先導者と歌姫 -高みを目指して-   作:ブリガンディ

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予告通りメインストーリーの2話と4話です。今回は結構独自要素多めとなりました。

最近、ガルパに実装されるカバー曲が私の好みに刺さるのばっかり来るので色々と大変なことになってきました(笑)。Morfonicaに実装された二曲は私がリアルタイムで見ていたアニメのものだったので、特に顕著です。
もちろん、Roseliaが『Bad Apple』やるってのにも歓喜しています(笑)。


パーティー2 集まるガールズバンド

「おねーちゃんから?どれどれ……」

 

リハーサルが終わって休憩時間。日菜は紗夜から掛かって来た電話に出る。

もしかしたらこの時間に電話するかも知れないと当日のスケジュールを教えていたのが幸いし、紗夜は丁度のタイミングで電話を掛けることができていた。

 

「もしもーし?」

 

『あ、日菜ね?今大丈夫なのよね?』

 

「うんっ!大丈夫だよ。どうしたの?」

 

紗夜が確認を取る言い分なのはスケジュールを教えて貰っているからで、日菜が肯定することで問題なく電話で話しを続けられることが分かった。

大丈夫ならと、紗夜は今日聞いたイベントの内容と参加条件、それから参加チームの状況を話していく。

自分に話しを持ち込んだ理由を日菜は理解して、一つ疑問に思ったことを聞く。

 

「おねーちゃんたちは出ないの?」

 

『出るつもりではいるけれど、この状況で入ってしまうと他のチームが遠慮してしまいそうで……。だから、後何チームか参加してくれれば参加する方針にしているわ』

 

「なるほど……」

 

確かに仕方ないと思った。自分は姉と一緒にできるで突っ走れるが、他の人はどうだろう?そう簡単に飛び込めないだろうなと日菜は考えた。

自分の知る中で、そう言った状況に飛び込めるのは紗夜()友希那とリサ(友人二人)と、貴之くらいだろう。実力差があり過ぎると遠慮してしまう人はいると言う貴之の談を、友希那とリサからの経由で聞いていた。

紗夜から『この電話を切ったら写真を送る』と言われたので、一旦ここで電話を切る。するとこの後一分もしないで件の写真が送られてきた。

 

「これが言ってたのだね?えーっと……」

 

「日菜ちゃん、何見てるの?」

 

「あ、(あや)ちゃん彩ちゃん、今おねーちゃんから送られて来たんだけどね……」

 

隣で休憩していた桜色の髪を持つ少女──丸山(まるやま)彩に問われたので、日菜は紗夜から送られた写真を見せながらどんな話しをしていたかを説明する。

バンドをするのが理由でこのチームに入ったのが日菜だが、彼女は反対にアイドルとして活動したくて待ち続けていたらこのチームの話しを持ちかけられた身である。

この二人が所属するチームのPastel*Palettes──略して『パスパレ』は各人入って来た経由がバラバラで、最初は非常に纏まりが無かったものだった。記念すべきファーストライブも音源で乗り切ると言われた際も二つに分裂している。

そうして問題を抱えたままライブ当日を迎え、まるで纏まらなかった報いかの如く機材トラブルでしっかり演奏していないことが明るみに出て、案の定炎上することとなった。一応言っておくと日菜は曲を完璧に演奏できる状況に仕上げているし、彩も日菜の手伝いあってギリギリ及第点と言うレベルまで持ち込んではいたが、流石にそうなると演奏する気力すら奪われた。

何もしなければこのまま解散の危機になっていたが、それを嫌だと思った彩と、紗夜と話しながら手伝うことを決めた日菜を中心に再起し、今は無事に活動を続けられている。

また、日菜が紗夜と話していた際、貴之が『ヌーベルバーグ』を再び使用した日に見出した紗夜の答えである『諦めるのは誰でも簡単にできるが、どうやって向き合うかの方が大事』を貰っており、日菜もいつかその言葉を自分のものにしたいと思った。

 

「色んなところと一緒にやれるって考えると面白そうだよねー?」

 

「確かに面白そう!でも、一回相談はしておかないとだね……」

 

自分たちはバンドチームでもあるが、同時にアイドルでもある為、そちらの方面でも仕事が回ってくることがあり、おいそれと独断で決めることはできない。

実際のところ二人はやってみたいと思っているので、後はチームの誰か一人でも賛成してくれれば話しを持ち込んでもいいはずである。

 

「二人とも、何の話しをしているの?」

 

「あっ、千聖(ちさと)ちゃん。日菜ちゃんのお姉さんからなんだけど……」

 

自分たちの話していることが気になったのか、長い金色の髪を持った少女──白鷺(しらさぎ)千聖が問いかけてくる。

彼女は天才子役としても名が知れており、パスパレの客引き要素として彼女の存在は最も貢献していたが、ファーストライブ前は他の仕事を優先して最も練習に関しては無頓着であった。これは彼女が元より多忙な身であったことも起因する。

ただし、機材トラブル直後は彼女が咄嗟の機転を利かせてくれなければ自分たちがどうなっていたか分からないので、その場慣れ具合は流石の一言に尽きた。

役者としては幼少の頃からやっている為、それに伴う一般の感性や楽しみに羨望や寂しさもあるが、今はどうにか隠しきっている。

しかしながら、そう遠くない未来にそれを隠し切れない日がやって来るのを、千聖はまだ知らない。

 

