先導者と歌姫 -高みを目指して-   作:ブリガンディ

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これにてガルパメインストーリーが完結となります。思ったよりも早く終わりました。

今回は22話の入りきらなかった部分と+αです。

ガルパピコの新聞の記事は今まで放送されてた内容でしたね……。余談ですが、新聞紙で一般的なガラスを割る場合、880㎞/hで投げればいいらしいのですが……マシンとかでも無ければ厳しそうです(汗)。

ヴァンガードifも伊藤健太郎氏の乙女演技だったりで大変カオスなことになっていました……伊吹も久々にファイトが出来てご満悦で(笑)。とまあ、ギャグ面に触れても面白いのですが、アイチのことに触れだしたので話しが動きそうな予感もしてきました。


パーティー20 パーティーを終えて

「よし。これで片付けも終わり、と……」

 

イベント終了からおよそ一時間程。まりなやその他スタッフの人と共に片付けを行い、完了させていた。

これで貴之のバイトとしての仕事も全て終了と行ってもいい状態になり、強いて言えば最後の打ち上げに参加するくらいだった。

とは言え、それはほぼ仕事の内に入らないものである為、そこまで気にする程のものではない。

 

「本当にお疲れ様。でも、これで遠導君が暫くここで働かないってなるとちょっと寂しいかな……」

 

まりなの言葉は本音であり、貴之の順応力にはかなり助けられている。

同年代と比べて対人経験が多いのも手伝い、接客が非常に得意だったことを表すかのごとく利用してくれる人からはいい声が多かったのだ。

貴之は殆ど出だししか助けていないと思っているかも知れないが、その出だしの補助が成功に大きく貢献している。何事も最初が肝心とはよく言ったものである。

 

「既に行く道を決めてる人に無理を言う訳には行かないんだけどね……こっちとしては助かるからいて欲しいし、何とかならないかなぁ……」

 

「『ヴァンガード甲子園』事態は冬間近に開催ですし、早めに来るとしても年末でしょうね……」

 

時期が時期である為、こちらで再び働くには暫く時間がいることになるだろう。

何しろ『ヴァンガード甲子園』の開催が決定したことにより、中間試験が終わって少しすると『ヴァンガード甲子園』、その後少しすると期末試験と言う恐ろしい日程が出来上がっているのだ。こうなると終わってすぐは無理がある。

そうなれば仕方ないので、貴之の選択に委ねることとした。

 

「どうするかは自由だけど……戻ってくるのなら、ちゃんとやりきってからにして欲しいね」

 

「……オーナー?」

 

「(まあそうなるよな……)」

 

こちとら目の前で宣言しているのだから、それは守る必要がある。

振り返ってみれば、オーナーは非常に上機嫌であることがわかるくらい、表情が緩んでいた。この表情を見れる辺り、今回は誰から見ても大成功で間違いない。

 

「いいもの見せてもらったよ。やっぱり、あの子たちに任せるのは正解だったね」

 

ミニライブ終了直後のまりなが出した考えは、オーナー自身も推しており、それが実を結んだことで大いに満足していた。

自分がオーナーとして活動できる時間も短くなっているので、なおさら嬉しいのだろう。ここまで素直に称賛されれば、まりなも照れた様子でそれを受け取る。

また、貴之が『ヴァンガード甲子園』に出るという話しを依然聞いていたので、オーナーは忘れずに一言告げて置くことにする。

 

「アンタにはこの先また、新しく壁がぶつかるかも知れない……それを乗り越える時は、ちゃんと自分が納得行く方法を見つけるんだよ?そうじゃないとやりきったと言えないからね」

 

「はい。俺の為にありがとうございます」

 

何も壁が無く超えられるなんてはずは無いので、今のうちに言ってもらえるのは非常にありがたいことだった。

『ヴァンガード甲子園』は団体戦である以上、自分だけが強くても意味はないのだ。だからこそ、そうなった時に納得できる形を探すことは大事である。

頼られたら迷わず手伝うし、自分を助けてくれる人がいるなら素直に頼る。どうなるかは分からないが、まずはそこからだろうと貴之は考えた。

 

