一旦ここで紗夜がヒロインの話しは区切りとして、次回から本編に戻っていきます。
ガルパピコ……まさかのこころ&ミッシェルでガイナ立ちをやるとは思わなんだ……(笑)。今週のビックリドッキリメカパロだったり、今回はメカ関連のあるアニメパロが多かったですね。
ヴァンガードifは今回も楽しい裏話を聞けて満足でした。宮野氏の「声優ですから」の下りには痺れる物がありました。来週はとうとう櫂が出てくるので、どうなるかが目を離せないところです。
互いが違うモノを選び始めたのは、初恋が影響だったことをよく覚えている。
「伸びて来たわね……髪、切りに行く?」
「うんっ、行くっ!」
「えっと、伸ばして見たいんだけど……ダメ?」
同じ日に生まれている為、髪を切りに行くタイミングは基本的に一緒になるのだが、母親のように伸ばして見たら彼が意識するかが気になり聞いてみた。
本音はコレだが、建て前的な理由を出すとすれば、双子故に誤認されることが多かったので、髪の長さが変わればそれも減るのではないかという理由がある。
それを聞けば妹は不思議そうに首を傾げるが、母親の方は二つの理由に気づいて優し気に笑った。
「でも、前髪まで伸ばしちゃうと暗い印象与えて良くないし……後ろは切らないで周りを整えてもらいましょう」
妹にも確認してみるが、彼女は動きやすい方がいいので切ることにした。
そうして互いの趣向が別れた次の週から誤認されることは減っていき、どちらがどっちかというのはしっかりと分かってもらえた。
「あれ?もう入るスペースないや……」
「こっちも残っていない……参ったわね」
幼馴染みと別れた後も姉妹仲は良く、別段同じ部屋でも気にしていなかったが、お互いに必要なものが部屋に入りきらないとなれば流石に話しが変わる。
仕方がないのでこれを父親に相談し、後日片方が今までの部屋に残り、もう片方がその隣の部屋を使うことになった。
「まあ、成長してるんだからそこは仕方ない……。部屋は違ったとしてもいつだって会えるんだし、そんなに気を落とすことは無いさ」
自分と同じ部屋でなくたったことを妹は残念がっていたが、父と同じ気持ちであった為どうにか慰める。
また、この数日後に進路を決めるのだが、この辺りから姉妹の好みの違いが明白に出てきた様な気がしていた。
「むむ……特待生があるんだ?あたし的には制服も気に入ったし、こっちを受けようかな?」
「制服で決めたのは一緒だけど、気に入ったのは別々だったみたいね?」
決めた理由は一緒だが、選んだ場所が違った。そんな偶然に二人して笑い、後はお互い頑張るだけとなった。
最初の頃は双子だからと拘っていた妹が、いつの間にかそれから離れているのに気付き、少しだけ寂しく思ったのは今でも内緒である。
「もしもだよ?あたしのやりたいことが、おねーちゃんと同じになったら……どうするの?」
「同じになったら、ね……」
中学生になってから少ししたある日。幼馴染みと自分がやりたいことを思い切ってやっている姿が楽しそうに見え、今日から探そうと考えた妹からの質問であった。
もし、自分が悩みを打ち明けなければ酷いことを言ったかも知れないが、今はそんなことにはなっていないので「もう決まっているわ」と、前置きを作る。
「同じになっても辞めたりはしない……簡単に負けるつもりは無いけど、抜かされても追いつく……いえ、追い返してやるんだから」
「それなら良かったよ……!ありがとう、おねーちゃんっ!」
これは決して才を理由に投げ出しはせず、大切な妹を一人寂しい場所に残して行きはしないと言う、彼女の宣誓でもあった。
* * *
「ん……んん……?」
貴之の全国大会出場を決める地方大会が終わった翌日──。夢から醒めた紗夜は体を起こしながら一度大きな欠伸をし、目元を軽くこすって眠気を取り払う。
「(懐かしい夢を見たわね……)」
こんな夢を見たのは昨日の大会もあるかも知れないが、一番の理由は他にある。
「(本当に、同じ道になるなんてね)」
昨日見せてもらったポスターがあり、それは日菜の入っているチームがバンドのライブをすると言う告知のもので、これは彼女がギターを始めたことを表している。
チーム名は
彼女らは『アイドルバンド』という、言わば『バンドをするアイドル』で売り出していくつもりであり、そこに入った日菜もアイドルとして扱われることになる。
それを聞いた紗夜は「バンドをするんじゃなかったの?」と聞いてみたが、「バンドはやるよ?面白そうだったからここを受けたし……」と興味本位に近いことが判明した。
別にダメと言うつもりは起こらなかったが、今度は彼女がアイドルとしてしっかりした対応をできるかと言う心配事が発生する。