「なるほどね……確かにこれは相談しないといけないわね」

 

立場の関係上各々の……その中でも千聖のスケジュールは最も融通を利かせづらいものであり、最悪は調整する必要があるだろう。

それでもやると決まったらやるつもりではいる為、彼女としては他の人たちの意見が欲しいところだった。

 

「ジブンとしてはやってみたいところですね……イヴさんはどうですか?」

 

「私は是非ともやってみたいですよ、マヤさん!」

 

千聖が求めれば、肩にかかるかかからないかくらいの長さをした栗色の髪を持ち、赤いフレームのメガネをかけた少女の大和(やまと)麻弥(まや)と、銀色の髪と蒼い瞳を持った少女若宮(わかみや)イヴが賛成と答える。

麻弥は元々アイドルとしてでは無く、事務所の機械系に関わる担当でいたが、本人がドラムで非常に高い技量を誇ること、メガネを外した時のアイドルとして問題ない容姿からパスパレのドラムを担当することになった。

ちなみに、麻弥は時々「フヘヘ」と独自的な笑い方をするのだが、千聖は「アイドルとしてどうなのか」と疑問に思っているところである。この他にも女子らしいことをあまりしないので、いつか覚えてもらおうと画策している。

イヴはフィンランド人と日本人のハーフであり、パスパレの活動をするまではモデルをやっており、今でも時折やることがあるそうだ。

日本関係では『武士』と『武士道』を好んでいるらしく、そうでありたいとも思っている。

なお、このチームのパートは彩がボーカル、日菜がギター、千聖がベース、麻弥がドラム、イヴがキーボードである。

 

「なら、一度私が話してくるわね。日菜ちゃん、その写真送ってもらってもいい?」

 

「分かった!ちょっと待っててねー……」

 

「ありがとう、千聖ちゃん!お願いするね」

 

五人中四人が賛成したので千聖が事務所の人に話しを持ち掛け、二十分程で参加に関して承認をもらえる。

ただし、日程について関してはまだ調整が必要なので、そこは集まる日までには決めることとなった。

そこまで話しがまとまったので、日菜は紗夜に返しの電話を掛けて決まった内容を伝える。

 

「うんっ!じゃあタカ君によろしくね!」

 

『ええ。それじゃあまたね』

 

姉と話せるのが楽しくてご満悦な顔で電話を終えた日菜だが、千聖が何か言いたそうな目をこちらに向けているのに気付く。

 

「えっと……日菜ちゃん、その『タカ君』って誰のこと?」

 

「ん?ああ……これ見せながらの方が早いかな?」

 

彼女らの疑問に答えるべく、友希那とリサ、紗夜の三人に教えてもらって買った雑誌を鞄から取り出す。

それは全国大会の情報が載っているゲーム雑誌であり、氷川家はその時の雑誌を二冊持っている。

と言うのも、二冊あればどちらかが読み返したりする際に無いと言う事態を避けられるからと、日菜が後から買ったのである。

始めて開いた時に丸暗記したページまで捲り、そこを見せながら教える。

 

「タカ君って言うのは、こないだヴァンガードで優勝した遠導貴之君のこと!これはその時の使ったデッキとインタビュー記事が……」

 

「ひ、日菜ちゃん!?彼と関わりがあるの!?」

 

「えっ……?うん。と言っても、あたしの場合『幼馴染みの恋人』って距離感だから、そう言うことにはならないけど……どうしたの急に?」

 

こちらの両肩を掴んで必死の形相で問うてくる千聖を見て、日菜は首を傾げる。

──タカ君、何か悪いことしてたっけ?思い返して見るが、それらしいことは全くない。というか、一途に友希那を想い、共にいる少年に何の問題があるのだろうか?気になってしまった。

そんな様子の日菜に千聖が次のことを言った時、羽丘組と花女組で彼に対する認識の違いを日菜は思い出すことになる。

 

「だ、だって……一人の女の子と仲良くしてたら、あっさりと他の人に走っているのでしょう!?そのまま日菜ちゃんまで毒牙にかかったら……!」

 

「あ、ああー……おねーちゃんが言ってたこと、こう言うことだったんだ」

 

花女に広がった誤解は自分たちのクラスでは解いたが、他のクラスまでは分からないと紗夜は言っていたのだ。そして、目の前にいる千聖はその典型例だったようだ──と言いたいが、更に変な方向に解釈してしまっているので、日菜が知る限り一番引っ掛かっているかも知れない。

──これはタカ君も、花女に行きづらいよね……。リサが急遽バイトに行った日は羽丘で集合していたから荒波は立たなかったものの、花女だったらどうなっていただろうか?これは言わない方がいいと日菜は考える。

この時何かに気づいたのか、彩が「あれ?」と声を上げる。

 

「その話し、勘違いだって前に言ってたよ……?」

 

「あれ?彩ちゃん何で知ってるの?」

 

「私、その人と同じクラスだから、話しが聞こえて……」

 