「今日はよくやってくれたよ。後は無理しないでしっかりと休んで、明日以降に差し支えないようにね」

 

オーナーの労いの言葉に皆で返事を返し、お疲れ様と言葉を送り合うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「ライブ、大成功だったね♪」

 

片付けも終えた直後、今回のイベントで演奏を行った25人とまりな、貴之の27人で打ち上げを行うことになった。

演奏側も見ていた側も同じ考えであることから、今回は正真正銘の大成功で間違いなしだろう。

 

「いや~……蘭が楽しそうにやってて何よりだよ~」

 

「アタシもだよ。友希那があれだけ思いっきり笑っててさ……ホント一安心♪」

 

「こっちも、こころがちゃんとやってるんでホッとしましたよ……」

 

「彩ちゃんも慌てたりしなかったから、私も嬉しかったわ」

 

「何だろう……私が香澄に対して考えてたのと似たようなコメントがずらりだ」

 

様々なバンドに一部の人に対する保護者的な存在はいるようで、有咲は既視感(デジャヴ)を感じる。

これには沙綾も苦笑するしかなく、他のところでも出てきそうだと思った。

 

「そう言えば遠導君、今までやってきてどうだった?」

 

「今までですか……最初はほぼ30人を前に黒一点とか、大丈夫なのか?って不安になりはしましたけど……」

 

この切り出しに関しては問いかけたまりなも、話しを聞く皆もしょうがないと思った。自分が逆の立場だったら気が気でない可能性があるからだ。

 

「でも、実際にやって見ればそんな人数差なんて気になりませんでしたし、俺が気になってたバンドやライブの様子。それができるまでの過程だったり、演奏する側の想いだったりを身をもって知れたのは一番大きな収穫だったと思います」

 

ここに来て良かったと、貴之は心からそう思えた。この言葉には演奏していた25人も安心であり、貴之に自分たちの演奏が確かに届いていることを教えてもらえた。

 

「さてさて……遅くなりすぎると大変だし、始めちゃおっか♪」

 

「じゃあ、香澄にお任せかな?」

 

「うん。香澄の提案のおかげだし」

 

有咲とたえが勧めれば他の人もうんうんと頷くので、香澄は慌てる。彼女自身は自分よりもその発想の貢献をしてくれた貴之の方が合っていると思ったからだ。

 

「いや、サッカーでいう所のパスしかしてない俺が、ウイニングシュート決めた戸山さんより合ってるはないと思うぞ?」

 

「だ、だって!それが無かったらできなかったかも知れないんですよ!?」

 

「気持ちは分からないでもないが……そもそも俺は今回、戸山さんたち25人のヴァンガードを支えるリアガードだったんだから、それをやるのはお門違いなんだよな……」

 

貴之がこれをやってしまったら出張りすぎになってしまうので、それは避けたいところだった。

もう一つ言ってしまうと、貴之は提案を出せても実行ができないので彼一人ではそもそもが詰みなのである。

 

「それに、ヒントをものにしてここまで持ってきたのは戸山さんなのだから、誇ってもいいはずよ?」

 

友希那の言葉に全員が同調し、今度こそ香澄がやるべきであることを知らせる。

こうなれば流石に香澄も腹を括り、「あんまり上手いこと言えないけど……」と前置きを作る。

 

「ライブイベント、お疲れ様でしたっ!と言うことで、今回の成功を祝して乾杯ーっ!」

 

シンプルだが、言いたいことがちゃんと分かる内容に同意して皆で乾杯の声を上げる。

そこからは皆で用意された軽食を食べたり、雑談したりの時間になる。

 

「遠導君、今回は本当にお疲れ様。おかげで助かっちゃったよ♪」

 

「いえ、これもまりなさんたちが教えてくれたおかげです」

 

25人がいろんな人たちと話している中、貴之は少し外に外れてまりなと会話することになる。

お互いが呼ばれたら行こうかくらいの考え方であったことと、最初から混じるのはどうなんだという考えが一致していた結果である。

 

