先導者と歌姫 -高みを目指して-   作:ブリガンディ

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予告通りメインストーリー9話をやっていきます。


パーティー10 蒼薔薇と仲良しと先導者と

「この組み合わせが最後でしたっけ?」

 

「うん。その後は来週に向けて準備して行くよ」

 

再び合同練習の開始時間が近づいて来ているので、貴之はまりなと確認を行っていた。

五チームによる10通りの組み合わせで一番最後の組み合わせ、Roseliaとポピパの合同練習が今日行われることになっており、貴之にとっては全員顔合わせ経験があるので非常に楽である。

Roseliaが絡まない合同練習の状況も関わったことがある貴之だが、何だかんだでこの組み合わせを一番楽しみにしていた節がある。

その理由としては、一人の少女の存在が大きかった。

 

「(理由は戸山さんだな……。昨日友希那とも、彼女のことで少し話していたし)」

 

やはりというか、香澄の存在が影響していた。自分にとっても友希那にとっても、彼女は幼き頃の現身(うつしみ)のように見える。

貴之に至っては『人生に大きな影響を与える一件があった』、『様々なものを見て探し、やりたいことを見つける』、『そのやりたいことで自分に決定打を与えてくれた先導者がいる』と共通点が非常に多い。

今までの流れから、休憩時間中に声を掛けてくる事も十分予想出来ており、心の準備もしてあるのでそこは問題無いだろう。

 

「(何かと星を好んでたっけ……)」

 

香澄のことでどうしても逃れられない話題がヘアスタイルであり、これが猫好きの友希那には猫を意識していそうだと思えているようだ。

ここは幼少の頃からそうなので仕方ないと思っていた貴之だが、冷静に思い返せばそれは違うかもしれないと思える要素がある。

彼女が身につけるアクセサリー等は星を形どっているものが多く、ギターも『ランダムスター』と呼ばれるものを使っている。

ギターも『スター=星』となので、彼女は超が付くほど星好きであることが伺えるものを見せていた。

──なら、後で確かめて見るか。大丈夫そうなタイミングで貴之は踏み込んでみることを決めた。

 

「何かあったら連絡してね?」

 

「分かりました」

 

まりなと軽いやり取りの後、貴之は二チームがいる部屋に入る。

有咲が気まずそうな顔を見せたが、他の十人で気にするなという旨の表情を見せて納得させる。

もうやることが何か分かっているはずなので、貴之はいつも通りにしてるからと伝えた。

 

「感覚麻痺してるな俺……」

 

『やっぱり……?』

 

例え10対1の状況だとしても、もう既に貴之は全く緊張しなくなっていた。

せめて誰か年の近い同年代がいたらまた少し違ったかもしれないのだが、生憎そう言った人はいなかった。

後で話しをする時間は取れるので、二チームで改めて自己紹介をして練習を始めて行く。

Roseliaはポピパのことを『自分たちが持っていないものを多く持っている』と評し、ポピパもRoseliaを『自分たちにない高い技術を持っている』と評しており、互いが最も欲しいと思った要素を持っている相手だった。

そうすれば自然とやる気は増していくものであり、二チームが内心張り切っているのを貴之は感じ取る。

 

「うわぁ……凄い」

 

「ホントにな。なんつー技術力……」

 

一度演奏を見せてからになったようで、Roseliaが一曲通しで披露する所から始まる。

イベントの説明の時に一度演奏を聴かせてもらっていたが、やはりその高い技術力に圧倒される。

素人目線の貴之ですら一言で『凄い』と評せるので、知識を蓄えている彼女らなら更に理解できているだろうと貴之は考えながら、毎度近くで演奏を聴ける自分は相当恵まれていると思えた。

また、やはりというか毎度毎度間近で彼女らの演奏を聴けるのは専売特許とも言えるもので、俊哉に少し話したら『無性に羨ましい』とコメントを貰っている。

貴之が思い返しを終えて少しすると、Roseliaの一曲分の通しが終了し、少しの間沈黙が走る。

 

「どうだったかしら?」

 

「はいっ!もうとっても凄かったです!」

 

