ボッチのハンドレッド使い   作:リコルト

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入学式はこれで最後です。


入学式その3

 

 

如月ハヤトside

 

 

リディさんがそう言うと、舞台の袖から金髪の縦ロールを左右の耳元から垂らした、いかにもお嬢様と言った雰囲気が醸し出されていた。本当に同じ学生なのか疑うぐらいだ。

 

 

クレア会長がマイクの前に辿り着いて、これから彼女が喋ろうとした瞬間………

 

 

 

「すみませんっ!!」

 

 

 

「遅れて申し訳ございませんでした!」

 

 

講堂の出入口の扉が開く音に続いて、二つの声が響く。それにより講堂にいる全ての者が彼女らに対して一斉に視線を向ける。

 

 

見ると制服にはバッジが付いておらず、恐らくレイティアが話していた順番を飛ばされた生徒とは彼女達のことだろう。

 

 

『入学初日に遅刻とは良い度胸ですわね』

 

 

「あ、あの……朝から繁華街に行っていたのですが、思っていた以上に時間がかかってしま『理由など聞いておりません、時間厳守と伝えた筈です』

 

 

クレア会長は遅刻をしてしまった少女の言い訳を聞かず、そのまま厳しい口調で話を続ける。

 

 

『約束を守れない人間はこのリトルガーデンに必要はありません。今すぐ荷物を纏めてこのリトルガーデンから出ていきなさい』

 

 

クレア会長がそう言って彼女達は今にも泣きそうである。すると、その会話に割り込む者が現れる。

 

 

「ねぇ、ちょっといいかな?」

 

 

それは俺の隣に座っていたエミールである。予想外の介入者に俺は驚きを隠せなかった。

 

 

「一度のミスでいきなり退学処分は横暴すぎるんじゃないかな。二人とも泣いているし、可哀想じゃないか」

 

 

「おい、ちょっと待てって!」

 

 

「んぐっ!何をするんだよ!」

 

 

エミールに抵抗されているが、俺は慌てて何とかエミールの口を塞ごうとする。

 

 

「何をするって、それはこっちの話だ!なんでいきなり喧嘩腰で突っかかるんだよ。そんなんじゃ、お前もアイツらと一緒に退学処分になっちまうぞ!」

 

 

「僕はああやって権力を振るうやつが大嫌いなんだ。親の七光りでやっているくせにさ」

 

 

「親の七光りって、何だよそれ?」

 

 

「クレア様はリトルガーデンを経営しているワルスラーン社のご息女なんだっ!それだけにこの場での権力はものすごいのだぞっ!」

 

 

俺と一緒にエミールを止めているレイティアが俺にクレア会長の事をすかさず説明してきた。

 

 

ワルスラーン社のご息女って、そんなに偉い人だったのか。だとしたら、エミールも退学になりかねない。こうなったら、仕方がない……まずは状況を鎮めなければ。

 

 

「ええと、言い方はともかく、確かに一度のミスで退学は厳しすぎるんじゃないかと思うんですが」

 

 

俺はクレア会長に提言をすることを決めた。

 

 

『あなた、如月ハヤトですわね』

 

 

「そう、ですけど」

 

 

俺は会長に睨み付けられて、その視線に気圧されながらも何とか答える。

 

 

『如月ハヤト、いえ、この場所にいる新入生は全員、これから私が言うことを胸に刻んでおきなさい』

 

 

そう言ってクレア会長は続けて語り出す。

 

 

『リトルガーデンの武芸科は普通の学校とは似て非なるものなのです。あなた達は命を賭してサベージと戦うワルスラーン社の見習い武芸者でもありますから。卒業後、あなた達は戦場に出ることもあるでしょう。そこではたった一人の間違いが致命傷となって部隊が全滅することもあるのです。だからこそ、上官の命令は厳守すること。それと……』

 

 

話しながら会長はエミールを睨み付ける。

 

 

『エミール・クロスフォード、先程あなたは私が親の七光りと言いましたが、それは違いますわ。艦長及び生徒会長は武芸科の学生の中で一番序列が高い者、(クラウン)もしくは女王(クイーン)がなることになっているのです』

 

 

「じゃあそれってつまり、会長に勝って王の座につけば処分は撤回できるんだよね?」

 

 

『無礼だぞ。エミール・クロスフォード!新入生がクレア様に勝てるわけがないだろう!』

 

 

そう言ってクレア会長の隣にいたリディさんがエミールの発言に対して憤りを感じていた。

 

