これで本章が終了します。
ガルパの方でRASが遂に参戦することが決まりましたね。
確かに嬉しい情報なのですが、私はそれ以上に新しいチームの『Morfonica』に興味が向いているところです。
バンドリ初のヴァイオリンを使ったチームってのもそうなのですが、ましろちゃん可愛いのが最大の理由なんだ……(汗)。
「『ライド』!『リザードランナー アンドゥ』!」
「『ライド』!『ぐらいむ』!」
貴之はいつも通り『アンドゥ』に、耕史は『ぐらいむ』に『ライド』する。
これによって耕史の使う『クラン』が『ロイヤルパラディン』だと判明したが、貴之からすればそれ以上に大事なことがある。
「あの時と同じですね……ファーストヴァンガード」
「確かにそうだな。でも、あの頃は戸惑い気味だったお前が今は堂々としてるんだから、大分時間経ったよな」
このファーストヴァンガードの組み合わせは、貴之が初めてファイトした時と全く持って同じ組み合わせだった。
しかしながらデッキ構築は現在に合わせたものなので、そう言う意味でも互いに変化を感じることになるだろう。
また、当時はルールを教える意味合いもあって耕史の先攻でファイトが行われていたが──。
「俺が先攻で行きますね?」
「ああ。思いっきり来い」
今回は貴之の先攻でファイトが始まることになる。ここから早速、
「『ライド』、『サーベル・ドラゴニュート』!スキルで一枚ドロー……」
貴之は昔と違い、『サーベル・ドラゴニュート』への『ライド』を選ぶ。
当時は『バー』に『ライド』していたのだが、実はデッキ変更を行った同日に変更できる点を見つけて『バー』は別ユニットと入れ替えている。
先攻である以上これ以上できることは無く、このままターンを終了することになる。
「『ライド』、『ナイトスクワイヤ・アレン』!スキルで一枚ドローし、『マロン』を『コール』!」
昔と違うユニットを選んだ貴之に対し、耕史は当時と同じく『アレン』に『ライド』する。
少しだけデッキ内容が変わっているのを表すかの如く、『マロン』は前列左側に『コール』される。
最初はどうして前列なのかと思った友希那とリサだが、少し考えると理由は出てきた。
「次のターンでほぼ確実に退却させられるわね……」
「そうなると攻撃回数が欲しくなるんだね」
貴之の『クラン』は『かげろう』であり、彼のデッキにあるグレード2は退却手段を持つユニットが多い。故にこの方法を取ったのだ。
無論、貴之は前列に出そうが後列に出そうが、次のターンでリアガードを一体退却に追い込むつもりでいたため、この戦法を取られる方が面倒に感じる。
耕史の選択は、全国大会決勝で貴之が取ったのとは少し違う『どうせこれをされるなら……』と言う開き直りに近いものだった。
「じゃあ、攻撃だ……『アレン』でヴァンガードにアタック!」
「ノーガード。どうぞ」
貴之の促しを受けて行った『ドライブチェック』はノートリガーで、二回目の攻撃が通る可能性が少し下がる。
イメージ内で『アレン』となった耕史の剣による斬撃が、『サーベル・ドラゴニュート』となった貴之を捉える。
『ダメージチェック』の結果は
「潰されたか……。まあ簡単に決まるとは思って無かったけどな」
「俺も簡単に負けるつもりはありませんからね……」
耕史に対する貴之の返しは二重の意味があるのを、即座に気づけるのはリサだった。
一つ目は耕史と友希那のみならず、彼を知れば全員が気づける全国大会優勝の肩書きである。早い話が現王者としての意地になる。
もう一つは友希那がいるからと言う、想われている本人だと気づきにくい内容である為、これはやむなしなところがあった。
攻撃がヒットしなくなった以上、できることが無くなってしまった耕史はこのままターンを終了することになる。
「『ライド』、『ドラゴンフルアーマード・バスター』!二枚『ソウルブラスト』して『マロン』を退却させ、『オーバーロード』を手札に!」
「ほう……あの時の『オーバーロード』だな?」
耕史は貴之が手札に加えた『オーバーロード』のイラストを見て、即時に気づいた。
その『オーバーロード』は旧来のイラストであると同時に、最初期の頃……『ロイヤルパラディン』か『かげろう』しか選択肢が存在しなかった頃に生産されたカードであった。