「だぁぁ、お前は少し落ち着け!気持ちはわかるけどさ……」

 

友希那が問いかければ真っ先に答えるのは香澄で、一曲聴いた時の余韻による興奮が抑えきれていない様子であった。

その様子もあってか、すぐに有咲が抑えに回るものの、自分も思わず呟くほど圧倒されていたので、無理もないと思っている。それほどRoseliaは何が凄いのかが分かりやすいのである。

また、こうして少しでも言葉を交わせば分かってくることもあり、有咲はそんな一面に気づく。

 

「(意外だ……Roseliaって結構こっちに歩み寄る感じしてんのな)」

 

表情から察し取れるのだが、演奏が終わった直後等は雰囲気が柔らかく、寄せ付けないことなど無いことが伺える。

元よりこちらのことを紗夜に聞こうとしたリサはそうだし、友希那も今回のように自ら歩み寄ってくる姿勢を見せるのは意外だった。

何やら香澄も友希那の歌を聴いて惹かれるものがあった様子なので、互いの性分が合うかも知れないと思うと安心できる。

 

「次、私たちだね」

 

「Roseliaの後って、めっちゃ緊張する……」

 

「大丈夫だよりみりん。落ち着いてやっていこう、ね?」

 

『(な、何か申し訳ない……)』

 

たえが促したらりみが緊張し、それを励ます沙綾を見て、Roseliaの五人は自分たちが後ろの方が良かったかも知れないと考える。

しかしながら演奏が始まればその問題は杞憂で終わる形となり、ポピパの五人は自然体で演奏を行えていた。

流石に後発組のバンドと言うこともあって、技術力が優れているとは言い難いが、素質があることは十分すぎるほど感じさせてくれる。

 

「(やはりね……。戸山さんが鍵になっているわ)」

 

ポピパの強みは仲の良い五人で集まったことによる一体感があり、その強みを盤石なものにしているのが香澄だった。

バンドを──演奏を純粋に楽しんで行う彼女たちを見て、参加して良かったと友希那は改めて思い、今後の伸びが楽しみになっている自分に気づく。

他の人たちはどうだろうかと思いながら辺りを見ようとすると、隣にいた紗夜と偶然目が合った。

 

「湊さんもですか?」

 

「と言うことはあなたもね?」

 

どうやら考えていることが互いに目で分かったらしく、柔らかさと強気が混ざった笑みを二人して浮かべる。

──今日は思いっきり行ってもいいかもしれない。演奏を聴きながら二人がそう考えたと同時に、ポピパの演奏が終わった。

やはりというか楽しんで演奏できた様子を見せており、その様子はとても微笑ましいものに見えた。

 

「どうでしたか?」

 

「悪くない。あなたたちが楽しんでいることが伝わってくる、いい曲だったわ」

 

「私も同感です。ここから伸ばせばどうなるか、楽しみになってきました」

 

演奏が終わった香澄が聞いて見たところ、友希那と紗夜が完全にスイッチの入った様子を見せたのでポピパの五人が数瞬固まる。

技術力を強みと認識しているチームの中で特に意識の高い二人だったので、厳しい評価が来るのかもと思っていたら予想以上に高評価だったことが理由であり、褒められたことは嬉しいが何をするんだろうと気にもなった。

その様子からあこと燐子、リサの三人も何が起きたかに気づいた。

 

「あの二人の様子……」

 

「あ~……ありゃスイッチ入ってるね」

 

「私たちも手伝いますから、頑張りましょう」

 

理解した三人もバンド同士で高め合えればと考えていたので、友希那と紗夜のスイッチが入ったのは渡りに船と言えた。

この後は今まで通りならパートごとに分かれて練習と行くのだが、今回は香澄とたえが筆頭に「チームの演奏で見てもらいたい」と頼んできたので、そちらに合わせることにする。

Roseliaは今回、自分の持っているパートを中心に見ていくことにする。また、友希那は全体も見て行く形になる。また、見て評価するだけで終わるわけにはいかないので、途中でRoseliaも演奏を行う形に決まった。

 

「いいわ。そちらのタイミングで始めて」

 

「じゃあ、私が合図出しますね」

 

