先導者と歌姫 -高みを目指して-   作:ブリガンディ

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予告通りRoseliaとパスパレの合同練習を描きます。

私の仕事先も遂に緊急事態宣言が出たので、暫くは自宅待機となりました。
こうなると見据え遅れて購入したポケモン等もあるので、一先ず現在の投稿ペースを維持し、行けそうならペースアップをします。

アニメ11話でいい意味でとんでもない結果がやってきたので、残り2話が楽しみでなりません!ちなみに6話を見た直後との落差が大きく、それを表すとこんな感じになります。

6話視聴後の私「こんな一方的な結果……嬉しいのかよ……? 満足なのかよ!? 誰が、誰が喜ぶんだよ!うわぁーっ!(絶望)」

11話視聴後の私「行こう、このままの流れで最終話へ……(興奮)」

6話でこうなったのは、ラウクレみたいに熱いのを期待してたら、どう考えてもRASが勝つ流れに持ち込まれていたのが最大の原因だったりします。(次回予告が暗い部分ばかりだったのも尚更)

その為7話を見るまでとても心臓に悪い想いをしていました。Roseliaメンバーがそこまで引きづった様子が無かったのは、時間軸的に見てRoseliaからすれば三度目の転機だったからでしょう(一回目はRoselia1章のスカウト案件、二回目はRoselia2章の大失敗、三回目が6話による結果)。
紗夜は6話でチュチュに煽られていたので、無茶をしたのもやむなしですが……(汗)。

また、RASが7話開始段階で1位になっていたのに、9話の途中で2位に戻されていたのは花の寿命が関係しているかもしれませんね……(RASの本来の意味合いは『御簾を上げろ』と違う為、たえが最初に感づいたセリフを元にスイレンで仮定します)。

Roselia=薔薇……10年~20年
RAS=スイレン……3ヶ月

と、調べてみたらスイレン側の寿命が非常に短いんですよね。
これをアニメの流れで行くのなら、『6話でスイレンの花が咲き、9話で一度枯れてしまった』と見れるかなと思った次第です。手入れ次第で伸ばせるとは思いますが、スイレン側は非常に難しいのでしょうね……(薔薇も結構難しいそうですが)。


パーティー5 蒼薔薇とアイドルと先導者と

Roseliaとアフグロで合同練習を行った翌日。貴之は再び合同練習の様子見を任されており、その開始15分前になる頃にカウンターのところで少し考え事をしていた。

今回の合同練習はRoseliaとパスパレと言う、再び面識を持っている人が多くそれなりに気が楽な場所となっているのだが、一つだけ気になることがあった。

 

「(白鷺さん……どうして俺にあんな情を感じさせたんだ?)」

 

少し前にパスパレのメンバーと顔を合わせたのだが、その時千聖だけこちらに複雑な様子の目を向けていたのだ。

しかもその時に感じ取ったものが『警戒』と『羨望』、『嫉妬』と呼べるものが集まっていたのだ。

この内『警戒』は花女生故に例の案件だろうと済ませられるのだが、問題は残り二つであり、何故そんなものを感じ取ったのかが分からない。

 

「(全く分かんねぇな……話し掛けたことも、話しかけられたことだって一度もねぇし、互いに初対面だよな?)」

 

何故自分にそう感じさせたのかを割り当てるにしても、前以っての情報が少なすぎて今すぐには難しいだろう。

表向きの経歴からある程度想像することは可能でも、それが本当とは限らない為、何処かで探りを入れられればと思っている。

そう言うことの為に身内にお願いするつもり等は無いので、行けそうな時にやってみることにする。

 

「うだうだ考えてても仕方ねぇ……行くか」

 

「今から行くの?良かった……どうしたものかと思って様子見に来ちゃったよ」

 

「あ……それはその、ご心配をおかけしました」

 

流石に、まりなが戻って来てしまうことになるのは予想外だったが──。

気を取り直して二チームが練習に使う部屋のドアにノックをして、今回は友希那が開けてくれたので部屋に入れさせてもらう。

今回も10対1で、内5人がアイドルと言うアフグロの時よりもとんでもない状況なのだが、26対1を経験したせいなのか全然平気だった。

ちなみに、後日これを俊哉に話した時は、感覚狂わないようにと本気で心配され、玲奈には「アイドルに囲まれる空間は楽しかったか?」と煽り半分、試し半分で聞かれた。

貴之自身は「アイドルよりも友希那」と相変わらずのぞっこんを示したので、クラスの人に脱帽されている。

 

