八幡side
リトルガーデンの入学式まで残り1ヶ月をきった。俺はサクラとの約束を守るため入学式は欠席し、そろそろリトルガーデンを一時的だか離れる準備をしている。もちろん、それはすでにクレアから了承を得ている。
そんなわけで、俺は今リトルガーデンを一時外出するために人一倍生徒会長室で公務を行っている。大事な入学式に参加しないのにクレア達に何もせずに任せるのは男として彼女らに悪い気がするからな。
「ハチマン、こちらが先日の編入学試験に合格した武芸科のリストです。私もまだ中身は詳しく見ていないのですが、初めに目を通して見てください」
「ああ、拝見するぞ」
クレアから束の資料を貰い、俺はリベリア合衆国に停泊した際に箱買いをしたマックスコーヒーもどきを飲みながらその合格者リストを拝見する。
武芸科の合格者は如月ハヤト、エミール・クロスフォード……おお、エミールも合格してたな。後でエミールに話しておこう。それでフリッツ・グランツ、レイティア・サンテミリオン………え……は?
「ゲホっ!?」
「ハチマン!?」
俺は武芸科の合格者のリストのある見覚えのある名前を見てしまい、口に含んだマックスコーヒーもどきを吹き出しそうになる。いきなり咳き込んだからか、クレアやエリカ、リディ達は心配そうな様子をしていた。
「どうしましたの?ハチマン?」
「ゲホっ……大丈夫だ。それより合格者を決めているのはワルスラーン本社だったよな?今からあのバカ……じゃないジュダル・ハーヴェイに連絡できるか?」
((比企谷先輩(さん)、今ワルスラーン社の社長をバカと言っていたような……))
「ええ、可能ですわ」
エリカとリディが何故かは知らないが、唖然としている中、クレアはそう言ってワルスラーン社に連絡するための機械をいじり始める。俺はその間、見間違いじゃないかをもう一時リストを確認する。……残念、どうやら見間違いじゃないらしい。
「出来ましたわ」
『やぁクレア。』
生徒会長室にある大きなモニターにクレアに挨拶をするジュダル・ハーヴェイの顔が映った。
『君から連絡をするなんて珍しいじゃないか。それと……おお、ハチマンじゃないか!顔をお互い見合わせるのはあの賭け以来だね。その制服似合っているよ』
俺はジュダルの言葉に若干の怒りを覚えながらもジュダルにあることについて訊ねる。
「そんな再開の挨拶なんてどうでも良い。それよりこれはどういう事か説明してもらうぞ」
俺はモニターにリストを見せつける。クレアやエリカやリディも何が書いてあるかを横から見ようとする。
そこに書いてあったのは……
武芸科新入生
〇雪ノ下雪乃
〇葉山隼人
〇由比ヶ浜結衣
見覚えのあるあの三人の名前だった。
「この三人って確か……」
「テレビで報道されている比企谷さんを追いやった奴等じゃないか!」
そう、リディの言う通りである。まさか、俺のノートがあんなことに発展するとは自分でも思わなかった。余談だが、エリカやリディには葉山と雪ノ下と由比ヶ浜の名前を生徒会の仲間として教えているが、テレビではHくんとYさんというように名前を伏せて報道されている。普通の人はまず知らない。
「お兄様!これは私からも不服がありますわ!どうして彼らを合格にしたのです?かれらが武芸者科に来るなんてハチマン以外理由がありませんわ!」
そう言ってクレアは大きな声で自分の兄に対してひどく憤っていた。まぁ、無理はないか。
「それと………何でこいつら編入生じゃなくて、新入生扱いなんだ?あいつら次3年生だぞ」
『まぁまぁ、一つずつ話そう。まずはクレアの方だが、彼らは身体能力や知力の面では確かに脱落させるような一面はあったよ』
だろうな。由比ヶ浜があんな問題を解けるわけないし、雪ノ下はリディが考えた20㎞走なんか出来るわけがない。葉山ならどうにかできそうだが。
『だけど、それを補ってハンドレッドの反応数値が他の生徒より高くてね。ワルスラーン社でも協議をした結果、将来性にかけて彼らをギリギリながらも入学させることになったというわけだ』
「ほう……ちゃんとした理由があるならまだ良い。嫌がらせだったらワルスラーン社の社長室に弾を一発お見舞いするするところだ。で、何故こいつらは新入生の枠にいる?次は高3の筈だが?」
俺はそう言ってジュダルに質問を叩きつける。
『あれ?君が編入する時にクレアから編入について聞かされていないのかい?』
編入した時……………?
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回想
『はぁ……分かった。それで俺はリトルガーデンに編入するんだが、学年はどうなる?』
『そうですわね。高等部武芸科3年次からの編入は前例がなく、武芸者として初心者なら高等部1年から編入することになりますが、ハチマンなら実践経験がありますから高等部3年からでも大丈夫でしょう。来年度からは私と同じ学年です』
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「そういえばそんな話あったな。確か俺は武芸者としての経験があるから学年がそのままって。……そうか、あいつらは武芸者としての経験がないから」
『その通りさ。ワルスラーン社としても武芸者初心者を武芸科の高等部3年に入れるわけにはいかなくてね。だからこのような処置を取らせて貰ったわけ』
「だが、なぜこいつらは武芸科を選ぶ?転校が目的だとしたら、普通科ならまだ編入できただろうに。事情を知らない奴らから見たらただの留年を重ねたバカにしか見えないんだが?」
『それがワルスラーン社からも彼らにその旨を伝えても武芸科の一点張りでさ。それにしてもそこまで武芸科に拘るとは……彼らは本当は大学に行く準備をする時期なんだろう?一周回って憐れだね。わざわざプライドを捨ててまで高校生活をやり直すとは』
うん、俺も憐れに思う。特に雪ノ下とか屈辱の極みだったのかもしれないな。
『じゃあ、僕はこの辺で失礼するよ。恐らくだが、彼らはハチマン君が目当てだ。学年が離れているから接触はないと思うが、宜しく頼むよ』
ジュダルがそう言うと、ジュダルが映っていたモニターも真っ暗になる。通信が切れたようだ。
「……すまない、クレア達には俺がいない時に迷惑をかけるかもしれないな」
「別に構いませんわ。ハチマンがいない間は私がしっかりと監視しておきますので。特に入学式は」
クレアがそう言うと、クレアの後ろにいるエリカやリディもうんうんと頷いていた。
「ああ、ありがとな」
2週間後、俺は約束通りリトルガーデンを一時的に離れることになった。あいつらがクレア達や同じ学年のエミールと何事もなければ良いが。それにしてもジュダルは俺が目的だと推察していたが、彼らは何が目的だ?
まぁ、リトルガーデンを乱すなら生徒会として彼らには容赦はしないが。
次回からは八幡でなく、あの主人公が八幡の代わりに物語を展開する予定です。