というのも、彼女は自分の感性に従うことが多いタイプなので、そこが理由で楚々の無いことをやってしまわないか、自分が教えた方が良いだろうかとどうしても考えてしまう。
「いえ……本当に必要なら、自分から聞きにくるでしょう」
彼女は自分の感性に従うと大体成功しているのを知っているので、深く考え過ぎないようにした。
それよりも大事なのは、遂に日菜の考えていた『思いっきりやってみたいものが被った』ことにあり、夢で思い出されたように自分の誓いが試されるだろう。
「なら、やってやるだけよ……!」
すぐ近くにいる競合相手を、心のどこかで待っていたのかもしれないわね──。改めて意を決した彼女は、一先ず練習のこともあるのでシャワーを浴びに着替えを持って部屋を後にする。
その後はギターの状態を確認した後、練習前に楽器屋へ行くべく早めに家を出た。
* * *
「悪いな。わざわざ呼んで……」
「僕は大丈夫だよ。というか、竜馬以外は問題無いんじゃないかな?」
紗夜が決心してからおよそ二時間後──。喫茶店で貴之ら小学生時代から付き合いのある四人は集まっていた。
貴之の問いに答えた緑色の髪を持った少年──
「俺がいてもいいのか?弘人や大介はともかく、俺は試合残ってるぜ?」
「まあ普通なら問題大アリかも知れねぇけど、今回は何も言わない方がよくねぇって思ったからな……」
貴之がこの三人を呼んだのはヴァンガードのデッキ構築に関する話しであり、貴之と同じく全国大会への出場が決まった竜馬は再び彼と対戦する可能性を否定できない。
地方大会の結果としては、貴之が決勝戦で一真の隠し玉である『エクスカルペイト・ザ・ブラスター』へ対応が追いつかず惜敗。大介は全国大会の切符を掛けたベスト16決定戦で貴之の隠し玉の『ボーテックス・ドラゴン』による奇襲を受け惜敗。竜馬は準決勝で貴之に猛攻を耐えきられ、返しの『ドラゴニック・ウォーターフォウル』を防げず敗北。弘人は一真と二回戦で戦い、連撃を耐えられた後『アルフレッド』と『ブラスター・ブレード』のコンボを前に敗北となる。
「実は、全国大会に向けたデッキ構築のパターンを二つ考えててな……お前らの反応次第で片方を
「……そんなにヤバイやつなのか?」
竜馬の問いに、貴之は静かに頷いて肯定を示す。
焦りはしたものの、却下するのは話しを聞いてからでも遅くないので、一先ず聞いてからと言う判断を三人揃って下す。
「取り敢えず、その捨てるかも知れない方を聞こうか……。もう片方は、その後でいい」
竜馬がわざわざ聞く必要も無くなるので、大介の選択には反対しない。
ならばと腹を括った貴之は、「一応、昨日の段階で紗夜には話したんだが……」と告げながら、反応次第で取消を決めていたデッキの軸となるユニットを公開する。
『……!』
「まあ、そうなるよな……」
三人が強張ったのも無理はないと貴之は思った。何しろこのユニットは制御するのに当たってリスクが大きすぎ、まともに使えたファイターが極めて少ないのだ。
長い時間ここにいた竜馬たちはおろか、遠征を重ねて色んなファイターと戦った貴之ですらそれを見なかったのである。
「そうか……。ヤバイやつってのは、コイツだったのか」
「ああ。こんなの話さずに使ったら、お前らキレるだろうし……特に竜馬は俺をブン殴る可能性があるしな」
三人は誰も反対をしない。紗夜に『一人では……』と言う価値観を分け合ったこの男が一人よがりの真似をしようものなら、竜馬は殴る自信しか無いだろう。
少し考えたら後、竜馬は自分の結論を口にする。
「俺には今、三つの答えがある……」
『……三つ?』
その結論の前置きに疑問を抱く三人だが、すぐに納得のいく答えが帰ってきた。
「まあまず、一ファイターとしては賛成だ。壁をブチ破って進むっつうのは、新しい可能性の証明にもなるからな……。んで次に、ダチとしては反対だ。過程で何が起こるか分からねぇ以上、後遺症でも起こされたんじゃ世話ねぇからな……」
竜馬の言いたいことはよく分かる。成功すればファイターたちに影響を与えるが、大抵の人が一回目の使用で挫折して諦めてしまうことから未知数であり、何が起こるか分からない状況が出来上がってしまっている。
これに関しては弘人も大介も同じだったらしく、二人揃って首を縦に振って自分たちもそうだと貴之に告げる。
「最後に三つ目。これは俺個人としてだが……お前がどうしたいかで決めるべきだ」
「……えっ?おいちょっと待て。ここ来て最後に自由意志になるのか?」
「確かに、貴之が誰かにこうしろって言われて納得しないだろうからね……」
「一般生活ならまだしも、ヴァンガード関係になるともうな……」
こうなるのはもう分かっていたので、大介と弘人でやれやれと言った様子を見せる。
「まあ、確かにお前らの言う通りだな……」