沙綾のドラムスティックを使っての合図を行い、演奏を行ってどうだったかをRoselia側が伝えて行くことになる。

数回重ねて行うことになるのだが、流石にノンストップというわけにはいかないので、開始のタイミングはポピパ側に合わせる方向で進めている。

 

「全体的に見ると、ボーカルが走り気味で……」

 

「ベースはちょっとだけ遅れる時があるのかな……」

 

繰り返して演奏を行っていく内に、ポピパ側の現状に気づくことができた。

香澄がバンドの楽しさを持ってそのまま演奏するのが影響して、少々早めのタイミングで音を出すことがあるのと、りみが周りに合わせようと意識しているのでその分遅れが出てしまいがちなのが比較的目立ちやすかった。他の三人は経験が多めなおかげか、二人ほど目立つことは無い。

どちらか一人だけか、或いは走り気味と遅れ気味がどちらかだけになっていれば気になる確率は減るのだが、二つ出ているとズレが増えるので難しくなる。

 

「あ、あはは……やっぱり楽しいからつい……」

 

「気持ちは分かるけれど、注意ね」

 

「うぅ……ごめんなさい」

 

「ああ、いやいや!怒ってるわけじゃないから……この後も頑張ろうよ、ね?」

 

困ったような笑みを浮かべる香澄には友希那が窘める程度に注意を、落ち込むりみにはリサがやや慌て気味に弁明する。

何も怒る為に指摘を入れている訳では無く、ポピパに伸びてもらいたい為にそこを指摘したので、悪意を持っていないことを伝えたかったのだ。

指摘を受けた二人が納得してくれたところで、ポピパ側もRoselia側──その中でも最も縁のあった紗夜のギターを聴いて思ったことを伝える。

 

「紗夜先輩のギター、本当に凄い上手ですね……」

 

「私の物はまだまだだと思っていましたが……ありがとうございます」

 

中でもリードギターを担当していたたえは特にその技術力を感じ取っていた。

以前までならすんなり受け止めることはできなかったかも知れないが、今の紗夜は素直に受け入れられる。

 

「カワイイ後輩の言葉を素直に受け取るかぁ~……うんうん。紗夜が正直になったようでなによりだね♪」

 

「誰かが謙虚過ぎるので、自分を改めただけですよ」

 

「誰かって……誰の事?」

 

「あ、相変わらず自覚症状無しですか……」

 

リサの現状は紗夜が頭を抱えるだけで無く、Roseliaの全員と貴之が困った笑みを浮かべることになった。

つい先月に自分がどれだけ欠かせない存在感を教えてもらって、少しは改善するかと思ったら結局このままである。どうやって認識してもらおうかと紗夜は考え込みそうになる。

何があったのかと気にならない訳ではないが、色々と音楽に関してを教えてもらうチャンスである為、ポピパの五人は後で聞けたら聞こうと隅に置いておくことにした。

 

「ところで、紗夜先輩はどうやってそんなに上手くなったんですか?」

 

「私の場合は『技術が全て』……そう思ってやってきたからですね」

 

その時期があまりいい思い出を持っていないので苦い顔をしそうになったが、そこはどうにか抑える。

ただ才ある人と比べられる現実(苦痛)から逃れたい一心でやっていたのもあり、素直に喜ぶのは難しい。

とは言え、そのおかげで今の縁ができているので、必ずしも全部が悪いとは言えないのもまた事実だった。

 

「全て……ですか?」

 

「私たちは絶対的なものを信じるの。技術は、絶対的な評価の基準となるものだから……」

 

──だから、演奏技術を磨くのよ。この説明に約一名分からなそうにしている人がいたので、紗夜は補足説明を行うことにした。

 

「楽器の上手い下手は、音楽的な好みに左右されずに判断できますね?」

 

この前置きで頷いて貰った後、自分たちは誰が聞いても絶対的な技術力で圧倒させたいので、その為に技術の向上が欠かせないことを告げる。

彼女の言った通り、Roseliaの演奏は誰が聞いても凄い技術であることは分かるし、合理的な理由で納得の行くものだった。

そんな状況で異を唱えたのはたえだった。上手い下手関係なしに、『演奏したい』気持ちが動かしてくれるというのが彼女の言い分である。

 

