如月ハヤトside
リトルガーデンに到着後、俺は入学式まで時間が有ったため妹のカレンが居る病院に向かった。
病院でついでにトイレを借りて制服に着替えたのだが、ネクタイが曲がっていると妹に指摘され、わざわざ丁寧にネクタイを結び直してもらってしまったが、妹は相変わらず元気そうだった。
リトルガーデンで妹の世話を担当して貰っている看護師、柏木ミハルさんが言うにはリトルガーデンに来てから治療のせいか、体調は良くなっているらしい。病院の人からもお墨付きを貰い、俺がリトルガーデン来た意味はあったということだ。
その後、俺はミハルさんにカレンを任せて、病院を後にした。俺は荷物を置くためにリトルガーデンにある武芸科の寮に向かうと、そこでいきなり俺に抱きついてきた銀髪の女……いや、男であるエミール・クロスフォードという俺と同じ新入生に会う。また、そんな様子を眺めていた同じく新入生である、金髪の男、フリッツ・グランツと知り合った。
フリッツは武芸科の一年生の寮のリーダーとして今日来る俺達のような人を待っていたらしい。それにしてもフリッツやエミールは最初から俺の事を知っていたらしいが、ハンドレッドの適性試験で歴代一位の反応数値を叩き出した事は想像以上に凄い事だったらしい。だから彼らも噂ではあるが、俺の事を知っていたらしい。いやー、知らなかったな。
フリッツに部屋を案内され、俺はそこに荷物を置いた。部屋は何でもチームとしてのコミュニケーション能力を鍛えるために二人部屋となっていて、そこで俺とルームメイトなるのは先程俺に抱きついてきたエミールだった。何やら念願が叶ったような顔をしていたが、変な奴だな。
荷物をある程度置くと、入学式が始まる時間が迫っていたため、俺とエミールとフリッツは入学式が行われる武芸科の校舎の講堂に向かった。
校舎の中に入ると、そこで背丈が低く、ボーイッシュな風貌な少女、レイティア・サンミリオンと知り合った。彼女はフリッツの幼馴染みでフリッツが来るのを待っていたらしい。勿論、彼女も俺の事を噂で知っていた。それにしても彼女は俺の事をクレア様の記録を破った男と話していたが、クレア様とは一体誰の事だろうか?
彼女にクレア様について聞こうとしたが、入学式が始まる時間となり、俺達は講堂に誘導されて聞きそびれてしまった。そして今は………
『新入生諸君、リトルガーデンにようこそ』
舞台の袖から眼鏡をした女性と褐色肌のポニーテールが目立つ女性が現れ、ポニーテールの女性が壇上に設置されたマイクを通して入学式の始まりを告げる。同じ制服を着ているから彼女達もリトルガーデンの生徒だろう。上級生かな?
『私は高等部武芸科の二年でリトルガーデン生徒会副会長の一人、リディ・スタインバーグだ。今後、新入生諸君の教育係を務めることになるので、私のことを覚えていておいて欲しい』
そう言って頭を下げ、リディさんは言葉を続けた。
『続いて、隣に立っている君達の先輩を紹介しよう。彼女も私と同じリトルガーデン生徒会副会長の一人で、同じく二年のエリカ・キャンドルだ。これから私達二人でこの入学式を取り仕切らせて貰うことになる』
『エリカ・キャンドルです。新入生の皆さん、まずはリトルガーデン高等部武芸科への入学、おめでとうございます』
そう言って眼鏡の女性、エリカさんはリディさんと同じように丁寧に頭を下げた。
『生徒会は後に挨拶をして頂くクレア様を中心に、私達副会長、そして特別指導顧問である比企谷八幡様の四人で構成されています。比企谷様は本日はある大事なクライアントのために欠席をしていますが、新入生の諸君には彼が帰り次第改めて紹介をさせてもらう』
それを聞いて俺の周りの他の武芸科の新入生は一気にざわめき始める。何でだ?
「なーんだ、今日は『影の働き手』はいないのか。残念だなぁ、会いたかったのに」
「フリッツは比企谷先輩の大ファンだからな。気持ちは分かるよ」
「なぁ、さっきから比企谷先輩とか『影の働き手』とか一体誰の事なんだ?」
俺は近くに一緒に座っていたフリッツとレイティアに訊ねた。すると、二人になぜか驚かれてしまった。
「ハヤト、まさか知らないのか?リトルガーデンが誇る最強の男性武芸者、比企谷八幡先輩のことを」
俺はそれにうんうんと頷くことしか出来なかった。
「ハチマン先せ……比企谷先輩は世界が注目する武芸者で、『
「男性武芸者にとっては憧れの存在で、女性武芸者には多くのファンが居てな。今、周りでざわついている新入生もきっと比企谷先輩のファンだろうな。もちろん、わたしやフリッツも彼のファンだぞ」
そう言ってエミールとレイティアが俺に説明する。リトルガーデン最強の男性武芸者か。今日は来ていないそうだが、どんな先輩だろうか。入学式を休む程だから余程大事な仕事なんだろうな。それにしてもエミールの奴やけに詳しかったな。もしかすると知り合いだろうか。
『静かにしないか!』
そう思っていると、ざわめきを治めようとするためにリディさんがマイクを通して強く一喝する。それにより新入生のざわめきは治まり、先程の静寂な雰囲気に戻った。
ざわめきを治まったのを確認すると、エリカさんは手に持っていた箱を壇上に置き、箱から三角形のバッジを取り出した。
『これからあなた達にこのバッジを授けます。これはリトルガーデンの生徒であることと、その学年を示すものです』
なるほど、校章か。見ると副会長の二人にもバッジが付いている。数は二つ、二年生を示しているのか。
『それでは名前を呼ばれた者からバッジを取りに来るように。まずは由比ヶ浜結衣からーーー』