「そう言うことだ。流石に対戦相手だから手伝えねぇけど、使う使わないはちゃんと話してくれたならいいんだ。ただ、使うなら無事に成功させて帰って来いよ?」
「……ああ。ありがとうな」
親友たちに背を押された貴之は、そのユニットを使用する決意を固め、この後早速デッキを構築するのであった。
「(一真……お前があいつにできる範囲の救いは全部出来てる)」
──後は俺に任せろ。一真に勝つこともそうだが、まずは一人の少女を救う為にこのデッキは使われるだろう。
* * *
「(……取り敢えず、無理に変える必要は無さそうね)」
貴之が竜馬たちに打ち明け、デッキ構築を始めるよりも少し前──。紗夜は楽器屋でギターの弦を見ていた。
弦を変えてみようかと言う選択肢もあったが、コンテストが近いので無理に変えるのは却って危険であることから、一先ず今回は保留にし、普段使っているものを買い物籠に入れる。
練習があるから当然ではあるが、後々家まで取りに戻らなくても良いようにと予めギターは持って来てある。
友希那と考案した課題を三人がしっかりと達成できているかを確認する日でもあるので、今日の練習は皆気合いを入れているだろうことは明らかだった。
「(どうなっているかしら……?)」
「おっ、久しぶりだね紗夜ちゃん」
気になっている際に、この店の店主である男性から声を掛けられる。
度々世話になっているこの店だが、テスト期間に入って以来一度も来ていなかったので、紗夜は久しぶりの入店だった。
「この間のライブ凄かったらしいね!」
――ほら、写真載ってるよ!と彼は携帯電話を操作してその記事を見せてくれる。友希那の影響が強いのもあるが、注目されているのは確かだ。
確かに、カメラを持っている人が何人か来ていたなと思い返していた紗夜は、ちらりと彼の背後にあったポスターに気付く。
貼られているポスターが昨日も日菜に見せて貰ったものと同じだったので、思わず困った笑みを浮かべてしまう。それが原因で写真の写りが悪かったのかと心配されてしまい、理由を説明した。
それによって理由に気づいた彼がPastel*Papettesのことを説明してくれるが、既にそのメンバーにいる人から聞いてしまっている紗夜は新鮮味を感じられず申し訳ない気持ちになる。
「……ん?そう言えばこのギターの子、紗夜ちゃんに……」
「ええ、妹ですよ。双子の……ですが」
彼に別段悪気が無いのは分かる。姉妹で、しかも双子なのだからこういった反応はすぐに起こるのだ。
しかしながら紗夜自身これを苦には思っておらず、日菜がようやくやりたいことを見つけた方に喜びを感じている。
「なるほどね……通りで似てると思ったよ」
「そうですか?性格とかは似てもつかないのですが……」
「漂う雰囲気が似てると思わせてるのかもね……。紗夜ちゃんがこの子と同じ格好したら言われるかもしれないよ?」
「えっ!?わ、私がこんなフリフリした格好しても似合いませんよ……!」
店主の提案に、紗夜は顔を真っ赤にしながら慌てて否定する。仮にやったとしても恥ずかしさが勝ってしまいどうしようもないだろう。
以前貴之には『好む服装が一部似てるし、お互いが似た格好をすると知らない人も双子って気付くかも』と言われたことがあったので、もしかしたらそうなのかも知れない。
姉妹仲がいいことは喜ばしいことであり、その関係を大切にするよう店主に勧められ、紗夜は迷うことなく頷いた。
「あっ……!もうこんな時間!?すみません、練習があるのでそろそろ行きますね!」
「うん。頑張るんだよ」
すっかり話し込んでしまっていたことに気づいた紗夜は、店主に一礼してライブハウスへ向かう。
ライブハウスに到着したのは練習開始五分前であり、彼女もそんなことがあるんだと知り、少しだけリサに弄られた。
「あっ、紗夜。このポスターなんだけどさ……」
「すみません今井さん……。お気持ちは分かるのですが……実は私、それを見るの三度目なんです」
なお、練習の休憩時間で紗夜に店で見たポスターを見せられ、反応に困ってしまったことを記しておく。
別に怒っているわけではないのだが、リサの罪悪感ある表情を見て、次は言い方を気を付けようと意識するのであった。
* * *
「紗夜、燐子、これってもう見た?」
貴之がとあるユニットの使用を決断した翌日──。放課後の教室で、紗夜と燐子は希美に一つの電子画面を見せられる。
それはこの前自分たちがファーストライブを行った時のものだった。
「ああ……テスト期間直前に行ったライブの時のものですね?内容は『孤高の
「どう?実際に組みたいって思った人たちと一緒に演奏して」
「ええ。とてもいいものだったわ」
紗夜の肯定は燐子も同じだったらしく、満面の笑みと一緒に頷いていた。
