無かったですね……」

 

恐らくまだシフトに入っているのだろう。そうなるとあとちょっとだけ待って一回だけ通す……と言うのも厳しくなる。

そうであればやむを得ないので、友希那は今回の総評を伝えることにする。

 

「それぞれの音は悪く無かった。ただ、全体の調和が取れているとは言えなかったから、音のバランスを調整する必要があるわ」

 

この辺りは音を変えた影響が出ている為、この調整が今後の課題となった。

なので友希那は次の曲に新しい音を使いたい場合、どうするのがベストなのかを最後の演奏をベースにして考えて欲しいと伝える。

 

「そろそろ片付けましょうか」

 

「今井さん、間に合いませんでしたね……」

 

名残惜しい想いはあるが、こればかりは時間が時間なので仕方ないと割り切ることにする。

 

「では、レンタルした機材は宇田川さんと白金さんにお願いしますね。湊さんはマイクケーブルの片付けを……」

 

「ええ。手早く……きゃあっ!」

 

「おっと、危ねぇ!」

 

予見していたからこそ止めようとした貴之はある程度先に移動していたので、『友希那が転ぶ』という一次被害の阻止に成功した。

友希那が原因は足元にギターのシールドが絡まった状態にあり、それに足が引っ掛かってしまったことが原因である。

一先ずハンズフリーであり、自分の足元が安全であった貴之が素早く掛け寄り、友希那に手を貸して起こしてやる。

 

「怪我は無いか?」

 

「え、ええ……ありがとう。って、……っ!?」

 

──なら良かった……。そう一安心するのはいいが、友希那が一つのことに気づいて暫し固まる。

どうしたものかと思った貴之は、彼女に何があったかを問う。

 

「そ、その……貴之の手が……」

 

「俺の手……?」

 

貴之は友希那が身体を強く打たないようにと、抱きかかえるような形で身体を支えたのだが、それが問題に繋がる。

何しろ貴之の左手が、友希那の人並みにある膨らみを鷲掴みにしてしまっているのだから──。

 

「あっ……!わ、悪い……気がつかなかった」

 

「助けてくれたのだから、今回は別に構わないわ……」

 

友希那の体を起こし、許しを得たのはいいが気を抜くのはまだ早い。このままだと二次被害が酷くなる可能性が高いのだ。

その為すぐに動こうとした友希那に一度待ったを掛け、聞かなければならないことを聞くことにする。

 

「燐子、あの容器って中身まだ残ってるよな?」

 

「容器……?あっ!うん。あの容器の中、飲み切れなかったホットミルクがまだ残ってるよ」

 

「あ、危うく二次被害が起きるところでしたね……」

 

下手に動かないで正解だったことが証明された瞬間である。一先ず二次被害を防ぐ為にも先に容器を安全な場所にどけようと思うのだが、ここで問題が発生した。

友希那たちがやろうとすると転んで二次災害の可能性が高いので貴之がやるべきなのだが、如何せん位置が悪すぎるのだ。

 

「(これ、そのままやろうもんなら……)」

 

──思いっきり友希那の股下くぐらないと届かねぇよな?距離とは別の大問題が待っていたのだ。これは例え自分が女子であろうとも強行するのは躊躇われた。

その為、そんな不味い事だけは言わぬようにそれっぽい理由を伝えてから、先に絡みあったシールドやコンセント類をどうにかすることにする。

 

「……貴之さん、どうかしましたか?」

 

「いや、大丈夫だ……取り敢えず絡まり具合の少ねぇやつから行こう」

 

──俊哉くらい知識があれば、もっと早くやれたんだがな……。無いものねだりではあるが、そう思わずにはいられなかった貴之であった。

彼女らを立ちっぱなしにさせるのも気が引けるので、手早くやろうと覚悟をしたところでドアの開く音がする。

 

「お疲れ~♪……って、何してるの?」

 

「あっ、リサ姉!」

 

それなりの大きさをしたビニール袋を二つほど持ったリサがやって来て、貴之が何かしようとしている光景に疑問を持つ。

しかしながら、今この時にリサ(救世主)の到着は非常に有難く、貴之は素直に事情を説明する。

 

「なるほど~……それはお手柄だね♪それならアタシも手伝うから、やりながら覚えて行ってね」

 

「悪い、助かる」

 