カードの状態が10年近く経って尚最高に近い状態を保っていることから、貴之がどれだけそのユニットを大切にしているかが伺えた。
なお、当時貴之が『ライド』したグレード2は『ドラゴンナイト・ネハーレン』であり、そちらは今現在デッキから外れてしまっている。
「こいつは俺に始まりをくれたユニットですからね……そりゃ大事にしますよ」
「なら、俺もあれを持って来て良かったな……」
貴之が何かを問うて見たが、次の自分のターンで分かると言われたのでその追及はやめにした。
二人の楽しそうなやり取りを見て、見ていた友希那も自然と笑みがこぼれる。
「友希那、どうしたの?」
「もしもの話しだけれど、貴之から見る雨宮さんのような人が私にもいて、久しぶりに会えたのなら……きっと私もああなっていたかもしれないと思ったの」
「考えちゃう気持ち分かるなぁ~……♪アタシもああいう人がいたら貴之みたいになりそうだもん」
友希那とリサの場合、音楽を教えてくれたのは友治であり、友希那に至ってはほぼ毎日顔を合わせる為、こう言う機会には恵まれない。
それ以外にも、自分たちと友治の関係に比べ、貴之と耕史は年がかなり近いのも起因する。何しろ前者は30近い差があるのに対し、後者は僅かに5なので、ある程度距離感が近いのも大きい。
他にも家族か親戚なのに対し、少し年差がある友人か先輩後輩に近い関係である為、この辺りも影響しており、友希那がそう考えリサが同意する理由となった。
自分たちのないものねだりは仕方がないので、貴之には思いっきり楽しんで欲しい。それが二人して抱いた願いであった。
『メインフェイズ』で貴之は『ネオフレイム』を前列左側に、『ラオピア』を後列中央に『コール』する。
「攻撃行きます……!『ネオフレイム』でヴァンガードにアタック!」
「ノーガードで行こう。『ダメージチェック』……」
耕史が行った『ダメージチェック』の結果は
今回は先にリアガードで攻撃を行ったこと、ヴァンガードの後ろにリアガードが控えていることから、次の攻撃が通らないわけではない。
「次、『ラオピア』で『ブースト』、『フルアーマード・バスター』でヴァンガードにアタック!」
「そうだな……ここはノーガードだ、来い!」
少々迷ったものの、貴之のイメージ力を考慮して防がないことにした。
案の定『ドライブチェック』で貴之は
イメージ内で『フルアーマード・バスター』となった貴之が、『アレン』となった耕史に剣で斬りつける。
耕史の『ダメージチェック』は
「今のだけ見ると、貴之が凄い有利だね……」
「それだけ、貴之が進んで来た結果なのかもしれないわね」
貴之目線で見ると、確かに進んで来ていると見ることができるが、もう一つの考え方を出せる人が一人いた。
「俺がファイターとしてはあまり進んでいない……ってのもあるかもな」
自嘲気味に言う耕史だが、これに関しては仕方ないところがある。
何しろ彼はもう大学生で、直前まで就活も行っていたのだ。ファイターとして歩みを進めるのであれば、そちらの進路へ舵を取らなければ不可能に等しいだろう。
そこに、「でも……」と声を出す人がいた。
「一歩も進めていない訳じゃない……。耕史さんは今日の為に……少しでもって勘を取り戻そうとしてましたよね?」
「確かにそうだが、お前よく分かったな?」
「ここを離れている時に得た副産物のおかげです」
貴之に問われた通り、耕史はようやく就活が終わったのもあってある程度ファイトを行って勘を取り戻そうとしていた。
それは全国大会優勝者の恩人と言う肩書きを得たことによる意地でもあれば、自分を尊敬してくれる人に挑まれたら無碍にはできないと言う心意気でもある。
そして何よりも、自分も戦うなら可能な限り万全な状態にしたいと言う、眠っていたヴァンガードファイターとしての熱が起き上がったのが大きい。
「こっちを持って来て正解だったな……五年の月日を経て、今こそ再び姿を現せ、我が分身!『ライド』!『ブラスター・ブレード』!」
耕史が『ライド』するのは『ブラスター・ブレード』。ここも当時の二ターン目と同じであった。
また、耕史の使用した『ブラスター・ブレード』に明確な違いが存在することに気づく。