燐子が同じチームに入ったことを機に、元より紗夜と仲の良かった希美を引き合わせて見たところ、燐子と希美が仲良くなるまでに時間は要さなかった。
以後、こうして学校内では三人と場合によってはその他友人たちがと言う構図が出来上がり、燐子の交流範囲は一気に広くなったと言える。
なお、友人たちは燐子のスタイルを見て羨んでいるが、燐子自身は『異性を引き付けるなら中身や、当人たちの間にあった出来事が大切』だと紗夜と貴之の関係を通して感じている。
「あっ、そう言えば二人とも。今気づいたんだけどさ……」
「……?どこか、写りの悪い場所がありましたか?」
「いや、そっち自体は問題無いんだ。このベースをやってる子なんだけど……」
「……今井さんが?ああ、希美の言いたいことは分かったわ」
全員の格好を見て、リサがどうしてもと言うことになってしまっているのだ。
希美のおかげで気づいた二人は、思わず顔を見合わせる。
「今日、話してみますか?」
「そうですね……後で、タイミングを見て切り出しましょう」
「何かいい案出るといいね?」
今日はこの後記事に載った記念としてのお茶会があるので、その時に切り出してみることを決めた。
時間にも余裕があるので、一度着替えに行くのも兼ねて紗夜と燐子は教室を後にするのであった。
* * *
「湊さんだけ来れませんでしたね……」
「予定があったとは言え、五人が揃わなかったのはちょっと寂しいですね」
花女でRoseliaの話しがあってから数十分後。友希那を省いたRoseliaの四人は羽沢珈琲店で練習の一休みとして、一度お茶会をしようという話しが出ていた。提案者はあこである。少し遅めの時間から始めることにしていたため、全員が着替えてから来ている。
リサはこう言ったことを好む傾向があり、燐子もそれなりの人数で話す機会を得られるからと参加。紗夜もチームの距離感を縮められるいい機会と考えて参加を決めた。
友希那だけは『予定が入ってしまっている』と断っていたが、恐らくは無理矢理にでも断ったのかも知れないと、貴之と共に友希那の危うさを認識している紗夜は考えている。
「……そういえばさ、三人とも。雑誌見て……どう思った?」
「あっ、えっと……えーっと」
リサに問われて、あこは何かそれっぽい感想を探そうとする。
今回のお茶会は雑誌掲示を記念したものになっているため、この話題を避けて通ることはできないだろう。
ならばと、紗夜は答えるよりも前にリサに確認することを選んだ。
「今井さん、一つ確認ですが……当たり障りのない回答が欲しいですか?それとも、思い切った回答が欲しいですか?」
「す、鋭いね紗夜……。うん、アタシは思い切ったのが欲しいから、遠慮しないでいいよ!」
「だそうですよ?宇田川さん」
「あ、ありがとうございます……」
リサ自身が確認したいことだったらしいので、あこは「じゃあ……言うけど……」と前置きを作る。
「リサ姉だけ、ギャルっぽくて浮いてる……」
「……うぅっ!やっぱり友達が言ってた通りかぁ~……」
リサだけ明らかに場違いの強い容姿をしていることが仇となっていた。
これをクラスの友人にも言われたリサは、ここでも言われたことで嫌でも自覚することになって頭を抱えて落ち込んだ様子を見せる。
「ああ……!で、でもでも……ほらっ!紗夜さんも演奏はあんななのに普段は『優しいお姉ちゃん』って感じだし……なっ、なんて言うかさ……!」
「なるほど……どうやら、私は切り替えれば印象が変わるようですね」
「え、えっと……一言で言うなら何がいいんだろ?」
紗夜は平常時とライブの時では纏っている雰囲気が違う。これは確かに全員が感じていることであった。
また、紗夜自身はあこの評価が少し嬉しくなってしまったが、後々彼女の姉が嘆きそうなので余り言い過ぎないように言っておこうと考える。
「あこちゃんが言いたいのは、統一感が無い……ってことなんです」
「あぁ……統一感かぁ~。Roseliaに何か足りないと思ってたんだよねぇ~」
「確かに……私たちは技術を最優先という方針で集まったチームですから、統一感は不足していますね」
性格を筆頭に、Roseliaのメンバーは様々な要素がバラけており、そこが統一感を損なわせていた。
――あっ、統一感って言ったら……リサはそのことに関して一つ思い出したことがある。
「燐子と友希那って、結構服の趣味似てない?二人ともモノトーンコーデだし……」
友希那と燐子は白と黒の二色を中心とした服装を好んでいることが共通していた。
それを言われて確かに……と三人は思った。
「(りんりん、嫌じゃないならだけど……)」
「(……?うん、そう言う事ならいいよ)」
