元踏み台転生者物語   作:サクサクフェイはや幻想入り

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第四十六話

負傷した局員たちの輸送も終わり、俺たちは陸のおひざ元地上本部へと来ていた。 ゼストさんにも言ったが、報告のためにだ。 アイツは本局についてからずっとガクブルしているが、放っておこう。 どうせ話すのは俺だし。 廊下を歩いていると、奇異な視線を向けられる。 まぁ、海の人間が陸に居れば相応の視線を向けられるのは確かだ。 それも、陸の英雄と一緒に居ればねぇ

 

「ここだ、失礼のないように」

 

そう言って、扉をノックし返事があると同時に部屋に入っていくゼストさん。 俺たちもその後をついて部屋に入っていく。 流石中将クラスの部屋というか。 俺の執務室と比べるまでもなく広いし、綺麗だ

 

「誰かね?」

 

「初めましてレジアス中将。 私は海所属の神木理樹です」

 

「お、同じく嘱託魔導士の藤森織です!」

 

海といった瞬間視線が厳しくなったが、秘書がデータを持ってくるとより一層視線を厳しくする

 

「ほぅ、海の人間がわざわざ私に、いったい何のようだ」

 

「それは、ゼストさんの方から聞いてください」

 

そう言うと、視線をゼストさんに向け早く話せと目で訴えていた。 その視線を受け、ゼストさんも今回の任務について話始める。 厳しい表情は徐々に驚愕へと変わる

 

「それは本当なのか?」

 

「あぁ。 私の部隊は約半数が負傷した」

 

「陸の最高戦力だぞ!?」

 

「そうだとしても、だ」

 

そう聞くや否や、レジアス中将は力が抜けたかのように椅子へと座り込んでしまう。 まぁ、ガラクタとたった三人の戦闘員に陸の最高戦力がやられたのだからその絶望感は計り知れない。 だがそんな中でも、レジアス中将はこちらに視線を向ける

 

「さっきは済まなかった。 君たちが居なければ、ゼストたちは全滅もありえただろう」

 

「いえ、こちらもたまたま近くで任務をしていたら救援の念話が聞こえただけですから」

 

「任務、な。 さっき話にもあったが、ゼスト本当に任務地がかぶっているようなことはなかったのか?」

 

「確認した」

 

「そちらも確認か...... まぁ、痕跡が残っているとは思えんがな」

 

「痕跡?」

 

「まぁ、いいだろう」

 

俺がいるのを忘れてうっかり漏らしてしまったようだが、苦虫を嚙み潰したような顔をしながら語り始めるレジアス中将

 

「独自で調査した結果だが、そういう改竄が数件見られたんだ。 しかも、ゼストの隊が受ける任務だけ、だ」

 

「それはまた...... 誰かがゼストさんたち、消そうとしてると?」

 

無言で視線をそらしていたが、それは何よりも答えだった。 こうなると、アイツが言っていた通りレジアス中将がゼストさん消しに絡んでいた線は消えたような気がするが...... 正直言って、判断するには早計のように思えた。 これで演技なら相当な狸のわけだが、ともかく監視の意味も込めてパイプを作っておかないとまずいかもしれない。 まぁ、当初の予定通りか

 

「ならリスクを分散させるために、他の部隊の人間に受けさせればいいのでは?」

 

「ククク、簡単に言ってくれるな。 ゼストが受ける任務は相応にレベルの高いものだ。 それに貴様ら空や海のせいで人員が足りないのを知ってて言っているのか?」

 

「ならば引き抜けばいいでしょう? 俺なんてどうですかね?」

 

「だからそんなに簡単に!」

 

「そうか、お前はもともとそれが狙いだったか」

 

こちらを怒鳴りつけようとしたレジアス中将を制し、納得したような視線を向けてくるゼストさん。 やっぱり、中々に鋭いようだった

 

「ゼスト?」

 

「どこまでが計算なのかは知らないが、もともとそういう話をする予定でここに来たのだろう?」

 

「思っていたように誤魔化し切れませんでしたね。 その通りです、最初からこの話をするためにここに来たんです。 そもそも、海の上も俺の扱いには困ってるでしょうから、これ幸いとこちらに渡してくると思いますよ?」

 

「ゼスト、どうなんだ?」

 

「実力は申し分ない」

 

コロコロと話が変わっていくが、概ね予想通りか


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