「その考え方も間違ってはいないでしょう。ただ、私たちの目標の為に一番必要なのはそれでした」

 

無論、それを否定するつもりはない。自分たちには自分たちのやり方が。向こうには向こうのやり方があるだけだった。

そもそも紗夜の場合、ここで相手の方針を否定したら真正面からたえに近い思想で戦い続けて来た貴之に申し訳が無い。

 

「Roseliaの目標って何ですか?」

 

香澄の問いを聞いて、Roseliaの五人は一度互いを見合わせる。

無言ではあるが五人で意志を合わせて頷き合い、友希那が代表して答えることになる。

 

「目先ので言えば、FWFのメインステージにもう一度立つ……それも、今度は全て自分たちの力でね」

 

来年にはなってしまうが、そこが明白に見えている目標だった。

今回は友希那の一存でああなり、憧れの舞台で演奏できたのは嬉しいし、あの時納得の行く演奏を出来ていたのはそうだが、やはりどうしても『全ては用意できていなかった』という事実が心残りになっている。

だからこそ、まずはそこを目指して再び技術を磨くのである。

 

「そして、いつかは頂点に立つ……それが私たちRoseliaの目標よ」

 

「(凄く大きな目標だなぁ……)」

 

──いつか堂々と言えたらいいな……。不敵な笑みと共に告げる友希那を見て、香澄は敬意を抱いた。

また、自分たちに教えてくれる姿勢とその技術から、本当に音楽──特に歌が好きな人だと感じ取る。

その為に自分たちの足りない部分を知ろうとする姿勢を理解したところで、今度は燐子から問いかけがやって来る。

 

「Poppin'Partyはどんな目標を持っていますか?」

 

「実は、いつか演奏したい場所があるんですっ」

 

香澄の回答に同意の旨を示す反応をするのは沙綾だった。彼女だけでは無く、他の三人も同じように頷いて同意を示す。

──まだまだ初心者で、色々覚えなきゃ行けないこともいっぱいあるけど……いつかそこで演奏できるように頑張ります!自分の置かれている状況を理解しても尚、そこへ行きたい。香澄の純粋な願いと意志であった。

彼女たちの目標と意志を知ることができ、それが良いものだと理解できたRoseliaのメンバーからは正の感情を含む表情が見て取れた。

 

「演奏したい場所……私たちと近い目標を持っているのね」

 

「そちらの意志を確認できて良かったです」

 

目標も高めに設定されており、その為に上手くなりたいと願う。最も協力しやすいチームであったことを知って、友希那と紗夜(真面目な二人)から笑みがこぼれた。

この二人がいいと言う場合、Roseliaの五人が満場一致でいいと思っていることが殆どであり、今回も例外では無かった。

 

「ふっふっふ……永久(とこしえ)の闇を奏でる同胞よ、共に終着地への旅路を楽しもうぞ!……りんりん、ちゃんと決められたよっ!」

 

「うん♪カッコ良かったよ、あこちゃん」

 

あこの発言はその手を知らないと理解しづらいのもあり、りみがポカンとしてしまったが、彼女なりの良い意味での歓迎である。

後で聞かれた場合、貴之は『あこは今、無性に闇を好んだりするお年頃』とだけ答えることに決めた。

また、この時友希那は目標までの道筋を強制することは一切ない事を告げる。

 

「ただ、同じ目標を持っている者同士協力することはできるから、必要なら遠慮なく言ってくれていいわ」

 

「友希那、いいこと言うじゃん?完全に歩み寄る気満々っていうか……。もう少し前までは考えられないよ♪」

 

「こうできるのも、全てあなたたちのおかげよ」

 

──だから、本当にありがとう。彼女らのおかげで今の自分があるので、友希那としては今後何回言ってもいいと思える感謝の言葉である。

それを聞いたRoseliaのメンバーと貴之は笑みを浮かべ、リサに至っては目元が潤んでいた。

 

「えっ……ちょっとリサ?」

 

「ごめん……今までのことを思い返したらつい」

 