「あのイラスト……普段のと違う?」
「よく気づいたな……これは昔のイラストなんだ」
「(貴之の為に持って来たのかしら?)」
この『ブラスター・ブレード』も貴之の『オーバーロード』と同じく最初期に生産されたものであり、こちらも貴之の『オーバーロード』に負けじとカードの状態が最高に近いものだった。
リサの疑問に答えた耕史の声を聞き、友希那が立てた推測は当たりで、耕史は彼と自分の縁の始まりの象徴としてこの『ブラスター・ブレード』の持ち込みを決心した。
その選択は功を奏し、貴之の『オーバーロード』と対面させることができる他、互いに思惑が一致していることも意味していた。
登場時のスキルで『ネオフレイム』を退却させてから、『メインフェイズ』で前列左側に『ギャラティン』、後列中央に『うぃんがる』、後列右側に『マロン』、前列右側に右手に剣、左手に盾を持ち、白を基調とした鎧を纏う『文武の巨人 ジャーロン』を『コール』する。この時『マロン』のスキルを発動し、手札の確保も忘れない。
「リアガードが四枚以上だから、『ブラスター・ブレード』のスキルが有効ね……」
「手札に『ゲンジョウ』はあるし……大丈夫かな?」
三回攻撃の内『ブラスター・ブレード』は
ここまで流れを汲み取れるようになった二人の声を聞いて、貴之は教えてよかったと思えた。
「行くぞ……まずは『ギャラティン』でヴァンガードにアタック!」
「それはノーガードで行きます。『ダメージチェック』……」
次のターンを考えればこの攻撃は防がず、『カウンターブラスト』のコスト確保に利用したかった。
『ダメージチェック』の結果はノートリガーで、再び貴之のダメージが1になる。
「行くぞ……『うぃんがる』の『ブースト』、『ブラスター・ブレード』でヴァンガードにアタック!」
「『ゲンジョウ』で『ガード』!」
最低限の数値ではあるが、ここで防げれば大きいと貴之は考えての選択だった。
『ドライブチェック』の結果はノートリガーだが、耕史としてはとにかく手札を使わせたいと考えていた為、最低限は達成している。
「最後に『マロン』の『ブースト』、『ジャーロン』でヴァンガードにアタック!『ジャーロン』がヴァンガードにアタックした時、自分のリアガードが三枚以上ならパワープラス5000!」
「あれを防げたから十分だな……ノーガード!」
「えっと、『マロン』もスキルでパワーが上がってるから……26000か」
「合計で8000増えていたのね」
上昇量としては十分なもので、グレード2とグレード1のユニットで、比較的簡単な条件の効果である為、ここまで増えれば得をしているようなものだった。
イメージ内で詠唱を終えて剣に雷を走らせた『ジャーロン』の剣を、『フルアーマード・バスター』となった貴之は真正面から受ける。
これによって起きる『ダメージチェック』の結果はノートリガーで、互いのダメージが2の状態でターンが終わることになった。
「(……聞こえるか?俺は今日、自分の持っている全てを彼にぶつけたい。だから……)」
──無論、我らもそのつもりだ。貴之の呼びかけよりも早く、『
ならばと、貴之もすぐに決断をする。互いの意志が同じならば、もう迷うことなど無かった。
「(俺たちの歩みの……全てをぶつける……!)」
──それが俺にできる、最大の恩返しだ!心の中で決めきったと同時、貴之の視界には決勝の時と同じくガイドラインのようなものが映るようになった。
後でこの力を使ったことを問われたら正直に謝るとして、今は使うことに成功したので良しとする。イメージ内でも現実でも貴之の瞳が微かに光を宿しているのがその証であった。今回は耕史との対戦なので、これを使わない方が良くないと言う結論を下したことも力を使用する選択を強く推した。
また、ここで『俺たち』と出たのはヴァンガードの世界の根底にある、力を借りねば自分はただの弱い霊体だからに他ならない。
「(今の変化が何を起こしたのかは知らない。だが、あいつが全力をぶつけてくれるのなら……)」
──俺はそれを、真っ向から受け止めよう。どんな形であろうとも、貴之が自分の進んだ証を正しく見せようとするのならば何も問題は無い。故に耕史の決断も早かった。
