ガルパピコのどんどん離脱していく仲間たち……パレオはご満悦に見てましたが、あの後一人で戦い続けるんでしょうかね……?
ヴァンガードifは今回から来週にかけては総集編と言うことで、物語的に一旦区切りになったからでしょうね。伊吹の絶叫には時々宮野氏のアドリブ入ってるのを聞いて、声優って凄いと思いました。
今回のパックを『ファントム・ブラスター・オーバーロード』狙いで二箱開けてみましたが、一枚も当たりませんでした……バンドリパックも控えてるし、一旦値段の変動を見ようと思います。
『と言うことで!無事にチームに入れたんだっ!りんりん、本当にありがとうっ!』
「(あこちゃん……無事に入れたんだ……)」
あことリサの二人が友希那のいるチームに入れた日の夜。部屋でインターネットを使って調べ物をしていた燐子に、あこからお礼のチャットが届いていた。
燐子はあこが友希那のチームに入る為の手伝いもしたので、無事にチームに入れたのを自分のことのように嬉しく思えた。
そんなこともあって燐子は『おめでとう。これからの練習頑張ってね』と打ち込み、返信を送った。
すると程なくして、あこから『りんりんに恩返しする気持ちで頑張るよ!』と返って来たので、思わず柔らかい笑みを浮かべた。
「(そう言えば、あこちゃんのいるチームには氷川さんもいるんだよね……?上に行きたいってよく言ってる人が認めてるってことなんだ)」
──凄いな……あこちゃん。同じクラスにいる強さと優しさを兼ね備えた人物のことを思い出し、燐子はあこのやったことを再認識する。
何にも臆することなく、自分が磨き上げた歌で前に進み続けていく……。自分にはできないことを何の苦もないかのようにやっている風に見え、燐子はその姿を凄いと思っていた。
――私にも……できるのかな?昔から引っ込み思案気味で、今一自分に自信を持てない燐子は、あこの話しを聞く内にそう思っていた。
友希那の方針を考えると話す内容などで気難しくなってしまいそうだが、紗夜がいるならある程度緩和されているのではないだろうかとも考えられる。
また、これ以外にも現在メンバー集めは継続中で、ベースが保留中であることと、キーボードが見つかっていないことあこがを教えてくれる。
「(キーボード……。うーん……大丈夫なのかな……?)」
自分はピアノの経験があることから、キーボードはできる。そう伝えること事態はできるのだ。
しかしながら、それ以上に実力不足かもしれないと言う不安を拭いきれないでいる。これが理由で、燐子は踏み出そうにも踏み出せないでいる。
ただ、一緒にやれるのなら、それは間違いなく楽しいものだろうという確信も持っていた。その為、後は燐子自身の心持ちの問題だった。
そんなことを考えていたら、再びあこからチャットが送られて来ていて、『ところで、りんりんの知り合いにキーボードできる人っていない?もしいるなら、オーディションを受けたいかどうか次第でチームのみんなと情報共有しようって話しになってるんだっ』と言う内容だった。
そこで燐子は硬直する。自分がどうしようか迷っていた時に、あこからキーボードのできる人を知らないかと聞かれたからだ。
自分はキーボードをできるが、生憎自分の知り合いにキーボードをできる人はいなかった。それならいっそのこと自分が名乗り出てもいいのではないか?そんな思考が燐子の中に駆け巡った。
「…………」
自分ができると伝えるべくチャットを送ろうとして、タイピングを始める直前で手が止まる。自分の引っ込み思案な部分がそれを邪魔してしまっていたのだ。
ピアノではコンクールで何度も受賞している腕前を誇っているので、キーボードでも遺憾なくそれを発揮できるだろうとは思っている。しかし、自分の十分と相手の十分は違う。そう考えたら打とうと思っていた文を打てなくなってしまった。
あこが友希那に頼み込んだ時は、最初の一回目は漫然としすぎて受け入れられなかったが、二回目は目標や意志がはっきりとしていたのでオーディションに参加できている。
では、自分にあこのようなしっかりとした目標や意志があるだろうか?そう聞かれたら、素直には肯定できなかった。更には大勢の人がいる空間へ苦手意識があったので、それが拍車を掛けてしまう。バンドのチームに入ると言うことは、大勢の前でライブをすることになるのだから。
「(今名乗って失敗しちゃったら、もうチャンスがないんだったよね……ちょっとだけ考えたいな)」
あこは意志が問題でオーディション前に一度蹴られているのもあり、今のままでは多分オーディションまで進めないだろうなと言う確信もあった。