ポピパの五人は何があったと思うが、こればかりはおいそれと話すのは難しいので大丈夫になるまで待ってもらうことにした。

これは誰よりも一番近くに長い時間いたリサだからこそであり、万感の想いを抱いてしまうのはやむ無しであった。

また、友希那の宣言を思い出して、香澄が一つのことに喜ぶ。

 

「遠慮なくってことは、もっと演奏見てくれるんですよね!?やったー!」

 

「マジか……あのスパルタが続くってのか」

 

そのことに香澄が喜び、彼女の言葉で気づいた有咲がげんなりとする。確かに教えてもらうのはいいが、疲れやすいのである。

紗夜も紗夜で教えることを通して自分たちの糧にしていくつもりであり、完全に身が入っていた。友希那を筆頭に他の四人も同じだった。

 

「キーボード、一緒に頑張りましょう」

 

「あ、はい……」

 

──完全にやる流れなんだ……。燐子も止まる様子無しなので、有咲は流れに身を任せることにした。

やることが決まったから早速練習……と行きたいところだったが、一度沙綾が待ったを掛ける。

 

「一度休憩にしませんか?さっきまでずっと通してますし、私たちだけずっと見てもらっているのも……」

 

「あっ、ホントだ……アタシも全然気付かなかった!」

 

普段なら時間管理等をしっかりできるリサすら気づかなかったので、沙綾が言わなければ疲労を溜めこんだまま継続する羽目になっていただろう。

また、ずっと見ていたことで自分たちが少しの間音を出していないことに気づき、Roselia側もやってしまったことを反省し、ポピパ側もちょっと悪いことをしたと思う。

ただし、向上心があることはいいことである為、そこに文句は無い。休憩後は同時に練習して行く形に決定する。

 

「と言うわけで、全組み合わせ無事に終わりそうです」

 

『良かったぁ……じゃあ最後までよろしくね♪』

 

合同練習ではこれで最後になるまりなへの報告を終え、電話を終了する。

後は行く末を見守るだけだなと考えていたら、元気のいい声で名を呼ばれた。

──さて、今日は戸山さんかな?そんな風に考えながらそちらへ振り返ってみれば、案の定声の主は香澄であった。

 

「俺からは何が聞きたい?」

 

「友希那先輩から『好きを貫いて上に行った人』って聞いたから、ちょっとお話し聞かせてもらおうと思って!」

 

貴之自身が頼まれたら答えるつもりでいたので、いっそ最初から相手側を促すことにした。

友希那曰く、『貴之の思想はPoppin'PartyとRoseliaが混ざったもの』だそうで、『好きを貫く』が前者、『上に行く』が後者である。

これを言葉にすると、『『オーバーロード(己の分身)』を入れたまま全国大会優勝を果たした』であり、多くの出会いと恩師の出会いがくれた結果でもあった。

ただし、これが楽だったと言えば年月から察せる通り大変であり、どうしても問題点が出てくる。

 

「問題点……ですか?」

 

「やることが完全にバレてる状態から始まることが増える……早い話し、始める前から不利を背負いやすいんだ」

 

貴之の場合戦術が固定される為、何らかの方法で対処をされやすくなる。

経験値の浅い相手なら圧を掛けられるかも知れないが、貴之が目指す場所の相手は強豪揃いである為、『ここを乗り切れば勝ち』と言う指標にもされやすいのだ。

また、大会で名を上げているのもあって更に知れ渡りやすくなっており、拘ることは対策されやすくなるという大きな弱点を生み出すことにも繋がっている。

バンドなら凄さの証明になるので寧ろ有利になりやすいが、ヴァンガードはそうもいかないのである。

 

「それでも勝ったから……何か秘策があったんですよね?」

 

「一個は『相手が予想できない手を隠しておく』。もう一個は秘策って言うよりも、力押しだけど……『相手が対策してても勝てるくらい強くなる』だな」

 

後者は有咲が聞いたら何か言いそうと思いながら、香澄は貴之の考えは最もだと思った。

現に貴之は一真以外には全て後者の方法で勝利を納めており、血が滲むかのような努力が伺える。前者は本当にやむ無しな手段としてやったため、次は後者の方法のみで優勝するのが目標となっているのを告げる。