一真とファイトしていた時は『バーサーク・ドラゴン』だったので分かりやすかったが、今回は『フルアーマード・バスター』だったので『ライド』するまでは見逃しやすい。
「昔も今も、そしてこの先も……俺の分身はこいつです!ライド・ザ・ヴァンガード!『ドラゴニック・オーバーロード』!」
イメージ内で『オーバーロード』となった貴之が、あの力を使った証拠である青い瞳を光らせ咆哮する。
今回のファイトでは『フォースⅠ』を選び、ヴァンガードサークルに設置する。『ネオフレイム』を明かしている以上、コンセプトを隠すような真似をする必要は無かった。
『メインフェイズ』では前列左側に『バーサーク・ドラゴン』、後列左側に『エルモ』、後列右側に『ブルジュ』を『コール』する。
この時『ブルジュ』のスキルで『ギャラティン』を退却させ、『バーサーク・ドラゴン』のパワーを10000上昇させた。また、『オーバーロード』も『ソウルブラスト』を行いパワーを33000に引き上げる。
貴之が『ギャラティン』を退却させた理由が、『インターセプト』をさせづらくすると言うのは友希那とリサも見慣れているのですぐに気づけた。
なお、貴之がファイト時に今の掛け声になったのも『オーバーロード』に『ライド』する瞬間からであり、そこから今のファイトスタイルが確立されたのだ。
「では行きます……『エルモ』の『ブースト』、『バーサーク・ドラゴン』でヴァンガードにアタック!」
「ノーガードで行こう。『ダメージチェック』……」
耕史の『ダメージチェック』の結果は
ただそれでも、33000から更にトリガーでパワーが増えるだろう『オーバーロード』と、既に5000増えている『ラオピア』なので、最悪は『完全ガード』も視野に入れるべき状況であった。
「次、『オーバーロード』で『ジャーロン』を攻撃!」
「今防ぐわけにはいかない……ここはノーガードだ」
『ツインドライブ』は一枚目が
当然、この上昇したパワーを使わない手は無く、貴之は『オーバーロード』を『スタンド』させる。
「更に、相手リアガードを退却させた時、自身を退却させることで『エルモ』のスキル発動!山札の上から一枚手札に加え、『カウンターチャージ』!」
「二枚捨てて一枚引く……その後もう一回『ドライブチェック』で加えるから、捨てた分が帰ってくる……」
「何というか、『ツインドライブ』で手にするユニットを入れ替えたようにも見えるわね?」
手札が最終的に『ツインドライブ』一回分の数を増やせたことになるので、そう見えるのかもしれない。
また、『エルモ』を退却させるものの、『カウンターブラスト』に使ったコストが戻ってくるので、後々役立つことになるだろう。
「もう一回……『ラオピア』の『ブースト』、『ドラゴニック・オーバーロード』でヴァンガードにアタック!」
「その攻撃、真っ向から受け止めよう……ノーガード!」
「リサ、あの選択は……」
「多分、貴之の全力を受け止めたいんだと思う」
一瞬驚きこそしたものの、耕史の想いはよく理解できる。自分の教えを素直に聞いた人がここまで進んで来たのだから、受け止めたくなるのだ。
貴之の『ドライブチェック』はノートリガーで、このターンで勝利することは無くなったが、この後『グレート』も込みで自分の全てをぶつけるのなら、この方が良いだろう。
イメージ内で『オーバーロード』となった貴之の猛攻を、『ブラスター・ブレード』となった耕史が捌いて行くものの、最後は勢いに負けて剣による斬撃を二回貰うこととなる。
この時の『ダメージチェック』は二枚ともノートリガーで、耕史のダメージが5になったところで貴之のターンが終了する。
「まだ見せ切って無いからって甘えたかな?だが……」
「見せ切らなきゃお前も消化不良だろ?だったらこれでいいさ」
「(私と貴之が根底の部分で通じ合うのなら……)」
──彼と貴之は、ファイターとしての魂で通じ合っているのね……。その様子を見た友希那は、自分以外にもそう言った人が嬉しいと思う反面、羨ましくも思った。
これは人数の差異というよりは、その当人との距離感によるものが大きい。Roseliaのメンバーがいる以上、人数だけで言えばこちらの方が多いのだが、それとこれとは話しが違ってくる。