何よりも自信を持てなかったこともあり、今回はやむなく『私の知り合いにはいないかな……力になれなくてごめんね?』とチャットを返すことにした。
あこは自分が返事をしてくれるのを待っていたのだろう。思ったよりも早く『大丈夫。話しを聞いてくれてありがとうっ!』と返って来る。
「(一回だけって、怖いな……でも、急がないと一緒に演奏はできないし……)」
時間的にそろそろ就寝に入るのだろう、『明日も早いから今日はもう寝るね。りんりん、また明日っ!』と言うチャットが送られて来た画面を見てから、燐子は自分がどうしたいかを改めて考えるのであった。
* * *
「まあそんなことがあってな……
「いや、特には知らないな……僕は、バンドに関しては専門外だからね」
翌日の午前。休み時間中に竜馬は隣の席にいる金色の髪とエメラルドグリーンの瞳を持った、王子様のような風貌をした少年──
彼は去年からこちらの地方にやってきた身であり、それまでは貴之の引っ越し先と同じ地方にいるファイターだった。度々同じ遠征先で遭遇することがあったと言っていたので、家もそれなりに近かったと思われる。
外見からすると意外に思われるかも知れないが、彼もヴァンガードファイターであり、前回は全国大会で見事に優勝を果たしている。竜馬らが通う宮地高校ではファイターが少ないので然程驚かれなかったが、これが後江だったらかなり反応は大きかっただろう。
また、彼は貴之を含む一部の人を省き、自分が手にした力のことは伝えていない。それはヴァンガードの今後を大きく揺るがしてしまうかもしれないからだ。
最初こそ戸惑い、苦悩もしたが、貴之がこちらの立場を思って話しを聞いてくれ、ユニット側も自分も納得する解決案を出し、それに乗っかることで一真は無事にその悩みを解決するに至っている。
「(そんな貴之の知人の悩みだったわけだけど……これは難しいね)」
結果として恩人でもあり、
──なら僕は、次の大会で僕なりにやってみようか。一つ方法を思いついた一真は、今度人気の無い場所で準備することを決めた。
なお、一真は貴之に悩みを解決してもらった経緯から、自分もそれができればと思い、今は自分と同じ悩みを持っている一人の少女を助けるべく奮闘中でもある。
「流石に
「まあそうなるか……仕方ねぇ。紗夜にはいなかったって回しておくか」
元より四校の内最も期待値の低い場所だったので仕方ない所はあるが、連絡だけは忘れずにしておく。
一先ずこちらでできることはここまでなので、後は運よく見つかることを信じるしかなかった。
「紗夜に協力しながら花女と羽丘、それから後江は結構確認したはずなんだけどなぁ……。いねぇんじゃ他のところになるんか?」
「もしかしたら、確認したはずの所から思わぬ発見があるかも知れないね?」
「それを信じるしかねぇか……」
こうなれば後は祈るだけであり、悩んでいるなら紗夜か貴之が話しを聞いてやれば何とかなるかも知れない。
とは言え、見つけなければどうにもならないのでどうにかして見つけたいところである。
「僕の所感だけど……貴之は全体的に運のいい傾向があるから、何かあるかも知れないね」
「ああ……確かに、あいつの運を考えると納得しちまうな」
貴之は自分がヴァンガードを続けるきっかけとなった師匠との出会いや、紗夜と言う共に悩み、歩いて行けるパートナーのような人がいたり──と、全体的に運は強い。特に人間関係は顕著である。
それを考えれば大丈夫そうな気がしてきて、二人して笑いあったところで始業のチャイム音が聞こえたので、話しを切り上げる。
「(貴之……僕も彼女を助け出す。もし、
──そうでもないのなら、君の教えを使って何とかして見せるよ。次の授業を担当する先生が来るのを待ちながら、一真は心の中で誓う。
その誓いを立てるとほぼ同時に担当の先生が教室にやってきて、宮地の変わらぬ日常がまた動いていくのだった。
* * *
「ありがとうございます……手伝ってもらって……」
「いえ、これくらい大したことではありません」
竜馬が聞き込んでいた時間から少し進んで、再び休み時間となり、紗夜は次の授業の資料運びをする燐子を手伝っていた。
燐子自身、一人で大丈夫だと思っていたら予想以上に量が多くて難儀していたので、紗夜に助け舟を出してもらえたのはありがたいことだった。
「(私にも……あこちゃんみたいな勇気が……ちょっとでもあれば……変われるのかな……?)」
手伝ってもらっている際に思い出すのは、昨日のことだった。隣りにいる紗夜はメンバー探しをしているらしく、今日はクラスの人たちに聞いていた。