「貴之さん、今日もお勤めご苦労様ですっ!」

 

「おう。基本的に俺は昨日と同じ感じになると思うから、そのつもりで」

 

「ねぇタカ君、昨日と同じって?」

 

昨日の段階で何をしていたかはRoseliaしか把握していないので、貴之は合同練習の時間中自分がどうしているかを話す。

ただ見ているだけだろうと思うかもしれないが、今後合同練習を続けられるか否かの判断材料にもなる為、想像以上に重要な役割であることを理解してもらえた。

何をするかが話し終わるといい時間になっていたので、二チームの合同練習が始まっていくことになる。

Roseliaからは友希那、紗夜、リサの三人がそれぞれ日菜との姉妹、友人である為、そこは非常に楽に進む。

 

「私と二人って……同じクラスだったよね?」

 

「「あっ!そう言えば……!」」

 

彩の問いかけにより、紗夜と燐子が思い出す。普段あまり話しはしないが、クラスが同じ以上名を頻繫的に聞くことになるのだ。

それと同時に、彩が例の案件を聞かないので気を遣ってくれたのかなと思ったが、後々日菜が先回りして伝え、聞かないように根回ししていたことを知って紗夜が驚くことになる。

この他にも、羽丘生は全員が二年生で、クラスは友希那がA、リサと日菜がB、麻弥がCと全てのクラスが揃い踏み、あことイヴがチーム内で唯一年下だったりと意外な点が見つかってきた。

また、慣らしを終えたら早速演奏を一回ずつ行い、そこからパートごとに練習──と言う方針で行くことが決まり、早速その慣らしから練習が始まった。

 

「(流石にこんなすぐには分かんねぇか……)」

 

自分から仕掛けられるタイミングが無いので、千聖が向けた情はまだ分からない。

今しばらくは見える事など無いだろうから、練習の様子を見ていくことにした。

 

「何と言うか……私たちの音とRoseliaの音って、対極的な気がするわね」

 

「技術力を持って高みを目指す私たちと、ネームや容姿を活かして売り込んでいく……或いは来てくれた人を楽しませるあなたたち。そこが理由かしら」

 

千聖の感じたことを、友希那が表す。これ以外にも、結成した時の経歴等が違ってくるのもあるだろうと思える。

RoseliaはFWFに出ることを目的として、技術力を第一に集まった──目指す場所と最初に求めていたものが技術と共通していた。

反対にパスパレは事務所の命だったり、オーディションだったり、本来はサポートだったけおど──と言ったようにバラバラな集まり方をしている。

そんな色々と対比的な二チームなので、もしかしたら苦労するかも知れないと思いながら個別の練習を始めて行く。

 

「今覚えてるのがねー……」

 

「なるほど。それならこれからやってみましょう」

 

その中で最もスムーズに進むのは氷川姉妹の場所であり、姉妹なのは元よりなのだが紗夜の教えを日菜がすぐに飲み込むのでとんとん拍子に進んでいく。

ただし、スムーズに行くのはとある問題点にも繋がるのだが──。

 

「(だ、大丈夫かしら?練習時間の途中で教えることが無くなりそうだわ……)」

 

基礎技術を教えるだけだと、日菜の飲み込みの速さではすぐに終わってしまいそうなことであった。

一応大丈夫か否かを聞くのだが、日菜は全て大丈夫と返すし、誇張無しにものの二、三回程で飲み込んでいってしまう。

ならばと紗夜はいっそのこと教えられるだけ全て教え、あまりにも進むようなら日菜が演奏する曲を部分ごとに見ていくことを決める。

 

「実は、この部分が苦手で……」

 

「ああ~、そこかぁ……アタシも昔、上手くできるようになるまで時間かかったよ……」

 

反対にゆっくりやっていくのは千聖とリサの場所であり、ここは千聖がベース初心者である故に早すぎると殆ど飲み込めず仕舞いになることが危惧されていた。

教えを請う千聖の姿を見て、リサは過去の自分を懐かしみながら教えていく。それは貴之が自分たちにヴァンガードを教えた時もそうなのだろうと思いながら。

 