「全国からヴァンガードをやってる人が集まるんだよね……会場はどこだか出てるの?」

 

「まだ出てませんけど……多分どこかのドームとかアリーナになるんじゃないかと思います」

 

名前で野球の方と同じく広い会場を使わせてもらうのだろうことは予想出来ている。

大きな違いとしては、こちらは芝生を足場にした会場になりそうなことと、会場のど真ん中でファイトすることになりそうなことだった。

貴之もそうだが、大会に出るほどのファイターたちは基本的に会場慣れしている為、変に緊張する可能性は低い。その為仲間内でそれを心配することは無いだろう。

 

「会うとしても来年になりそうだった相手とまた会えるって考えると、早速楽しみになってる俺がいるんです……」

 

「そこはもうヴァンガードファイターとしての性分……なのかな?」

 

まりなの確認に、貴之は頷いて肯定を返した。

貴之は他の地方でも交流を重ねたファイターがいるので、彼らと再会できる可能性を考えると嬉しさが勝るのだ。

ここからは再びデッキの調整や、強そうなファイターがどれだけいるかを確認する必要があるだろう。

 

「何か目標は決まってるの?」

 

「あそこで今度はグレード4を使わずに勝つ……これだけは絶対にしてます。自分のやったことに責任を取るって感じにもなるんですけど……」

 

──俺が納得する形でやりきるには、それが必要ですから。この事で誰かと衝突したとしても、貴之はこの考えだけは譲らないだろうと確信している。

自分が長年勝ち悩んで『ヌーベルバーグ』を使った結果が、今の『勝ち抜くためにはグレード4が必須になるのではないか?』と言う空気を作ってしまっているので、その流れを止めたいことと、やはり『オーバーロード』を使って勝ちたいことが重なった。

一真のように一度優勝をしてからだった場合は『更なるステップアップを目指した』で終わったのだが、こうなった以上貴之は『勝ち抜くためにグレード4が必須ではない』ことを伝える必要がある。

 

「頑張るのはいいけど、それを重荷にしちゃダメだよ?」

 

「そうですね……結構難しいことをやろうとしてるんで、気を付けます」

 

始める前から己に制約を掛けているので、そこを心配されるのは止む無い事だろう。

故に貴之もそれは素直に受け止める。誰かが気に掛けてくれるのはそれだけありがたいのだ。

そうなれば貴之も焦らずに進んで行こうと思えるし、気持ちをリセットすることができる。

 

「貴之~、今いい?」

 

「……ん?」

 

リサに呼ばれたので見てみると、そこには友希那、リサ、たえと少し変わった組み合わせで集まっていた。

特に断る理由も無いので、まりなに一言入れてそちらに足を運んで行く。

 

「こりゃ一体どういう組み合わせだ?」

 

「貴之、私たちとあなたは一度別れて、その後再会したのは覚えているわね?」

 

友希那の問いかけには頷くことで肯定を示す。

何故そんな話しを?と疑問に思わないわけではないが、その話しが出たことである程度察しが付いた。

 

「花園さんも一緒に過ごしてた幼馴染みがいる……ってことか」

 

「はい。一人、同年代の女の子が」

 

彼女曰く、貴之の経歴を聞いてその人のことを思い出していたそうだ。

それ故にどうしていたかを友希那たちから聞いていたらしく、離れた側の貴之からも話しを聞きたいそうだ。

 

「私にできること……何かあるのかなと思って」

 

「……なるほどな。俺みたいに離れた側だったなら戻れる提案が来たら乗っかるがあるけど、残る側だったらか……」

 

これは友希那たちの方が経験しているが、貴之はそうでない為憶測の域をでない可能性が高くなってしまう。

ちなみに二人の場合は信じて待つと言うのが結論だったらしく、友希那はその時の為に歌の技術を磨いていた。

参考人である友希那の立場として考えて見るが、貴之も同じ答えが出ることになる。

 

「やっぱり、その人を信じて待つ……それしかできないけど、それが一番だな」

 

「それしかできないけど一番……?」

 