また、後者を実行できるようにするには『失敗を恐れない』、『何事も挑戦する』が大事であることを香澄に教えておく。

 

「後者は何か夢中になれるものをさがす時もこれは適用できるな……。俺もヴァンガードを探す時はそうだったし」

 

「私もですよっ!バンド見つけるまで色々やってみましたから!」

 

どうやら香澄はチャレンジ精神の塊だったらしく、問題はなさそうだった。

また、『オーバーロード』を選んだ経緯とその後も忘れずに話し、これによって貴之が何故友希那に評されたかが更に理解できることになる。

聞きたいことが全て聞けたので、今度は香澄から『星の鼓動』に関しての話しを聞かせてもらう。

 

「お……おぉい、香澄!?それいきなり話してもわかんね……」

 

「大丈夫大丈夫♪貴之ならそう言う難しい話しでも理解できるから」

 

有咲が制止をかけようとしたら、その前にリサが止めに入る。よくよく見たらRoselia側が全員みれば分かると言いたげにしているので、ポピパ側が首を傾げることになった。

 

「運命の転換ってところかな?」

 

「あー……多分、そんな感じですっ」

 

『(嘘……?本当に分かってる!?)』

 

貴之の導き出した答えに香澄が笑みを持って答え、その光景にポピパ側が絶句する。

最初にあった時の自分たちは『元気がある』とか、『ちょっと飛んでいる』とかの認識で手一杯だったところ、彼は初回にして理解して見せた。

香澄はその『星の鼓動』を感じたことをきっかけに、『キラキラドキドキ』を探し始め、一番これだと思ったのがバンドなのである。

 

「遠導先輩にもそう言うのはありませんか?」

 

「俺か……そうだな」

 

別に無理難題と言う訳ではない。というか、置き換えることができるので貴之にとってはかなり簡単な問いかけだった。

一つ気掛かりがあるとすれば、これを堂々と言って友希那が集中できない状況になったりしないかが問題ではある。

『キラキラドキドキ』の方はまだいいが、『星の鼓動』に関しては大胆な告白をもう一回やるようなものであった。

 

「(何だろう……?凄く気になる)」

 

「(この様子は答えないと後々響くな……)」

 

香澄の『期待している』オーラ全開のキラキラしている目を見て、貴之は腹を括ることにした。

 

「俺にとっての『星の鼓動』は友希那の歌……『キラキラドキドキ』はヴァンガードとそれによってできた縁かな。前者に至っては俺の初恋の始まりでもあるし」

 

「おお……!?そんなことがあったんですか!?」

 

「え、ええ……というかここでも堂々と言うのね……」

 

目を輝かせた香澄に期待の籠った目で見られ、友希那は両手で頬を抑えながら顔を赤くする。

正直なところ、特に技術とかを気にしない時期だったので拙いと思っているのだが、貴之にとっては自分の運命を変える程だったので今でも上位に食い込んでいる。

その恋が実るまでは実に10年近く掛かっているので、本当に良かったと思える。

 

「そう言えば、前々から気になってたんだけどさ……」

 

「……?えっと……?」

 

貴之が香澄の髪型を見て、その後服装等を確認したので首を傾げる。

これには友希那と話していたことを確認したいと言う意味合いがあり、その為に最後の確認をしていた。

──やっぱりそうだよな……。確信を抱いた貴之は彼女に問いかける。

 

「戸山さんの髪型……意識しているのは『星』で合ってる?」

 

『……ええっ!?』

 

貴之が問えば香澄を省いた全員が驚きの声を上げる。

Roselia側はまさかそうだとは思っていなかった。ポピパ側は何故気づけたかが分からなかったのが理由である。

 

「分かったんですか!?」

 

『あ……合ってる!?』

 

「細かいところに目を向ければ分かるもんだ」

 

確かに髪型だけ見たら分からないかも知れないが、細部までしっかりと見れば分かると言うのは貴之の談であり、話しを聞いた彼女らは「それでも限度がある」と返すのだった。

また、この時香澄が暫しの間硬直していたので貴之が声を掛けて見ると、満面の笑みを浮かべる。

 