リサの説明を受けながらコンセント類の絡まりをどうにかし、全員が動ける状態になっていくのを見ながら、貴之は自分一人だと倍以上掛かっていたことを確信する。

程なくして全員が動けるようになったところで、リサがどうするかを的確に割り振る。

元々誰が何をやるかは最初に決めていたのだが、予想外のアクシデントがあったが故に頭から離れてしまっていた為、リサのフォローは非常にありがたかった。

素人故に自分のやれることがあっさりと無くなった貴之は、妙な脱力感と共に肩の力を抜いた。

 

「……あれ?そういやお前から連絡一個も来てねぇや」

 

「時間が出来たら連絡しようって思ってたんだけどねぇ~……思ったより人多かったし、形態の充電も切れちゃってさ……」

 

リサから話しを聞き、そりゃ連絡来ないわなと携帯を見ていた貴之は納得した。特に後者の方はどうすることもできないだろう。

10分もせずに片付けは終わり、部屋に備え付けられている簡易ソファに座っている貴之とリサのところに四人が戻ってきた。

 

「い、今井さんが来てからすぐに終わったわね……」

 

「凄く的確な指示でした……」

 

リサの仕切りの良さは素直に称賛する。場慣れしている感じが強いのだ。

実際、友希那も「助かったわ」と素直に言っているので、こう言った場面ではリサが他のメンバーよりも数枚上手である。

 

「あ、そうそう。落ち着いたから向こうでもらった、みんなへのお土産があるんだ~♪」

 

リサが持っていたビニール袋には飴やポテトチップスが入っており、これはシフトに入ってくれたお礼にと店長から貰ったそうだ。

ちなみにリサが早上がりする際、玲奈からは「後は任せて」と心配しないでいいと言う旨を貰っている。

こうしていつも通り優しさに満ちたリサの姿を見たあこは、少しずつ目尻に涙を溜めて行き──。

 

「……リサ姉~!ずっと待ってたんだよぉ~……!」

 

「わわっ!どうしたの?急に抱きついてきて……」

 

何もリサが不在で空気が悪かった……と言うわけでは無かったが、やはり寂しさは心の中にあった。それ故に思わず抱きついたのだ。

ちなみに安心感を感じたのは燐子もであり、彼女がそれを伝えるとリサは笑いながら「そんな大げさな」といつもの様子で返す。

 

「「……」」

 

「なんか、二人からやけに熱い視線を感じるんだけど……」

 

「き、気のせいですよ……。アルバイトお疲れ様です。疲れているでしょうし……よかったら、これをどうぞ」

 

あからさまな様子で紗夜が渡してきたものに、リサは見覚えがあった。

それは花咲屋という店で売られているはちみつ飴であり、その味を知っているリサは有難く一つ貰って口に放り込む。

 

「ん~……♪優しい甘さがしみるねぇ~」

 

「それは良かったです……もう一個ありますよ?」

 

──ん?なんか紗夜がいつも以上に優しい?少しずつ優しさを増しているのは知っているのだが、露骨な面があったので、リサが問う。

それが図星だった故に、否定しようとした紗夜は口ごもってしまう。そんな様子を見たリサが友希那に同意を求めも、軽く流された。

 

「それよりも、今日のアルバイトはどうだったの?忙しかった?」

 

「それがね~、もうめーっちゃくちゃ忙しかったの!」

 

リサ曰く、丁度部活終わりの学生が多く来ていたらしく、ジュースとアイスが飛ぶように売れていたそうだ。

それ故にひたすら補充することになったのだが、それらが入ってるダンボールがとにかく重く、それが影響で足腰に負担が掛かり、肩もかなり凝っていた。

それを聞いた友希那は肩を揉むと進言し、早速リサの肩を揉み始めた。

 

「……本当、凄く凝ってる。お疲れ様ね……」

 

「そうそう。右の肩が特に凝ってて……って、友希那がアタシの肩を揉むとかおかしくない!?ねぇホントに何があったの!?」

 

「(これ言ったら、リサはどんな反応するんだろうな……)」

 

──確かに昔もリサが肩を揉む側だったな……。と思い出しながら、貴之は自分の得た答えを言うべきか悩む。

しかしながら、その表情は微笑ましいものを見ている笑みであり、それがリサに怪しまれる要因となる。

 

「な、何でそんな目で見るの?」

 