「すぐにはできないかもしれないけど、小さな積み重ねって大事なんだよ?今日はすぐそこに体現者がいるしね♪」

 

「遠導君、ね……」

 

すぐ近くに、自分の積み重ねをしっかりと見てくれる人がいる。千聖はそれがこの上ない程彼の幸運だと思っていた。

上手く行けば今回のように()()()()()()()声。失敗しても「次がある」と励ましや応援の言葉が来るのだから、それも彼の原動力だと思える。

それに対して自分は──と思うと、どうしても負の感情を持った目を向けてしまいそうになり、慌てて取り繕う。

 

「まあ、気になったら今度教えてあげるよ。友希那もそうだけど、アタシも貴之とは幼馴染みだからね♪」

 

「そうね……それなら、今度お願いしようかしら」

 

「(リサの言葉に反応したな……。今のは『嫉妬』の情だ)」

 

千聖が取り繕う頃には既に貴之が察知しており、引っ掛かりが掴めそうなところになる。

この時、リサが自分にけしかけない選択をしたのは千聖の経歴を鑑みてのことだろう。

早い話が「天才子役だから、その演技力で引っ張られたら目も当てられない」と言うちょっとした警戒心である。例え貴之が鋼の如き一途さを持っていても、ノーマークは速いと思ったのだ。

 

「届けたい人や、歌への情熱や想いを乗せて歌うようにすると、それだけでも結構変わってくるのよ?」

 

「な、なるほど……でも、届けたい人かぁ……」

 

「そうね……。丸山さんの場合、来てくれたお客さんが真っ先に出てくるのかしら?自分たちが演奏すると聞いて来てくれるのだから、その人たちへの感謝と言う意味合いもあるけれど……」

 

「お客さんを笑顔にしたい!って言う気持ちがあるから、それを乗せればいいんだ……!ありがとう友希那ちゃんっ!」

 

ボーカルは楽器ごとに演奏法を教えることが無く、歌い方と気持ち等の乗せ方が主になってくる。

その為、友希那は自分がどうしているかを彩に伝えた後は、彼女の意図を聞きながら細かに教えていく形となる。

また、彩の方はもうすでに友希那を名前呼びではあるが、友希那自身は相手が呼びたいようにすべきと考えているので、その辺はあまり気にしない。

 

「想いの乗せ方に関してはもう一人先導者がいるから、気になったら聞いてみるといいわ」

 

「先導者……遠導君のこと?」

 

彩の問いには素直に頷く。

この時大丈夫なのかと問われたが、友希那自身は彼の良さを知ってもらいたいと思っているので、寧ろ推奨した。

あまりにも堂々とした対応は、同時に貴之への強い信頼も表しているので、後で聞いてみようと彩は考える。

 

「いや~……こうして音を合わせていると、ついつい楽しくなっちゃうっスね♪」

 

「あこもあこも!なんかこう、光と影が一つとなり……アレが生まれて……って感じで!」

 

意外なところとしては、ドラムを担当しているあこと麻弥のところで、麻弥自身がかなりのやり手だったことから、二人でセッションと話し合いをしつつやっていく形になっていた。

これはあこが言葉で伝えるのが苦手な代わりに音や体での表現が得意であるのに対し、麻弥も一緒に音を合わせながらの方が楽しくていいと言った事で、思想が噛み合った故に実行できている。

ただし、ドラム自体は他のパートと比べて体力消耗が激しいので、後々通しの時に体力をなくさないようにだけ留意している。

また、あこ言い放った『光と影が一つとなり……』と言うフレーズが、後ほど友希那の方針を表す言葉になるのはこの時誰も予想できなかったことである。

 

「動くこと前提のキーボード……その場合だとこうすればいいのかな?」

 

「そんな感じですよ!こちらのキーボードだと……こうですか?」

 

「はい……今みたいに、立った状態でピアノを弾くようなイメージを持ってもらえれば」

 

ちょっと変わったところとすればキーボードの二人で、互いに使っているキーボードを使わせて貰って弾いて見ながら意見交換する形を選んだ。

技術力最優先なので、自分のパフォーマンスの発揮を重視する燐子と、アイドル故に動けることを条件に入れるイヴのスタイルが対極的に当たる為、互いを知る目的も入っている。