「やった~っ!初めて一回で気づいてもらえたー!しかも他の所まで気づいてる!凄~いっ!」

 

「俺としては大したことじゃないが……まあ、喜んでもらえて何よりだな」

 

流石の理解力で終わるかと思ったが、今の状況を見過ごせないと思った人が二人いるらしい。

 

「た、貴之ぃ~!こないだ言ったばかりなのにまたぁ~!」

 

「おい香澄ぃっ!?相手がどういう状況か分かってるだろぉ!?」

 

リサと有咲(ブレーキ要員)の二人が引き剝がそうとするが、その前にチームメンバーが抑えに入った。

 

「大丈夫よリサ。貴之は離れないから……」

 

「リサ姉、ちょっとくらい許してあげようよ」

 

「な、え……?あこまで!?」

 

思うところがない訳ではないが、これ以上食い下がるのも難なのでリサは大人しく引くことにした。このままだと煽られそうだと思ったのも大きい。

 

「まあまあ、今回はしょうがないよ」

 

「香澄、凄く嬉しそう」

 

「ま、まあ確かにそうなんだが……」

 

──あの人、たらし寸前だな……。貴之の様子を見ながら有咲は彼の人となりを評価する。()()()()()()()()()『信頼できる人』と思える。

 

「まあ俺からはこんなところだな。後は大丈夫?」

 

「ありがとうございます!よーし、後半も頑張るぞーっ!」

 

そこから少しして二人の話しが終わったのを皮切りに、練習を再開するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど……君も同じ考えだったか」

 

「一度組み替えて終わりって訳じゃないからな……。問題点は洗い出しておきてぇんだ」

 

バイトが終わった後、貴之はファクトリーに赴いて偶然一真と顔を合わせたので一戦しようと言う流れになった。

目的は今のデッキにおける問題点の洗い出しであり、一真は全国大会以後まだ変更を行っていないので、変更点が多くなることを予想する。

 

「め、珍しい……宮地生のヴァンガードファイターだ」

 

「僕以外には、今のところ()()しか知らないから、珍しいのも無理ないかも知れないね」

 

今回はRoseliaとポピパの10人も見に来ている。練習終わりに貴之から話しを聞いたので、ちょっと立ち寄って見ようと思ったのだ。

後江生はあまり合流しないだけでそれなりに人数がいるのだが、宮地生は本当に少ない。実際店にパンを買いに来ることは多くても、そこからファクトリーに行く人は殆ど見ないので沙綾は思わず口から言葉が出た。

ただ、貴之としては一つ引っ掛かることがあり、それを確認してみることにした。

 

「一真、もう一人は今年受験生だっけか?」

 

「ああ。ただ……去年から進路の為に大会を控えていたから、今年の今後次第では何か動きを見せるかも知れないよ」

 

この時はまだ知らないが、貴之はその人に大きな選択を迫られることになる。仮に自分の意志に反するものであった場合、間違いなくそれぞれの主張をファイトでぶつけ合うことになるだろう。

心当たりはあるが、それを気にするのはまだ先でもいい為、今は置いておくことにした。

 

「ところで、二人はいつ頃に知り合ったの?」

 

「大体五年くらい前になるのか……?思ったより長いな」

 

「去年に僕がこっちへ来て、君が後を追うように今年に来る……物凄い偶然だね」

 

「あの時経験者と初心者だったのが、今やお互いに国内最高クラスか……とんでもねぇ縁だな」

 

友希那の問いに答えながら思い返すと、かなり奇妙な縁を作っていることに気付く。

今や良きライバル関係となっているなど、当時の自分たちに想像ができただろうか?考えてみるとお互いに難しいと結論付け、同時に笑う。

懐かしい頃の話しを程々に、二人はファイトを始めて行くことにする。

 

「その剣で光の道を斬り拓け、我が分身!『ライド』!『ブラスター・ブレード』!」

 

「我が分身は、全てを焼き尽くす紅蓮の炎!ライド・ザ・ヴァンガード!『ドラゴニック・オーバーロード』!」

 