「さあ……先攻後攻は反対になってるが、あの時と同じ顔合わせをしようか……『ライド』!『アルフレッド・アーリー』!スキルで『ソウル』から『ブラスター・ブレード』を『コール』!」
『ブラスター・ブレード』は前列右側にコールされ、『フォースⅠ』をヴァンガードに設置した。なお、この時『ブラスター・ブレード』のスキルは『メインフェイズ』の為に使わず温存しておく。
対峙する『オーバーロード』と『アルフレッド・アーリー』を見て、貴之は一つの懐かしき光景を思い浮かべる。
「(そうだ……これが、俺が『オーバーロード』に『ライド』した時の光景だったな)」
当時も『アーリー』となった耕史と『オーバーロード』となった自分が対峙しており、その時彼の隣りに『ブラスター・ブレード』がいたことも同じであった。
あの時は初心者の貴之と経験者である耕史。今は国内最強のファイターとなった貴之と進路が重なって思うようにファイターとして活動できなかった耕史と大分の差がつき、ファイターとしての力量関係も完全に逆転してしまっているが、それでも自分の全てをぶつけることだけは変わらなかった。
『メインフェイズ』で耕史は前列右側にやや白みがかった鎧を身に纏いレイピアに近い剣と、籠手を覆える盾を持った女性『集成の騎士 フィルノ』を『コール』する。
「二枚『カウンターブラスト』することで『フィルノ』のスキル発動、手札から一枚リアガードに『コール』し、このユニットと『コール』したユニットのパワーをプラス10000!俺が呼ぶのは『アレン』……お前だ!」
「そっか……『インターセプト』を減らすよりは、こっちの方が通しやすいもんね」
「貴之が全力を出しているように、彼もこのターンで全てをぶつけるつもりなのね」
耕史が『ブラスター・ブレード』を使わなかった理由はここにあり、どちらも『インターセプト』のパワーが低いことからこちらを選択した。
場の展開は完了したので、後は攻撃をするだけになる。
「行くぞ……まずは『マロン』の『ブースト』、『ブラスター・ブレード』でヴァンガードにアタック!」
「それは受けます。『ダメージチェック』……」
『ツインドライブ』のことを考えたら防いだ方が次に備えやすいのだが、手札を多く使うのを避けたい故にこの選択を取った。
貴之の『ダメージチェック』はノートリガーで、何もないままダメージが3になる。
「これはどうする?『うぃんがる』の『ブースト』、『アーリー』でヴァンガードにアタック!」
「あなたが応えたように、俺も同じ形で応えます!ノーガード!」
「「(貴之まで……!?)」」
手札に『完全ガード』はあるのだが、どの道
『ツインドライブ』の一枚はノートリガー、二枚目は
イメージ内で『アーリー』となった耕史が、『オーバーロード』となった貴之に剣を用いた斬撃を二回浴びせ、それを受けた貴之が一歩後ろによろめく。
『ダメージチェック』の結果は一枚目がノートリガー、二枚目が
「最後、『アレン』の『ブースト』、『フィルノ』でヴァンガードにアタック!」
「『ワイバーンガード バリィ』で『完全ガード』!」
ここで取っておいた『バリィ』は惜しまずに使う。相手の合計パワーは51000なので、どの道二枚使うのならと開き直った選択をした。
他にも次のターンで絶対に決めると言う決心の現れでもあった。ならば次のターンにぶつけて来いと言いたげな様子を見せて、耕史はターン終了を宣言した。
そして貴之のターンに回り、本ファイトで四度目の『スタンド』アンド『ドロー』を行うのだが、この時貴之に最高の朗報が訪れる。
「(ガイドラインが残ってるってことは、『グレート』もその対象!)」
最後まで全ての力を発揮できると言うことは、耕史に恩を返しきれることも意味しており、貴之にはこれ以上なく有り難い話だった。
イメージ内でも『オーバーロード』となった貴之の瞳は青いままで、能力が発動中であることを意味していた。
「耕史さん、俺は絞りカスすら残さずこのターンで出し切ります」
「付き合うぜ。最後まで来い!」
「俺が今からその先へ進む為に選んだ選択、それを余すことなく見せる!ライド・ザ・ヴァンガード!『ドラゴニック・オーバーロード・ザ・グレート』!」