結果として互いの良さを知った後、自分たちに合うのは今使っている方のキーボードと結論を付け、今度は技術力と表現力の教え合いにシフトしていった。

 

「(前回がトラブル多めってところはあったけど、今回は何も問題なしだな……)」

 

──白鷺さんがどうしてあの情を向けたかはまだ分からんが……。一先ず練習自体は問題なしなので、今は置いておく。

程なくして前半の練習が終わったので、貴之は昨日と同じくまりなに電話で状況を伝えた。

 

「(正反対な組み合わせってのも、面白い結果を生むんだな……)」

 

片や全員が自分たちの意思で集まり、メジャーへの道すら目指さんとするRoselia。片や様々な形で集まり、最初からメジャー活動をする中で意思を一つにしていくパスパレ。一見すると合わなそうだと想う組み合わせでも、面白い結果を生むのだなと貴之は思った。

──残った二チームとRoseliaが合わさったらどうなるんだろうな?そう考えていたところに、自分に声を掛けてきた人がいる。

 

「いきなりごめんね。今大丈夫?」

 

「大丈夫だけど、どうした?」

 

声を掛けてきたのは彩であり、先程友希那に勧められたので実際に聞いてみようと思ったそうだ。

そう言うことならばと乗ることにした貴之は、先に聞くことだけ聞いてから答えることにする。

 

「参考までにだけど、俺のことはどの辺まで知ってる?」

 

「日菜ちゃんから教えてもらったのと、クラスで聞いた話しの範囲だけになるけど……」

 

Roseliaの内友希那とリサの二人とは幼馴染み、ヴァンガードでは『かげろう』の『ドラゴニック・オーバーロード』を欠かさず使うファイターとして名を馳せており、数年間ゲーム雑誌に名を残し続けた国内最強の『かげろう』使いとされている。

何度も惜敗を重ねてもなお立ち上がり、今回で栄光を掴み、大切な人と想いを通わせて大団円を迎えたのも知っており、花女では有名な案件も誤解であることを聞いた……と言う所まで知っているのを答えた。有名な案件の話しは避けた方がいいと言われていたが、自分の現状をしっかり伝えるべきと思って正直に話すことを選んだ。

最後の一つで大いに安堵した貴之は、自分が『オーバーロード』を使うと決めてからその後のことを話すのが良さそうだと思った。

 

「ファイトを重ねていくうちに『コイツで勝ちたい』とか、『コイツが強いことを証明したい』って言う想いが出てきてな……デッキの構築を考えたり、戦い方の工夫とかも色々やったよ。その想いを表に出して堂々と知らせたかったからさ」

 

「あっ、分かるかも……!私も『夢が叶ってアイドルになれたよ』とか、『見てくれる人に夢を与えたい』とか……そんな想いがあるんだ♪それを上手く乗せて歌えればいいんだけど、何かあるかな?」

 

乗せたい想いは明白だが、乗せ方が分からない彩はそこが悩みだった。友希那は無意識にできるようになってしまっていた身でもある為、そこの説明が上手く行かなかったらしい。

そこで白羽の矢が立ったのが貴之であり、彼の場合は常に意識を忘れないも同然なので打って付けであった。

彩の問いに貴之は、一つやりやすい方法があると前置きを作り、彼女がしっかり聞けるように意識を向けさせる。

 

「やるべきことはただ一つ、イメージするんだ」

 

「イメージ……想像?何をイメージするの?」

 

「今聞いた話しなら……丸山さんの場合は、『パスパレが奏でる音で、皆が笑顔や夢を得る姿』かな。自分たちの活動ならそれができる……そのイメージをしっかりとできれば大丈夫なはずだ」

 

「笑顔や夢……」

 

目を通して、彩は貴之が言った通りのことを想像(イメージ)してみる。

その光景が少しずつ明白に浮かんで来るに連れて、うんうんと頷き、それと同時に笑みが浮かんできた。

ものの数十秒程で完全に浮かび上がらせることができ、彩は一つの答えを出す。

 

「うんっ、何だかできる気がしてきたかも……♪」

 

実践した結果彩はそれを大いにアリだと受け入れ、その回答に貴之も何よりだと安心する。

 

「俺もそうやって『オーバーロード』を中心に集まった仲間たちと、並み居る強敵に打ち勝つイメージは忘れなかったんだ……」

 