「いや別に。そうだな……俺の言わんとしたことは、後でがいいか。落ち着いた状況で言った方がいいだろうし……。ってか、なんか飲み物いるか?今日はタダで奢るよ」

 

「ええ~?そういうことなら、後でにしようかな……お金に関しては後で決めるとして……じゃあ、缶コーヒー一個お願いしていい?」

 

「分かった。じゃあちょっと行ってくる」

 

貴之は誤魔化さず後回しにしただけだったので、手早く会話が切り上がる。対人経験が豊富な貴之は回避方法が多く、これはその内の一つだった。

 

「おかしくなんてないわよ……。ただ、リサが疲れてるだろうと思って……」

 

リサに対して感じていることは同じなのだが、友希那と紗夜は恥ずかしさが勝って誤魔化してしまう。

これでは素直に聞けなさそうだと思ったリサは、燐子に問うて見る。

 

「今日は本当に、色々ありましたから……出来れば落ち着ける場所で話したいです」

 

「それは気になるなぁ~……。ちなみに、一言で言うと?」

 

「Roseliaには()()()()()()()()()()なんだよぉ~っ!」

 

問うた瞬間にあこが答えたので、リサは思わず目が点になる。

そんな大げさな──。と言おうとしたが、周りを見て見れば皆がそうだそうだと言いたげな目をしているのでその言葉は飲み込んだ。

 

「待たせたな。コーヒー買って来たぞ」

 

「ありがと。本当に何があったの?」

 

「端的に言えば……今日ほどお前という存在の頼もしさと有難さと、大切さを知った日はねぇだろうな……」

 

──な、なにそれ?最後の片付けに手間取った以外何も問題なさそうにしか見えなかったリサは妙な冷や汗をかく。

何しろ言い終わった貴之が「こう言うことはあまりやりたくない」と言わんばかりに、告げ終わった後に天を仰いだのだ。もう気になって仕方がない。

この直後、あこがファミレスに行って思いっきり話したいと提案し、友希那も即答で賛成をする。

 

「な、何を言われるか分からなくて妙に怖い……」

 

「今井さんが思っている事にはなりませんよ……」

 

「本当に、今日は大変でしたから」

 

すぐに分かると言いたげに、紗夜と燐子は疲れた笑みを見せた。

 

「……ホントに何があったの?」

 

「それはファミレスに行ってからのお楽しみよ」

 

「ええ~っ!?勿体ぶらないで教えてよ~!」

 

本当に何があったのかが気になってしょうがないリサは頼み込んだが、結局ファミレスに辿り着くまで見事に流されてしまうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ~!ご注文はいかがなさいますか?」

 

「アタシはオレンジジュースでいいかな~……」

 

「あっ、私も今井さんと同じでお願いします」

 

「私はホットコーヒーにするわ」

 

「俺もホットコーヒーを貰おうかな」

 

ファミレスに着いてから、一先ず注文を頼んでいくことにする。

この時二人揃ってホットコーヒーを選んだことで茶化されたが、丁度飲みたかったのだから仕方がないと二人揃って顔を赤くしながら言い返した。

また、先程紗夜の反応を見た貴之から友希那に伝わり、友希那から入れ知恵をされていたあこは、早速行動に出ることにした。

 

「あこは特盛超お得ポテトにしよっ!紗夜さん、あこと半分こにしませんか?」

 

「それは()()()()()()……本当に大丈夫なのですか?」

 

思ったより反応が良かったので、そのまま一人だとお腹いっぱいになってしまうことと、美味しいものは一緒に食べたほうがいいだろうとそれっぽい理由作りでダメ出ししてみる。

すると紗夜は「宇田川さんがそこまで言うのなら……」と受け入れることにした。完全に誘惑に負けたような表情をした紗夜を見て、友希那は愉悦を感じる。

頼むものが決まったところで注文をし、その後あこが代表して何があったかをリサに話した。

 

「あっはは!そんなことがあったの!?その場にいたかったわ~」

 

「い、今井さん……何もそこまで笑わなくたっていいじゃないですか」

 

「あこたち、ホントに大変だったんだよ……」

 

その話しがあまりにも面白かったのでリサは思いっきり笑った。

対する紗夜たちは思い出して再び疲れ切った顔になる。それだけ今日が苦労する日であったからだ。

 

「あこのが話し振っても反応悪目だし……」

 