『グレート』に『ライド』した際も、能力が発動中であることを示すように瞳は青くなっていた。この直後にスキルで『ネオフレイム』を前列右側に『コール』し、『フォースⅠ』も同じ場所に設置する。
この後『メインフェイズ』で後列左側に『サーベル・ドラゴニュート』、後列右側に『エルモ』を『コール』することで全ての用意が整った。
「このターンで決着を付ける……!まずは『サーベル・ドラゴニュート』の『ブースト』、『バーサーク・ドラゴン』でヴァンガードにアタック!」
「『うぃんがる』、お前に任せる!」
パワー18000の攻撃は合計パワー23000の前に阻まれ、ダメージは通らないが、残す攻撃はあと四回残っていた。
「次は『ネオフレイム』でヴァンガードにアタック!」
「『ふろうがる』で『ガード』!」
幸いにも『ブースト』は使われなかったが、どの道ダメージが5である為防ぐことには変わりなかった。
「まだまだ……!『グレート』でヴァンガードにアタック!この時『ネオフレイム』のスキル発動!」
「それは『イゾルデ』で『完全ガード』だ!」
後々少しでも希望を残す為にも、ここは確実に防ぐ必要がある。故に惜しまず『イゾルデ』を選択する。
この時の『ツインドライブ』で貴之は二枚とも
『グレート』のスキルによる『スタンド』条件は『ソウル』が関係している為、このまま『ネオフレイム』も一緒に『スタンド』させた。
「最後の準備だ……『エルモ』の『ブースト』、『ネオフレイム』で『ブラスター・ブレード』に攻撃!」
「すまん、『ブラスター・ブレード』……ここはノーガードにする!」
手札を使おうが使うまいが、どの道『グレート』の攻撃を防げない状況に陥ってしまっているので、ここは防がず、次のターンが来ることに僅かな望みを賭けて手札を温存する。
相手リアガードを退却させたことで『エルモ』のスキルを発動し、『カウンターブラスト』に使えるカードが二枚に増える。
貴之の狙いはこの『カウンターチャージ』で再び『ネオフレイム』の
「行きます!『ラオピア』の『ブースト』、『グレート』でヴァンガードにアタック!再び『ネオフレイム』のスキル発動!」
「全て受け止めさせて貰う!来い!」
「今『グレート』の
「まだ
「それは私もよ……」
──この状況、前にも見たことある……。防御側に博打以外許されない状況か、そもそも博打すら許さない状況なのかの二つしかないのは、以前貴之と弘人でファイトした時と同じ状況だった。
以前と違うのは、『デッキと新ルールを確かめながら戦った過程と結果』なのに対し、今回は『全力を出し切るからこそ、惜しむことなく手繰り寄せた結果』と言える。
そしてこの『ドライブチェック』一枚で決まる中、
「俺のイメージを見せます!チェック・ザ・ドライブトリガー!」
普段ならば「見せてやる」と大々的に言うところ、「見せます」と敬意を込めた言い方に変わっているのは相手が
その結果は
「(貴之、俺は……)」
──お前にヴァンガードを教えることができて、本当に良かった。自分の教えを最後まで守り抜き、更には自分の形に正しく昇華させて返してくれたことで、耕史は心の奥底から喜びを感じた。
イメージ内で『グレート』となった貴之は、『アーリー』となった耕史を拳で二回殴り付けてから蹴り上げ、上空に打ち上がった彼に追いすがった後剣による二撃を加えながら地面に着地し、自身の足を地面に引きずることで勢いを殺しきっていく。
完全に静止しきったところで『グレート』となった貴之の瞳が黄色に戻り、それと同時に『アーリー』となった耕史が光となって霧散するように消えていく。
「さて、『ダメージチェック』がある……最後まで付き合ってくれよ?」
「もちろんです。そうでなきゃ俺は恩を返しきれませんから」
勝敗は既に決しているが、相手の意思を無碍にすることはない。これも耕史が教えてくれたことであった。
もちろん、これに口出しすることは許されない。今戦っている二人が同意したことなのだから、それは野暮である。
早速一枚目の『ダメージチェック』で
その後二枚目、三枚目と立て続けに耕史は
「「……」」
「確か、トリガーでは今の三枚まで引きましたよね?」
「ああ。先に言っておくと、手札に
流石にこんな状況になれば友希那もリサも、緊張するあまり何も言えなくなる。
