ガルパピコの大盛り、とんでもない入り方をしてきましたねぇ……というか、友希那がまた一話から「眩しいわね……」って言ってる(笑)。
千聖との案件があってから二日後。貴之は再び合同練習の様子を見ることになる。
今回はRoseliaとハロハピの二チームによる合同練習があったのだが、挨拶するよりも前にハロハピのメンバーたちから礼を言われたので驚いた。
「(やった側はそうでなくても……ってやつなのか?)」
理由は至って簡単。以前に迷子になった花音を道案内してくれたことだった。
どうやらあと少し遅かったら迎えに行くつもりだったようだが、貴之が道案内してくれたから平気になったらしい。
助けて貰った経緯もあって、ハロハピのメンバーは最初から敵意がゼロであり、貴之としては非常に気を楽にできることが予想できて有り難い話しである。
また、意外なところとしては千聖と幼少期から縁を持っている人がハロハピにいた事である。
「(まさかもうそこまで繋がってるとは思わねぇよ普通は……)」
その人はそっちの意味でも礼を言ってきたので、もうどこからどう返せばいいのやらになりかけた。
とは言え、向こう側の礼は礼なので、そこは素直に受け取っておく。
「今日もよろしくね♪」
「はい。行ってきます」
貴之の対人能力を期待してか、まりなは完全に安心した様子でこちらに声を掛ける。
ちなみに合同練習に関してだが、ハロハピが唯一キーボードの代わりにDJがいるチームなので、技術面で参考程度にしか教えられない燐子がどうしようかと困った笑みをしていたことを記しておく。
一応は互いに知識交換を考えているが、早い内に終わってしまうかもしれないことは十分に懸念されていた。
「もう何度も聞いてる人たちもいるけど、俺は見てるだけだから気にしすぎないでね」
こうして説明するのは慣れたもので、貴之は既に全く緊張していない。
大丈夫かと聞かれた為、貴之は毎度感じていることである「26対1よりは全然マシ」と答える。
ハロハピの数名が軽く引きつった笑みを見せるくらいで、他の人たちは大丈夫なら問題無いねと言いたげな顔をするか、あれは大変だったねと困った笑みを浮かべる人たちだった。
確認が終わったところで二チームが順に自己紹介を行っていく。今回Roseliaは自分たちとハロハピの方針は最も対極的なので、取り込める要素が少なそうだと予想していた。
その為、相手の方針とそれによって起こる空気等を参考にする気概でいるそうだ。
「もう知ってるかもだけど、うちの精肉店をよろしくね~!」
自己紹介しながらさらりと自分の店の紹介をするのは、オレンジ色のショートヘアーが目を引く明るい少女──
ハロハピではベースを担当しており、とある少女を追っていた矢先に話しを聞いたのがチーム加入の発端であり、その少女との一件がチームに影響を与えることとなっている。
また、自分のことを『女の子らしくない』と感じて悩みを持っていたが、他のメンバーからすれば最も女子らしいと評されている。そんな話しを聞いた貴之が俊哉に持ち掛ければ、「その展開アニメで見たんだけど……?」と困った笑みを返されたことを記しておく。
なお、はぐみはソフトボールのチームにも所属しているらしく、そこでリーダーをやっているようだ。
貴之の預かり知らぬ所では小百合が彼女のいる精肉店にそれなりの頻度で寄っているが、名を知らないのが影響してお互いに気づかぬままであった。
「クラスも同じで、こっちでも同じになるなんてねぇ~……これも何かの縁だね♪」
「それは私も考えていたよ。世界は意外にも狭いようだね」
ハロハピ側にいる肩より少し下まで行くくらいだろう紫色の髪をポニーテールにし、やや細めの目つきで赤い瞳を持ち、その背丈から男子と見紛うこともある中性的な容姿を持った少女──
彼女はハロハピのギター担当で、その背丈や容姿、運動神経からパフォーマーを務めることも多い。意外にもこのチームは彼女だけが羽丘に通っている。
演技的な発言を好んでいるらしく、女子のことは「子猫ちゃん」と呼んでいて容姿等も相俟って女子からかなりの人気を誇っている。貴之も後から知ることになるが、ポピパではりみが、アフグロではひまりが彼女のファンになっているそうだ。後日、この発言を聞いて本当に子猫がいると勘違いした友希那が本気で落ち込んでしまうことがあり、その時薫の意図を理解するに至った。