あこも言っていたが、キーボードはまだ空いているし、自分はできるのだが今一自信が持てない状況なので、どうにかして自信を持ちたいところである。
「(今井さんと竜馬君の人伝でも空振りになっている……ということはつまり、予想外のところにいることを信じて動くしかない)」
予想以上に芳しくない結果と言えるだろう。これ以外にも「湊さんの基準を満たせてないからやめとく」と言う人もおり、この先も難航しそうなことが予想される。
燐子もその断った人たちと同じ理由で言うのが怖いのもあり、踏み出してみたいけど踏み出せないになっていた。
「(でも……言わなきゃ進まないし……うう……相談できる人……誰かいないかな……?)」
ゆっくりしているといつの間にか人が埋まってることになりそうだが、あこでやっと成功なのだから相当な基準であることも考えられる。
紗夜は相談しやすそうではあるが、判定を下す側の人に頼むのも何だかと思うし、恐らく今日も練習なのでそもそも相談に乗れる時間を確保でき無さそうであった。
「ところで白金さん、一つ聞いてもいいですか?」
「え……?えっと……何を……ですか?」
紗夜としてはもしかしたらと期待を込めて聞いただけだが、燐子からすれば、ある意味ではチャンスだと思える瞬間だった。
あこから話しを聞かせて貰っているお陰で驚きは減っているし、仮にそのことを話してしまっても紗夜なら平気だろうとも思えるので、少し気が楽になる。
「もしかしたら知っているかも知れませんが、私、ギターをやっていて……バンドのチームメンバーを探しているんです」
「あっ……確か……サポートを……やっていましたよね。えっと……バンドのメンバー……ですか?」
──あこちゃんにも……聞かれたな……。こうなると燐子は先が予想できた。
恐らく自分が知る限りで最も相談しやすい人であり、逃すと話したことの無い人に相談するか自分で決心をつけるしかなく、とても難しくなる。
「今現在キーボードの人が中々見つからない状態で困っているところなんですが……白金さんは、キーボードをできる人を誰か知っていますか?」
「キーボード……」
このままいないと答えてしまうのは簡単だが、
そして、その予感に従うのなら自分から声を出す必要がある。
「私じゃ……ダメ……ですか?」
「……白金さん?」
──のだが、自信が持てないせいで紗夜が聞き逃すくらい、呟くような声になってしまった。
ただ、当の紗夜は何かあるのに気づいた様子をしており、もう一回言えば届くかも知れないと思えばまだ何とかなっている。
「私……キーボード……できるんです」
「……!本当ですか?」
今度はちゃんと伝えることができ、紗夜も嬉しさと驚きが混ざった目をしていた。
まず始めの関門を突発できたので、次は自分の悩みを伝える段階に入る。
「ただ、今一つ……自信が持てなくて……」
「そうでしたか。私でよければ話しを聞くのですが、今日すぐにと言うのは難しいですね……」
紗夜としても、これは悩みどころであった。せっかく決心の付いた子の気が削がれてしまうよりも前に動きたいが、自分が練習を気にせず聞ける時間が少し先になる。
と、自分一人ならかなり難しいところになるが、他の人も鑑定に入れると何とかなりそうな所は見えてくる。その宛がある人の時間を使わせてしまうのは少し気が引けるところだが。
「白金さん。私の知り合いにですが、その悩みを話してみませんか?」
「えっ?い、いいん……ですか?」
その知り合いは自分からすると初対面なので難しいところはあるが、それでも遠慮してしまったら間違いなく自分のこの踏み出したものが台無しになってしまうのは明らかだった。
なお、燐子の問いに対して紗夜は「あなたの悩みが解決するなら」と、協力を惜しまない旨を告げてくれた。
ここまで言われれば燐子も遠慮する必要性を感じなくなり、素直に頼むことにする。後で紗夜がその人に連絡を取り、放課後花女の校門前で集合することになった。
「ちなみに……その知り合いって……どんな人ですか?」
「そうですね……。一言で表すなら『等身大の先導者』……でしょうか?これは、私が共にいる時間での経験からですが」
ここで紗夜の評した『先導者』とはヴァンガードが好きであることと、友人たちを同じ道、自分をギターへ導いたことが大きい。『等身大』は普段は自分でどんどん進んで行ける彼も、年相応の悩みを抱えることはあるし、そうなった人には寄り添ってあげられることからだった。
紗夜としては全く悩まないで進んでいくのもいいかもしれないが、やはり今の時々立ち止まることのある方がいいと思う。
自分だけが『先導者の悩む姿を知っている』と言うのは中々独占している感じを味わえ、紗夜は少しだけ嬉しくなってしまった。