意外なことに、花女でしっかりと情報を知っている人がいたので日菜は安心する。この時、盗み聞きは良くないと弄ったら彩が慌てたことを記しておく。

普段はあまり話さないが、貴之の話しは同じクラスである紗夜と燐子の口からある程度聞くことがあり、彩は『他人に勇気を与えられる凄い人』だと思っている。

彩と自分の発言が引っ掛かったのか、千聖は掴んでいた手を離しながら「どういうこと?」と問うてきた。

 

「タカ君って元々千聖ちゃんが言う他の人のことが好きであって、五年ぶりに再会してようやく付き合い始めたんだよね……。ちなみに、その一人の女の子とは一友人でお互いにそう言う気はないよ?」

 

「えっ……?全然違うの?」

 

「ああ……ジブンもちょっとだけ聞いたことありますよ。何でも、お互いに決めた目標の場所に辿り着いたから付き合い始めたんだとか」

 

「麻弥ちゃんの方にはちゃんと伝わってたんだ……!良かったぁ~」

 

パスパレは日菜と麻弥が羽丘、それ以外が花女となっているので、貴之の情報に関しては大幅に違いが出てしまっている。

麻弥は実際に自分でその光景を度々目撃することがあったのも助けとなり、最初からこの人はこうだと言う間違いない情報を得ていた。

一方で正確な情報を得られず、アイドルや役者の立場を持っている千聖は噂の先行が災いして変に警戒する事態になってしまった。

ちなみにイヴはあまり詳しいことを知らなかったので、日菜の言ったことが正しいんだろうと会話の様子で判断した。

 

「取り敢えず、タカ君とRoseliaの前でその話しはダメだよ?みんなして頭抱えてたから……」

 

「え、ええ……そうするわ。それとごめんなさい。肩大丈夫かしら?」

 

千聖の問いには何とも無いと返し、この問題の解決とする。

実際の話し、紗夜も「尾を引きすぎだと思うわ」と苦言しており、日菜もどうしてこうなったと思ったほどである。

この話しは一旦終わりとし、五人で日程の調整を始める。

 

「(遠導貴之君、ね……)」

 

本当はどんな人なのかと気になった千聖は、後で日菜に聞いてみることを決める。

そして、その時に自分の持っていた羨望と寂しさを隠せなくなる起点ができあがることになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

紗夜が日菜と電話で確認を取り終えて数十分後。貴之は臨時の手伝いで参加チームの確認を行っていた。

 

「集まったのはポピパ。Aftergrow(アフターグロウ)。パスパレ。それからハロー、ハッピーワールド!の四チームか……」

 

──結構集まったな。一日で、しかも短時間でこれなら十分すぎる成果であった。

集まったチームの名前を教えることで俊哉から貰った大まかな情報に目を通し、貴之はそれぞれのチームの特徴を確認する。

ポピパは先程見た通り仲良し五人組で集まった新規バンドで、方針としては楽しさ重視。初心者チーム故に伸びしろに期待大。

Aftergrow──アフグロは幼馴染み五人で組んだバンドで、王道スタイルを行く方針。四チーム内では最も結成してからの時期が長い。

パスパレは様々な経緯を持つ五人が集まったアイドルバンドで、方針はアイドル要素の混ぜ込み。つい先日問題があったらしいが、無事に乗り切った。

ハロー、ハッピーワールド!──ハロハピは世界中を笑顔にするを目的として集まったバンドで、方針はパフォーマンス重視。現状唯一キーボードの代わりにDJがいる。

 

「一日でこれだけ集まるなんて……!これなら企画倒れはしないで済むね♪」

 

「どうにかなって良かったですよ」

 

これだけ集まれば最低限企画倒れは無くなるので、第一段階はクリアだった。後は如何に盛り上げられるか、ここが肝心となる。

 

「そう言えば、お前らはどうする?結構集まったけど、もう少し待つか?」

 

再三になるが、貴之はRoseliaの五人に話しを振ってみる。これでダメだった場合、今後は参加チームの状況だけ定期的に教える予定である。

問われた五人は早速話し合うが、もう問題ないと言う旨ばかり飛んできていた。

 

「これだけ集まったなら問題ないわ……。私たちRoseliaも参加よ」

 

「ホント!?ありがとう!これで五チームだね♪」

 

こうしてFWFに出る目的を持って集まり、実際に出場するほど高い技術力を持つ技術力特化のバンドであるRoseliaの参加が決まった。

貴之の手伝いも今日はこれで終わり、最後に各チームの名簿だけ見せて貰って上がるのだが、退勤を済ませた貴之は一つのことに気づいて冷や汗を掻く。

 

「貴之、どうしたの?」

 

「(答えたらどんな反応されるだろうな……)」

 

何せ内容が内容なので、話した後の反応が怖い。特に怖いのはリサである。

しかしながら、もう既に感づかれている以上、変に隠しても面倒ごとに発展する可能性があるので誤魔化すのは不可能に近い。

となれば話すしかないので、貴之は大人しく話すことを決める。

 

「最後、まりなさんに各チームの名簿見せてもらったんだけどさ……」

 

──一チーム一人、俺と会ったことある人の名前があるんだけど何で?恐ろしい程の因果を感じた貴之であった。

それを聞いた五人も五人で、何があったんだと首を傾げる。彼は現実(リアル)(ドロー)トリガーを数枚持っているのではないかと言う疑問すら出る。

 