少々困惑した状態で考えるが、確かに残る側が探しに行っても見つけられる保証は無いし、信じて待っている方が離れた側が戻って来た時に喜びを多く与えられることに気付く。

矛盾を孕んでいるように見える貴之の発言は最も的を得た言葉であり、整理できたたえは納得して頷く。

 

「ありがとうございます。信じてみます」

 

「うん。それが一番だよ♪」

 

たえは納得できたらしく、頭を下げながら礼を言って自分たちのところを離れる。

 

「考えもしなかった共通点だな……」

 

「確かに、話してみると見つかるんだねぇ」

 

「私たちと話したことが、少しでも助けになればいいけれど……」

 

この後たえから聞いた話しを教えてもらったところ、どうやらその幼馴染みとは別れ際に『一緒にバンドをやろう』と約束していたらしい。

どれくらいの期間をやるまでは決めていなかったようなので、最低限一回でも出来ればいいのではないかと考えるが、そこは彼女らの匙加減が出てくるだろう。

また、その時考えられるのはたえがポピパとその幼馴染みのいるチーム、二つの内どちらかに決めなければならないタイミングが来る可能性があるので、その時は彼女の友人と幼馴染みの間にある信頼が試されそうだ。

 

「目先の目標、決まったのよね?」

 

「ああ。と言っても、メンバー探しが大変そうだが……」

 

「あはは……流石に、貴之たち程勝ち意識を強く持ってやってる人はそう多くないもんね」

 

見つかったのはいいが、早速最大の問題点が待っていた。

夏休みに入ってしまったので、実際のメンバー探しは休み明けからになるが、そもそも他の人たちに遠慮されそうな危惧が強い。

これは友希那たちがメンバー探しをしていた時と同じで、他の人たちが『足を引っ張りそうだから』と躊躇ってしまうのだ。この辺りが長年の努力を積み重ねた証拠と弊害だった。

 

「私たちの時とは違って、学校内で探すのだから手伝えないのよね……」

 

「そこだよねぇ~……アタシたちの時は他校の人も大丈夫だったし」

 

今回のメンバー探しはかなり難易度が高いことになるのが予想された。この時友希那とリサが歯がゆく感じたのは、以前にかなり手伝ってもらったからに他ならない。

片や相手側のチーム結成に関して大いに貢献したのだが、もう片方はチームメンバー集めの手伝いがほぼできない。それは結構辛いものがある。

 

「まあ、手伝えそうだったらでいいさ……運が良ければ何もせずに来てくれるかも知れねぇから」

 

先程遠慮する可能性があることを言ったが、それと同時に『一緒に戦いたい』と願ってくる可能性も考えられるのだ。

結局のところ天に身を任せながら自分たちも頑張って探すしかなく、場合によっては手伝いあるなしでもあまり変わらなそうでもある。

 

「後はデッキだな……『グレート』を軸のまま改良していくか、それとも別のを軸にするのか……」

 

「今、お取込み中かしら?」

 

思考の海に入りそうになっていた貴之は、声を掛けられたことでそれを脱して聞こえた方へ振り向く。

そこにいたのは千聖で、別に大丈夫なことを告げる。友希那も千聖と少し話してみたいと考えていたので、混ざってもいいかを考える。

──ねぇ、何ですぐにそうするの?と、リサが問いかけようとしたところに、誰かが彼女の肩を掴んだ。

 

「湊さん、貴之君。こちらの行き遅れ予備軍の方を連れて行きましょうか?」

 

「えっ?紗夜?ちょっと待って……行き遅れ予備軍って何!?」

 

その本人は紗夜で、どうやら千聖や貴之のことを気遣ってリサの引き剝がしを考えていたそうだ。

友希那は大丈夫だとしても、リサが毎回毎回貴之に例の目を向けていたら気が重くなってしまうので、たまには何も気にせず話すのもいいだろう──。と言うのが紗夜の考えである。

 

「そうね……私も彼女と話して見たかったし、お願いしてもいいかしら?」

 

「あ、あれ?友希那がすっごい乗り気なんだけど……?」

 