確認を終えた後、貴之がどうぞと促すことで四回目の『ダメージチェック』が始まる。
その結果は見事に四枚目の
「じゃあ、最後に五枚目だな。『ダメージチェック』……」
もう
その結果はノートリガーだが、ユニットは『ブラスター・ブレード』。このユニットになったことは、貴之らにとっては因果関係を感じるものとなった。
「そう言えば、あの時もそうだったよな。俺が最後に『ダメージチェック』で引いたのは『ブラスター・ブレード』で……」
「その『ダメージチェック』をさせるに至った時の攻撃で、俺は
「(凄い……運命の巡り合わせだ)」
「(過程と結果は同じだけれど、内容や状況はかなり異なるわね……)」
当時は耕史に促されるように引いたが、今回は自分の意志で引いたのが
先攻後攻が反対になっていたり、『オーバーロード』が『グレート』になっていたりと様々な差異は見つかるが、それでも変わらないことがある。
「耕史さん……俺にヴァンガードを教えてくれて、本当にありがとうございます」
「礼を言いたいのはこっちの方さ。だけど、俺もお前にヴァンガードを教えることができたのは、何よりも誇りに思う」
貴之が耕史に尊敬の念を抱き、耕史が貴之に期待の意を送る。それだけは変わらない。
他のファイターや友希那とはまた違う、この二人だけの絆がそこにはあった。
「最後に一個、言い忘れてましたね……」
「ああ。一番大事なことを忘れてたな」
「「ありがとうございました。いいファイトでした」」
互いに右手を出して、握手を交わしながらファイトの終わりを告げる。
その時貴之の目尻からは嬉しさによる涙が出ている理由を、友希那は理解した。ただ耕史とファイトできた嬉しさであるならば、こうはならない。もう一つの理由がそうさせるのだ。
「(貴之、もう一つの意味でおかえりなさい……)」
貴之はこの日、本当の意味で自分がヴァンガードに関わることとなった場所に帰ってくることができたのだ。
* * *
「今日はどうだったかしら?」
「すげぇいい一日だった。本当にありがとうな」
「それなら何よりだわ」
その日の夜。友希那の部屋でベッドの上に座って二人は今日のことを話していく。
ファイトが終わった後、夕食を外で四人して取っていた際に離れていた五年間何をしていたかだったり、戻ってきた後にどうしたか等を話していた。
優勝した際に貴之が受けたインタビューの記事に関して、耕史は「勝ち執念が勝った結果」だと理解していた。『ヌーベルバーグ』……引いてはグレード4のユニットが持っているリスクは耕史も知っていた。
幸いにも今回、貴之が次はどうしたいと言う想いが『グレート』で汲み取れているし、以前に散々絞られたことも聞いたので責めるような言い方はせず、次はそのやり方で勝つことを勧めるに留まった。
なお、『オーバーロード』に『ライド』した時から使っていた能力の存在は感づかれており、現在調査中の旨は伝えてある。これは分かり次第友希那とリサは『レーヴ』に案内し、耕史には連絡を送ることを約束した。
「あの二人、妙に波長が合ってたな……」
「多分、私たちを弄るものが見つかったからだと思うわ」
実のところ、貴之がヴァンガードに踏み込もうとしたきっかけをくれた友希那に気づいたことで、耕史は昔聞いた貴之の惚気話しをぶり返してやったのだ。
そこにリサも乗っかって友希那が恋していく様を話し、そこから今はどうしてる等のネタに発展していったので、貴之と友希那はその都度顔を赤くする羽目になっていた。
この他にもリサが
どちらかと言えばリサが話し上手、耕史は聞き上手と言ったところで、これが波長の合わさりにも繋がっていた。
「ともかく、振り返りができたなら……また進むのみね?」
「ああ。また俺は進んでいく……ゆっくりでもいいからな」
大事なことは最終的にその場所へ辿り着くことにあり、焦るのはいけない。
……と、ここまで纏めたのはいいのだが、貴之は一つのことに気が付いた。
「えっと……友希那?」
「何かしら?」
「その……今日のお前、やけに積極的だな」
振り返りのくだりからだが、友希那はこちらの左腕に両腕を組んでくるだけではなく、自身の胸の膨らみが変形するくらいまで押し当てて来ている。普段ならばこうする場合、膨らみは当たる程度までである。