「と言っても、どうやって顔を合わせたの?狙ってじゃないのは分かるんだけどさ……」

 

「狙ってできるのなら、それはそれで危ない気がするわ」

 

「狙ってないし、狙えたとしてもやらねぇよそんなこと……」

 

──俺が友希那に心を決めた時から、そんな選択肢は初めから無い。貴之が自信を持ってそう言えば、友希那が顔を真っ赤にする。

その堂々たる姿をみて五人は一安心し、ひとまず友希那を落ち着かせてから会った経緯を聞く。

ポピパにいる沙綾はやまぶきベーカリーへ買い物に行った時、アフグロのつぐみは俊哉らと羽沢珈琲店に行った時、パスパレの日菜は友希那たちと共にいたので、ハロハピの花音は自分がカードショップへの道を進んでいたら迷子になっている彼女と遭遇となる。

花音だけは何があったと思ったが、人助けならばやむなしで、それ以外も極めて至極全うな理由なので問題無しとなった。

 

「しかしながら、これだけ遭遇を繰り返してよく誤解が増えませんでしたね……」

 

「ホントだ……!全部噂とかが走っちゃったらひー、ふー、みー……。考えたくないや……」

 

「そうなったら、花女の方が収集つかなくなっちゃうよ……」

 

「お前らなぁ……一番考えたくねぇのは俺だよ」

 

実際にそうなったら花女も、花女生から見られる貴之も色んな意味で阿鼻叫喚である。

『白金さん案件』の地獄を抜けたとしても、貴之の先に待っていたのはまた地獄であった──。そんなフレーズが出てくる程に酷い状況と化していただろう。

ただし、そうならなかった故に『白金さん案件』が目立ってしまったのもあり、どの道貴之が面倒なことになるのは変わらなかったが、規模が小さいだけ明らかにマシである。

 

「私は信じているわよ?貴之は何があっても気持ちを変えないって……」

 

「ああ、それは当然だ……。あの日俺に全ての始まりをくれたのは、他ならない友希那なんだからな。それに……」

 

──友希那がいてくれたから、俺はここまでやれたんだ……他の人じゃ絶対にできねぇ。それは紛れもない本音であった。

遠回しではあるが、貴之からすると他の人と友希那を天秤で計った場合はどう考えても友希那が勝つ意味合いでもある。

それを聞けて安心して、嬉しくなった友希那がそのまま貴之に密着して少しだけ体を寄せたので、彼は優しく抱いてやる。

 

「まあ、それはそれで良しとして……後はこの先どうなるかですね」

 

「貴之のことだから、ちょっとした拍子で女の子引っ掛けちゃわないか、不安だよ……」

 

Roseliaの面々はその貴之が持つ精神や人となりに支えられたり、助けられているのであまり強く言えないが、ここが最大の不安要素であった。

四人がうんうんと悩み始めたところに、友希那があっけらかんとした様子でこんなことを言い放った。

 

「貴之が誰かに優しくするのは別に構わないわよ?私は貴之のそんなところが好きだから……」

 

『えっ!?』

 

──何を言っているのこの人!?全員して驚くが、友希那は気にせず貴之に問いかける。

 

「だって、私を置いていったりすることは無いのでしょう?」

 

「俺が友希那から離れると思うか?」

 

「ふふっ。そう言うことよ」

 

人目の付くところでここまで堂々とされたら、流石に四人も納得するしかなかった。

また、友希那自身は「自分の彼はここが良いんだ」と言うのを知ってほしいと思っているので、他の人に走ると言う真似さえしなければいいのだ。

それを見た紗夜は少しだけ考え込む。

 

「(私は彼のこと……どう思っているのかしら?)」

 

ここで言う彼とは俊哉のことであり、当分会えていないのが影響して全く答えが出てこないのだ。

──私たちが出ると知ったら、来てくれるのかしら?何故か分からないが、気になってはいる。この他にも、答えが決まったのかどうかも聞いてみたいところである。

そんなことを考えていたのがバレたのか、貴之が何やら含みを持った目で紗夜を見る。

 

「どうかしましたか?」

 

「紗夜の気になってる答えは知ってるけど、それはあいつから直接聞くことを勧めるぜ」

 

「え?ええ……。そうさせてもらいます」

 

──やはり分かっていたのね……。一瞬驚きはしたが、紗夜はすんなりと納得できた。

 

「?氷川さんに何かあったの?」

 

「まあ、本人たちの今後次第ってところだが……人のこと言えなくなるかもってところだな」

 

誰だ誰だと気になる面々だが、そう遠くない内に分かると貴之はあえて答えないことを選ぶ。大介と玲奈相手にもまだ早いとぼかしているので、今しばらくは隠していくつもりであり、明かすのは誰かが感づいた時だろう。

最後にこのイベントは自分たちが後発のチームを引っ張るだけでなく、他のチームの音からまた自分たちも学ぶつもりで行くことを示し合わせる。

集まる日はまた後日連絡が来るらしいので、一先ず解散した後はその日を待ちながら、自分たちにできることをしていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

『なるほど……あそこのイベントに出るのか』

 

「ええ。最初は参加チームが少ないのでやめようと考えていましたが……」

 