この他にも演劇部に所属しており、彼女の出る演目は人気が非常に高く、他校と合同も許可されていることもあり、千聖とペアで揃った場合は会場の席が生徒で埋まりきるほどである。
また、彼女が千聖とは幼少期から縁のある人物で、貴之に千聖のことで礼を言った人である。
彼女のクラスにリサがいたりと妙な縁を持っていることを互いに知り、もしかしたらどこかでまた共にするかもしれないと感じた。
「じゃあ
「あー……。うん。ちょっと待ってて」
肩に掛かる程度の黒い髪を持った少女──
ダウナー気味な性格以外は至って普通の少女であり、ミッシェルと言うのは、彼女が新しく受けたアルバイトでの着ぐるみのことである。
彼女がミッシェルの姿でアルバイトをしていた最中にメンバーの一部と遭遇しており、花音を省き他のメンバーは先にこの時の彼女を認識していたそうだ。
花音は『ミッシェル=美咲』の認識で見てくれるのだが、他の三人は『ミッシェル≠美咲』の認識である為、花音と同じ見方にならないだろうかと日頃の悩みにしている。
唯一ゴリ押しに近い勧誘を受けていたので最初は脱退を考えていたが、とある一件もあってそのまま続けることにした。
また、この時何か不安そうにしている花音と、微塵も疑っていない三人を見て、貴之は妙に意識のずれがあることに気付く。
「(でも……これ多分ダメだよな?)」
Roseliaの五人が首を傾げる程度の中で、貴之は問題点に気づいて頭を抱えた。
そのままだと確かに解決にはならないが、とある理由がチームの方針を本末転倒まで持って行き兼ねないことに気づいてしまったのだ。
後で今気づいた内容のことを聞かれるのだが、貴之は悩んでいる側に取って満足行く回答ができなかっただろうと確信することになる。
「みんなお待たせ~。ミッシェルだよ~」
「ミッシェル、待っていたわ!」
『(えっと……何故こうなるの?)』
着ぐるみを来た状態の美咲……もといミッシェルを長い金色の髪と同じ色の瞳を持つ少女、
ハロハピの『世界中を笑顔にしたい』と言うのはこころの願いから出たものであり、バンドをやるようになったのはドラムを辞めようとしていた花音と、願いを叶えるべく散策していたこころが出会ったのがことの発端だったようだ。
また、彼女の家は弦巻財団と言う資産家である為に資金面でこれでもかと融通が利いており、彼女がこうしたいや、これが欲しいと言えば十分な資産と、側近である黒服の人たちの行動力と実行力で大体用意できてしまう程である。これを聞いた時金の力ってすげえなと全員が思った。
行動力と資産が両立していることもあり、身内の誕生日プレゼントが施設丸々一個と言うとんでもないことになったりもしたそうで、話しを聞けば聞くほど金銭感覚が麻痺しそうで怖いと貴之が真っ先に畏怖を示した。この反応はカード購入代やその他諸々ヴァンガード関係だとRoseliaの五人は見抜いている。
今回のイベントも笑顔にできる人を増やせるならと、いの一番に参加を言い出しており、その願いの強さは本物であることを示している。その願いの為に突き進むブレなさは貴之に似通ったものを思わせるが、友希那に近い危うさも時々見えるな……と後々リサは感じ取ることになる。
その状況が目の前、声がどう聞いたって美咲であるミッシェルを微塵も疑った様子が無いのが理由であり、後々一時期のリサのように不安を抱くだけならまだしも、そこより先に進んでしまわないか……そこが問題点となるだろう。
「(こりゃ……俺も判断に困るな)」
貴之もこの『ミッシェルと美咲』の状況には悩まされており、間違いなく美咲にとっては悩みの種であることは明らかだった。
ただし、それをやってしまうとハロハピの根本が崩れてしまうのではないかと言う致命的な危惧が存在している。
故に貴之は大丈夫な間、これをどう答えるべきかを考えておくことにした。ひょっとしたら今回が一番助けにならない回答しか出せない可能性が存在している。
「(ど、どっちで合わせるのがいいんだろう?)」
同じくして、この状況に悩まされることになったのが燐子であった。
彼女も美咲のことに関してであり、パートの関係上接することになるのだがハロハピ側の『ミッシェル≠美咲』が悩ませることになる。
自分だけでも気を遣ってあげるべきだろうか?それとも後で話せる人に話して見ると告げ、今は我慢してもらうべきだろうか?燐子としてもこんな所で悩むのは予想外であった。