「では、決まりですね?」

 

──お二人もいいですか?紗夜が何で問いかけたのかと思えば、隣にあこと燐子(協力者二人)が控えていた。

部活ではダンス部とテニス部を掛け持ちしている建前、体力等にはそこそこ自信のあるリサだったが、流石に三人には勝てないだろうと考える。

 

「じゃあ、リサ姉はあこたちと向こうに行こーっ!」

 

「友希那さん、貴之君。白鷺さんとごゆっくり」

 

一先ず千聖ら三人が話し終えるまでの間リサを抑えられればいいので、その時が来れば彼女を解放する算段である。

こうしてリサが抗議の声を上げるも、成す術無く三人に連行されて引き離されていくのであった。

ちなみにこの後話している間も、リサがそちらの様子を気にする度に三人──中でも特に紗夜がその行動を取る度に行き遅れになりたいかを煽って止めにかかっていたことを記しておく。

 

「えっと……あれは放っておいて大丈夫なのかしら?」

 

「まあ、あれはリサもリサだし……大丈夫よ」

 

「(そういや、俊哉が紗夜と結託してたんだっけ……?)」

 

頼んだ身ではあるが、結構な強硬手段だったことに千聖も少々困惑気味である。

リサがああいう問いかけや目の向け方をするのが、最初の数回程であれば友希那も止めに入ったかも知れないが、貴之が事あるごとに何回も向けられている為に今回はスルーを選んだ。

また、貴之だけは俊哉から連絡でこれからそうするかも知れないと言う旨を聞いており、このまま玲奈が加わったら凄いことになりそうだとも思っていた。

 

「まああっちは暫く任せておくとして……どんな話しをしようとしてたんだ?」

 

「二人は幼馴染みだったのよね?昔と今で変わったところとか、少し聞いてみたかったの」

 

「なるほど……リサはあまり変わっていないけれど、私と貴之は結構変わったかしら?」

 

リサは出会った当時から明るめな性格は変っていないし、何かと気遣いできる優しさもそのままである。

対する友希那は内気だったのが収まり、大人しめながらも音楽には絶対の自信を持つ人になったし、貴之も特にこれと言った特徴もない普通の人から、諦めの二文字とはとことん無縁で非常に鋭敏な人になった。

また、貴之はヴァンガードを始めて以来、何かと頼られる機会が増えていったので、いい意味で最も変わったのは貴之だろう。変わり具合の多さなら、暴走時期から戻って来た友希那になる。

 

「ああ……最初の頃って言えば、友希那は結構……」

 

「だ、ダメっ!お願いだからその先は言わないで!」

 

「……それなら仕方ない。友希那がいいって言うまでお預けだな」

 

友治の陰に隠れることが多かったのを話そうとしたら、顔を真っ赤にしながら自分の方に両腕を伸ばして来るので流石にやめておいた。

何を言おうとしたのかが気にならないわけではない千聖だが、無理に聞けそうではないことを悟っているのでそれはしない。

 

「(彼……友希那ちゃんの慌て方を見てご満悦になっているわね)」

 

千聖は貴之の様子を見てそれを悟った。恐らく今後は狙ってやる可能性も出てくるだろう。

とは言え、友希那が気づかないか、気づいてもなおやり過ぎない範囲で赦すのなら構わないはずである。そう結論付け、深く追求しないことにした。

この話しを聞けない代わりか、貴之から『自分が先導者になる前』のことを教えてもらうことになった。

 

「俺は友希那の歌っていう先導が無ければ、そもそもヴァンガードを触れない可能性が極めて高かったんだ……。あそこが俺の人生で一番でけぇターニングポイントだったよ」

 

「……意外ね。遠導君のことだから、最初から自分で選んだのかと思っていたわ」

 

やはり昔を知っている身と知らない身では認識が変わるのだろう。今回は典型例だった。

それを知れて千聖は話して良かったと思えるが、昔話しは当然恥ずかしがる人も出てくるわけであり──。

 

「あの時の歌は大した技術も無いから、何度もぶり返されると恥ずかしいわ……」

 