『その辺はしょうがないだろ。俺や貴之がヴァンガードの店内大会に参加を決めて、他のチーム人を遠慮させるようなもんだし』

 

同日の夜。気になった紗夜は俊哉に電話を掛けてみた。遠慮気味だった理由は俊哉も理解してくれた。

元々自分たちが出ると言ったら来てくれるかどうかが気になって掛けた電話だが、少しだけ躊躇いが生じる。

 

「(私……しつこい女だと思われないかしら?)」

 

言ってしまえば、紗夜は性格が大分変わっている為、事情を知らないと急にどうしたと思われてしまう可能性がある。

幸いにも今回はその変化の経緯を明確に知っている俊哉なので、そこまで心配する必要は無いのだが、よく話すことのある異性など自分の父親くらいなもので、強いて言えば貴之がいるという状況である為、この辺りはどうしても戸惑いが生じてしまっている。

 

『出るなら行きたいな……いつやるとか、その辺決まってるのか?』

 

「いえ、残念ながらまだ決まっていません。決まり次第また連絡しますね」

 

しかしながら、俊哉の方から聞いてきてくれたお陰で、それは杞憂に終わった。

もしかしたら貴之のように何かを感じ取ったのかも知れない。それはそれで嬉しくもあるが、やはり話したいとも思う。今まで色んなものを抑え込んだ反動なのかもと紗夜は考えた。

後に今の気持ちを俊哉に話してみるのだが、彼がとある玩具と同じ原理だろうと答えることになる。また、友希那が絶賛その状態であることもその時に知る。

 

「ところで、この前の時から答えは見つかりましたか?あれからずっと気になっていて……」

 

『ああ、そっちはバッチリとな。本当に助かったよ』

 

一番聞きたい答えが帰ってきて、紗夜は安心する。自分のことのように嬉しく思っていたのが何故かまでは分からなかったが。

俊哉は『焦りに駆られた自分』に勝ったと言える。これならまた大きな壁が現れない限り心配は要らないだろう。

 

『俺は答えを見つけた時の貴之(ダチ)程の勢いで突っ走ることはできない……。でも、焦らず少しずつ進んで行けば最後は追いつける。それに気づけたのはお前のおかげなんだ……。だから、本当にありがとう』

 

「そんな大袈裟な……!それに、私がやりたくてやったことですから……」

 

気にしなくてもいいのにと思う紗夜だが、一瞬だけ心臓が跳ねるような感覚を味わう。

自分はそれを感じたが、俊哉はどうだろうか?これは気になっても聞くことができなかった。

 

「では、そろそろ切りますね?時間も時間ですし……」

 

『そうだな。来週から合同練習だっけ?上手く行くといいな』

 

「ええ。それではまた」

 

電話を切ってから充電器を差し込み、そのままベッドに移動して横になる。

そうして寝る前に考えるのは次からの合同練習──もあるのだが、何故か俊哉の割合が大きくなり始めている自分がいることに気付く。

 

「(どうしてしまったのかしら?前までの自分が嘘みたい……)」

 

前の自分に戻りたいか?と問いかければ少し迷ってから首を振る自分がいるので、そう言うことなのだろう。

この気持ちを『らしくない』と言われる可能性は極めて高いが、それは関係ない。大事なのは自分がどう思うかだと紗夜は結論付ける。

今度詳しい人に聞いてみようと決めて、寝れなくなってしまう前にさっさと寝ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「遠導先輩、こんにちは!」

 

「こんにちは。戸山さん今日も元気だな……」

 

「貴之、すっかりと板について来たわね?」

 

「まりなさんには感謝しかねぇな」

 

合同練習の前に行う顔合わせの日がやってきて、貴之やポピパ、RoseliaはCiRCLへとやってきていた。ちなみにRoseliaは練習をした後、ある程度余裕を持って来ていた。

バイトとは言え貴之もこのイベント中はスタッフであり、尚且つ彼女らと最も年の近い人となる為、今回の顔合わせで名前だけ紹介するとまりなからは教えられている。

それ自体はいいのだが、一つだけ問題があると言えば貴之にはあるのだ。

 

「しかしまあ、女子25人の中に紛れる男一人って中々すげぇことになったな……」

 

「た、確かにそうね……その……大丈夫かしら?空間的な意味でだけれど」

 

「大丈夫って確証は入れづらいが、なるようにするしかねぇか……」

 

「……余り無茶はしないで頂戴ね?」

 

そう簡単にダメになることは無いと思うが、それでも今回ばかりは友希那も心配する。まりなを加えれば26対1ととんでもない人数比率になる。

幸いなのは、一チームに必ず一人は知人がいることだろう。それが貴之の気を少しだけ楽にしてくれた。

特にRoseliaとポピパは全員知っているので、この二チームが最もそれに貢献している。

 

「そっか……一人だけって大変だな」

 

「貴之君のバイタリティなら……大丈夫かなって思うんですけどね」

 

友希那と貴之の二人で話していたことを理解したが有咲が同情し、燐子は信じる旨を告げる。

貴之は以前も狭い空間で女子に囲まれた時間を送っている経験があるし、今回はその時より時間が短いから平気だと思っている。

問題なのは今回がその時よりも明らかに人数比率が凄まじいことになっていることで、まりなを含めれば26対1の黒一点と言う状況になる。これで音を上げたとしてもそれはそれで仕方がない。