「忘れないで今回の優勝なんだもん……努力が生み出した結晶だね♪」

 

「そう言う丸山さんだって、諦めずに色々やってアイドルになれたんだろ?だったらそれも、努力が生み出した結晶だな」

 

──確かにそうだねっ!『努力の末に夢を掴んだ者同士』と言う、思わぬ共通点を見出した二人は揃って笑う。

この直後友希那もそうだと話しが出て、それを拾ってこちらに来た友希那に事情を話せば理解してもらえ、今度は三人で揃って笑うことになった。

また、彩が自分の全国大会優勝のことを『努力の結晶』と称したことで、千聖から先程と同じく『嫉妬』の情を向けられたのに気づいた。

 

「(なるほど……こりゃ普通に話しててもある程度拾えそうだ)」

 

貴之からすれば千聖の抱いている情に気づけるチャンスでもあるし、二チームの親睦を深める起点を作るチャンスでもある為、逃さない手は無かった。

 

「私はテレビで見てたアイドルの姿に憧れて……そこから事務所に入って色々とやったんだ♪」

 

「なるほどね……私はお父さんがミュージシャンだったから、その憧れから始めたわ」

 

「俺はその友希那の歌う姿に惹かれて、色々探した結果辿り着いたのがヴァンガードだった……。だから俺にとって、ヴァンガードは初恋の象徴でもあるんだよな」

 

友希那と彩の場合はよくあるパターンなのですんなり納得できたが、貴之のは衝撃発言だったらしく、日菜を省くパスパレメンバー全員が驚いていた。

始めて聞いた時は自分もそうだったと、氷川姉妹とあこが言ってくれたことにより、驚いていた四人は安堵する。

また、貴之が堂々と言うものだから「一度言われたけど、やっぱり恥ずかしい」と顔を赤くした友希那が貴之の胸に顔をうずめた。

 

「ヴァンガード始めて……同じクラスのやつに教えてくれって頼まれたら、それを引き受けて……そんな感じで友好関係も増えて行ったな。内一人とは親友って呼び合える間柄にもなれたし」

 

「そう言うこともあるんだ……。友希那ちゃん凄いな」

 

「えっ?あ、ありがとう……けれど、私だけじゃないわ。貴之がヴァンガードの道を進むに当たって、これ以上ないくらいの恩人がいるのだから……」

 

「耕史さんには、頭を何回下げても足らないな……」

 

耕史とは誰かと聞かれれば、自分にヴァンガードのアレコレを教えてくれた人であり、今の自分のファイトスタイル確立に一躍買ってくれた人であると説明する。

貴之がよく言う『イメージは力になる』、『この世界ではどんな自分がいてもいい』は彼から教えて貰った言葉であり、貴之は受け売りだったのを正しく理解し、尚且つ自分のものにするまでやってのけて見せた。

そんな姿を見れれば師匠冥利に尽きるだろうと思えるし、実際にそうなっているのを友希那とリサは見ている。

 

「(ダメね……話しを聞けば聞くほど、彼が持っているものを知って、空虚感を煽られる)」

 

「(今度は『羨望』?だが、ここまで引っ張り出せれば判断材料には十分だ)」

 

千聖から向けられた情をもう一つ感知したことで、貴之は自分の経歴が関係していると推測を付けた。

ここまで気づけたところで休憩が終わり、また練習に戻っていく。

 

「さてと……俺の成分は取りきったか?」

 

「ええ。また行ってくるわ」

 

胸に顔をうずめてそのままだった友希那もご満悦だったようで、嬉々とした様子で戻っていく。

通しと聞き残しの確認を中心に後半は行っていき、この時に友希那は麻弥のドラムの腕前に驚いた。予想以上に技術力が高かったのである。

仮にあこよりも早く彼女と出会って引き入れたとしても、オーディションやコンテストの時に味わえた感覚を得られるかは分からないし、今後何があろうともRoseliaのドラムはあこで決まりなので今更考えようとはしない。

それでも評された麻弥は嬉しく思い、今度互いの息抜きとして音を合わせるのはどうかと誘い、友希那が受け入れたことでそれは成立した。

また、この時麻弥が「フヘヘ」と独自の笑いをして、千聖から怖い目線を貰ったのはここだけの話しであり、貴之もそれに圧倒されて何も言えなかった。

意外な収穫を発見しながら練習が終わった後、貴之は一つの話しを持ち掛けられる。

 