当然ながら、ファイトは互いに『PSYクオリア』と『超越者への祝福(ストライダー・ギフト)』を使用して行っている。

超越者への祝福(ストライダー・ギフト)』のことは一真も教えてもらっており、前よりも思いっきり『PSYクオリア』が使えると思うと気が楽になったと言っていた。

ポピパの五人はルールが分からないのでRoseliaの五人に教えて貰うが、彼ら二人が繰り広げるハイレベルな戦いを見て啞然とすることになる。

 

「(彼が行こうとする場所は、この二人と同じ場所……。でも)」

 

──焦らないで進めば、きっと大丈夫。紗夜は二人の勝負を見て、俊哉の方針を思い出す。

道のりの途中で迷ったり、悩んだりするかもしれないが、最後は進んで行けるはずだと信じてやることが自分にできることだと考えた。

 

「やはり、『エクスカルペイト』が動きを大きく縛ることになってしまっているな……。完全に外すとは行かないにしろ、これはオマケ程度にして他のユニットをメインにした方が良さそうだ」

 

「俺の場合は『レッドダイブ・グリフォン』と『ブルジュ』の組み合わせがミスマッチ気味だな……。不足しがちな『ソウル』を補えるタイミングが限定的だ」

 

一真の方は戦術が変わっていないことと一辺倒になりやすいデッキが災いし、貴之に終始対策された動きをされてしまっていたことに気づいた。

ただし、長期戦で条件さえ整えばケアは可能な為、貴之の『ヌーベルバーグ』を入れる入れない程極端な選択をしないで済むところは幸いであり、外すかどうかは最後に決めることができる。

一方で貴之は『フルアーマード・バスター』を採用したことによる難所に気づく。二ターン目で『ソウルブラスト』を多発する都合上『レッドダイブ・グリフォン』の使用が安定せず、『ブルジュ』も条件指定の影響で『ソウル』不足を補いづらかった。

これは『ソウルブラスト』の使用機会が増えているのが影響しており、『ソウル』確保を優先するなら他の方法を探ってもいいと思える。

 

「そっか……ああやって何度も考えて、やり直して……」

 

「ええ。貴之はそうやって上に進んで行くの……私たちと同じようにね」

 

どこでも上を目指す姿勢は同じ──。それを理解できる一日となった。




ここで9話……合同練習が全て終わった形になります。
変更点としては……

・会話をしているタイミングが休憩中では無く休憩前に
・Roselia側が明白に目標を伝えている
・紗夜の対応が全体的に丸くなる
・友希那がより強く歩み寄った姿勢を示す

主だった部分はこんな所でしょうか。友希那と紗夜が丸くなった結果、雰囲気が柔らかくなっていますね。

また、ポピパ側から見た貴之の印象はこのようになります

香澄……自分のヘアスタイルや方針も全て理解してくれる程の理解力を持り、己の好きを貫いて上を行った凄い人。友希那が技術で自分に憧れをくれたなら、彼は生き方で憧れをくれた。
ヴァンガードやってた先輩、すっごくキラキラしてましたよ!

たえ……ちゃんと話してはいないが、同じく幼馴染みがいる者同士。彼と友希那を見たおかげで、また会えると強く信じれるようになった。
レイ、元気にしてるかな?

りみ……とても前向きな人。自ら交流をどんどん作っていくのは自分にはできなそうなので凄いと思っている。また、同じく二つ上の姉がいるのでそれにはビックリ。
先輩のお姉さんってどんな人なんだろう?

沙綾……道を決めたらとことん突き進むことができ、迷っても折れはしない人。自分が友希那だったらきっと彼に甘えたくなるだろうと思う。
今後とも、やまぶきベーカリーをよろしくお願いします♪

有咲……恐ろしいまでの理解力を示す、相変わらずとんでもねー人。相手が嬉しくなるような言葉を掛けるのは無意識なんだろうけど、それはそれで凄い。
状況が状況とは言え、香澄がすいませんホントに……。

パーティー1では殆どフラットに等しい所から、更に彼の人となりを知った形になります。

次回はメインストーリー10話……ミニライブのところになります。

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