「貴之君に言われるほど時間の管理が出来ていませんでしたから……」

 

「私たち四人だけだと、最後は間違い無く大惨事だったと思います……」

 

思い返せば思い返すほど、リサに支えられている部分が顕著になり、このままではダメだと思わせる。

一番最後の片付けは何か一つでも要因が外れたら、燐子が危惧した結末を辿っていたことは想像に難くない。本当に貴之が気づかなければ危うかった。

 

「もう~。みんなしてアタシがいないとダメなんだから……」

 

「リサ姉、今回のこともあるから勝手にいなくなるのはやだよぉ~……」

 

あこの懇願をリサは思いっきり受け入れる。確かにこれでは大変だろう。

今回のことを反省し、自分が不在でもできるようにするかもしれないが、今暫らくは厳しいだろう。

 

「私も、今井さんにいて欲しいです……。今井さんが楽しそうに演奏しているのも大きいんですけど、今日は何か足りないって思うことが多くて……。それが『今井さんがいる』安心感だったんです」

 

「そ、そこまで言う……?」

 

問うた後すぐに「そこまで言います」と燐子に肯定されたので、リサは面食らった。

どう返そうかと迷っていたところに、今度は紗夜からリサの名を呼ぶ形で前置きが入る。

 

「今回は本当に、今井さんが普段どれだけ私たちの助けになってくれているかを自覚する日でした……無理強いをするつもりは無いのですが……」

 

──やはり、今井さんには最初からいて欲しいです。リサがいない時に自分たちがどれだけ情けないかを理解したからこその頼みだった。

 

「なんか意外だなぁ~……正直なところ、アタシがいなくても全然平気だと思ってたからさ」

 

「そんなこと無かったわ。私たちは寧ろ、こんな所までリサに頼りっぱなしだったと気づかされたわ……。そして、だからこそ言わせてもらうわ」

 

──リサ、あなたはRoseliaにとって欠かせない……大切な存在よ。全員が必要だと告げたことで、リサは遂に目尻に涙を浮かべる。

バイトが忙しく、携帯の充電も切れてしまった故に聞くことができずに不安だったリサに、ようやく安心できる時間が訪れたのだ。

 

「そっか……みんなそんなに……アタシのことを想ってくれてたんだね……!」

 

「あっ、リサ姉泣いてる?」

 

「だって……嬉しいんだもん!ずっと不安だったんだよ……?アタシがいなくても全然平気なんじゃないかって……」

 

その不安に思っていたことが杞憂に終わった為、リサの目尻から嬉しさと安心の入り混じった涙が見える。

貴之と友希那の二人は相変わらずだと思っているのでもう慣れているが、紗夜たちが気づいたことがある。

 

「今井さんは、もう少しみんなに必要とされている自覚を持つべきだわ……」

 

「このままがあまり良くないのは分かっているんですけど……私たち、今井さんがいないと色々足りないです」

 

「リサ姉がいるだけでも全っ然、違ってくるんだよっ!」

 

それは、リサが思った以上に自分を過小評価していることにある。謙虚は日本人の美と言われることはあるが、彼女らからするとリサのはやり過ぎに片足を突っ込んでいるのだ。

今すぐに治すのは難しいだろうから、今後はリサが治るのが先か、自分たちが慣れるのが先かになるだろう。

 

「……分かった!そう言うことなら、次からはなるべく抜けないようにするよ」

 

流石にシフトの入っている日等はどうしようもないが、それ以外ならば十分に可能である。

リサが宣言したタイミングで丁度注文したものが届いたので、全員にそれぞれのものを回していく。

 

「そう言えばさ、貴之がさっき言おうとしたことって何だったの?」

 

「ん?ああ……そのことか。落ち着いたばかりなのにまた……ってなるかも知れねぇけどいいか?」

 

談笑しながら来たものを摘まんだり飲んだりしている際に、リサが思い出して聞いてきたので貴之は一度確認を取る。

一瞬だけキョトンとした様子を見せた後リサが頷いたので、貴之は「分かった」と承知して話すことにする。

 

「俺が今日の練習風景を見ていて思ったことなんだけどな……俺はRoseliaでの先導者は友希那だと思ってたし、それは今も変わってない」

 

──けどさ……。と貴之は前置きを作る。これは貴之の話そうとしている本題を伝える上では大事な前置きでもあった。

ヴァンガードでの先導者は一人だが、バンドの場合()()()()()()()()()()()()