 

「でも歴代一位であるハヤトの方が会長より上なんでしょ。やってみないと分からないんじゃない?」

 

 

もう生徒会と俺達は一触即発の状態である。もう一人生徒会のメンバーがいるらしいが、その人もこんな感じだろうか。

 

 

すると、会長は壇上から人差し指を俺に向けて突きだして、高らかに宣言する。

 

 

『分かりましたわ。私、クレア・ハーヴェイは新入生、如月ハヤトに決闘(デュエル)を申し込みますわ』

 

 

「え………俺?」

 

 

それを聞いて、俺だけでなく副会長達やエミールやフリッツやレイティアも目を丸くする。

 

 

決闘、それは生徒会公認の武芸者同士の模擬試合である。それに勝てば序列を塗り替えることも可能だが……

 

 

『クレア様、本気なのですか?』

 

 

『もちろん、本気ですわ。エリカもリディも彼の実力に興味があるでしょう?それに新入生達に彼が居ないとはいえ、生徒会の実力を見せる良い機会です。』

 

 

生徒会で何やら話が進んでいるようだが、こちらはまだ理解に辿り着いていない。

 

 

「ちょっと待ってくれよ。いきなり決闘と言われても俺はまだハンドレッドを使って戦った経験はないんだが」

 

 

『あなたがハンドレッドに触れた時、刀のような形になったのは試験で分かっています。それに幼い頃から剣術を嗜んでいたため、その腕も十分にあるとあなたの経歴に書いてあります。戦えない事はないと思いますが?』

 

 

会長の言う通り、俺は剣術は十分に出来る。だが、ハンドレッドを使うのは初めてなのだ。戦えるかどうかはハンドレッドを使わないとよく分からない。

 

 

『もし、あなたが勝てば彼女らの退学、そしてエミール・クロスフォードの無礼は許しますわ。もしやらないのであれば、私としては別に結構ですが』

 

 

それはつまり、俺が受けなかったら彼女達や、もしかするとエミールも退学することになる。

 

 

だったらやるしかない。

 

 

「分かりました。その決闘受けます」

 

 

『良い返事ですわ。決闘は明日の午前中。特待生であるあなた専用のハンドレッドはこのあとすぐに渡すように担当者に伝えておきます。後で研究所に取りにいくように。それでは明日を楽しみにしておりますわ』

 

 

そう言って会長は舞台の袖から出ていった。

 

 

 

入学式とは言えない雰囲気となってしまったが、その後は副会長達が何事もなかったかのように校舎の設備の説明、このリトルガーデンでの規則を淡々と説明して、問題だらけの入学式は幕を下ろした。いやー、長い時間だった。生きた心地がまるでしなかった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

(あの如月ハヤトの言う通りだ。いきなり彼女達を退学にするのはおかしいじゃないか。これもきっと比企谷の仕業だな。本当なら俺が出たかったが、俺には比企谷を倒す使命がある。彼には感謝だな。それにしても比企谷の奴、俺達に会うのが怖くて逃げ出したのか?まぁ、お前は元からそんな奴だからな。生徒会が庇っていても俺には分かるぞ)

 

 

(あの会長さんも洗脳されている割りにはまともな事も話せるのね。それにしても如月ハヤト君とエミール・クロスフォード君と言ったかしら、彼には比企谷君に洗脳された生徒会に抵抗する私達と同じ意思を感じるわ。ひとまず、彼の明日の試合を見て今後、利用できるなら仲良くしたいものね)

 

 

(ヒッキーたら私を置いてどこに行ったし!私やゆきのんより大事な仕事とかヒッキーにあるわけないし!会ったらそのクライアント?について聞かせてもらうし)

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

(何だかヤバい事になっちゃったなぁ。あれほどハチマン先生から会長とは性格が合わないと思うから問題を起こさないようにと、注意されていたのに。ハチマン先生が聞いたら何て言うだろ。それにしてもハチマン先生からお願いされて成績がビリの三人の監視をしていたけど、なんだか近寄りがたい雰囲気だし、自分としてもハチマン先生をいじめた彼らとは関わりたくないなぁ)

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「ヘックシュッ!」

 

 

「あら、ハチマン風邪ひいたの?」

 

 

「いや、何でもない。なんだか自分が言うのも難だが、あれほど問題を起こさないようにと話したのに、なんだかとんでもない問題が起きた感じがしてな。」

 

 

 

 

 

 

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