少しだけ周りを見渡して見れば、Roseliaのメンバーは自分に任せると信じてくれている目を向けており、貴之はこの時だけは手伝えない申し訳なさと自分への信頼が混ざった目を向けていた。ならばと燐子は自分でどうにかすることを選び、一回演奏を見せてもらう時に考えることにする。
そうして一回互いの演奏が終わった後、パートごとに個別の練習となる。
「……と、言うこともあって色々考えているのよ!」
「そちらの方針は年齢層も問わないものね……であれば、誰もが目に付けやすい動きを使って勝負することを選ぶ訳だわ」
ボーカルに関しては友希那が技術を教えた後、こころから方針を決定した経歴等を教えてもらう。
こうなっているのは本来ハロハピが持つ強みである、パフォーマンスが練習の場では全く披露できないと言う致命的な問題点があったからである。
普段からハロハピはライブハウスを使うどころか、こころの計らいで用意できる施設を使えてしまうので、練習段階からかなり自由に練習で着たのだが、ここ来て場所の狭さが問題になってしまった。
とんでもない金持ちぶりに友希那は驚くこととなるが、こころとしてはそれが当たり前になってしまっているので、不思議そうにしていた。
「ところで、パフォーマンスの方は決まっているの?」
「まだよ。どれくらいまでが大丈夫かを確認してから決めるの!」
普段から思い切って行動できる人だと紗夜が言っていたのでどうかと思ったが、配慮等はしっかりしているので安心した。
今回は場所の都合上仕方ない面があるので、友希那は本番を楽しみにしている旨をこころに告げる。
「あら……思ったよりもできていますね」
「昔経験があっただけさ。褒められる程のものではないよ」
紗夜の方は予想よりも技術がある薫の腕前に関心を抱くことになる。彼女は以前経験があったのがここで役に立っていた。
確かに暫くやっていない所からの復帰だった薫だが、自分の腕が落ちていないことは彼女としても結構安心だったようである。
大丈夫だった理由が『自分は楽しみながら苦労したおかげだろう』と口にしたので、紗夜はすぐには分からず首を傾げることとなる。
「かのシェイクスピアはこう言ったんだ。『楽しんでやる苦労は、苦痛を癒すものだ』……とね。ギターの経験が嫌なものであったのなら、ここまで間をあけたら覚えているか怪しいものだ」
「楽しんで苦労する……なるほど。それなら納得です」
「分かってくれたようでなにより。つまり、そういうことさ」
薫が告げたシェイクスピアの格言の一つを、少し前までだったら理解できなかっただろうと紗夜は考える。
日菜との確執が強かった時期は苦痛でしかないので、苦労に楽しいもへったくれもなくただただ苦痛なだけだったが、今は焦らず一歩ずつ進んでいく方針と、自分を自分だと見てくれる人たちのおかげで目指す場所への苦労を楽しめる自分がいる。
思わぬ所でいい言葉をもらえた紗夜は、改めて薫に礼を告げるのであった。
「練習したらお客さんの笑顔を増やせる……て思ったら頑張れるよねぇ~♪」
「そうそうっ!だからはぐみも普段からそうするようにしてるの♪」
また、ベースの二人はお互いの波長が合うらしく練習の一個一個が問題なく進んでいく。
練習内容とは別の方面で話しが進んで行ってしまうので、リサとしては会話内容が無くなり過ぎて途中から無言……とならないように上手く話しを切り出すのが重要になりそうだった。
その一環として、貴之もよくやるイメージしてみることを勧めて見たものの、意外にも首を傾下られる事態になった。
「えっと……?」
「まあ要するに、想像するんだよ。上手く演奏できるようになって、みんなを笑顔にできる自分たちをね♪」
はぐみが感覚派であることに気づいてやってみたのだが、どうやらヴァンガードへの知識が浅すぎると効果が薄いらしく、言い直すことで理解を得られた。
また、今回のことでリサは自分が結構染まってきていることを自覚したので、少し気を付けることにした。
「えーっとね……ここをダダダって叩いて、そこから……。いや、この言い方何かダメな気が……」
「だ、大丈夫だよ……何となく分かるから。こう、だよね?」
一方で、あこは技術以外の難所に気づくこととなった。これは今回花音に教えることになったことで判明した点である。
あこ自身が感覚派の人間であり、教える時に上手く言語化できず、教えながらうんうんと悩むことになっていた。
巴は姉である為勝手が知れている。麻弥は元々かなりできる人間であった為、二人で音を合わせながら話すだけだったので問題点が浮き彫りにはならなかった。そういう風に先送りになる場面が多くて、今ままで気づけなかったのが仇となった。