「(『等身大の先導者』、か……)」
──どんな人なんだろう?紗夜の知人が気になりながらも、どうにか話せたことに燐子は一安心だった。
* * *
「……よし、じゃあ行くか」
「今日はお悩み相談だっけ?」
放課後になり、教室を後にしようとした貴之は青い髪を肩に掛かるくらいの長さに整え、その青髪と同じ色の瞳をした少女──
彼女はこちらに帰ってきて出会った、女性ファイターの一人であり、その中でも実力者と言う有数の存在とも言える人だった。
ちなみに、貴之が紗夜にヴァンガードを教えることが彼女に伝わった瞬間、変わって欲しいとせがまれたのは記憶に新しい。
同じヴァンガードファイター同士と言うこともあり、転校初日からあっさり呼び捨てに移行した異性は彼女が初である。
「紗夜と同じ学校だったから、花女生ってことだけは確定してるし……取り敢えず対応は気を付けよう」
「竜馬から聞いたけど……お前湊さんとも一悶着あったらしいし、本当に気を付けろよ?」
竜馬から回ってきた話しを聞いていた大介は今回ばかりは……と願う。この男、転校してから間もないのに思い切りが良すぎるのだ。
貴之も改めて意識してから教室を後にして、花女を目指して足を運んでいく。
「(結構内気な子だって言ってたよな……?思いっきりすぎるのは当然ダメだが、慎重すぎるのも向こうに心配させて余りよくねぇ……)」
紗夜から聞いていた前情報を頼りに、貴之はどうやって話しを聞くのがいいかを考える。
参考にできる出来事は過去にあったので、それを元に考えていくのがいいと判断した。
その時は調理師の夢があるけど自信が持てないだったので、状況としてはかなり近しいものである。
「(ただ、その時は飯食ってやるで済んだが、こっちはオーディションを受けたいって声を掛ける為に自信を付けさせること。長話も覚悟しておかねぇとな……)」
そんな内気な子がいきなり自分と話して大丈夫なのかと言う不安はあるが、紗夜の知人と言う立ち位置が支えになっているようだ。
──取り敢えず、圧を掛けるつもりじゃないことはちゃんと話す必要があるな。最低限の考えを纏めたところで、偶然友希那とリサの二人と顔を合わせる。
昨日と違う点があるとすれば、リサがベースを背負っており、ネイルを剥がしているところだろう。
一気にやると色々不味いことになるらしいのだが、紗夜にそれを言われたので気付くことができ、慎重に行ったことで手や指に影響は及ぼさないで済んでいた。
「湊さんは練習だとして……リサは今日も見学兼手伝いか?」
「ええ。練習の時間はなるべく無駄にしたくないもの」
──苦手意識を持った人程覚えやすいのかもな……。友希那の考えを明確に分かっていた自分に気づいた貴之はそう考える。
リサの様子を見る限り、今日メンバーを見つけられないのなら、翌日は一度彼女のオーディションをやるのかも知れない。
「そう言う貴之は?今日は一人みたいだけど……」
「紗夜に頼まれごとされててな……今から花女に向かうんだ」
そこで何をするのかと問えば、貴之はお悩み相談と言う名の人助けと答える。
一応紗夜は相手のことは保留故にまだ友希那たちに話していないらしく、貴之と話してどうするかを委ねるそうだ。
「あなた……そんなことをする時間があるの?」
「究極的に切り詰めた思考だったら無いって言うけど……俺はそんな狭苦しい生活を望んでるわけじゃねぇしな」
紗夜が気づいてくれたお陰で自分はそんな思考を持たないで済んでいるので、感謝しかなかった。
故に、今回の友希那の問いに対する回答はこうなる。
「俺の悩みを解決してくれた紗夜の頼みだってこともあるが、何より俺は……困っている人がいるってのを教えられたら放っておけねぇ。だから、そう言うことができる時間はある……と言うよりも、胸張ってやりきったって言える為にも作る」
「そう……なのね」
「(……凄い。友希那の言葉を詰まらせた。)」
友希那がこうなった理由としては予想外の回答である時もそうだが、自分がその困っている人でもそうするのだろうかと言う疑問と、そうして欲しいと言う願望であった。
三つめは今の自分からすればわがままな面もあるが、どうしても期待してしまうものであった。
一方でリサも友希那と同じようなことを考えながら、紗夜を意識しているのかをまた考えている自分がいることに気づいた。
「おっと……練習っつうなら紗夜を待たせ過ぎるのもよくねぇよな。じゃあ、俺そろそろ行くよ」
「うん♪またね~」
こうして堂々と一人で女子校まで向かって大丈夫なのか?と普通なら不安に思うかもしれないが、意外にも貴之は平気である。