「実はもうじきこのイベントがあって、私がヴァンガードファイトをやるってことになったの」

 

「どれどれ……。って、何ぃっ!?当日リリースされるデッキでイベントファイトするのか!?」

 

彩に見せてもらった情報を見た貴之が面食らうが、彼女が抜擢された理由は何となく分かる。

このリリースされるデッキは『惑星クレイ』では『アイドル』の枠組みにいる『クラン』であり、現実でアイドルの彼女かパスパレの誰かがその繋がりで呼ばれる可能性はあり得た。

Roseliaの五人も見せてもらったが、見た目が可愛らしいユニットであること以外は詳しく書かれていなかったので、それ以外はよく分からなかった。

そしてもう一つ、この話しを自分に持ちかけたと言うことは──。

 

「なるほど……丸山さん、ヴァンガードに触れたことはなさそうだな?」

 

「そうなの。だから、もしよければ私に教えて欲しくて……」

 

「あっ、彩ちゃんの練習に付き合う担当になったから、あたしも教えて貰っていい?」

 

案の定予想通りであり、日菜が頼んできたのは周りの友人と身内が影響だろう。

また新しく自分と同じものに触れると宣言した日菜を見た紗夜だが、過去の自分からすれば信じられない程自分の反応に負の感情が無いことに気付く。

 

「(何があっても私は私……。だから、焦る必要なんて何もない。自分の道を進んで行きましょう)」

 

理由は価値観の変化と、自身も努力を重ねた結果チームの皆でFWFに行けたことが起因する。

これで終わりかと言われれば今回のイベントに参加した理由が否を告げており、まだまだ上を目指すつもりでいる。

なお、この時『レーヴ』を使えば自分が日菜に教えられるのを理解していた紗夜だが、自分に頼らず何かをしようと言うなら尊重しようと思い、敢えて何も言わなかった。

ただし、デッキ購入に関してはアイドルの立場上かなり目立ってしまうだろうから、自分が融通を利かせることを選んだ。

大丈夫なら来てほしい日がここであることを教えて貰った貴之は少し考え込み、一つ確認を取る。

 

「この話し持ち掛けなきゃいけない相手ができたから一旦連絡するんだが、時間は大丈夫か?」

 

「私たちは問題ないけど……何かあったの?」

 

パスパレは仕事の都合がある為あまり時間を取れないことがあり、一度確認したのだが、メンバー内で最も多忙であろう千聖から大丈夫と返ってきたので大丈夫なのだろう。と言っても、パスパレは午後のどこかに仕事がある都合上事務所に戻らねばならない為、時間の掛け過ぎも良くないのだ。

ただし、猜疑の目を向けられているので、そこは説明しなくてはならない。

 

「知り合いに一人、女子にヴァンガードを教えたいって毎度毎度言ってる女子ファイターがいてな……。そいつが大丈夫なら譲ろうかと思ったんだ」

 

『あっ、そう言うこと……』

 

これによって気づいたのがRoselia五人と日菜の六人だった。こんな話しを黙っていようものなら間違いなく玲奈に何かされるのは目に見えていた。

一先ず許可をもらえた貴之は携帯を素早く操作し、玲奈に連絡を取った。

 

『もしもし?』

 

「いきなりで悪い。貴之だけど、時間はあるか?」

 

『大丈夫だけど……どうしたの?』

 

貴之が自分に連絡を掛けてくることが珍しいので、玲奈は理由を問う。

──さて、吉と出るか凶と出るか……。貴之は今持ちかけられた話しを説明する。

 

『えっ!?本当!?あたしアイドルの女の子にヴァンガード教えられるの!?』

 

「ああ。予定が今言った日なんだけど、お前は行けそうか?」

 

『ちょっと待っててね~。予定確認するから……』

 

最初は弾んだ様子の玲奈だったのだが、段々と落ち着いていき、最終的に『ぐすっ……』と涙ぐんでいる声が聞こえて来た。

 

「ん……?おい玲奈?何かあったのか……?」

 

『そんなぁ……あたしこの日、一真君とお出掛けする予定入れちゃったよぉ……』

 

「う、うわぁ……なんつぅブッキング」

 