幸いにも今回は手振りができる場面なので、花音も確認を込めて実践してそれが合っているので事なきを得た。
「あ、合ってる……良かった、ちゃんと通じてた」
「私も、上手くできてよかったよ……」
辛うじて花音は自分が……と言ったタイプなので良かったのだが、今のままでは後々苦労することをあこは考えられた。
──紗夜さんに頼んでみようかな?こう言った時に最も頼れそうな人を、あこの中で探して置くことにした。
「じゃあ、そう言うことで……」
「いや、何かすいませんホントに……」
一方で互いに意見交換のみで手一杯になることが分かっていた燐子とミッシェル──もとい美咲は、先に呼び方だけはそうすることを決めて置いた。
声からして明らかであるのはそうだが、恐らくハロハピの方針上今その呼び方をすると不味いので、その姿でいる場合はミッシェル呼びでいくことにする。
ただ、美咲としては『ミッシェル=自分』と言う認識を持っていることを先に教えてもらえているだけ、普段よりは気が楽であった。
「一チームだけDJって考えると、やっぱウチって変わってますね~……」
「でも、パフォーマンスとかチームの雰囲気を考えたら、キーボードは相性が悪いかも……」
恐らく、ハロハピの曲を聞いた限りではキーボードを入れ込むのは非常に難しいと思われた。
DJと言う立場は盛り上げを作る都合上、ハロハピには必要となり、外すのが難しいのも起因している。
また、思いっきりやる方が合いやすい曲調が多い為、キーボードで音を整えるとせっかくのところで……となりやすいと燐子は予想していた。
この一人だけパートが違うと言う点で、合同練習の際に苦労させてると感じていた美咲だったが、変えたら変えたでチームの音が崩れるならそれはダメだと割り切ることにする。
そもそも、いきなりパートを変えて曲も作り直すとなれば無理がある。身体面でもGOサインは出せないだろう。
『今回も心配無さそうで良かったよ……じゃあ、そのままお願いね?』
「はい。それじゃあまた」
──さて、今日は誰が声をかけてくるかな。予想しながら電話を終えたら案の定声を掛けられたのでそちらを振り向く。
声の主はこころであり、この流れだとポピパは戸山さんが来そうだなと貴之は考えた。
「弦巻さんだったね?どんな用かな?」
「一つ質問よ?世界中を笑顔にすると言う夢があった場合、あなたならどうするかしら?」
「……世界中を?そうだな……」
いきなり無理難題に近しい質問が来て、貴之は大いに頭を唸らせることになる。
まず夢の終着点が自分や友希那の比では無く、その為に必要なものがこれ一つというわけでもなく答えが多すぎるのが問題点だった。
更に言えば世界中と言うことは様々な人と関わってくる為、とある人にはウケたからこの人にも──とやったら外れる可能性だって高く、安易にそれを進めることはできない。
例えばの話し、自分はヴァンガードがあり、友希那といられればそれだけでも十分に笑顔でいられるのだが、他の人だとそれぞれが違って来たりするのだ。
「老若男女問わず……ってなると、具体的にこうするなんてこと言えねぇかな。そこは範囲が広すぎてどうしてもバラけてくる……確かにバンドとかそっちは色んな人が楽しめるから、やりやすい方だろうけど……」
「あら意外……あなた結構
己の気に入ったユニットを入れ続けて戦うことから、こころは貴之を
確かにその二つだけで言えば貴之はこころの予想通りに近い思想を持っているが、こころの持っているそれが流石にぶっ飛び過ぎている。
ただしこの心持ちは必要だと思い、それだけはこころに答えられると告げる。
「最後まで諦めない意志を持つ……物事をやりきるのにあたってこれはどんなことにも言えると思う」
「その通りね!諦めたらいつまで経ってもできないままだもの」
それがあったからこそ、貴之は何度負けても立ち上がって全国大会の優勝を果たし、友希那と想いを通わせることに成功している。
また、その意志を持った彼に影響を受けた人も多く、貴之が現在に至るきっかけを作った友希那の功績は計り知れないだろう。幼き日の歌は、それだけ貴之にとっては重大なターニングポイントとなっていた。
こころはその考え方を大いに納得し、これから活動を続ける際必要なものだと感じた。
「後は考える、やって大丈夫かを確かめる……所謂トライ&エラーだな。何でも一辺倒じゃそこで止まっちまう」