「でも、それが無かったらこうしていることも無かったかも知れないし、この先何度も話すかもな……」

 

「それなら私もかしら?あなたが支えてくれたからこそ、こうしていられるのだから……」

 

「め、目の前で堂々とやるのね……?」

 

友希那が恥ずかしがったかと思えば、すぐ互いに惚気を出してきた。

だが、それだけ互いを大切に思っているし、ここまで長い年月を掛けたのならこっそりとしているのは性に合わなくなるのかもしれない。

いつか自分にもそんなが来るだろうか?そんなことを考えながら、千聖は自分の身の回りに幼少期と比べて結構変わった人がいることを思い出す。

 

「そう言えば薫も、昔はあんな感じじゃなくて、結構大人しかったわね……」

 

「本当?それは意外ね……」

 

「話すと分かることって、結構あるもんだな」

 

千聖曰く、幼少期の薫は今のように堂々としていなかったらしく、自分にちょっとした憧れを持っていたそうだ。

それと同時に、貴之は今でも彼女が千聖のことを信頼している様子を知っているので、それだけは忘れずに伝える。

どこで知ったかを聞けば、今日のパスパレの演奏開始前の時だったので、そこに居合わせた友希那も同じタイミングで知ったことを話す。

 

「ま、まさか……私がここへ急いでる間に……?」

 

その問いに頷くと、千聖が顔を真っ赤にして両手で覆うも、貴之は案の定全く動じなかった。

 

「あら、貴之は平気なのね?」

 

「俺にとっては友希那が一番だからな……友希那も、今の俺の立場だったらどうなると思う?」

 

「勿論、貴之と同じよ……私にとっても、あなたが一番だもの」

 

「(こ、この男……!本当にこれさえ無ければ良かったのに!)」

 

頭に血が上るのを感じながらも、自分がそうならないから彼もまた安全にいられると考えたら落ち着いた。

今、リサがこちらをかなり警戒しているからこそ、紗夜たちが引き離してくれたのだからこれ以上求めるのは高望みとも言える。

そもそも自分がそうなっていたら貴之は流石に拒否を示す可能性が高い。基本、日菜や巴のように兄弟姉妹がいなければ名前呼びをせず、更にはRoseliaと日菜を省いて全員にさん付け呼びなのも彼が『自分とそっちは距離がある』ことを教えようとしている証拠なのだから、その意志を無碍にするつもりにもなれない。

自分にとっての彼は、『時々話す異性の知人』でいい。しかもこちらの意志を尊重して話しをできる人なのだから、この距離感を続けられるだけ続ければ満足だった。

後はリサの警戒心を解けば友希那とも話せるのだろうか──?そんなことを考えながらちらりと貴之の方を見るが、非常に困った笑みと共に考える様子を見せる。どうやら彼でもまだ分からないらしい。

 

「ありがとう。色々話せて楽しかったわ」

 

「また今度、どこかで話せる時があるといいわね?」

 

そうして話し終えた後に別れると、ようやく解放されたのかリサが戻って来た。

 

「うぅ~……みんなして煽ってくる」

 

「まあ、半分は俺のせいでもあるんだが……」

 

「残り半分はリサ……あなたの自業自得ね」

 

確かに燐子の時だったり、冷たい当たり方をしない貴之は自覚をしていないわけではないが、リサも大分こちらに気を回しているのだ。これは仕方ないだろう。

 

「リサ、あなたも少し探してみたら?」

 

「そうだね……そうしようかな?うーん、でもなぁ~……」

 

「こりゃ、暫くダメそうだな」

 

変にこっちを気にするせいで紗夜たちが煽りに掛かったのだが、リサがこのままだとまだ続きそうであった。

 

「まあタイミング次第だし、変に考えすぎるのもいいわけじゃないんだけどな……」

 

「そうね。私たちの場合は本当に典型例だものね」

 

貴之と友希那の場合は本当に参考にならないだろう。ドラマの道なので本にしてみたらある程度読める内容になるかもしれないが、現実では参考にできる箇所が少なすぎる。

こうなるとリサも仕方ないと割り切り、タイミングがやってきたらその時と考えることにした。

 