「今日も氷川さんのところに行くの?」
「ああ。ちょっと人助け頼まれてな……」
あの紗夜が助けてくれた先導者と明言する人なので、花女側は割と歓迎ムードであったからだ。
羽丘側も羽丘側で、自身の妹がいるからと言う理由で拒否されると言うことは無い。つまるところ、貴之の取り巻く環境は総じて間が良かったのである。
距離がある以上、校門前まで辿り着けば紗夜と恐らく相談したいと思っている人であろう、黒髪の少女がいた。
「あっ、来たわね」
「悪い。待たせたな……その子がさっき言ってた人でいいのか?」
こちらの問いに紗夜が頷いてくれ、確認を済ませることができた。
少々不安そうに、緊張した趣を見せる所から、あまり人と話すのが得意ではないのかもしれないと考える。
「は、初めまして……白金……燐子です」
「白金さんか……よろしく。俺は遠導貴之」
「……遠導って……えっ?ええっ!?」
名前を聞いた段階で燐子が驚いた様子を見せ、その様子で貴之は何らかの形で自分を知る経緯があったことを察した。
友人からの経由か、それとも自分でゲーム系の雑誌を買い、そこで自分を知ったのだろう。
「白金さん、何かの雑誌を読んでいますか?」
「は、はい……ゲームの雑誌を……読んでました……」
「ああ……うん。そこの中で大会の事まで書いてる雑誌、どれか分かっちまった」
一対一じゃないおかげか、燐子はそう言うことも普通に話せた。
今はいいが、問題はこの後なのだろう。こちらの名が知れているとは言え、初対面の人なのだから。
「ああ……さっき湊さんたちと鉢合わせたんだけど、紗夜もそろそろ行った方がいいよな?」
「そうね……待たせるのは良くないもの。後はお願いしてもいいかしら?」
「(凄い信頼関係……前に……何かあったのかな?)」
燐子が信頼し合っていると言うのが見て取れる程、この二人の会話はスムーズで迷いが無い。
話し終わった後に紗夜が移動する旨を伝えたので、燐子は彼女に礼を告げて見送る。
「さてと……どこか落ち着ける場所で話すのがいいかな?」
「は、はい……そう……ですね……。どこにしましょう?」
間違い無く立ち話しをする内容じゃない。それだけは確かなので、燐子は彼の提案を呑む。
自信がある無いに関わらず、そもそも女子校の前で長時間話すことに問題があるのだ。
燐子自身はいいが、共学校にいる貴之がここに長居すると面倒ごとがやってきそうな未来が見える。
「そっちがよく行く店でいいよ。慣れている場所の方が話しやすいだろうし、俺は特に好き嫌いないし」
「あ、ありがとうございます……じゃあ、商店街のところにある……喫茶店で……いいですか?」
気遣いがありがたいし、貴之からの承諾を得た燐子は彼と共に商店街へ足を運んだ。
一先ず喫茶店の一つに入り、二人組が推奨される席に案内してもらった後、それぞれが飲み物だけ注文する。
注文が来るまではここへよく来るのかどうかを話し、少しでも気を楽にさせてあげる。
「さて……一先ず確認だけど、キーボードのメンバーとしてオーディションを受けたいけど自信が持てない……で、いいんだよな?」
「そうなんです……その……私の基準と、友希那さんたちの基準って……違うと思うので」
「なるほど……確かに、言いたいことはよく分かるよ。作った飯の上手さの基準とかも人によって違うしな……」
丁度数年前、似たような悩みを解決している時のことを思い返しながら、貴之は燐子の話しに同意を示す。
ここで同意を示せない場合は最悪手以外何物でもなく、それ以降燐子の言葉一つ一つが一気に自信の無いものへ早変わりしてしまう。
現に同意を示したことで燐子は安心するし、貴之が話しに食いつけそうなネタを放り込むことで、燐子が話しかけに行けるタイミングも作れた。
「料理……ですか?」
「ああ。ここを離れてる間になんだけどね……お隣さんの子が調理師志望だったけど自信を持てていなかったんだよ」
当時はその人の料理を食べて感想を述べる形で解決していたのだが、同じ手段でもいいのだろうか?と疑問に思う。
彼女の場合はピアノかキーボードになるはずで、さらには今日が初対面と言うこともあってこれは非常に難しいところである。
これ以外にも素人である自分が聞いたところで、具体的なことを言えないのが難点である。一応努力の形跡等を辿ることで技術的な基準は図れるのだが、今回は燐子がそれを持っていないので断念することとなった。
「ご、ごめんなさい……用意できれば……よかったんですけど……」
「今回は仕方ない。急な話しだったんだから」
燐子が謝ったら決して強い言葉で責めない。これも大切である。ここで強い言葉を出したらアウトになる。