玲奈の予定はどう考えても外せない予定のそれであった。お出掛けと引き換えに自らの願望を切り捨てる──とても悲しい選択をするしかなかった。

 

「ならしょうがねぇか……取り敢えず、また今度な?」

 

『うん……今度感想よろしくね……』

 

終始悲しみを纏った声で話すので、貴之は途中から罪悪感で満たされる電話をようやく終えることができた。

 

「ダメみたいだったから俺が行くよ。と言っても、事務所の場所とか知らねぇが……」

 

「なら、当日あたしが案内するから、羽丘の校門前集合にしようよ!仮に一人で行けても、手続きがあるから誰かいないとだし」

 

「もしものことがあったら、ジブンが代役しますね」

 

花女だと用が無いのにどうして来た?になってしまうことになりかねないので、この選択となる。パスパレ内では唯一、日菜が今日よりも前に貴之と面識を持っていることが決め手となった。

話しが決まり、まだ連絡先を持っていないことに貴之が気づいたので、日菜と麻弥の二人と連絡先を交換しておく。

 

「あ、アイドルと連絡先を交換するとか夢にも思わなかった……」

 

こればっかりは流石に仕方ないだろう。予想しろと言われても無理があったし、友希那とリサも友人が、紗夜も妹がいきなりアイドルになったと言われた時は驚いたのだから、こう言うことも然りである。

それ故かお咎め無しで済んだらしく、今回リサから例の視線を感じることは無かった。

ただし、後程俊哉と大介を筆頭に男子たちに煽られそうなのが予想でき、そこで貴之が頭を抱えることとなった。

 

「ところで、玲奈はどうして来れなかったの?」

 

「デートだってさ……。そうなっちゃ流石にどうしようもない」

 

「玲奈がデート?なんか意外だね……」

 

知らない内に進展があったことは貴之としても驚きである。女子にヴァンガードを教える願望を満たせなければまだ先だろうと思っていたからだ。

と言ってもきっかけ自体は知っているにしろ、詳しい流れはあまり知らない以上今度聞くしか無かった。

 

「さっきのユニットたちって、どこかで見たような気がする……」

 

「ああ……ヴァンガード関連の日常系コミックだな。ちなみに昨日出た情報だけど、二巻目がもうじき出るぞ」

 

「出るの……?あっ、ホントだ。後で予約しなきゃ……」

 

そのコミックはノリと作風が少女漫画に近しいものなので、一部の本屋では少女漫画コーナーに放り込まれていることがあるらしく、そこを通っているファイターたちは購入時恐ろしい抵抗感を感じたそうだ。

幸いにもこの商店街にある本屋はしっかりとヴァンガードのコーナーに設置している為、そんなことにはならずに済んでいた。

また、燐子はコミック版のヴァンガードもすっかりと愛読しているらしく、主人公と兄貴分の関係が自分と貴之に近しかったことから一気にのめり込んで行ったそうだ。

 

「この人、貴之さんを荒っぽくしたらこんな感じだ……!って思える」

 

「ホントだ……確かにそんな感じだね♪」

 

「ここでもそうなったか……」

 

兄貴分となっている人物だが、主人公を導いていく姿と『ドラゴニック・オーバーロード』を相棒にしているところが貴之によく似ていた。

違いがあるとすれば、貴之が最初から『かげろう』を使っているのに対し、こちらの兄貴分は主人公に『ブラスター・ブレード』を譲るまでは『ロイヤルパラディン』を使っていたことにある。

『オーバーロード』が出たことで、貴之がヴァンガードを初めて以来一度もデッキから外していないことをカミングアウトすれば、イヴがとても感心した様子の目を向けてきた。

また、ここで自分に近しい人物の話題が出たため、それに関する話題を一つ持ち込む。

 

「そうそう。その俺とよく似た人物を主人公とした、コミック版の前日談を描くコミックが近日発売予定だから、気になったら調べてみるといいぞ?」

 

「お、お金が飛んじゃいそう……」

 

「白金さん、そんな無茶をしなくても……」

 

絶対に買うと言わんばかりな目をしている燐子を見て、紗夜は少し焦った。

友希那とリサは貴之が買うことを決めているなら、後で借りることを選択し、彼が承諾したことで成立となる。

と言うのも、コミック版の方を友希那は触り程度でしか読んでおらず、リサの場合は触れたことすらないのも大きい。

 