「まだまだ色々とありそうね……。でも、それが必要なことは分かるわ!」
実力云々が関係するなら、恐らく他のチーム程必要になる確率は低いが、目指す場所の道のりは自分が知る誰よりも大変だと感じた貴之は、その願いが叶うようにする為些細な補助をしようと思った。
貴之との話しから得たものを、こころは後ほどどこかで使えるかを皆で話し合うことになる。ここですぐに実行しないのは、世界中を笑顔には当然のことながらチームメンバーも入っているからだ。
また、そうして貴之がこころと話しているのを見ていたリサが、とあることに気づく。
「(……あれ?アタシ全く警戒してない?)」
普段ならハラハラしている状況なのだが、こころは無条件で『大丈夫』と太鼓判を押せてしまうのだった。
そう感じた理由は貴之側ではなくこころの方にあり、そっち方面に全く興味の無いような感じであったせいである。
実際こころは恋愛よりも自分の夢である為、今しがたそうなることは無いと断言できる状況であった。
「あら?今回はいいの?」
「えっ!?な、何で?」
「何故……と聞かれましても、ね?」
「リサ姉、普段からそうしてるのに……」
「今井さん、今までの分が……来ちゃってますね?」
そんなリサの様子を見抜いた友希那の問いかけを起点に、Roseliaのメンバーでリサを弄ろうか弄るまいかの流れが出来上がる。
普段貴之が毎度毎度リサの目を意識することになっていたが、その目を向けるリサを弄ったらどうなるだろう?そんな好奇心が湧き上がっていた。
「……?何かあったの?」
「普段ならこうならないから、珍しいかったのよ。実は……」
花音が実際に問いかけ、他の三人も興味ありな目を向けたので自分たちに起きたことを話していく。彼女が問いかけて来たことで方針が決定したのだ。
話しているとリサが顔を赤くしながら慌てて止めようとするが、四対一では止めることはできなかったようだ。
リサが貴之を意識しているのかと聞かれれば、幼馴染みや友人としてではそうだが、異性としては違うと答える。
ただし、リサの場合何か一つの要因が外れてもいたらどうなっていたか分からないと答えており、貴之の周りが奇跡の産物であることを知らされる。
「リサ……行き遅れはしないわよね?」
「ゆ、友希那ぁ~……。どうして俊哉と同じこと言うのさぁ~……」
「(少なくとも、今井さんとは互いにその気が無いみたいね)」
俊哉がリサに向けて煽ったことから、紗夜はそう判断して安心する。
仮に彼がリサを意識しており、そうかも知れないと貴之に相談した場合は「お気の毒に……」としか返せないだろう。
或いは、自分と俊哉のことを把握しきっているので愉悦を感じた表情を向けてくるかも知れない。そう考えると話しづらいと思えた。
「ところで、あれどうしようかしら?」
「アレか……そのままでいいと思ったけど、時間的に止めた方がいいな。練習するし」
話すことを話し終わったこころがそんな光景を目撃し、貴之はそうすることをこころに勧めた。
勧めるだけ何もしないのは、彼女たちが自主的にやるべきで自分は控えるべきと考えていたからである。
そんなこともあって、こころの促しで二チームは練習に戻っていくのだった。
* * *
「とまあ、貴之は大体こんな感じなんだ」
「なるほど……ともかく助かったよ。ありがとう」
その翌日の昼休み、薫はリサから貴之が普段ヴァンガードをやっているとどうなっているかの動画を貰った。
これに関しては本人承諾済みである為、後々問題になることは無い。この他、貴之以外の人は肖像権を配慮して顔を隠す等の編集をしてから確認をするそうだ。
きっかけはこころが『そこに笑顔はあるのか』が気になったが、その日は予定が入っていて行くことができなかったせいである。
「彼女のことだから、悪い使い方はしないのでしょうけれど……どうするのかしら?」
「貴之がヴァンガードをやっているところだから、ヴァンガードに関係すること……だよね?」
「二人の考えは間違いではないはずだ……。それは私が保証しよう」
こころは実際にヴァンガードをやってみようと言うわけではなく、それに関係することで更にみんなを笑顔にできないかと考えていた。
しかしながら、その行動をするには自分のヴァンガードに関する知識は無いし、様子も分からない為に見た感じでもいいので情報が必要だった。
そんなこともあって貴之と縁のある人に頼めたら頼もう、ということになって今に至っている。