ただそれでも、彼なら──と思ってしまうのはRoseliaの五人が共通していた。

 

「え、えっと……その……」

 

「私もみんなも……気にしてませんから、ね?」

 

自分の呟きを拾った相手が相手なので、どうしてもぎこちない反応になってしまう有咲だが、燐子の笑みは柔らかかった。

しかしながら、まだすぐには無理そうなので、早めに整理をつけることを宣言するに留まった。

 

「まあそれもそうだけど、アタシとしては別方面でやっちゃわないかが心配だなぁ……」

 

「……?別方面ですか?」

 

「だって貴之、人の知らないところで女の子に優しくしちゃうから……」

 

──友希那はいいって言ってたけど、やり過ぎはちゃんと咎めなきゃね。リサは一体何を止めるつもりなのかと沙綾は気になった。

今のところ危惧が杞憂に終わっているのでいいのだが、燐子の時だけは本当に肝を冷やしたので多発することだけは勘弁してほしいと願っている。

 

「あっ、遠導先輩お久しぶりです!」

 

「どうも。店のコーヒー、また飲みに行かせてもらうよ」

 

そんな風にリサが考えていた最中、早速貴之がCiRCLに来たつぐみと軽い挨拶を済ませる。

これ自体は彼女の家族が経営する店に度々行っている故の挨拶な為、特に言うことは無い。

 

「あっ、遠導君……。この前は本当にありがとう」

 

「いやいや、そっちも無事に到着できたようでなによりだ」

 

その後更に遅れて入って来た花音と挨拶を済ませる。

これもこれで助けて貰った側が礼を言い、それに返事しただけなので問題は無さそうであるが──。

 

「だ、大丈夫かな……?」

 

「リサ姉、気にし過ぎじゃない?」

 

現に貴之がある程度線引きをしているのはあこも知っている為、Roseliaメンバーの中ではそこまで心配していない。恐らく友希那の次に気にしていないだろう。

と言うのも、あこの場合は貴之が親しみある一人で収まっていることが大きく、Roseliaの五人では相対的に最も接点が浅い故の結果だった。と言っても、周りの人たちからすれば十分に深い接点なのだが。

 

「今来てるのは四チームですね?」

 

「うん。Pastel*Palettesが遅れそうかなってところだね……」

 

まりなと確認する貴之は流石はアイドルだなと思った。他のチームと比べて多忙故にここは仕方ないところである。

そんなことより、既に21対1の状況ができてしまっているので、この変な緊張を吹き飛ばす意味でも早く本題を始めて欲しいところであった。

この願いが叶わないのはパスパレがまだ来てないことにあり、彼女らの到着を祈るしか無かった。

 

「(部屋が広くても、結局スペースに余裕がないことはあの時と変わらねぇからな……)」

 

ある程度部屋が広くとも、結局空間に余裕がないことは変わりない。以前は友希那と共にいられたことが余裕を作っていたこともある。

そして今回はスタッフとしての立ち位置でいなければならない為、尚更余裕を無くさせてくれるのだ。

顔には出てないが、一旦換気したいと思うくらいには余裕がなくなってきている。そろそろ女子特有の甘い匂いやら何やらに耐えるのが限界に近づいてきている証拠だった。

 

「す、すみませんっ!遅くなりました……Pastel*Palettesですっ!」

 

「間に合ったみたいだね?良かった……」

 

彼女らが間に合ったことで、まりなもそうだが貴之が内心で最も安堵していた。

換気が出来て少し気が紛れるし、後は紹介された時に軽く話すだけなので、もう空間を気にしすぎる必要が無くなったのが何よりも大きい。

まりなが始めると一言言ってくれたので、貴之もそちらに思考を切り替えられた。

 

「みんな、今日は来てくれて本当にありがとう。イベントについてはもう説明を受けていると思うから、省略させてもらうね。私はこのライブハウスで働いている月島まりなって言います」

 

──よろしくね。とまりなが締めくくれば25人から「よろしくお願いします!」と返ってくる。

大勢から挨拶を貰って嬉しさを感じた後、貴之のことはこのイベント限りの臨時スタッフであることを説明する。この時貴之は自己紹介をして軽く頭を下げるだけで終わった。

貴之がここでバイトしている声に驚く人も確かにいるが、誰かが未然に防いでくれたか或いは自分に対しての認識がフラットなのか、貴之が危惧していたような目は無い。

その後は早速香澄から順番に自己紹介をしていき、友希那の番になる。

 

「私は湊友希那。Roseliaでボーカルをしているわ。 このイベントには他のチームを教え、他のチームから学ぶ為に参加させて貰うけれど、聞く時や話す時は遠慮しないで貰えるとありがたいわね。どうぞよろしく」

 

「教えて……学ぶ?」

 

友希那の紹介に疑問を持った少女──蘭が反応する。

黒い髪を短く整え、赤いメッシュを入れている彼女はアフグロのギター&ボーカルを担当しており、作詞も彼女が行う。

一見して不愛想な印象を持たれがちな彼女だが、実は弄られた反応の良さや、幽霊等への耐性が低かったりと意外な面を持っている。それを貴之らが知る機会があるかはまた別だが。