「本当!?じゃあ、お姉さんにお礼言っておいてもらえる?」

 

「分かった。後で伝えておくよ」

 

その後ははぐみの家がやっている精肉店に小百合がよく寄っていることを話したり──。

 

「今思うと、気に掛けてくれる人って大事なんですね……」

 

「ええ。だから美竹さんも、いい友人たちを持ったと思うわ」

 

友希那と蘭が互いに身近な人の大切さを再確認したりして、打ち上げの時間を過ごしていく。

時間が来たら最後に皆で後片付けを済ませ、CiRCLを後にしていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「終わってみればあっという間だったな……」

 

「次行く時からあなたがいないことを考えたら、寂しくなってくるわ」

 

その日の夜。もうすぐで日が変わろうかというタイミングで貴之と友希那は同じベッドで顔を見合わせながら横になっていた。今回は貴之の部屋で、既に消灯を済ませた状態である。

友希那は貴之が待っていると考えるだけで普段以上に頑張れることが多かったので、早めに矯正することを意識している。これで支障をきたしていたら中々笑えない話しだ。

自分だけではなく、貴之も貴之で合理的な理由で友希那に会う為の理由付けに使える手段が減ったので困りものである。

 

「けれど、お互いがやることをやって、また胸を張って会えるようにするだけ……そうでしょう?」

 

「ああ。そう言うことだからなおさらやりきって終わらせたいところだ」

 

結局自分たちはすぐにやることが決まり、思想も大体同じ──。それを再確認して二人で笑う。

何気ないことでも二人で話し、気持ちを共有できるのはとても幸せなこと。そんな日がいつまでも続けばいいなと思った。

互いの気持ちも、考え方も知り合ったことで、後はそこへ向けて進むだけであることを結論付けた。

 

「明日から……は、流石に休みか」

 

「ええ。だから、動き出すのはその次からね……」

 

思い切ってライブをした後なのだから、流石にインターバルは挟むようだ。

それは同時に、目指す場所へ進むのは一息で走ることだけではない。()()()()()()()()()と友希那が考えられるようになった証拠でもある。

この先もそうして進んで行けばいいと考えを纏めたところで、友希那が口元を抑えながら欠伸(あくび)をする。流石に疲れの影響による眠気が勝ったようだ。

 

「……そろそろ寝るか。こうして話すのだって、明日にもできるんだし」

 

「そうね。一度そうしましょうか」

 

最後にお休みと声を掛けてから二人は目を閉じ、暫しの眠りにつく。

バンドに掛ける想いや、それぞれのチームによる方針や演奏など、今回のイベントは双方にとって大きな収穫で終わるのだった。




以上で本章が完結です。もっと時間かかりそうだな?と思っていたらそんなにかかりませんでした……(笑)。

今回の変更点はほぼほぼ無く、貴之らの会話シーン追加くらいです。

ちなみに会話相手が全員幼馴染み持ちです。はぐみとは唯一幼馴染み関係の話しをしていませんが、小百合が普段立ち寄っている関係もあるので仕方ない面はあります。

アンケートの方ありがとうございました。最初はアニメOVAが圧勝気味でしたが、最終的にすっごい僅差に……OVAが優位に立ってたのは展開のおかげか、ポピパも出てくるからか……どっちかなんだと考えています。

ともあれこれで今後の予定が決まり……

バンドリパック発売記念のファイト回

没案になった紗夜がヒロインの話し数話分

Roseliaメンバーによるファイトイベント

アニメ1期OVAの海イベント

イベントストーリー『Neo Fantasy Online -旅立ち-』

の順番を予定しております。今後も楽しんで頂けたら幸いです。

次回はバンドリパック発売記念のファイト回を書く予定です。今後ともよろしくお願いいたします。

本章完了後に読みたいのはどっちですか?どちらを書くかでNFOイベントを書く順番が変動します

  • アニメ1期OVAの海イベント
  • 夏にゆらめく水の国
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