「多分人に教えている時だから、一番参考にしやすいはずなんだよねぇ~……」
「あ、結衣ちゃん結衣ちゃん。これルール全部説明されてるよね?」
「うん。二つの動画で全部説明されてる……お手柄だね」
運よく『バインド』、『トークン』、『アシスト』が全て載っている動画を用意できた為、今回は非常にラッキーだったと言える。
これは『レーヴ』でバイトをしている結衣から見ても文句なしと言える内容であり、褒められたリサが照れた笑みを見せる。
「貴之、結構楽しみにしていたみたいだから、いいものができるといいわね?」
「そこは、こころの企画に乞うご期待……だね」
ここから更に楽しみが増えるなら願ったり。それが話しを聞いたときの貴之の言い分である。
その話しを聞いていた友希那の微笑みを含んだ問いかけに、薫も涼しい笑みと共に答えるのだった。
* * *
「じゃあ、これでお願いね!」
「かしこまりました。早速取り掛かります」
その日夜。バンドの練習がオフだったので、こころはこの時間まで薫から貰った情報を元に企画を練り込んでおり、たった今完成したのでそれを側近の黒服の女性に渡した。
弦巻家の黒服の人たちは先代の時から付き合いがよく、こころの両親が彼女を大切にしているのを理解していたのもあって何の迷いも無く話しを聞いてくれる。
両親の娘だから……と言う理由ではなく、こころも個人として信じてそのまま付いていくことを選んだ。
「ところで、テスターはどうなさいますか?」
「一人は決まっているけど、もう一人はまだなのよね……」
今回はヴァンガードに関係することなので、自分との知り合いでヴァンガードファイターの貴之は確定していた。
しかしもう一人は決まっておらず、どうしようかと悩んでいた。何しろ自分はヴァンガードに明るい人を余り知らないのだから。
──あ、そうすればいいじゃない。そこまで考えたらこころは一つのことに気づいた。
「なら、もう一人はその人に誰を相手にしたいか聞いてみましょう!いきなり頼むのだから、それくらいあってもいいはずだわ!」
「承知しました。ではそのように」
今度こそ決まった企画を伝えるべく側近の人が移動する。
彼女が去るのを見送ったこころは一仕事を終えた充足感を共に、椅子の背もたれに体を預ける。
──このサプライズで、笑顔が増えればいいわね。いつもと変わらぬ様子、変わらぬ笑みでこころは完成した時の反応を楽しみにするのだった。
一先ずRoseliaとハロハピの合同練習回が終了です。
こころが企画したのが完成するのは、本章のどこかか、次章辺りだと思います。
また、現在ハロハピのメンバーから見る貴之はこんな感じになります。
こころ……現実を見ながら理想を追いかけた人で、難しいなりにしっかりと答えを出せる人でもある。ヴァンガードある所に彼の笑顔アリと言えるので、そのことに関して心配はしていない。
サプライズ、楽しみにしていてね!
薫……同じクラスであるリサの幼馴染みで、幼少期からの縁のある千聖を案じてくれた優しき人。花音の事もあるので、恩を仇で返すような真似をしないようにしたいところ。
ところで、今度演劇に参加してみないかい?君の普段を見たら行けそうな気がするんだ。
はぐみ……噂を聞くことのあるヴァンガードファイター。花音の事もあるしそんなことは無いだろうと思ってたら本当にそんなこと無くて安心。
時々来る人とどこか似てる気がするのは気のせい?
花音……以前道案内してくれた優しい人。ただ、それで噂話になってしまうのはちょっと可哀想だと思うので、どうにかできないかと思ってもしまう。
前に進み続けられるって凄いなぁ……。
美咲……自分に気を遣ってくれた白金さんの恩人。花音から聞いた時は心配したが、他の三人が人を助けられるなら悪い人ではないと迷い無く言うので、馬鹿らしくなって疑うのは辞めた。その結果取り越し苦労で終わって安心。
後でミッシェルの件を相談して見たところ彼も非常に難しそうな顔をしていたので、ちょっと申し訳なくなった。
彼女らの場合は『花音を助けてくれた』おかげで、花女が多くても最初から偏見が殆ど無くこのような評価になりました。貴之の行動範囲の関係上、実はこのチームが一番接点の浅いチームでした。
次回はメインストーリーの9話……Roseliaとポピパの合同練習回をやっていきます。
没案となった紗夜がヒロインだった場合の話しは読みたいですか?
-
読みたい
-
別にいい