思いついたあこは燐子に確認を取り、承諾を得たので話しを持ち掛けてみることにした。
「実はあこが今来てる服、りんりんのお手製なんですよ……」
「「……!?」」
その切り出しに紗夜とリサが驚いた。燐子があこの服装をハンドメイドできたと言うことは、この統一感の不足を解消できる手段を持っていることを意味する。
「だから、みんながよければステージ用の衣装を作ればいいんじゃないかなって……」
「うんうん♪アタシはいいと思うな~……紗夜は?」
「ええ、私もいいと思います。後で湊さんに確認を取りましょう」
反対意見が出ないまま全員が賛成となったので、ここからは衣装を作ること前提で話しを進めていく。
「大丈夫だった場合はサイズを測らないといけないので、場所があればいいんですけど……」
「次に全員で練習をする時、休憩時間中にしてしまうのがいいかもしれませんね」
ライブハウスの一室であれば周りをそこまで気にする必要は無いし、確実にできる。
確かに誰かの家に集まろうとして部屋の広さが足りない等の事態は避けられるので、良い提案だった。
流石にテスト期間の時とは訳が違うので、遠導家は除外となる。いくら何でも貴之の精神衛生面に悪い。
「じゃあ、アタシから友希那に伝えとくね♪」
サイズを測る場所等があっさり決まったことで、その後は雑談をしたのち家で自主練習という話になって、一回目のお茶会は解散となった。
彼女が帰ってくるタイミングで伝えればいいので、リサも一度家に戻って練習をすることにした。
* * *
「――♪」
時間は貴之がとあるユニットを使用後の眠りから覚めた直後になる。友希那はライブハウスの一室で自主練習をしていた。今日は時間が迫っているのでこれ以上続けることはできず、今歌っているのが最後になる。
本当ならば彼女もお茶会に参加しても良かったのだが、そんな気分にはなれなかった為、一人練習することを選んだ。
一曲を歌い終わった友希那は肩の力を抜いて、一息ついた。
「(私……どうしたいのかしら?)」
最近、自分は妙に迷っていることが増えた気がする。友希那はそう感じていた。
父親の音楽を奪われて以来、認めさせる為ならどんな手段でも……と考えていたのに、今ではそうでない自分もいる。
大きな理由は二つあることは理解しており、頭に思い浮かべながら整理していく。
「一つは貴之君と紗夜……もう一つは、Roseliaのみんなで過ごしたあの一日……」
互いに支え合うことで折れる事なく進んで行く二人の姿は、自分にもそんな人がいて欲しいと思うようになるほどであった。
二つ目のRoseliaで過ごした一日とは、テスト期間での勉強を全員集まってどこか一日でやってしまおうと言う提案が出た時、あこが小百合に見てもらう話しが上がり、紗夜が貴之に掛け合って遠導家を使わせて貰ったのが事の始まりであった。
その時に父親が不在とは言え、遠導一家の家族で繋がると言う暖かさ。貴之と紗夜、小百合とあこを中心に伝わった誰かと一緒に過ごせる時間の楽しさ──。これらを知ったことにある。
紗夜たちと出会ってからの日々は、灰色のようになりかけていた景色へ色彩を取り戻すのに十分すぎる程の影響があり、それが今までの行動を振り返って苦悩させるのに大きく働いた。
「(話してしまえばきっと楽になる……けれど)」
──この話しを、Roseliaの四人には話せたものじゃない……。聞けばどうなるかが分かったものではなく、おいそれとそんな真似はできない。
となれば残された望みは数少なく、危険を承知でもまだ話せるのは貴之一人だけとなっていた。
出会った当時から自分の中にある物へある程度察しを付けているので、まだ聞いてくれるかも知れないと言う微かな望みを抱きながら荷物を纏め終え、自分の使っているスタジオが開いたことを受付の女性に伝える。
「お疲れ友希那ちゃん。今日は個人練かな?」
――最近特に頑張ってるね。と柔らかな声で労いの言葉を掛けてくれる。一人でいる時は時折こうして話すことはあるのだが、色々考えていた今は気を紛らわせるからいつも以上にありがたかった。
「Roseliaの方はどう?」
「まだまだ理想のレベルには程遠いですが……
友希那の持つ理想の高さを知っていたとは言え、彼女から意外な言葉が出てきたので思わず目を丸くする。
また、答えた友希那自身も、こんな回答をする自分に戸惑いを覚えた。
「……どうかしたの?」
「い、いえ……」
どうしてこんなことを言いだしたのかが友希那には分からず、その答えが見つかるよりも前にスーツ姿の男性が目に留まった。
彼女の目線に気づいた友希那がそちらを振り向いたことで、男性は友希那に時間をもらえるかを問う。
「失礼ですが、どなたでしょうか?」
目の前の人に覚えが無い。その為友希那は一度確認を取る。