ただ、このまま何も話さないで進まない状況も不味いので、話しの内容を変える。
「そうだな……なら、ピアノの方で何か実績はある?」
「実績……ですか?えっと、コンクール……大会みたいなものと……思ってくれればいいんですけど、そこで度々受賞をしてます……」
「確か、コンクールで受賞できるのは一人だけ……なんだっけ?」
「はい……多くの人が集まる中で、受賞できるのは……一人だけなんです」
コンクールは舞台の規模は様々なだが、見ている人の数を考えたら自分たちの戦いの場と比べたら圧倒的に多いだろう。
確かに参加者で言えばこちらが多いのだが、後々全員がこちらを見るとなれば視線の数は燐子の方が勝っている……つまり、自分よりも大きな舞台で演奏したことがあると見ていいし、そこで受賞もしているのなら尚更だ。
「白金さん、凄い子なんだな……」
「……えっ?」
話して見て思ったことを呟くと、燐子が思わず驚いた様子を見せる。
何故彼女をそう評価したのか、そこは説明する必要があるだろう。
「俺もヴァンガードで結構な数大会に出たけど、大きな大会……正確には全国大会だな。そこで優勝できたことはまだないんだ」
「そんな……遠導君は……とても堂々としてますよ?私なんて……いつも怖くなって……」
「でも、怖くなっても逃げなかった……そうだろう?」
燐子は貴之が言ってくれたことでハッとした。いつも失敗したら……や、上手く行かなかったら……とコンクール前は怖くなってしまうが、一度演奏を始めてしまえば平気だったことを思い出す。
悪い言葉が帰って来るとは思えないが、その先の言葉はとても気になった。
「白金さんは大事な場面で必要な勇気は持ってる。実績だって、それだけの力があれば大丈夫だし……後は、それが途中で途切れないかどうかだと思う」
「あ、ありがとう……ございます……。でも、どうして分かるんですか?」
話しを聞いて想像できると言われれば納得できそうだが、気になったのは事実である。
「信じてもらえるかは分かんねぇけど……ヴァンガードファイトを重ねていった結果だと思うんだが、いつからか俺はその人の頑張りの量や形が、何らかの物かその人を通して見えるようになったんだ……」
──今回はピアノの話しを聞いてたおかげなんだ。ヴァンガードファイターたちの場合はファイトしている最中であることも教えて貰うが、貴之のようにそこまで察知できる人は始めてなのでそう言う人もいるくらいの認識で留まる。
「でも……あこちゃん……私の友達もそう言ってたし、信じられる……かな?」
「あこと仲良かったのか……こっちの妹が学校で席隣になってるみたいなんだよな……」
知っている人の名前が出たので、思わぬところで共通点発見となった。
そして、この共通点の発見と同時に、燐子は一つ大事なことに気がついた。
「私……あこちゃんみたいに、怖がらないで……前に進んで行く勇気が欲しいって、思ってたんです」
──その欲しかったものは、ずっと昔から持っていたのに……すっかり忘れちゃっていたみたいです。気恥ずかしい思いと嬉しさから、燐子は頬を朱色に染めながら笑みを浮かべた。
貴之と話せたことで思い出すことができ、心の準備さえできれば話しに行くのも可能だが、少し気になっていることがあった。
「遠導君にも……こんなこと、ありましたか?」
「俺か……。俺の場合は似てるけど、ちょっと違ってくるかな……何か思い切ってやりたいと思ってたけど、ヴァンガードを知るまで何も見つからなかったんだ……」
ヴァンガードを知る直前はどこか退屈そうにしている顔が見えていたとは、母である明未の談である。
早い話しが燐子は『やりたいことはあっても、踏み出す勇気が持てない』。貴之は『踏み出す勇気はあるが、やりたいものが見つからない』と言う対比であった。
また、紗夜は自分のヴァンガードをする姿を見て思い切ってやりたいことを探し、その結果ギターを選んだので、ヴァンガードの存在は自分たちの運命を大幅に変えたと言っても過言ではない。
「そこからは、周りが一気に明るくなったようにも感じた。夢中になることってこんなにも楽しいんだってな……」
「ふふっ。その気持ち……わかりますよ」
──きっとそれは、ギターを弾いてる氷川さんも……ドラムを叩いてるあこちゃんも……きっと同じ。ここまで話せれば、燐子としてはもう大丈夫なところまで来ていた。
「遠導君が夢中になった世界……ちょっとだけ、見に行く時間……ありますか?」
「そうだな……この時間なら、一回ファイトしても少し余裕は残るかな。なら案内するよ」