更に言えば左肩に顎まで乗せてきているので、明らかに何かがあったことが分かり、その原因を考えて見る。
「……耕史さんか。ごめんな?当分会えなかったから……」
「それは分かっているからいいわ。ただ、羨ましかったの……。私は貴之に、あんな顔をさせられないから……」
できただろうけど今はしない。やってもいいかもしれないが今は後回し。割り切った考えを持って他人に羨望をあまり抱かない友希那が、珍しく明確に羨望したのだ。
友希那は貴之に、全てを赦すような優しい笑みや自分と共にいられて幸せであると告げる笑みをさせることはできても、ただひたすらにその時を楽しんでいる純粋な笑みをさせることはできていない。
故に抱いた情であり、どうしたものかと貴之は少し考え、答えを出した。
「今度、俺が友希那にそうさせて貰える場所を探そう。意外なところにあったりするかもしれないしな」
「なら、夏のどこかで探してみましょう。見つからなければ、次は冬に……。えっと、約束にしてもいいかしら?」
「いいぜ。お前がそうしたいなら」
束縛じみた言い方になってしまったものの、貴之がすぐに乗ってくれたので問題なく終わる。ただそれでも、あまりやり過ぎないようにしようと友希那は自分を戒めた。
貴之自身も約束自体はあまり嫌っておらず、理不尽なものでなければ基本的に好ましく思っている。
その後は近いうちに何かあるかを二人で確認したり、何気ない語らいをしていく中で、貴之が妙にソワソワしているので友希那が聞いてみる。
理由は先程からずっと友希那の膨らみを強く当てられていることと、友希那の耳元で囁くような声があまりにも心地よかったことにあり、普段と違う状況もあってどうしても意識してしまっていた。
言われた友希那は顔を赤くしながら慌てて謝り、いつも通りの密着具合に戻ろうとするが貴之が今日はこのままを望んだので、それに合わせることにした。
「と、ところで貴之。一つ聞きたいことがあるのだけど……」
「ん?どうした?」
聞こうとしている友希那が先程までの自分と同じようにソワソワしだし、僅かに体を動かすものだから貴之も意識しておかないと不味いことになりそうだった。
「貴之は、ああいう方面に……興味はあるの?」
「……!?」
──やっぱりかぁぁ!声にこそ出さなかったものの、今回の流れからしてこうなる可能性は十分にあり得ていた。
実際の話し、貴之は自身の財布にコッソリと
どうやって答えるべきか迷う貴之だが、これは沈黙すると却って良くないような気もしたので、長い時間は掛けないようにする。
「興味は……ないわけじゃない。でも、それをするのはちょっと早いのかなとも思ってる」
「早い……。でも、確かにそうかもしれないわね」
今すぐと言われたらそれもいいかと考えてしまっていたが、やはり過程を踏んで行きたいと友希那も考えていた。
その為落胆することはなく、同意の意を示した。
「どこか……節目のような時がいいのかしら?」
「確かに、その辺りが良さそうだな」
その節目がどこになるかは分からないが、目安の場所を決めるのはいいことだと言える。
話しが纏まった後、どうしてこんなことを話したと気恥ずかしくなり、少々ぎこちないおやすみを告げて二人は眠りにつくのだった。
これにて本章完結です。第一章に比べて短いですが、元々Roseliaシナリオ1章とガルパメインストーリーの間をやるつもりの話しであった為、この辺はやむなしです。
耕史のデッキはトライアルデッキ『先導アイチ』をブースターパック『結成!チームQ4』と『相克のPSYクオリア』に出てくるカードで編集した『ロイヤルパラディン』になります。彼のデッキも再現性を意識するなら、『ブラスター・ブレード』は『チームQ4』に収録された
これが貴之の『ロイヤルパラディン』と縁のある最大の理由で、『ブラスター・ブレード』は彼に取って始まりの象徴の一端となります。
次章はガルパメインストーリーの一章になると思います。内容はRoseliaが変化したことによる影響を中心に書いて行く為、彼女らが関与している場所を中心に書いていく形になると思います。
他のバンドリメンバーの誰か、ヴァンガードに触れさせることできないか……この辺も少しでも考えていきたいと思います。