「じゃあ、当日だな」

 

「うんっ!またね~!」

 

話しもまとまり、キリが良くなったところで切り上げて別れることになる。

紗夜は日菜の為にデッキ選びの協力を決めたので、貴之は自身のデッキ調整をするならそれだけ済ませることになった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「(今日の出迎えは大和さんか……)」

 

話しを持ちかけられて二日後の放課後。貴之は麻弥からの連絡を確認していた。

何でも、少しだけ部活の方に顔を出してから行くらしいので、代わりを頼んだそうだ。

 

「アイドル事務所へ正式に入り込む機会を得るって……お前とんでもないことしてるな」

 

「俺も流石に予想外だった……」

 

こればかりは周りのクラスメイトもそりゃそうだと同意するほか無かった。予想しろと言われても無理がある。

 

「貴之、アイドルの普段見れない顔とかあったらその時は教えてくれ……」

 

「もう既に一つだけ知ってるけど……」

 

──紗夜の前ではあまり話すなよ?貴之の釘刺しに俊哉は頷く。

俊哉自身こう言った人の意外な一面を知るのは好きなのだが、それの嬉しさのあまり紗夜に距離を置かれたら心に刺さるのは目に見えていた。

何故出てくると問わないのは、貴之相手にはお見通しであることと、自身が否定したくない二つの情の重なりである。

 

「大和さんは普段、眼鏡掛けてるぞ」

 

『……!』

 

まさしくアイドルの普段見れない顔なので、全員が反応した。

この後すぐ日菜はどうかと聞かれたが、大体普段からあの感じである為特になしだった。

結果としてあまり日菜のことを知らない人は肩を落としたが、知っている人はやっぱりそうかで終わる話しとなる。

 

「貴之、あたしたちそろそろ行った方がいいよ」

 

「そうだった……。悪い、先に行かせて貰うわ」

 

玲奈に促された通り、互いに予定がある為二人して先に教室を後にさせてもらった。

 

「貴之は分かるが……玲奈は何をするんだ?」

 

「今回ぼかされてるけど、少なくとも貴之とは別件だろうな」

 

俊哉と大介の二人で予想を立てて見るが、結局分からず終いであった。




一先ずパスパレとの合同練習を書ききりました。

ちなみにパスパレメンバーから見た貴之はたこうなります

彩……友希那共々、驚くくらい共通点のある人。やはりと言うか、頑張りを理解してくれる人がいるととても嬉しい。イメージに関してはこれから練習していくつもり。
ヴァンガードのレクチャー、よろしくね♪

日菜……何気に自分がいつか来ないかと待ち望んでいた『何か一つの分野でいいから、努力で全てに打ち勝った人』で、自分が姉と仲直りする機会を作ってくれた恩人。彩と話しているのを見て、理解力が非常に高い人だと思えた。とても良い人だと思うが、友希那から奪うつもりは一切なし。
彩ちゃん共々、ヴァンガードのレクチャーよろしくっ!

千聖……自分とはひたすらに正反対の経緯や目的で似たような道を進みながら、待っていた結果が真逆の人。学校や休日の過ごし方を聞く限り、改めてそれを感じさせるので意識せずにはいられない。
僅かとは言え、顔に出てしまったのは大丈夫かしら?

麻弥……心の奥底からヴァンガードを愛しているのが伺える人。今回はRoseliaと日菜と一緒に話している姿しか見れていないので、他の友人とはどうしているかが気になるところではある。
ジブンの笑い方に何も触れてないけど、大丈夫っスかね?

イヴ……複数の意味で一筋な人。『オーバーロード』との関係は家来を信じ切る将軍のようにも思えた。もしかしたら、自分の求める武士の姿がそこにあるかもしれないので、ヴァンガードをやる姿は見てみたいところ。

パスパレメンバーは日菜から貰った前情報と照らし合わせ、自分の答えを出した人が多めです。

前々から貴之の生き様は彩との相性が良くなりそうだと思っていたら案の定でした(笑)。その代わりに千聖に強い警戒を抱かれることに……(汗)。

ちなみに紗夜と日菜による姉妹でのファイトは、秋雨のイベントでやろうとしている為、今回は見送りです。

次回から二連続でファイトシーンを書いて行きます。先鋒をどっちにするかは迷っていますが……(笑)。
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