 

「今日のことを踏まえると、リサもまた……Roseliaにとってもう一人の先導者なんだなって思えたんだ」

 

「えっ?あ……?えぇ?」

 

友希那が自身の歌でみんなを引っ張って行く先導者なら、リサは全員が万全な状態で動けるようにできる先導者である。それが貴之の見つけた結論だった。

面と向かって言われたリサは、まさかそんなことを言われるとは思っていなかったようで大分混乱している。一方で他の四人は確かにと納得をしていた。これは今日その場に居合わせていなかったことも大きいだろう。

貴之の言ったことが完全には理解しきれなかったリサがどういうことかを問えば、貴之はこう言って見せた。

 

「今の俺にできる最高の誉め言葉で、Roseliaに取ってリサがどれだけ大切かを表現したものだな」

 

「っ……!」

 

Roselia内だけではなく、外にいる人にすら言われたので、嬉しさのあまりようやく引っ込んだ涙が再び溢れ出す。

そのままリサが安堵の言葉を嗚咽と共に出したので、みんなしてリサが必要である旨を伝えながらどうにかして泣き止ませる。流石に店内だったので長引かせると貴之にとばっちりが来そうだったので、気を遣った結果であった。

リサが泣き止んだ後、今回はいいものの、今後は迂闊にそう言った発言をすべきではないと貴之にみんなして釘を刺しておいた。その直後貴之は「安心させる為に言ったのにどうしてなんだぁ……」と嘆いたことを記しておく。

 

「そう言えば、リサ姉を貴之さんのデッキにいるユニットで例えるなら何になりますか?」

 

「今のデッキで言えば、『バーサーク・ドラゴン』か『サーベル・ドラゴニュート』、或いは『ドラゴンフルアーマード・バスター』かな……不足しがちな手札を確保するか、主軸の『オーバーロード』を持って来れる」

 

雑談に戻った後、思いついたあこが聞いてきたので、貴之は自分なりの考えで答える。三体の内二体を知っているのが半数だったので、そのユニットは見せて教えることにする。

これは貴之のデッキである為こうなるのだが、他の『クラン』ならばもっと最適なユニットがあった。

 

「全体で見たら『ブラスター・ブレード』かもな……あのユニット、どこからともなく呼ばれるし、ヴァンガードでもリアガードでも効力発揮するし……」

 

何故そんな結論に至ったのかを話すと、全員がリサに対して本当に申し訳ない気持ちになった。

手札と『ソウル』だけかと思えばデッキからも、しまいには『ドロップゾーン』からも呼び出すことが可能で、一部の人からは『過労死』とネタにされる程の引っ張りだこっぷりである。

これに関してはリサ自身もまさかそんなはずはと言いたかったが、先程リサが不在だった時にどうなっていたかを思い出し、そこで口を閉じることになった。

その結果、Roseliaのメンバーで「リサに苦労を掛け過ぎないようにする」ことを誓い、誓った後少ししてから店を後にした。

 

「じゃあ、また次の練習からよろしくね~♪」

 

五人揃ってこそのRoselia──。全員で認識した五人が互いの大切さを知り、絆が更に深まった一日であった。

帰り道の都合上それぞれに別れた後、先程カフェで紗夜と何を話していたかを伝えたところ、友希那は顔を真っ赤にし、リサは見事なぞっこんぶりだと貴之を評した。

この三人の変化と言えば、貴之と友希那の距離感が更に近くなったことが上げられるが、リサも混じって三人でいることがあるのはこれからも変わらないだろう。




これにてイベントシナリオ『Don't leave me,Lisa!!』が完結です。

変更点は余り多くは無く……

・貴之の起点でホットミルクが零れる二次被害を回避
・それに伴い反応が僅かに変換
・ファミレスに貴之も同行

こんなところでしょうか。
リサも先導者だと言う下りは貴之の容姿の元ネタとなった人的に言えば、『お前もガンダムだ』と似たようなノリになります。

次回は予告通り本小説独自のサブイベントになるか、或いは時期が時期なのでバレンタインイベントを書くかも知れないです。

Roseliaメンバーの初ファイトで、印象に残っている、または面白かったものは誰の初ファイトですか?

  • 友希那(イメージ3)
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  • 紗夜(イメージ16)
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