その前に事前練習として新しいものに触れてみようと思った燐子の頼みは承諾され、二人は注文した物を飲み切って会計を済ませ、喫茶店を後にするのだった。
* * *
「さて、今日はここまでね……」
「な、何とかやり切れたぁ~……」
貴之と燐子が話し合いを始めてから数時間後。スタジオを借りていられる時間の終わりが来たので友希那たちは練習を切り上げることになる。
今回の練習を通した課題として、あこにはペース配分または体力強化が出されることとなった。勢いがあることはいいのだが、維持できないと後で台無しになってしまうからだ。
「そう言えば、結局メンバー見つかってないんだっけ?」
「ええ。このままなら、今井さんの日程に合わせて……」
──オーディションの日を決めてしまいましょう。と、紗夜が言おうとしたところで、彼女の携帯にメッセージが届いて入ることに気付く。
送信主は貴之で、内容は『燐子が決心付いたから、そっちに案内する』とのことだった。
「任せて正解だったわね……」
「紗夜、何かあったの?」
「貴之から……キーボードでオーディションを受けたいと言う人が、今見つかりました」
「……!?」
ここ来ての朗報に友希那も驚く。きっともう少し先だろうと思っていたし、まさか貴之が見つけるとは思っていなかったからだ。
こちらに向かうと言う連絡が10分程前に来ているので、もう少ししたらここへ来ることが分かる。
そうなればのんびりしていられないので、急いで片付けと次の予約を済ませて一度出入口の近くで待つ事にした。
「キーボード希望だってのと、さっき俺に話してくれた実績を話せば大丈夫。後は自分を信じる……もう大丈夫だよな?」
「うん。貴之君が教えてくれたから、大丈夫」
彼女らがその待機を始める頃に、貴之らはもうすぐで到着するくらいの場所に来ていた。
燐子から『自分が思い切って進めた証に』と頼まれたことで、互いに名前呼びすることを決めている。
「私、貴之君に話しを聞いてもらえてよかったよ……」
「それなら何より。後で紗夜に礼を言わねぇとな……。今回のことも、紗夜が教えてくれたからできたんだし」
紗夜は『悩んでいる人を見つけたが、悩みを解決する為の時間が無い』。これには対する貴之は『悩みを解決する為の時間はあるが、悩んでいる人を知らない』であった。
ならば紗夜が貴之に伝え、紗夜がやりたかったことを理解している貴之が代行してやればいい話であり、これが燐子の悩みを解決する道に繋がる。
「悪い。待たせた」
「大丈夫よ。それよりも、キーボードで入りたい子がいたって聞いたのだけど……」
「ああ。それがこの子だ」
友希那に問われた貴之が答えながら体を横にして移動すると、貴之の後ろに隠れていた燐子が四人の前に姿を現した。
「えぇっ!?りんりんキーボードできたの!?」
「白金さん、もう大丈夫そうですね?」
「はい。おかげさまで……」
いつもより明るくなったように感じる彼女を見てあこが気になり、紗夜は変わるきっかけを掴んだ事に気付き、後で話しを聞いて見ようと思った。
「あなたが、キーボードとして入りたい子………で間違い無いわね?」
「はい。私は白金燐子です。実は、小さい頃からピアノをやっていて、度々コンクールで受賞をしています」
「(たった数時間でここまで……今度少し教えて貰おうかしら?)」
紗夜からすれば、貴之の話しの聞き方は今後の参考になると思うので、是非とも聞いておきたかった。
また、この一方であこは一つ思い当たる物を思い出す。
「(りんりん……少しだけだけど、『NFO』でチャットを打っている時に近づけたのかな?)」
あこは燐子と普段から『NFO』──正式名称『Neo Fantasy Online』と言う、国内で最もプレイされているオンラインゲームをやっていて、その時のチャットは普段とは違って明るさの溢れるものだった。
流石に顔文字等再現できる程の豊かさまでは行かないが、それでも変わっていることだけは感じ取れる。
「こんな私ですけど……オーディションを、受けさせてもらえませんか?お願いします」
『…………』
燐子が綺麗に頭を下げたのに対し、四人に暫し沈黙が走る。最も硬直が少ないのは接点が無いことと広い心を持って話しを聞いていたリサで、誰かが良いと言えばすぐに乗るつもりでいた。
紗夜もこれなら全く問題ないと言いたげな笑みを浮かべているので、横で見ていた貴之は問題なさそうだと確信を抱く。
その証拠と言わんばかりに、友希那も確信を持って納得したように頷いている。
「いいわ。そこまで言うのなら、オーディションを引き受けるわ。あなたたちもそれでいい?」