なお、彼女はつい最近までは父親とは非常に仲が悪かった。原因は華道を継がせたい故にバンドを否定的に見ていた父親と、幼馴染みたちが作ってくれた場所だからとそれに反発する蘭によるものである。

転校の都合で友希那と離れることになったが、また会えると信じて自分の道を進んだ貴之と、最初こそ敬愛する人を否定した者たち憎しで暴走したが、最後は皆のおかげで自分の在り方を引き戻した友希那はどちらとも父親との仲が悪くならなかった為、知った場合は明確的な対比点となるだろう。

 

「教えると言うのは、他のチームの技術力を向上させる為にアドバイスなどを送る……学ぶと言うのは、私たちがチームを組んでから日が短いので今後の為に他のチームが持つ音を知るになります。FWFに出たとは言え、私たちも知らないことは多いですから」

 

「(まあ、デカいフェスに出てるって言うし、()()()()()凄いんだろうな……)」

 

紗夜の説明を聞いた巴は、恐らくその肩書きがなかったらスイッチが入ってしまっただろうと考える。

何事も無ければ問題無いのだが、彼女は基本的に煽り耐性が低い。故に今回は紗夜の落ち着きある言動が助けとなった。

この後沙綾が一曲ずつ順番に演奏するのはどうかと提案が出て、それに全員が乗らせて貰った。

 

「なるほど……こう言う演り方もあるのね」

 

「このチームは……で、このチームが……ですか」

 

実際沙綾の提案はありがたく、友希那と紗夜は早速他のチームの音や方針を見ていく。

先に他のチームが演奏した後にRoseliaが演奏し、最後にポピパが演奏して一通り全チームの演奏が終わる。

 

「おお……っ!このチーム楽しそう……」

 

「だね~♪アタシも聞いてると思わず体を動かしたくなっちゃう」

 

「心が弾むような……いい音ですね♪」

 

この際にポピパの曲調を聞いたあことリサ、燐子の反応であった。友希那と紗夜もこのチームが「自分たちにないものを一番持っている」と感じ、期待を寄せた。

また、一通り演奏をした後に香澄が「ミニライブをやってみたい」と言い出したので、まりなは少し考える。

 

「そうだね。このイベントの宣伝にもなるしいいかも……。後でオーナーに掛け合ってみるね」

 

「(まりなさん、俺に気を遣ってくれたのか?)」

 

実際すぐに移動されようものなら、貴之はこの後何をするかわからないまま女子だらけの空間に取り残される為、例え友希那やリサに気を遣ってもらおうとも、心持ちが阿鼻叫喚になっていただろう()()()()()()

今後の予定はまず初めは二チームずつで合同練習を行い、互いを知っていく。その後はイベントに向けて練習をしながら何か試みができた場合はそれも並行して行う形となる。

ここまで方針が固まったところで話しは一度終わりとなり、まりながオーナーに相談している間、貴之は各チームの合同練習の割り当てを行っていく。

 

「や、やっと終わった……」

 

「一人に任せちゃってごめんね……。何か好きなの買って行っていいからね?」

 

「すみません、ありがとうございます」

 

全員が去った後、突っ伏すのを我慢していた貴之はまりなから差し出された小銭を受け取る。丁度CiRCLで販売しているドリンク一つ分である。

退勤を済ませて一つ買ってからCiRCLを出ると、すぐ近くで待っているRoseliaの五人がいた。

 

「待ってたのか……。俺の為に」

 

「あはは~。まあ、あの状況に取り残されてるのは流石に放っておけないからね……」

 

「お疲れ様。どこか落ち着ける場所に行こうという話しになっているのだけど……あなたも来る?」

 

友希那の誘いには素直に乗らせて貰う。とにかく少しでも早く休みたかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

そうして辿り着いたのはファミレスであり、軽食と飲み物だけ頼んで注文が来るのを待つだけにする。ちなみに、CiRCLで買った飲み物は飲み干してしっかりとした場所に捨てておいた。

 

「何だったんだあの地獄絵図は……」

 

「いくら貴之君でも、最初は難しかったんだ……」

 

「貴之さん、ホントに大変そうだったもんね……」

 

待っている間、貴之が情けなく突っ伏すのも仕方がないだろう。Roselia五人と接しているだけならいつも通りだなで終わっていたのだが、今回は訳が違う。

まりなに説明を貰った後の合同練習における時間決めは、一人で複数人もの異性に業務応対でやらねばならなかったので気を回す場所が多すぎて大変で仕方がなかった。

そこから解放され、異性とはいえ全員がそれなりに気を許せる人だけの状況になったので、少しくらい脱力したっていいし、彼女らもそれを許す。

 

「こうしてみると、玲奈ってよく平気でいられるよね~……何でだろう?」

 

「昔からと言う慣れが大きそうね……」

 

「と言うよりも、今回は人数比率的に無理があったのでは無いでしょうか……?」

 

後日聞いてみたところ、玲奈はヴァンガードを始めた時点で紅一点の状況が多すぎた故の慣れだった。

その為、貴之も慣れれば行けるだろうと思われるが、玲奈のように3対1や5対1程度から少しずつではなく、いきなり26対1なのだから、いくら何でも無茶がある。

貴之が突っ伏すのをやめた直後に注文が届き、軽食を摘まんだり、飲み物を飲んだりしながら雑談をしていく。

 