すると彼は友希那に名刺を渡して来た。そこから彼が音楽業界の事務所に所属している人であることが判明する。
「率直に伝えますが……友希那さん、うちの事務所に所属しませんか?」
「事務所には興味ありません」
――私は自分の音楽で認められたいから……。考え得る限り最悪のタイミングで来た話しはすぐに切り上げたかった。
その為それだけ言って立ち去ろうとしたところに、「待ってください!あなたは本物だ……!」と必死さある声に足を止められる。
言わせてから無言で立ち去ろうと考えたが、それは次の一言で封じられてしまう。
「私……いえ、私達なら……あなたの夢を叶えられる!一緒に、『FUTURE WORLD FES.』に出ましょう!」
「……!?」
まず一番に目指している内容が上げられたことで、流石に友希那も驚いた様子のまま反射的に振り向いた。
こうなってしまっては仕方がないので、話しだけは聞くことにして男性に続きを促す。
彼が言うには自分の二度目のライブの時に一度断られているが、諦めきれなくて調べたとのことだった。
ここまでは、「一方的に突き飛ばしていた時期かしら?」と思いながらまだ聞いていられた──と言うよりも、まだ内心も平静を保てていたが正しい。問題はこの先である。
「バンドにこだわっていることも知っています。だから……」
――あなたの為のメンバーも
受付の彼女も「メジャーデビューができるのでは……」と言っているし、父親の音楽を認めさせるならそれが近道なのではとも考えられる。
ただ、友希那はそう
「(これを呑んだ場合はお父さんの夢だったフェスに、バンドで出られる……。でも、呑み込んだらもう戻れない……)」
頭ではこれが一番の近道と考えているが、この方法は
さらに言えば、自分の心は引き返せ。この提案こそ一番突き飛ばさねばならないと警鐘を鳴らしており、自分の当初の目的を頭で思い出すも少しずつその目的を押し出して行っている。
──今すぐ逃げ出してしまいたい。濁流のようにせめぎ合う想いは、友希那が思考放棄を視野に入れたくなるのには十分すぎるものであった。
「そこに行って……私の望む景色はあるかしら?」
「勿論ですとも。その為にあなたと組む為の……」
「いえ、十分よ」
──あなたの言う景色は、とても寂しいものだと分かったから。話しを強引に切り上げられる糸口を見つけた友希那はそれを逃さずに言い切り、相手が答えるよりも早く出入口を通り抜けて行く。
今回はこうして切り上げられたからいいのだが、これで全てが終わったわけでもない。
完全に諦めるしかないと言う状況を作っていないので、また話しを持ちかけられてもおかしくないし、組んでからある程度時間が経っているのに依然として迷っている自分がいるのもどうなんだと思う。
以前までであれば何も迷うことなく選べたのかも知れない。ただ、今となっては四人が悲しんだり、怒ったりする顔は簡単に想像できるし、父親も今以上に辛そうな顔をしそうに思えた。
頭ではこれが正しいと考えていても、心はそう思っていない。そんな二律背反の状況が友希那に恐怖感を煽る。
「(お願い……!誰か……)」
──誰か助けて……!そんな祈りが届いたのかは分からないが、誰かとぶつかって倒れそうになり、その手前で自分とぶつかったであろう人に体を支えられることで難を逃れる。
「悪い、大丈夫……って、友希那?今日はお茶会じゃなかったのか?」
「あっ……貴之……君……?」
ぶつかった主はまさかの先導者であり、この状況では唯一話しができる人でもあった。
──と、言いたいところでもあったが、貴之は何やら疲労している様子が見えている。
一度気を紛らわすべく理由を聞いたら、これは「竜馬たちとの約束を果たす為の無茶」と答えた。
何でも使おうとしているユニットがまともに取り扱えるものではないらしく、それを無事に完成させるそうだ。
地方大会は小百合共々Roselia全員で見せてもらっており、決勝での惜敗を振り返って全国大会では何としても勝ちたいと言う意志が伺える。
「友希那……何かあったのか?」
「えっ……?」
話しを切り上げて自分の話しを持ちかけてきたので、友希那は思わず硬直する。
「だって、今にも泣きそうな顔してるぜ?」
「あ……!」
貴之に教えてもらったことで、自分がさっきまで何をしていたかを思い出した。
「えっと……その……」
慌てて取り繕うとしたが、もうそれができない位に平静さを失っている自分がいる事にはすぐ気づいた。
本当なら話したいと思っているが、今までのことから反射的に言い訳を探そうとする自分の両肩に、貴之の両手が優しく乗せられる。
「いいんだ。もう、抱え込まなくていい」
「っ……」