「うん。アタシは大丈夫♪」
「あこも大丈夫ですっ!」
「私も賛成です。ここまでやってくれたのなら、何も心配は要らないでしょう」
友希那が周りに促せば、それぞれの言い方で賛成を示す。
決まったことで友希那が「顔を上げて」と促し、それを受けた燐子がゆっくりと顔を上げる。
「全員が賛成したから、日程を決めましょう。予約を入れている日が……」
友希那に予約を入れている日を見せてもらい、燐子は自分の予定と照らし合わせてオーディションを受ける日を決める。
その結果、オーディションを受けるのは休み明けに決まった。
「(アタシにも、こんな人が隣にいれば違ったのかな……)」
貴之と紗夜の協力姿を見て、リサは思わず考えてしまった。
日程が決まったことで今日はこれで解散となり、帰り道が途中まで同じなので、燐子は忘れない内にと貴之を呼び止める。
「今日は、話しを聞いてくれてありがとう。貴之君のおかげで、私もようやく自分から進むことができたの」
「どういたしまして。紗夜もありがとうな……お前が教えてくれたから、燐子を支えられた」
「お礼を言いたいのは私もよ。白金さん、オーディションの方頑張ってくださいね」
「……はい!二人とも、本当にありがとうございます!」
燐子の花咲くような笑顔を見た二人は、互いに顔を見合わせて笑う。
一人ではダメでも、誰かと共にならできる──。それが今、目の前で証明された瞬間であった。
紗夜が柔らかい性格しているおかげで、燐子は早い段階で相談ができました。
燐子も名前呼びするようになったので、近いうちに友希那も名前呼びすることになります。
こちらの一真は本編と違い、迷いが最初から消えていて、助けたい人がいる状況になりました。これも貴之の状況が変わっている影響です。
次回はファーストライブの場合、貴之と共に会場に行く人が変わらず、梨花と顔を合わせる場面が無しになり、演奏する曲から『Legendary』が省かれるくらいしか変化がないのでこちらは飛ばして、Roseliaシナリオの11話と12話をやっていこうと思います。
一先ずこれを書き終わったら本編を再開し、予定通りRoseliaメンバーでファイトイベントをやっていこうと思います。
ここからは再び変化の内容を書いていきます。最初の2話分よりは長くないはずです。
燐子を支え終えて帰った後の貴之
・日菜に「あの子可愛かった?」とか、「おねーちゃんとどっちがいい?」とおちょくられたくらいであり、特に釘刺しはされていない。
・紗夜と日菜と三人で燐子を支えた時の方法を共有し、次に各自で使えるようにする。
・出来事を聞いた明未から、貴之は何かと頼られるタイプだろうなと改めて確信される。
・あこが燐子と小百合の二名と仲が良かったので、休日に貴之と巴込みで顔を合わせることになる。なお、その途中で氷川姉妹とも合流し、七人で落ち着ける場所で談笑した。
一真個人の変化
・貴之の協力によって『PSYクオリア』の悩みは解決済。
・↑に伴い『PSYクオリア』無しで勝つことには固執していないが、『PSYクオリア』も使って、何らかの形で貴之に自分なりのファイトで恩を返したいと考えている。
・今現在、助けたい人がおり、その人を助ける為に奮闘中。
花女生から見る貴之
紗夜が度々言っていた『今の自分を話す時に欠かせない存在』であり、彼女の人間関係に大きな支えを与えた恩人とも言える人。互いに頼りつつ頼られつつな関係である為、仲がいいことは保証されている。もしかしたら紗夜の意中の人かもしれないので、もしそうなら是非とも結ばれて欲しい。
羽丘生から見る貴之
最近転校してきた小百合の兄で、日菜と元々仲が良かった人。後から幼馴染みと教えてもらったので、そりゃそうだと納得している。あの音楽以外の話しはまともに取り合ってくれない友希那と、音楽の話題を持たないのに、紗夜との縁で話しを持ち掛けさせたとんでもない人でもある。
貴之らの学力に関して
・日菜>紗夜≧一真=玲奈=弘人>燐子≠竜馬≠大介>貴之>俊哉≧リサ>友希那≧あこの順番
・左側にいる人物であればあるほど学力が高い。
・貴之は『周りが勉強できる子だらけだから、ちょっとはやっておこう』、『妹に見栄を張らせてやりたい』の二点でちょっと頑張った結果学力が向上。俊哉より上に
・友希那は『補習さえ避けられればいい』と言う思考で行っている為、本当に最低限までしか学力を確保していない。リサより下に
・宮地組は全体的に高め。紗夜は『勉学でも欲を出せるか』と言う思考の下で努力したので、微量ながら学力向上
こんな感じになります。ここまで読んでくれた方は本当にありがとうございます。