「なるほど……あそこの五人か」

 

「あのチームからは、私たちに無い物をより多く得られそうだと思っているわ」

 

やはりここで上がってくるのは他のチーム内で、どこが印象に残ったかになる。

今のところ、今後に強く期待できるポピパと、分かりやすいスタイル故に伸ばす方針が付けやすいアフグロが二強であった。

 

「おねーちゃんたちのところ、Roseliaとは違うカッコよさがあったんだよねぇ~……」

 

「王道スタイルで分かりやすいロック系だから、映えるんだよねぇ~♪」

 

アフグロのスタイルは王道故の分かりやすさから受けが良く、万人受けしやすい。

その代わりに誤魔化しを利かせづらいと言う難点はあるが、自分たちの成長等は非常に分かりやすい。

 

「『かげろう』みたいな感じ……でいいのか?花形のスタイルって言うし」

 

「うん。丁度そんな感じかな……Roseliaは曲を考えると『シャドウパラディン』かも?」

 

「集まった経緯で考えると『ゴールドパラディン』とも捉えられますが……」

 

()()()()()()()()()()()()と思うわ。きっと、そう言うことだってできるはずだから……」

 

貴之の思いつきから始まった考え方は、友希那の考えに賛同する形で収まった。

そうして暫く雑談した後に解散となり、貴之は友希那とリサと共に三人で帰路に付く。

今後のことを話しながら歩く帰り道の途中で、誰かの携帯が着信音を鳴らす。

 

「……瑞希さんから?」

 

貴之の携帯からであり、まさかと思った貴之は一言だけ詫びを入れて電話に出る。

彼女のことを全く知らないリサは誰のことかを聞くと、友希那がかいつまんで答えた。由衣のことは知っていたので、そこまで問題にはならなかった。

 

「もしもし、遠導です」

 

『いきなりごめんなさいね?今大丈夫かしら?』

 

「大丈夫です。どうしました?」

 

少しだけ焦燥感のある声音が聞こえたので半ば反射的に答えてしまうが、実際帰るだけなので貴之はあまり問題なかった。

ならばと瑞希から告げられた言葉は、ある意味では一番待っていたものであった。

 

『この前言っていたあの力のこと、遂に調べが着いたわ』

 

「……!それ本当ですか!?」

 

これで今後どうするかは決めることができるので、非常にありがたいものだった。

日程を決めてからまた連絡すると伝えて、一度電話を切らせてもらう。

 

「二人とも、こないだ俺が耕史さんとファイトした時に使った力のこと……覚えてるか?」

 

「ええ。もしかしてだけれど、さっきの電話は……」

 

友希那の確認に貴之は肯定を返し、三人と俊哉の大丈夫な予定を確認する。ここで俊哉が入るのは、分かり次第伝えると約束しているからだ。

そして行くのは翌日となり、後は時を待つだけになった。




一先ず2話と4話が完了です。1話と3話が飛んだ理由は完全に原作ままにしかならないせいですね(汗)。

それはさておきとして、今回の変更点は……
・香澄たちが直接事務所に赴くのではなく、紗夜からの電話がイベントを知る起点
・リハーサル前なので少し時間をおくところだったのが、リハーサル後の空き時間故にすぐに決まる
・Roseliaが最初から出るのを確定させていて、友希那と紗夜が当たりの強い言い回しを避ける。
・↑に伴い、巴が煽りに乗っかるようなことが無くなり、沙綾の提案で一度演奏する形に
・まりながすぐオーナーに掛け合うのではなく、貴之に気を遣って話しを終えてから掛け合う
分かりやすい点としてはこの辺りでしょうか。

なお、Roseliaとポピパを省き、貴之と面識を持っている人から見る彼はこうなります

つぐみ……時々友人と一緒に店に来てくれる、優し気な雰囲気あるヴァンガードファイター。
話しを聞いた限りでは他人に気を回せたり、最近は友人と協力して他の人にヴァンガードを教えていたりと結構器用に見える。
また、ひまり経由で友希那との関係は聞いたことがあり、とても一途な人と捉えており、そんな彼と共にいられる友希那は幸せだろうと感じる。

日菜……自分の友人二人の幼馴染みにして、片方とは恋人である現在国内最強のヴァンガードファイターであり、何気に自分がいつか来ないかと待ち望んでいた『何か一つの分野でいいから、努力で全てに打ち勝った人』。結果として自分が姉と仲直りする機会を作ってくれた恩人でもある。
友希那から貴之を取るつもりなど更々ないが、友人も姉もやっているヴァンガードに興味はある為、今度教えてもらいたい。

花音……自分が迷子になった時に助けてくれた人。五年も離れているのに土地勘しっかりしているのは凄い。
『白金さん案件』は聞いたことがあるものの、少しだけ話した限りではそんなことをする人ではないと思う。同じバイト先の彩が知っているなら今度聞きたい。

この三人から見るとこんな感じです。これは貴之と対面次第、実際に話した印象を再び書いていきます。ちなみに、とある玩具とはゼンマイで動く車の玩具です。

次回は一旦貴之の能力に関する話しになると思います。
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