──お前は一人ぼっちなんかじゃないだろ?貴之の言葉は、友希那の中にあった孤独感を引き剝がすのには十分なものを持っていた。
共に上を目指せる人たち、その人たちの支えや後押しをした貴之。そして周りの人たち。気がつけば自分の周りには繋がりが増えていたことに気付く。
それを悪いものとは思っておらず、捨てたくないと思っている自分がいることを自覚した友希那は、無意識に貴之の胸へと飛び込んでいた。
対する貴之は大した混乱も見せず、先を促してくれたので今日起きたことと、それによって自分がどうなっているかを素直に話した。
「いきなりこんなこと話すのが、おこがましいことだって言うのは分かっているの……。でも、私……もうどうすればいいか分からないの……!どれだけ考えても、答えが出てこない……!」
「(こんな小さな肩に抱え込んじまって……大変だったよな)」
自分にとっての幸福は紗夜と言うすぐそばに支え合える人がいたことで、それがいなかった友希那は色んな意味で間が悪かったと言える。
リサは自分から見る紗夜になれたかも知れなかったが、当時は届かなかったようで、そのまま進んだことが今になって尾を引いてしまったのだ。
だが、こうして尾を引いているのは彼女がまだ戻って来れる証拠でもあり、自分の促しに乗った以上、その気があることも示してくれている。
「わがままだって言われてもいいっ!今回限りだけでもいいから……!お願いっ、私を助けて……!」
泣きながら助けを求める友希那は、並みの人では届かぬ場所にいる歌姫などでは無く、今後のことに怯える一人の少女にしか見えなかった。
前置きに関しては、もしかしたら拒否されてしまうかも知れないと言う恐怖感から来ていると思うが、貴之にそんなことをするつもりは無い。
やっと来たその糸口を逃す理由も無いし、何よりこんなことを話されたら放って置けない。その為、貴之は片手で彼女の頭を優しく撫でることで一度落ち着かせることを選んだ。
「……えっ?」
「拒否なんかしねぇよ……寧ろ、やっと話してくれたな」
整理が追い付かないでいる友希那だが、貴之からすれば紗夜たちが作ってくれた道筋であり、ここを逃すことは彼女らに申し訳が立たないし、何よりも自分の性に合わない。
そして、拒否されていないことで戸惑っているのなら、友希那が話してもいいように誘導してやるだけだった。
「俺は……いや、
「あ……っ……あぁ……っ!」
最後の鎖を砕いたことで、友希那は声を上げ、崩れ落ちるように泣き出した。
泣いている間は懺悔するような言葉が多かったので、貴之は優しい言葉で赦しながら、彼女が落ち着くまで待ってやる。
「頭で考えてもダメなら、心に従っちまうのも一つの手だ。俺のヴァンガードでのスタイルも、最後は心に従ってる」
「心に……?そうね。そうしようとは思わなかったわ……」
落ち着いた後に友希那から話しを聞かせて貰った貴之は友希那にアドバイスを送り、これが彼女に盲点だったことを気づかせてくれた。
時間は短いかも知れないが、今からでも間に合うことなので、友希那は残された時間で実践し、最後の決断することを決める。
「今さらかも知れないけれど……その、制服のことは……」
「ああ……シャツ一枚くらい、どうってことねぇよ。困ってる人助けられるんなら安いさ」
シャツ一枚は金さえあればいいが、心を救うことは金ではできない。だからこそ、貴之は制服がシワだらけになることを厭わない。
──いつか自分のような人が現れたら、その時は自分がこうする番ね。非常に気が楽になった友希那は、普段の自分では考えられないことを決意していた。
「わざわざごめんなさい。そろそろ行くわね」
「ああ。って、そう言う顔してれば親しみやすくなると思うぜ?」
「な……もうっ!それは余計なお世話よ!」
──思えば、こうして顔真っ赤にした友希那は始めて見たかもな……。頬を朱色に染めたことはあっても、ここまでは始めてだった。
きっと同じことを考えていたのだろう。二人して盛大に笑った。
いい加減時間も時間なので、途中まで友希那を送って今度こそ分かれることになる。
「(貴之君……あなたはどうか、私のようにはならないで……そのままの道を進んで)」
「(友希那……紗夜やリサ、みんなの声もお前の道選びの指標になる……聞き逃さず、戻って来いよ)」
帰り道の途中、互いのことを考えていたのはついぞや知らぬままであった。
友希那が貴之に助けを求め、それを承諾されたところでこの話しを一度区切ります。
紗夜が日菜との能力差で苦悩していないので、見ている夢の内容が思いっきり変わり、本編ではこうして苦悩するようになったと言うのが、こちらでは双子が違う道を選んでいく様になりました。
また、こちらの貴之は先に小学生時代から仲のいい人たちにユニットの使用を話しています。
