「はあぁ!?お前と新入生の如月ハヤトが決闘だと!?どうしてただの入学式でそうなったんだよ!?」
夜のホテルの一室で八幡の大きな声が響き渡る。理由は簡単。入学式でクレアが新入生の如月ハヤトにいきなり他の新入生の退学を賭けて決闘を申し込むという、前代未聞な事件が起こったからだ。これには葉山達だけを危惧していた八幡も予想外の展開である。
『生徒会として正当な措置をしただけですわ。それに如月ハヤトを利用して、リトルガーデンの生徒会の力を見せる良い機会だと思いまして』
そう言って八幡の手にある通信用のタブレットでクレアが画面越しで淡々と説明する。
「いや、でも相手はハンドレッドの適性数値が高いだけで、ハンドレッドでの戦闘は初めてなんだろ?一日時間があるとはいえ、明らかにお前と勝負にならないし、不公平だろ」
『そんなことはないですわ。本当は入学式が終わってからでも良かったと私は思っています』
「………もしかしてお前、如月ハヤトにリトルガーデンでの記録を破られてムキになってるのか?」
八幡はクレアの逆鱗に触れてしまうだろうという心配をしながら、おそるおそる聞いてみた。
『……違いますわ。と、言いたい所ですが、ハチマンの言う通りかもしれませんね。正直言って、私の記録、私の努力をあんなハンドレッドを触れたことがない新人に負けるのに納得をしてませんの。それに、如月ハヤトは私の記録だけでなく、貴方の記録を打ち破っているのですのよ。そんなの、私が許しませんわ。貴方は私が唯一負けた武芸者でなくちゃいけませんの。これは貴方と私のプライドをかけた戦いでもあるのですわ』
クレアがそう話すと、八幡は驚いた様子でしばしの間、深く考え込んでいた。
「……成る程、まさかクレアがそう思っていたとはな。なら、絶対に負けるなよ」
『勿論ですわ。では、失礼しますわ』
八幡はクレアの気持ちを理解して、クレアに一言応援の言葉を告げると、クレアは自信満々そうに通信を切った。
「それにしても、クレアと如月ハヤトの決闘か。俺も見たかったなぁ」
八幡がそう思っていると、再びタブレットが音を出して震える。今度はエミールからである。
『ヤッホー、ハチマン先生』
「ヤッホーじゃねぇよ。その前に言うことがあるだろ。なぜ、あれほど言って問題を起こした?」
『あれ……何で知ってるの?』
画面越しでエミールが八幡から目を反らそうとしていた。エミールのその様子から八幡が事情を知っているのは予想外だったらしい。
「一応、俺も生徒会だからな。情報はしっかりと共有される。さっきまでクレアと話していた所だ」
『………もしかして先生は会長の味方なの?』
「まぁな。事情は聞いているが、俺はクレアの意見に賛成だ。まぁ、入学式から退学はトラウマになると思うから少しやりすぎだとは思うが」
『でもさ!ちゃんとした理由もあるのに、あんなに意地悪することは無いじゃないか!それに、彼女達は泣いてたんだよ。可哀想じゃないか』
「エミール、それは甘い考えだ。クレアはお前達を武芸者として死なせないために厳しくしたんだ。決してただの意地悪なんかじゃない」
『それって…………』
「俺とクレアは昔、武芸者として色々な場数を踏んできた。でも、そんな中で俺とクレアは同じ部隊の仲間の死を何度も見てきた。中には俺の知り合いが居て、俺も辛い時はあった。でも、俺以上に辛いのはクレアの方だ。彼女は司令塔として仲間が死んだとき、何度も自責の念に囚われていたんだ。その経験の中で生まれたのが今のクレアの考えだ。チームの一度のミスが致命傷に繋がるか、クレアの言う通りだな」
八幡は静かに続けるように話す。
「別にクレアの全てを理解しろとは言わない。でも、彼女の行動にはちゃんとした意味がある。それを忘れるな。分かったか?」
『うん……分かったよ』
「ならいい。この話は終わりだ。じゃあ、話は変わるが、俺が頼んだあいつらの監視はどうだ?」
八幡はエミールに葉山達の様子を聞いた。
『今の所は問題は起こしてないよ。だけど、入学式が終わってからも誰とも馴れ合わないで、基本はあの三人で行動してたね』
「そうか、ならまだ良い。俺がいない間も引き続き監視を頼む。何かあれば俺に伝えてくれ」
『了解だよ!先生』
「あ、そうだ、あと明日の如月ハヤトとクレアの決闘の記録を撮って送ってくれると助かる」
『はいはい!じゃあ、おやすみなさーい!』
そう言ってエミールとの通信はブツンと切れた。
「さて、明日はリハーサルだから俺も早く寝るか。サクラもすでに寝ているようだし」
八幡は明日のリハーサルのスケジュールを確認して、軽く準備を済ませると、すぐに就寝してしまった。