静かに目を覚ませば、見慣れた自室ではなく全体的に白い部屋だった。 場所を確認しようとすれば、胸に鋭い痛みが走った。 それで、今までの自分がどういう状態だったかを思い出す。 あぁ、そう言えば油断して胸を貫かれたんだったな。 とっさになのはを突き飛ばし、身体をずらしたからよかったものの、そうでなければ心臓直撃だった。 戦場だというのに、気を抜きすぎたなと反省して体の力を抜く。 療養が終わったら、初代様に鍛え直してもらうことを頭に置き、首だけを動かし改めて周囲を確認する。 どうも医療機器があるようだし、病院か何かだろうと視線を下に向ければなのはが寝ていた。 まぁ、無事だったようで何よりだ。
「む?」
部屋に入ってきたであろうクロノが俺が目覚めているのを確認して声をかけようとするが、口に指を持っていき声をかけることを制する。 クロノもなのはが寝ていることに気が付いたのか、静かに移動し俺のベッドの近くに腰を下ろす
『存外元気そうだな』
『心臓の横を貫かれはしたが、それだけだ』
『その様子だと、傷のことは分かっていそうだな。 さて、今回の件だがなのはやヴィータを迅速に助けたということもあって厳重注意だけだ。 ただ、次もかばいきれるとは限らない、そこだけは注意してくれ』
『何から何まですまんな』
流石に面と向かって言いたかったのだが、なのはも寝ているためお礼は念話で言う。 まぁ、後で改めて言うことにしよう
『本当だぞ。 運ばれたときになのはをはがすのに苦労したし、丸二日も寝こけていたんだからな』
『・・・・・・そんなにか』
『あぁ』
クロノの念話に視線を眠っているなのはに向ける。 確かに、よく見れば目元にクマが出来ていた。 ・・・・・・心配かけてしまったな
『にしても、なのははなんであんな状態になっていたんだ?』
再びクロノに視線を戻し、念話でそう尋ねた。 いくら不意打ちを受けて、あの機械が魔法に対するジャマーがあるとしても、なのはやヴィータならそこまで脅威じゃないはずだ
『それについてなんだが......』
そこでいったん言葉を切り、クロノはなのはに向かって厳しい視線を向ける。 ふむ、なのはが原因みたいだな
『なのはのリンカーコアに異常な収縮が見られた』
『どういうことだ?』
『医者が言うには、無理な魔法の連続行使が原因だそうだ』
『・・・・・・』
確かに、思い当たる節はあった。 ジュエルシード事件の時も、闇の書事件に関してもなのはは実力以上の力を引き出し使っていた。 イリスが引き起こした事件なんか、こちらでは技術の確立もされていないフォーミュラの力まで使っていたのだ
『治すには、魔法の使用を控えさせる、十分な休息をとらせることだそうだが......』
『・・・・・・そこそこ任務があったはずだぞ。 フェイト・テスタロッサが執務官試験を受けるということで、自分の教導官としての仕事にその分まで受け持っていたはずだ』
『あぁ。 だがこうなった以上は』
『なのはは休ませる。 教導官の仕事は悪いがヴィータに引き継いでもらうしかないだろう』
『それについては問題ない、ヴィータ本人からそういう要望があったからな』
『任務については、俺が全部引き継ぐ』
『流石に無理だ。 こっちでもいくつか簡単な任務を見繕い、藤森にも参加させる。 危険度が高いのについては、君と君の家族に行ってもらうことになるが』
『・・・・・・それでいい』
流石に家族を頼るのは控えたかったのだが、こればかりは仕方がない。 自分でも全部引き継ぐのは無理だとわかっていたし、よしんばできたとしても途中でポカをやってなのはのように墜ちるのが関の山だ
『本当は僕も出れればよかったんだが』
『こればかりは仕方ないだろう。 お前も色々忙しいだろう?』
『あぁ、すまない』
頭を下げるクロノに手を振りつつ、少しだけ話をした
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「んっ......」
クロノが出て行ったから数分後、なのはが目を覚ましたようだ。 不安そうにあたりをきょろきょろし、俺を見つけると目尻に涙をため抱き着いてきた
「理樹君!」
「もうちょい気を付けてくれ、これでも胸の傷が塞がってないんだ」
苦笑しつつ、なのはを抱きしめながら頭をなでる。 するとなのはは、声にならない声をあげて泣き続ける。 その間、俺はなのはを抱きしめ続けながら頭をなでていた。 数分の時間が経ち、ようやくなのはが落ち着いたのか鳴き声は聞こえなくなった。 なのだが、離れようとしない
「なのは?」
「・・・・・・」
少し身じろぎするだけで、返事はない。 まぁいいかと気持ちを切り替え、さっきクロノと話していたことを口にする
「なのは、お前はしばらく魔法の使用を禁止する。 それに伴って、お前が参加するはずだった任務も他の人間が遂行することになった」
「どういう、こと?」
ようやく離れたと思えば、信じられないような顔でこちらを見るなのは
「今のお前の状態を鑑みてだ」
「私は!」
「墜ちかけた奴が何を言ってる!お前の体の状態を俺が知らないと思ってるのか!!」
何か言いかけたなのはを、俺は黙らせるために怒鳴りつける。 ここが個室でよかったと思った瞬間だった
「無理をしたせいでリンカーコアに異常な収縮が見られるそうだな? そんな状態で今回の任務に出たんだ、そうなるに決まってるだろ!自己管理ができないのなら、こちらで管理するしかない、そういうことだ。 今回の決定は俺の一存ではなく、クロノも了承済みだ」
「それはそうだけど、私はまだ大丈夫だよ!」
「俺がいなかったら死んでたかもしれないのにか?」
自分でも驚くほど冷たい声が出た。 なのはも俺の声に驚いてか、顔が青くなっていく。 だが、これはなのはだけの問題ではない。 また同じようなことが起こり、それがチームでの活動中だとしたら、チームまで危険にさらすことになる。 だから俺は心を鬼にしてなのはに言い放つ
「どちらにしろもう決まったことだ、今回の休暇でよく自分を見直すことだ」
そう言って、痛む胸の傷を無視しつつ部屋を後にする。 俺の見間違いでなければ、部屋を出るときのなのはは俺に手を伸ばしつつ泣いていたような気がした