友希那はこちらでもスカウトに否定的ですが、呆れ帰りではなく逃げたい一身で無理矢理振り切った形となります。
次回からは本編に戻り、Roseliaメンバーでのファイトイベントをやっていこうと思います。本編を待っていた方は長らくお待たせしました。
ここからはこの話しで明かせなかった内容の一部や、本編との違いを書いていきます。
前回同様に長くなると思います。
燐子の人間関係
・紗夜、希美を中心に花女で複数人の話し相手が増える
・貴之のことは明確に恩人として認識されており、誤認されていない
・以前話し合いに混ざった巴と小百合の縁から、羽丘生にも少し知人ができる
小百合のその後
・紗夜やあこと言った、身近な人がヴァンガードに触ったのもあり、貴之に大会が終わったら教えて貰いたいと頼み、承諾される
・その時に選んだ『クラン』は『ロイヤルパラディン』で『ブラスター・ブレード』が軸と言う、貴之との縁が非常に強いもの。理由は『兄のファイトを見ている中で、一番印象に残っていた』のと、『バランスがよくて扱いやすく、初心者にもオススメされる』から
・あことの縁もあって、時々ゲームで遊ぶようになり、大半のゲームでオールマイティに対応ができるバランス型のプレイスタイルや、キャラクター選択を行う
貴之が使おうとしていたユニットと、もう一つのデッキ構築プラン等
・本編と同じく『超越龍 ドラゴニック・ヌーベルバーグ』。紗夜と乗り越えた経験上、本編とは違って最初から打ち明けている
・この為竜馬だけは対抗策で先手必勝を心構えていたが、そもそも『パーフェクト・ライザー』を軸としたデッキでは6ターン以内で決着を着けることが多いので、そんなに深くは考えなかった
・これを却下された場合は、自分の原点に立ち返り『ドラゴニック・オーバーロード』の運用に特化したデッキ構築を考えていた。切り札は『ドラゴニック・オーバーロード・ザ・グレート』
一真が救おうとしていた相手
・秋山結衣。彼女は『PSYクオリア』能力者が、何も能力を持たない一ファイターに撃ち破られる光景を望んでいた為、貴之へ託すこととなった
・ただそれでも、真の尽力は全てが意味あるものであり、互いの距離を縮めることと、結衣の悩みの大半を解決するには十分すぎる働きをしている
遠導家でのテスト勉強と一時
・貴之が割とできるので、紗夜に確認をしてもらった後は二人して友希那とリサを教えていく形になった
・この時の担当は貴之がリサ、紗夜が友希那。ここでの一時と地方大会で、貴之はリサの心を完全に射止めてしまった
・あこは小百合と燐子の二人で教えて合っていたので燐子の負担が減り、燐子は貴之か紗夜とちょくちょく確認を取り合っていた
・この日料理は遠導一家+紗夜の四人で執り行わており、紗夜以外が貴之の料理の腕前にビックリ。貴之は本編同様、裕子教えのおかげでだったので誇らしげにしていた
・夕食後紗夜は遠導家に泊まらせて貰い、貴之と一時を過ごした
地方大会での出来事
・竜馬のおかげで貴之と一真が互いがいることを認識しており、再び地方から争い合う事に闘志を燃やしていた
・一真が悩みを解決済なので、玲奈が察して助けに行くイベントが無くなる。変わりに貴之とのファイトを楽しみにしている旨を話すくらいで留まる
・Roseliaメンバーは練習場所を確保できなかったことで来るのは同じだが、友希那だけは乗り気で無かったところをリサが強引に連れ込んだ。時期が合っているので小百合も来ている
・この時点で友希那がヴァンガードに関する知識がゼロだったので、皆で教えながら観ていくことになる
貴之の他人を助ける形
・本編は他の人が決定打を打てるきっかけを作るのに対し、こちらでは他人が作ったきっかけに決定打を打つことが多い
・これは『自分には時間があるものの、そのきっかけを作れるタイミングが少ない』為。本編と違い、一真が行動的だったり、友希那との縁が浅かったことも響いている
同じ人を好きになってしまった紗夜とリサ
・日菜に相談した時にその事実を知り、彼女の根回しで紗夜もそれを知る
・これに関して氷川姉妹は怒っている訳では無く、いずれ出てくるだろうとは考えていたので、その時が来たのかくらいであった
・二人の性格もあってマウントの取り合いになったりはせず、純粋な勝負に収まっている
・小学生時代から仲の良かった人と花女で仲の良い人が紗夜、友希那やあこを筆頭に、羽丘等で仲の良かった人がリサを応援する形を取っている
・二人に想われている兄を持つ小百合と、姉と友人の行く末を見守る日菜、貴之と縁があっても他の二人とはそうでもない一真は中立
大体こんな感じになります。ここまで読んでくれた方は最後までありがとうございます。